僕がサポーターになった理由

第一章

６ 『？？？視点』

　僕は走っていた。

　逃げないと。

　逃げないと。

　恐怖から足が縺れる。

「痛い……。」

　掌がすりむいているし、着物で見えないがきっと膝小僧もすりむいているだろう。

　だけど、僕はここで立ち止まる時間はなかった。

「小僧がいたぞ。」

　しまったっ！

　マズイこのままだと、この人たちは……。

　ううん、違う、あの人がっ！

　僕は何とか逃げようと立ち上がろうとした瞬間、何かが過り、それが僕の足に命中する。

「ぐっ！」

　足に力を入れた瞬間に、僕は矢で射抜かれてしまった。

　崩れ落ちる態勢。

　近寄る、村人。

「この疫病神が。」
「お前が生きているから、この村はもう駄目だ。」
「死ね。」
「死んで償え。」

　各々が持つ農具に僕は叩かれ、けがを負う。

「ぐ……。」

　蹲り何とか痛みを殺そうとする。

　何とかして生きないといけない。

　そうじゃなければ、心優しいあの人は……。

　しかし、僕は今の時点でもう遅い事に気づかなかった。

「何をしている…。」

　氷よりもずっと冷たい声音に村人たちはハッとなり、神域へと続く道を見た。

　そこには一人の青年が立っていた。

　いつもは白い髪が怒りで赤く染まっている。

　マズイ。

　マズイ。

　マズイっ！

　このままいけば彼は祟り神となってしまう。

　それだけは駄目だ。

　あんなにも優しい彼が祟り神などに落ちてしまうなんて。

　その理由が僕というちっぽけな人間であってはいけない。

　僕は力を振り絞り、腕に力を入れようとした、だけど、村人は彼を見て恐怖からか、動いた僕を見てある考えを思いついてしまった。

　それが最大の悪手であるだなんて、彼らは気づかなかっただろう。

「う、動くなっ！」

　僕を人質にして彼に命令する。

　僕は苦しさのあまり顔を顰めてしまい、それを見た彼は目をカッと見開いていた。

「だ、駄目……。」

　彼を人の血で染めてはいけない。

　僕は必死でもがこうとする、だけど、それが悪かった。

「こいつを殺すから、どうか、命だけは。」

　食い込む刃に僕は仕舞ったと思った。

「何故、シオリを殺す、それは我が伴侶だ。」
「ひっ！」

　男の手元が狂い僕の首に刃がさらに食い込んだ。

　そして、怒り狂った彼はその場にいる全員を燃やし尽くした。

　まるで、業火の炎の如く。

　ああ、僕は止められなかった。

　そして、運が悪い事に、男が僕に当てた刃には毒が塗られていたようで、僕は自分の命が僅かだと悟った。

　彼は泣いた。

　自分の所為だと。

　僕は言葉を紡ぎたかった。

　だけど、零れるのは呼吸のみ。

　そして、僕は必死になって目で訴える。

　彼は分かってくれたのか、泣き笑いで僕を見てくれた。

　嗚呼、もう少し…。

　ううん、贅沢を言えば、もっと彼といたかった。

　ごめんなさい。

　僕の所為で、君は祟り神に堕ちてしまった。

　謝っても、君を救えない。

　どうか…。

　来世というものがあるのならば。

　彼を救いたい。

　その為に僕はいくらでも努力しよう。

　僕のただ一柱の神様、どうか、どうか、幸せにしたいから、君ともう一度で合わせてください。