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第五章
第五章「文化祭」42
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劇が終わり、教室に幾人かは戻ったのだが、その戻ったメンバーの二人の発する空気が悪く次々と着替えては出ていく。
「………。」
涼也は気まずい空気を発する二人の姿を眺めながらあの時の違和感が何なのか今さらながら思い出してしまった。
あの時の違和感、それは「前」も同じ事が起こった事――。
「前」の時とは状況が違うが、結果は同じだった。
「前」の配役は白雪姫が涼也だった、七人の小人の中にあの悪友と碧、そして、相も変わらず王子に樹がいた。
劇の内容はあらかた同じだが、悪友がトラブルメーカーだったのでかなりカットされ代わりに王子役の樹がファンサービスというかの如く舞台に多く出された。
そして、舞台も終わりに差し掛かった時、それが起こった。
碧は棺の一番近くにいた。
悪友はふざけた動きをして、そして、樹の背中を思いっきり押した。
たたらを踏んだ樹は近くにいた碧の腕を掴んだが、碧も行き成りの事で体を支える事も出来ずそのまま一緒に倒れ込む。
その時、運悪く二人の唇が重なる。
その時の女子たちの絶叫は凄かった。
思わず涼也が飛び起き、そして、キスしたままの二人は固まっていた。
刹那、意識を取り戻した碧が樹の腹に向かって拳を振り上げ、これ以上は劇の修正は不可能と判断したナレーションは適当に幕を閉ざした。
結果劇は最下位さらに、碧は女子の恨み買って散々な目に遭っていた。
そして、二人は卒業するまで口を利かずに卒業してしまった。
その後の二人がどうなったか、涼也は知らない。
涼也はハッと現実に目を向けると、ちらちらとこちらを見る碧と視線が合ってしまった。
「あー…。」
涼也は激しく逃げたいと思った。
しかし、彼は逃げる事が出来なかった。
流石に助けを求め縋る友人を放っておくほど涼也の人間性はひどくはなかった。
「何だよ。」
涼也は引きつった笑みを浮かべて碧に近づく。
「あのさ、あいつ怒っている?」
「……。」
涼也は碧の言葉に意外なものを感じた。
「やっぱ怒っているんだ。」
涼也の沈黙を悪い方に受け取った碧は落ち込む。
「いや、違う、違う。」
何故か落ち込む碧に涼也はハッとなり否定する。
「慰めはいいよ。」
「マジで怒っていないからな。」
「………嘘。」
「つーか、俺はお前の思考回路にびっくりしたんだよ。」
「何でだよ。」
子どものように頬を膨らませる碧に涼也はガシガシと面倒臭そうな顔で頭を掻く。
「まあ、なんつーか、お互い事故なんだし忘れるのが一番だし。」
無責任な事を言っている事くらい分かっているが、だが、不幸か幸いかお互いが同性同士でしたのだから気分的には罰ゲームくらいに思えば何とかなるだろう。
「そんなんできる訳ないだろうっ!」
「……。」
「ファーストキスは可愛い女の子とだと思ったのに、何であんな奴なんだよ。」
本気で嘆きだす碧に涼也は呆れる。
「あいつだってそうだろう、女とやるキスを俺となんて嫌だろう。」
「……。」
「それに俺気が動転していたからって殴っちまったし。」
「……。」
「……あーっ!やっぱ、俺らしくない!」
碧は行き成り立ち上がると樹の傍に行く。
「ちょっと面かせっ!」
おいおい、何喧嘩腰に何を言っているんだよっ!涼也は内心で叫ぶが残念ながら碧はその事に気づかない。
「分かった。」
何を考えているか分からない樹は一つ頷くと二人は外に出ていった。
一人残った涼也は何が起こっているのだと唖然として、様子を見に来た雪美に声を掛けられるアでその恰好のまま固まっていたそうな。
「………。」
涼也は気まずい空気を発する二人の姿を眺めながらあの時の違和感が何なのか今さらながら思い出してしまった。
あの時の違和感、それは「前」も同じ事が起こった事――。
「前」の時とは状況が違うが、結果は同じだった。
「前」の配役は白雪姫が涼也だった、七人の小人の中にあの悪友と碧、そして、相も変わらず王子に樹がいた。
劇の内容はあらかた同じだが、悪友がトラブルメーカーだったのでかなりカットされ代わりに王子役の樹がファンサービスというかの如く舞台に多く出された。
そして、舞台も終わりに差し掛かった時、それが起こった。
碧は棺の一番近くにいた。
悪友はふざけた動きをして、そして、樹の背中を思いっきり押した。
たたらを踏んだ樹は近くにいた碧の腕を掴んだが、碧も行き成りの事で体を支える事も出来ずそのまま一緒に倒れ込む。
その時、運悪く二人の唇が重なる。
その時の女子たちの絶叫は凄かった。
思わず涼也が飛び起き、そして、キスしたままの二人は固まっていた。
刹那、意識を取り戻した碧が樹の腹に向かって拳を振り上げ、これ以上は劇の修正は不可能と判断したナレーションは適当に幕を閉ざした。
結果劇は最下位さらに、碧は女子の恨み買って散々な目に遭っていた。
そして、二人は卒業するまで口を利かずに卒業してしまった。
その後の二人がどうなったか、涼也は知らない。
涼也はハッと現実に目を向けると、ちらちらとこちらを見る碧と視線が合ってしまった。
「あー…。」
涼也は激しく逃げたいと思った。
しかし、彼は逃げる事が出来なかった。
流石に助けを求め縋る友人を放っておくほど涼也の人間性はひどくはなかった。
「何だよ。」
涼也は引きつった笑みを浮かべて碧に近づく。
「あのさ、あいつ怒っている?」
「……。」
涼也は碧の言葉に意外なものを感じた。
「やっぱ怒っているんだ。」
涼也の沈黙を悪い方に受け取った碧は落ち込む。
「いや、違う、違う。」
何故か落ち込む碧に涼也はハッとなり否定する。
「慰めはいいよ。」
「マジで怒っていないからな。」
「………嘘。」
「つーか、俺はお前の思考回路にびっくりしたんだよ。」
「何でだよ。」
子どものように頬を膨らませる碧に涼也はガシガシと面倒臭そうな顔で頭を掻く。
「まあ、なんつーか、お互い事故なんだし忘れるのが一番だし。」
無責任な事を言っている事くらい分かっているが、だが、不幸か幸いかお互いが同性同士でしたのだから気分的には罰ゲームくらいに思えば何とかなるだろう。
「そんなんできる訳ないだろうっ!」
「……。」
「ファーストキスは可愛い女の子とだと思ったのに、何であんな奴なんだよ。」
本気で嘆きだす碧に涼也は呆れる。
「あいつだってそうだろう、女とやるキスを俺となんて嫌だろう。」
「……。」
「それに俺気が動転していたからって殴っちまったし。」
「……。」
「……あーっ!やっぱ、俺らしくない!」
碧は行き成り立ち上がると樹の傍に行く。
「ちょっと面かせっ!」
おいおい、何喧嘩腰に何を言っているんだよっ!涼也は内心で叫ぶが残念ながら碧はその事に気づかない。
「分かった。」
何を考えているか分からない樹は一つ頷くと二人は外に出ていった。
一人残った涼也は何が起こっているのだと唖然として、様子を見に来た雪美に声を掛けられるアでその恰好のまま固まっていたそうな。
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