もう一度君と…

弥生 桜香

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第五章

第五章「文化祭」35

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「……。」

 涼也は腕を組み仏頂面で校門前に立っていた。
 周りの視線が痛いほどに突き刺さり、しかし、それでも待ち人である雪美が姿を現す事はなかった。

「一体何十分待たせるんだよ。」

 げんなりとしながら涼也は校舎の壁に嵌っている時計を見上げる。
 後三十分くらいで教室に戻らないと支度などでギリギリになる。
 涼也は溜息を零し、天を仰ぐ。

「あー、快晴だな。」

 この前の雨が嘘のように晴れた空に涼也は目を細める。

「はよ。」

 声と共にチョップをかまされ、涼也は恨みがましそうに振り返る。

「雪姉……。」
「偉く不機嫌じゃない。」
「誰の所為だと思っているんだよ。」
「何かの所為。」
「……。」

 自分の所為だと本気で思ってないのかカラカラと笑う雪美に涼也は脱力する。

「ワザとなのか、ワザとなのか。」
「何がよ。」
「……。」
「さーて、訳の分からない涼ちゃんはおいといて、案内よろしく。」
「雪姉、あのさ、俺も準備とかあって三十分くらいしか時間がないんだけど。」
「いいわよ別に、案内してほしいのは、涼ちゃんのクラスだし。」
「はい?」
「さーて、涼ちゃんこれもって。」
「えっ?」

 雪美から旅行用にドランクを渡され、そして、そんなに重くないだろうと安易に受け取ってしまった涼也はその重みによって僅かに体を揺らす。

「なっ!何だよ、この重さ。」
「ふふふ。知りたい?」

 不気味に笑う雪美に涼也は顔を引きつらせ、顔を激しく振る。

「えー、残念。」
「…………。」
「まあ、どうせ、後で分かるだろうし、行こうか。」
「……。」

 案内役のはずなのに真っ直ぐに迷う様子もない軽い足取りの雪美に対し、涼也は荷物の重さと、この後の雪美の行動が読めないせいかかなり重い足取りだった。

「大丈夫よ、涼ちゃんには使わないから。」
「俺にはって…誰かには使うのかよ。」
「ふふふ。」
「………。」

 どうにでもなれ、というにやけくそに思いながらも涼也は教室に向かって歩くしかなかった。
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