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第五章
第五章「文化祭」24
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ジーンズにタンクトップ、その上にシャツを着たラフな姿の涼也は持ってきたペットボトルのお茶を飲む。
「少し早かったか。」
時計を見れば十時十五分。
「早いね。」
「あっ、京也。」
「おはよ。」
「はよ。」
青色のカーデガンを羽織った京也が現れ、涼也は挨拶を返す。
「待ち合わせは十時半だよね?」
「ああ、待たせるのは悪いからな。」
涼也はペットボトルにキャップをして鞄にそれを仕舞う。
「……やっぱり、君は僕の知っている涼也じゃないね。」
「………つーか、お前の知っている俺はどんな奴だよ。」
「うーん、時間は守らないし、片付けもしない、そんでもって。」
「やっぱ言うな。」
ろくな言葉が出てこないと悟った涼也は京也の言葉を遮った。
「聞いてきたのは涼也なのに。」
「悪いと思うけど、自分の悪口を大人しく聞く程人間出来てない。」
「確かに聞いて手胸糞悪いよね。」
「分かっているならこれ以上話を蒸し返すな。」
「はいはい。」
京也はニッコリと笑うが、涼也はその笑みが小悪魔の笑みに見えてしょうがなかった。
「はぁ…。」
溜息を零しガシガシと髪を掻き乱す。
「んじゃ、行こう。」
涼也はそのまま図書館の中に入って行こうとして、京也はストップをかける。
「何だよ。」
「図書館では私語厳禁だよ。」
「大丈夫だよ。」
「それに、かなりデリケートな話をするけど、人に聞掛けると困るんじゃない?」
「人気の少ない場所を見つけたから平気だ。」
「……。」
京也はこれ以上言っても無駄だと分かったのか小さく肩を竦めた。
「好きにすればいいよ。」
「最初からそうしているだろう。」
「そうだね。」
涼也は迷わず二階の専門書を置いてある棚を目指す。
「へぇ、ここってこんな本を置いていたんだね。」
「ああ。」
背表紙を撫でる京也に涼太は顔を上げる。
昔は見向きもしなかった本たちだったか、ここに戻ってきてからここにある何冊かは呼んでしまったし、今後も読んでおくつもりだった。
未来に何が起きるかは分からない、だから、少しでも知識を取り入れようと思っている。
あの人も自分のない知識を知っていてすごいと思った、でも、よくよく考えたら彼だって知識を取り入れるまでの努力をしているはずだ。
好奇心で調べたとしても、それは彼が知りたいと思ったから。
そして、調べた。
自分はそれをただ聞いていただけで努力という程の事をしていなかった、だから、今涼也は頑張っているのだった。
「涼也?」
「何でもない。」
「そう?」
訝しむ京也に涼也はそっけなく答える。
「で、話したい事だけど。」
「本題に入るんだね。」
「茶化すな。」
涼也は茶化そうとする京也を軽く睨み、そして、小さく深呼吸をする。
「俺はお前の知っている涼也じゃない、と思われる。」
「ずいぶん曖昧だね。」
「俺は確かに本城涼也であって、でも、あの日、目が覚めたら病院のベッドの上で寝ていたからな。」
「まるで、君は病院のベッドの上で目が覚めるはずがなかったような言葉だね。」
「最後の記憶から推測すれば確かにそれはあっても可笑しくはないのだが、問題は目が覚めたらお前がいた事だ。」
「僕がいた事が可笑しいの?」
「ああ、お前はずいぶんと遠い所に行ってしまったからな。」
「……。」
京也は涼也の言葉をどう受け止めればいいのか戸惑っているようだった。
涼也の言葉はただ単に遠くに住んでいるから簡単に遭えないのかのようにお聞こえる、だけど、京也はそれよりも、自分が死んでしまったようにも思えたのだ。
「だから、俺はてっきり自分の過去にやって来たんだと思ったんだよ。」
「過去?」
「ああ。だから、俺はもう一度やり直せるならきっちりと勉強をしたかったし、やんちゃをしたかったからな。」
「……君は一体幾つなんだよ。」
「それは聞くなよ。」
「………五十とか?」
「んな訳ねぇだろっ!ずっと若い。」
「……。」
「そんな疑っているような目で俺を見るな。」
「いや……これで、五十とかないな。」
「だから、違うと言っているだろうがっ!」
「……。」
胡乱な目つきで涼也を見た京也は彼の目の前で大きな溜息を零す。
「喧嘩売っているのか。」
「売ってない、売ってない。」
「つーか、普通頭いかれているとか思うだろうが。」
「君の頭は常にいかれているから大丈夫。」
「いかれない。」
「そうかな?」
「そうだ、というか、絶対お前こそ、俺の知っている京也じゃないだろう。」
「僕は僕だよ。」
「絶対違う。」
「そう思うのは君の所為だよ。」
「俺の所為だと?」
「少し早かったか。」
時計を見れば十時十五分。
「早いね。」
「あっ、京也。」
「おはよ。」
「はよ。」
青色のカーデガンを羽織った京也が現れ、涼也は挨拶を返す。
「待ち合わせは十時半だよね?」
「ああ、待たせるのは悪いからな。」
涼也はペットボトルにキャップをして鞄にそれを仕舞う。
「……やっぱり、君は僕の知っている涼也じゃないね。」
「………つーか、お前の知っている俺はどんな奴だよ。」
「うーん、時間は守らないし、片付けもしない、そんでもって。」
「やっぱ言うな。」
ろくな言葉が出てこないと悟った涼也は京也の言葉を遮った。
「聞いてきたのは涼也なのに。」
「悪いと思うけど、自分の悪口を大人しく聞く程人間出来てない。」
「確かに聞いて手胸糞悪いよね。」
「分かっているならこれ以上話を蒸し返すな。」
「はいはい。」
京也はニッコリと笑うが、涼也はその笑みが小悪魔の笑みに見えてしょうがなかった。
「はぁ…。」
溜息を零しガシガシと髪を掻き乱す。
「んじゃ、行こう。」
涼也はそのまま図書館の中に入って行こうとして、京也はストップをかける。
「何だよ。」
「図書館では私語厳禁だよ。」
「大丈夫だよ。」
「それに、かなりデリケートな話をするけど、人に聞掛けると困るんじゃない?」
「人気の少ない場所を見つけたから平気だ。」
「……。」
京也はこれ以上言っても無駄だと分かったのか小さく肩を竦めた。
「好きにすればいいよ。」
「最初からそうしているだろう。」
「そうだね。」
涼也は迷わず二階の専門書を置いてある棚を目指す。
「へぇ、ここってこんな本を置いていたんだね。」
「ああ。」
背表紙を撫でる京也に涼太は顔を上げる。
昔は見向きもしなかった本たちだったか、ここに戻ってきてからここにある何冊かは呼んでしまったし、今後も読んでおくつもりだった。
未来に何が起きるかは分からない、だから、少しでも知識を取り入れようと思っている。
あの人も自分のない知識を知っていてすごいと思った、でも、よくよく考えたら彼だって知識を取り入れるまでの努力をしているはずだ。
好奇心で調べたとしても、それは彼が知りたいと思ったから。
そして、調べた。
自分はそれをただ聞いていただけで努力という程の事をしていなかった、だから、今涼也は頑張っているのだった。
「涼也?」
「何でもない。」
「そう?」
訝しむ京也に涼也はそっけなく答える。
「で、話したい事だけど。」
「本題に入るんだね。」
「茶化すな。」
涼也は茶化そうとする京也を軽く睨み、そして、小さく深呼吸をする。
「俺はお前の知っている涼也じゃない、と思われる。」
「ずいぶん曖昧だね。」
「俺は確かに本城涼也であって、でも、あの日、目が覚めたら病院のベッドの上で寝ていたからな。」
「まるで、君は病院のベッドの上で目が覚めるはずがなかったような言葉だね。」
「最後の記憶から推測すれば確かにそれはあっても可笑しくはないのだが、問題は目が覚めたらお前がいた事だ。」
「僕がいた事が可笑しいの?」
「ああ、お前はずいぶんと遠い所に行ってしまったからな。」
「……。」
京也は涼也の言葉をどう受け止めればいいのか戸惑っているようだった。
涼也の言葉はただ単に遠くに住んでいるから簡単に遭えないのかのようにお聞こえる、だけど、京也はそれよりも、自分が死んでしまったようにも思えたのだ。
「だから、俺はてっきり自分の過去にやって来たんだと思ったんだよ。」
「過去?」
「ああ。だから、俺はもう一度やり直せるならきっちりと勉強をしたかったし、やんちゃをしたかったからな。」
「……君は一体幾つなんだよ。」
「それは聞くなよ。」
「………五十とか?」
「んな訳ねぇだろっ!ずっと若い。」
「……。」
「そんな疑っているような目で俺を見るな。」
「いや……これで、五十とかないな。」
「だから、違うと言っているだろうがっ!」
「……。」
胡乱な目つきで涼也を見た京也は彼の目の前で大きな溜息を零す。
「喧嘩売っているのか。」
「売ってない、売ってない。」
「つーか、普通頭いかれているとか思うだろうが。」
「君の頭は常にいかれているから大丈夫。」
「いかれない。」
「そうかな?」
「そうだ、というか、絶対お前こそ、俺の知っている京也じゃないだろう。」
「僕は僕だよ。」
「絶対違う。」
「そう思うのは君の所為だよ。」
「俺の所為だと?」
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