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第十二章
第十二章「中学三年」3
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「うまかったー。」
「お粗末さん。」
満足そうにお腹を摩る碧に涼也は呆れながらも、まんざらじゃないのか少し笑っていた。
「茶、いるか?」
「うんうん、欲しい。」
「じゃあ、待ってろよ。」
「んー。」
碧は満足そうな顔でそのまま床に寝そべる。
「おい、食ってから寝ると牛になるぞ。」
「人間が牛になる訳ねぇじゃん。」
「まあ、確かになんねぇけど、逆流性食道炎とかにはなるだろうが?」
「何だそれ?」
「そのまんまだよ、胃液が逆流して食堂に炎症ができるんだよ。」
「大丈夫、大丈夫、俺丈夫だし。」
ケラケラと笑う碧をしり目に涼也は机にコップを置く。
「お前のクラスどうだ?」
「………ふつー。」
微妙な間に涼也は眉を寄せる。
そして、碧はそんな涼也の反応に気づいたのか、ハッとなって起き上がる。
「マジで普通だぞ。」
「……本当にか?」
「ああ、普通過ぎて、浮いているような気がしてならねぇ。」
「……そう言う事か。」
涼也は碧の考えている事が分かり、ため息を零す。
「別にお前だけじゃないだろう。」
「そうかもしれねぇけど。」
「俺たちは高校進学する。
お前らは就職をする。
頑張る方向性は違うだけで頑張るのは一緒だろう。」
「そうなのかな?」
「誰かに言われたのか?」
「…………。」
「言われたのか。」
「俺じゃないんだけどさ、ポツリと呟かれた言葉が聞こえてさ。」
「どんな?」
「そいつは同じ進学組の連中に対して言ってたんだけど。
簡単に言えば自分は頑張って今も勉強してんのに、自分のレベル以下の学校に行くやつらはお気楽でいいよなって。」
「……。」
「それが聞こえてさ、俺は…進学じゃなくて、就職じゃん。」
「ああ。」
「学校の成績とかって、あいつらに比べたらほどほどでいいし。
だったら、他の奴らにとって迷惑じゃねぇかなって。」
「人それぞれだろう。」
「そうは思うけどよ。」
「ならさ、部活で必死になって一番に、上に行こうとする人。
一生懸命になって皆で楽しく部活をしたい人。
自分の実力を知って早々に諦めたけど、それでも、それをやりたいから部活で来る人。
部活なんかせずに帰宅する人。
皆さ、目的は違うけど、それでも、全員がそれを選択しているだろう。」
「……。」
「なら、とやかく言われて傷つくだけ無駄だ。」
「……。」
「まあ、それでも、傷ついてしまうのは確かだけどね。
もし、傷ついたのならこうして吐き出せばいいし。
話くらいならいつでも聞いてやるからさ。」
「サンキュー。」
「それにしても、碧は就職すんだな。」
「ああ、さっさと出て一人立ちしてーからな。」
「そうか。」
「それに、もう働くところ決めているからさ。」
「……。」
涼也は何とも言えない気持ちになる。
彼はこれから十年くらいそこで務めるようになるけれども、景気の波によって、人数を減らす事になる。
彼はベテランの人を遺すのがいいと思い、自らそこを去る事を選んだ。
多分、このままいけばその未来にたどり着いてしまう。
だけど、未来を伝える事をしたくなかった、今の彼はそれを最良だと思っているし、十年は確かに安定しているのだ。
「まあ、何かあれば言ってくれよ、相談とか、飯を食わす事くらいは出来るからさ。」
「サンキューな。」
ニカリと笑っている彼は涼也の心の中なんて理解していないだろう。
それでも、涼也は自分が言えるその言葉を紡ぐのだった。
「お粗末さん。」
満足そうにお腹を摩る碧に涼也は呆れながらも、まんざらじゃないのか少し笑っていた。
「茶、いるか?」
「うんうん、欲しい。」
「じゃあ、待ってろよ。」
「んー。」
碧は満足そうな顔でそのまま床に寝そべる。
「おい、食ってから寝ると牛になるぞ。」
「人間が牛になる訳ねぇじゃん。」
「まあ、確かになんねぇけど、逆流性食道炎とかにはなるだろうが?」
「何だそれ?」
「そのまんまだよ、胃液が逆流して食堂に炎症ができるんだよ。」
「大丈夫、大丈夫、俺丈夫だし。」
ケラケラと笑う碧をしり目に涼也は机にコップを置く。
「お前のクラスどうだ?」
「………ふつー。」
微妙な間に涼也は眉を寄せる。
そして、碧はそんな涼也の反応に気づいたのか、ハッとなって起き上がる。
「マジで普通だぞ。」
「……本当にか?」
「ああ、普通過ぎて、浮いているような気がしてならねぇ。」
「……そう言う事か。」
涼也は碧の考えている事が分かり、ため息を零す。
「別にお前だけじゃないだろう。」
「そうかもしれねぇけど。」
「俺たちは高校進学する。
お前らは就職をする。
頑張る方向性は違うだけで頑張るのは一緒だろう。」
「そうなのかな?」
「誰かに言われたのか?」
「…………。」
「言われたのか。」
「俺じゃないんだけどさ、ポツリと呟かれた言葉が聞こえてさ。」
「どんな?」
「そいつは同じ進学組の連中に対して言ってたんだけど。
簡単に言えば自分は頑張って今も勉強してんのに、自分のレベル以下の学校に行くやつらはお気楽でいいよなって。」
「……。」
「それが聞こえてさ、俺は…進学じゃなくて、就職じゃん。」
「ああ。」
「学校の成績とかって、あいつらに比べたらほどほどでいいし。
だったら、他の奴らにとって迷惑じゃねぇかなって。」
「人それぞれだろう。」
「そうは思うけどよ。」
「ならさ、部活で必死になって一番に、上に行こうとする人。
一生懸命になって皆で楽しく部活をしたい人。
自分の実力を知って早々に諦めたけど、それでも、それをやりたいから部活で来る人。
部活なんかせずに帰宅する人。
皆さ、目的は違うけど、それでも、全員がそれを選択しているだろう。」
「……。」
「なら、とやかく言われて傷つくだけ無駄だ。」
「……。」
「まあ、それでも、傷ついてしまうのは確かだけどね。
もし、傷ついたのならこうして吐き出せばいいし。
話くらいならいつでも聞いてやるからさ。」
「サンキュー。」
「それにしても、碧は就職すんだな。」
「ああ、さっさと出て一人立ちしてーからな。」
「そうか。」
「それに、もう働くところ決めているからさ。」
「……。」
涼也は何とも言えない気持ちになる。
彼はこれから十年くらいそこで務めるようになるけれども、景気の波によって、人数を減らす事になる。
彼はベテランの人を遺すのがいいと思い、自らそこを去る事を選んだ。
多分、このままいけばその未来にたどり着いてしまう。
だけど、未来を伝える事をしたくなかった、今の彼はそれを最良だと思っているし、十年は確かに安定しているのだ。
「まあ、何かあれば言ってくれよ、相談とか、飯を食わす事くらいは出来るからさ。」
「サンキューな。」
ニカリと笑っている彼は涼也の心の中なんて理解していないだろう。
それでも、涼也は自分が言えるその言葉を紡ぐのだった。
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