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第十一章
第十一章「ホワイトデー」18
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「……。」
「……。」
人気のない屋上にたどり着いた二人だったが、無言でただただ睨みあっていた。
「……。」
「……。」
「だーっ!」
無言に耐えられなくなったのは案の定と言うべきか、碧だった。
「お前さ、本当に何考えているんだよ。」
「……。」
「いつもだんまりでさ、そんでもって口を開けば文句、罵倒、俺お前に何したんだよっ!」
「……いつも苛立たせてばっかりだろう。」
「知らねぇよっ!勝手に苛立っているのはてめぇだろう。」
唾を飛ばしながら文句を言う碧に樹は極まり悪そうに顔を背ける。
「お前さ、もっと思うこと言えよ。」
「……。」
「そうじゃないと俺はお前の思っている事理解できない、したくても出来ないじゃねぇか。」
「お前は理解したいと思っているのか?」
「あんまり。」
「……。」
正直な言葉を吐きだす碧に樹は顔を顰める。
「だって、お前俺の事嫌いだろう。」
「はあ?」
「違うのか?いつも文句だったり、怒らせてばっかりだし、てっきり好かれていないと思っているんだけど。」
「違う。」
「……違うのか?」
樹の否定の言葉に碧はキョトリと首を傾げる。
「もし、本気で嫌っているのなら無視をする。」
「あー、そう言われちゃそうか。」
樹の言葉に碧は少し納得をする。
「んじゃ、俺はお前に嫌われてないのか?」
「………………。」
樹は耳を赤くし、目を泳がせるが、残念な碧はその意味を理解していない。
「何だよ、はっきり言えよ。」
「お前こそどう思っているんだよ。」
「んー?んー、んー。」
樹の言葉に碧は始めは首を捻っていたが、だんだん唸り声しか上げない。
「……。」
「嫌いなねぇよ?」
「何だ、その疑問形は。」
「だってさ、お前いっつもおっかない顔で怒って来るし、まあ、それもお前らしさなのは分かるし、でも、怒っている相手を好きか?つーと別にだし?」
「……。」
自分に素直な碧は本人の目の前でもずばずばと言う。
「まあ、嫌いじゃねぇよ?特別好きでもねぇけどさ。」
「……。」
碧のはっきりとした言葉に樹が傷つく。
「でも、お前の事が気になる程度には好きなんだろうな。」
「……。」
「なあ。」
「何だ。」
「何でお前はあん時不機嫌だったんだよ。」
「……みっともない恰好で、他の男に媚を売っているようなお前が凄く嫌だった。」
「みっともねーのは分かるけど、別に媚は売ってねぇよ。」
「売ってた。」
「………あー、これ以上言ってもどうせ互いに譲らねぇな、つーか、何でお前が嫌がるんだよ、あれに関しては俺の方がメッチャ嫌だったんだけど。」
「分からないが、嫌だったんだ。」
「……んだよ、それ。」
「……。」
「まあ、頭のいいお前が分かんないなら、馬鹿な俺が分かるはずもねぇか。」
碧は己の頭をガシガシと掻く。
「よし、今回の事はお前が肉まんを買ってくれるなら水に流してやる。」
「何でオレが。」
「ああ?俺だってかーんなり傷ついたんだぜ?」
「……。」
黙り込んでいた樹は何を思ったのか、ため息を一つ零す。
「分かった、今回はおごってやるよ。」
「やりぃっ!んじゃ、教室戻ろうぜ、樹。」
調子のいい碧に樹は苦笑しながら教室へと向かう彼の背中を追う。
もし、この時、樹が自分の中のモヤモヤの答えをしっかりと見つけていれば、一年後のそれを回避できたかもしれないが、残念な事に幼い彼らは気づく事はなかった。
「……。」
人気のない屋上にたどり着いた二人だったが、無言でただただ睨みあっていた。
「……。」
「……。」
「だーっ!」
無言に耐えられなくなったのは案の定と言うべきか、碧だった。
「お前さ、本当に何考えているんだよ。」
「……。」
「いつもだんまりでさ、そんでもって口を開けば文句、罵倒、俺お前に何したんだよっ!」
「……いつも苛立たせてばっかりだろう。」
「知らねぇよっ!勝手に苛立っているのはてめぇだろう。」
唾を飛ばしながら文句を言う碧に樹は極まり悪そうに顔を背ける。
「お前さ、もっと思うこと言えよ。」
「……。」
「そうじゃないと俺はお前の思っている事理解できない、したくても出来ないじゃねぇか。」
「お前は理解したいと思っているのか?」
「あんまり。」
「……。」
正直な言葉を吐きだす碧に樹は顔を顰める。
「だって、お前俺の事嫌いだろう。」
「はあ?」
「違うのか?いつも文句だったり、怒らせてばっかりだし、てっきり好かれていないと思っているんだけど。」
「違う。」
「……違うのか?」
樹の否定の言葉に碧はキョトリと首を傾げる。
「もし、本気で嫌っているのなら無視をする。」
「あー、そう言われちゃそうか。」
樹の言葉に碧は少し納得をする。
「んじゃ、俺はお前に嫌われてないのか?」
「………………。」
樹は耳を赤くし、目を泳がせるが、残念な碧はその意味を理解していない。
「何だよ、はっきり言えよ。」
「お前こそどう思っているんだよ。」
「んー?んー、んー。」
樹の言葉に碧は始めは首を捻っていたが、だんだん唸り声しか上げない。
「……。」
「嫌いなねぇよ?」
「何だ、その疑問形は。」
「だってさ、お前いっつもおっかない顔で怒って来るし、まあ、それもお前らしさなのは分かるし、でも、怒っている相手を好きか?つーと別にだし?」
「……。」
自分に素直な碧は本人の目の前でもずばずばと言う。
「まあ、嫌いじゃねぇよ?特別好きでもねぇけどさ。」
「……。」
碧のはっきりとした言葉に樹が傷つく。
「でも、お前の事が気になる程度には好きなんだろうな。」
「……。」
「なあ。」
「何だ。」
「何でお前はあん時不機嫌だったんだよ。」
「……みっともない恰好で、他の男に媚を売っているようなお前が凄く嫌だった。」
「みっともねーのは分かるけど、別に媚は売ってねぇよ。」
「売ってた。」
「………あー、これ以上言ってもどうせ互いに譲らねぇな、つーか、何でお前が嫌がるんだよ、あれに関しては俺の方がメッチャ嫌だったんだけど。」
「分からないが、嫌だったんだ。」
「……んだよ、それ。」
「……。」
「まあ、頭のいいお前が分かんないなら、馬鹿な俺が分かるはずもねぇか。」
碧は己の頭をガシガシと掻く。
「よし、今回の事はお前が肉まんを買ってくれるなら水に流してやる。」
「何でオレが。」
「ああ?俺だってかーんなり傷ついたんだぜ?」
「……。」
黙り込んでいた樹は何を思ったのか、ため息を一つ零す。
「分かった、今回はおごってやるよ。」
「やりぃっ!んじゃ、教室戻ろうぜ、樹。」
調子のいい碧に樹は苦笑しながら教室へと向かう彼の背中を追う。
もし、この時、樹が自分の中のモヤモヤの答えをしっかりと見つけていれば、一年後のそれを回避できたかもしれないが、残念な事に幼い彼らは気づく事はなかった。
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