もう一度君と…

弥生 桜香

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第九章

第九章「正月」5

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 涼也は携帯を取り出し、溜息を吐く。

「あんま、親の金で携帯とか使いたくないんだよな。」

 今携帯とかのお金を出してくれているのは父親だった、その為、下手に電話を使いすぎたりすると確実に怪しまれる為、涼也は基本家電とかを使っている。

 それに、携帯とかだと履歴とか簡単に割れてしまうので、自分の交友関係で確実怪しまれてしまう。

 幸いにも雫の場合、雪美の友人で知り合った事にすれば問題もない。

 同性だし、万が一を考えてもしらを切れる。

「まあ、今はそんな愚痴を言っている場合じゃないか。」

 涼也はアドレスから雫を呼び出す。

「……。」

 五コールしても出ない。

「……。」

 涼也はあと五コールしても出なければ諦めてメールする事を決める。
 そして、計八コール目でようやく雫が出る。

「はい。」
「ああ、雫さん?」
「涼也、珍しいな。」
「うん、家に雪姉が来て。」
「……………………………。」

 電話の向こうで明らかに沈んだ相手に涼也は面倒臭く思い出す。

「で…。」
「問題です。」
「は?」

 電話の向こうで怪訝な声を出す雫に涼也は無視をする。

「ある人に自分が卒業する時、婚約と聞かされた雪美はどう思ったでしょう?」
「おい、どいうつもりだ。」
「一、うわー、おめでとう、お祝い金包んで持って行かなくちゃ、いくらぐらいが相場かな、涼ちゃん?という雪美反応。」
「……。」
「二、男子校なんだし、やっぱり、生BLだよね、うん、ネタサンキュー。」
「……………。」
「三――。」
「頼む、止めてくれ。」
「何で?」
「どれもあいつがやりそうで怖い。」
「……。」

 電話の向こうの相手が、自分自身で思っているよりもダメージを受けているのだと知った、涼也は思わず、顔を顰める。

「……ヘタレ。」
「何か言ったか?」

 あまりに小さく呟かれた言葉は、雫には届いていなかった。

「別に、今まで雪美の態度が悪かったのが原因だと思うけど、もう少しあいつの事も考えてやれって思っただけです。」
「……お前、なんか怒っているか?」
「いや、別に、そうそう、雪美、今日会えないって、じゃあ、そういう事で。」
「おい、どーー。」

 容赦なく電話を切り、すぐに雫から折り返しの電話がなるが、面倒なので、涼也は電源を落とす。

「うー、寒い。」

 体を震わせ、涼也は何事もなかったかのように室内に戻っていく。
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