7 / 162
第一章
第一章「リスタート」4
しおりを挟む
日にちは涼也が思っているよりも早く過ぎていき、あっという間に日曜日なった。
彼はワイシャツにジーパンというかなりラフな格好をして待ち合わせの駅前に突っ立っていた。
「えっと…君、本城くん?」
見知らぬ人に声を掛けられ、涼也は怪訝な顔をする。
「そうですけど、貴方は?」
「ああ、雪から聞いていないか。」
「……。」
馴れ馴れしく雪美の愛称を呼ぶ彼が何者か考える。
「オレは帝(みかど)雫(しずく)って言うんだ。」
「帝さん?」
「ああ、俺の姉がお前の従姉と意気投合してさ、何か知らないがオレまで駆り出されたという訳だ。」
「……。」
涼也は憐みの籠った目で彼を見つめる。
どうやら彼も女性に振り回されるタイプなので親近感が湧いてしまったようだ。
「大変ですね。」
「ああ、アレがなきゃいい姉なんだがな。」
「アレ?」
「ああ、姉が自称貴腐人だからな。」
「貴婦人?」
どこかのお偉いさんの事かと涼也は首を傾げた。
「ああ、知らないんだな。」
「何がですか?」
「いや……。その……多分…いや…絶対に知ることになるよな…でも、オレの口からは出したくないし…。すまないがすぐには分かると思う。」
「そうですか…。」
「雪が腐女子なのは知らないのか…。」
「雪姉は婦女子ですけど?」
「うん、違う腐女子だから。」
「婦女子に違うも何もないと思うですけど。」
もし、涼也に漢字が見えていたのなら彼らの話が微妙に食い違っているのが分かっただろうが、残念ながら彼にはそんな能力はない。
「涼ちゃーん。」
「雪姉。」
雪美の声がしてそちらに顔を向けると、ふんわりとしたワンピースに薄い黄色のカーデガンを羽織った雪美がそこにいた。
「ごめんね、少し遅くなって。」
「いや、大丈夫。」
「えっと…どちら様?」
雪美は雫を見た瞬間首を傾げた。
「……キサキの弟のシズだ。」
「ああ!シズ、始めまして?」
「ああ。」
初対面なのかそうでないのか分からない会話をする二人に涼也は首を傾げた。
「雪姉、どういう意味?」
「ああ、涼ちゃんには説明してなかったね。」
「何が?」
「うん、キサキさんと待ち合わせしている場所まで少し歩くからその間に説明するね。」
「ああ、うん。」
「それじゃ行きましょうか。」
「案内する。」
先頭にたち彼は案内を始める。
「涼ちゃん。」
「何?」
「わたしね、BLに嵌ってしまったの。」
「……?」
雪美の言いたい意味が分からず涼也は首を傾げる。
「もしかして、BLの意味分からない?」
「いや、それは分かるけど……って、あれ、もしかして、あの時の「ふじょし」って言葉って……。」
ようやくそこで雫が言った意味を正しく理解した。
「……そう言う意味だったのか。」
「涼ちゃん?」
「何でもない、話は変わるけど帝さんとの関係って?」
「うん、シズのお姉さんのキサキさんとはわたしが立ち上げたサイトで腐レンドになったんだ。」
「それはキサキさんという人だろ。」
「せっかちだな。」
「当然だろ、男なんて全く匂わせなかった雪姉が行き成り男の人を捕まえるなんてっ!」
前の自分でもそんな人を見た事なかった、と涼也はまるで彼女の父親のように彼女の事を心配する。
「捕まえてないよ、ただ、シズの通っている学校に興味があってね。」
「学校?」
「そう、京ちゃんが通うはずの学校の事ね。」
「――っ!」
雪美の言いたい意味が分かったのか涼也は目を見張る。
「それって、うん、キサキさんとの話をちゃんと聞いてからになるけど、後でちゃんと説明するね。」
「結局後回しになるのかよ。」
「ごめんね、でも、今は何の情報もなく聞いて欲しいと思って。」
「どういう意味だ?」
「一応、シズってわたしと同い年だから直接は京ちゃんには関わらなかったと思うけど、まだ分からないでしょ、だから、彼がいい人かどうか見て居て欲しいの。」
「……。」
「わたしはさ、キサキさんから色々きいちゃってるからさ、何の情報を持っていない涼ちゃんの意見も聞きたいと思うの。」
「了解。」
「ありがとうね。」
「こっちこそ、あの学校の情報なんてあの本の知識と周りの評価しか知らないからな。」
「エリートが集まる学校だもんね。」
「そうそう、妙に閉鎖的だから情報が少ないんだよな。」
「だから、今日は色々よろしくね。」
雪美がウインクをすると涼也は苦笑して頷いた。
彼はワイシャツにジーパンというかなりラフな格好をして待ち合わせの駅前に突っ立っていた。
「えっと…君、本城くん?」
見知らぬ人に声を掛けられ、涼也は怪訝な顔をする。
「そうですけど、貴方は?」
「ああ、雪から聞いていないか。」
「……。」
馴れ馴れしく雪美の愛称を呼ぶ彼が何者か考える。
「オレは帝(みかど)雫(しずく)って言うんだ。」
「帝さん?」
「ああ、俺の姉がお前の従姉と意気投合してさ、何か知らないがオレまで駆り出されたという訳だ。」
「……。」
涼也は憐みの籠った目で彼を見つめる。
どうやら彼も女性に振り回されるタイプなので親近感が湧いてしまったようだ。
「大変ですね。」
「ああ、アレがなきゃいい姉なんだがな。」
「アレ?」
「ああ、姉が自称貴腐人だからな。」
「貴婦人?」
どこかのお偉いさんの事かと涼也は首を傾げた。
「ああ、知らないんだな。」
「何がですか?」
「いや……。その……多分…いや…絶対に知ることになるよな…でも、オレの口からは出したくないし…。すまないがすぐには分かると思う。」
「そうですか…。」
「雪が腐女子なのは知らないのか…。」
「雪姉は婦女子ですけど?」
「うん、違う腐女子だから。」
「婦女子に違うも何もないと思うですけど。」
もし、涼也に漢字が見えていたのなら彼らの話が微妙に食い違っているのが分かっただろうが、残念ながら彼にはそんな能力はない。
「涼ちゃーん。」
「雪姉。」
雪美の声がしてそちらに顔を向けると、ふんわりとしたワンピースに薄い黄色のカーデガンを羽織った雪美がそこにいた。
「ごめんね、少し遅くなって。」
「いや、大丈夫。」
「えっと…どちら様?」
雪美は雫を見た瞬間首を傾げた。
「……キサキの弟のシズだ。」
「ああ!シズ、始めまして?」
「ああ。」
初対面なのかそうでないのか分からない会話をする二人に涼也は首を傾げた。
「雪姉、どういう意味?」
「ああ、涼ちゃんには説明してなかったね。」
「何が?」
「うん、キサキさんと待ち合わせしている場所まで少し歩くからその間に説明するね。」
「ああ、うん。」
「それじゃ行きましょうか。」
「案内する。」
先頭にたち彼は案内を始める。
「涼ちゃん。」
「何?」
「わたしね、BLに嵌ってしまったの。」
「……?」
雪美の言いたい意味が分からず涼也は首を傾げる。
「もしかして、BLの意味分からない?」
「いや、それは分かるけど……って、あれ、もしかして、あの時の「ふじょし」って言葉って……。」
ようやくそこで雫が言った意味を正しく理解した。
「……そう言う意味だったのか。」
「涼ちゃん?」
「何でもない、話は変わるけど帝さんとの関係って?」
「うん、シズのお姉さんのキサキさんとはわたしが立ち上げたサイトで腐レンドになったんだ。」
「それはキサキさんという人だろ。」
「せっかちだな。」
「当然だろ、男なんて全く匂わせなかった雪姉が行き成り男の人を捕まえるなんてっ!」
前の自分でもそんな人を見た事なかった、と涼也はまるで彼女の父親のように彼女の事を心配する。
「捕まえてないよ、ただ、シズの通っている学校に興味があってね。」
「学校?」
「そう、京ちゃんが通うはずの学校の事ね。」
「――っ!」
雪美の言いたい意味が分かったのか涼也は目を見張る。
「それって、うん、キサキさんとの話をちゃんと聞いてからになるけど、後でちゃんと説明するね。」
「結局後回しになるのかよ。」
「ごめんね、でも、今は何の情報もなく聞いて欲しいと思って。」
「どういう意味だ?」
「一応、シズってわたしと同い年だから直接は京ちゃんには関わらなかったと思うけど、まだ分からないでしょ、だから、彼がいい人かどうか見て居て欲しいの。」
「……。」
「わたしはさ、キサキさんから色々きいちゃってるからさ、何の情報を持っていない涼ちゃんの意見も聞きたいと思うの。」
「了解。」
「ありがとうね。」
「こっちこそ、あの学校の情報なんてあの本の知識と周りの評価しか知らないからな。」
「エリートが集まる学校だもんね。」
「そうそう、妙に閉鎖的だから情報が少ないんだよな。」
「だから、今日は色々よろしくね。」
雪美がウインクをすると涼也は苦笑して頷いた。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
病んでる僕は、
蒼紫
BL
『特に理由もなく、
この世界が嫌になった。
愛されたい
でも、縛られたくない
寂しいのも
めんどくさいのも
全部嫌なんだ。』
特に取り柄もなく、短気で、我儘で、それでいて臆病で繊細。
そんな少年が王道学園に転校してきた5月7日。
彼が転校してきて何もかもが、少しずつ変わっていく。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最初のみ三人称 その後は基本一人称です。
お知らせをお読みください。
エブリスタでも投稿してましたがこちらをメインで活動しようと思います。
(エブリスタには改訂前のものしか載せてません)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
皇帝の立役者
白鳩 唯斗
BL
実の弟に毒を盛られた。
「全てあなた達が悪いんですよ」
ローウェル皇室第一子、ミハエル・ローウェルが死に際に聞いた言葉だった。
その意味を考える間もなく、意識を手放したミハエルだったが・・・。
目を開けると、数年前に回帰していた。
嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる