もう一度君と…

弥生 桜香

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第六章

第六章「体育祭」6

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「涼也すげーじゃん。」
「やったなっ!」

 スウェーデンリレーを制したのは涼也のクラスだった。
 戻って来た涼也はクラスメートにもまれながらも涼也を湛える言葉を甘受する。

「やったな!」
「これで、おれたちの勝利に一歩近づいた。」
「おい、次の種目の奴呼ばれているぞ。」
「やべ、おれじゃん。」
「本城が頑張ったんだから負けるなよ。」
「おう。」
「分かっているわよ。」
「任せてよね。」

 次々と次の種目の生徒が離れ行き、涼也は周りが落ち着きだしようやく自分の椅子に座る。

「お疲れさん。」
「あっ、サンキュー。」

 碧がスポーツドリンクを手渡してきたので、ありがたく涼也は受け取る。

「それにしても、すげーな、涼也。」
「そうか?」
「ああ、結構差あっただろう?」
「まあな。」
「マジ燃えたよ。」
「ん~、でも、お前だったらもっとさっさと抜かせたんじゃねぇか?」
「どうだろうな?」

 首を傾げる碧は後ろに立つ人物に気づかず背伸びをする。

「おい、碧。」
「へ?」

 危うく後ろの人物に碧の手が当たりそうになるが、幸いにもぶつかる前にその人物は後ろに一歩下がって回避していた。

「危ないじゃねぇか。」
「げっ…樹。」
「何が、げっ、だ。」
「ははは…。」

 助けを求めるように碧は涼也を見るが、涼也は巻き込まれたくないとばかりに無視して碧からもらったスポーツ飲料を飲む。

「お前な、注意散漫じゃねぇか。」
「そ、そうか?」
「そうじゃなきゃ、オレにぶつからないだろうが。」
「えへへ。」

 誤魔化すように笑う碧に樹は目を眇める。

「笑って誤魔化すなよ。」
「ふぁい……。」

 逃げられないと悟ったのか碧は大人しくなる。

「お前はいつもいつも注意力が足らないだろう。」
「……。」
「だからお前は……。」

 樹の説教が始まり涼也はどう助け出したらいいのかと思っていたのだが、すぐに、涼也ではなく第三者からの救いの手が入る。

『二人三脚に参加の選手は入場問まで集まってください。』
「……。」

 涼也は、これは救いの手だろうかと、一人首を捻る。

「な、なあ、樹。」
「……。」
「呼ばれたから行こうぜ?」
「……。」

 ムッとしている樹に碧はどうしたものかと珍しく頭を悩ませている。

「なぁ……。」

 弱弱しい声音に樹は眉間に皺を寄せたかと思ったら溜息を零す。

「分かったよ…。」
「んじゃ、涼也、俺ら行ってくるから。」
「ああ、勝てよ。」
「当然っ!」

 ガッツポーズをする碧に樹はいつものように無表情でそのまま入場問まで向かう。
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