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幽霊少女サイド
思い出した
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体育祭のイベントが終わり、生徒会役員がバ会長を除いて全員が集まっている。
外は茜色に染まって、綺麗だと思っている時、不意に私の脳裏にあるシーンがよぎった。
「あっ。」
「……。」
私の小さな呟きに北斗は軽く顔を上げる。
人がいるから北斗は声を出さないけれども、その目は私を促していた。
「あー、今更なんだけど、体育祭のイベント内容を思い出して。」
ああ、怪訝な顔をしている。
「えっとね、ヒロインの子が出場協議で、借り物で好きな人、というものが書かれてて、好感度が高い人三人の選択肢が出てくるの、それで、選んだ人の好感度がまた上がるんだよね。」
興味ないのか北斗は少し私から目線を逸らした。
あからさまだな…。
「で、体育祭のイベントでもう一つあって、それが、好感度の最下位のキャラの救済措置。
お昼休みにヒロインの子が女子に呼び出しを食らって、そこに最下位好感度キャラが登場するの。」
どうやら北斗はちゃんと私の話をちゃんと聞いているのか、少し小首を傾げている。
「うん、つまりはヒロインの好感度最下位キャラは北斗みたいだね。」
まあ、まともに会った事がないから当然と言えば、当然なんだけど、少しほっとした。
だって、ここは現実だと分かっているし、あのゲームは月子さんが作っているから強制力なんてものはないのは分かっているけど、それでも、何となく不安だった。
北斗が急にあの女の子を気にしたりしたら、私はどうなるんだろうって。
私の姿が見えるのは彼しかいない。
北斗しかいないのに、その彼が自分を気にしなくなったら、私は本当に幽霊になってしまう。
誰にも気づかれない。
誰も気にしない。
そんな寂しい存在になってしまう。
コンコンとペンが机に当たる音がして、そちらを見れば、心配そうに顔を歪めた北斗がいた。
「何でもないから、大丈夫。」
コンコンとまた北斗が叩く。
北斗の気づかいが嬉しかった。
だから、私は心から笑えた。
そして、それを見た北斗は小さくため息を吐いて、生徒会の方の話に意識を向けた。
本当に北斗は優しい。
だから、私はその優しさに甘えてしまう。
駄目だと分かっているのに、それでも、彼の優しさに浸ってしまう。
「それじゃ、今回事を起こした女生徒計十一名は三日の自宅謹慎に加え、一週間の奉仕活動という事でいいな。」
北斗の言葉に全員が是とする。
「それじゃ、今日はお疲れ様、ゆっくり休んでくれ。」
「副会長は?」
「グランドの確認をしてから帰るから大丈夫だ。」
北斗はそう言うと、グランドに向かって歩き出す。
「本当に面倒な事を起こしてくれるな。」
「そうだよね、現実にして咎めがあるって分からないのかな。」
「分からないんだろう、だから、実行する。」
「……。」
私は何とも言えない気持ちで北斗の隣にいる。
「北斗、大丈夫?」
「ああ、少し疲れているけど、これをしないと流石にな。」
「明日は休みだからゆっくりしようね。」
「ああ、休みは明日だけだからな。」
北斗は遠い目をする。
今日の運動会が終わっても、まだ、文化祭が残っていた。
こっちはクラスの出し物の他に生徒会からの出し物があるので、明後日からまた全力で挑まないといけなかった。
「来年は辞退できるか…。」
「無理だろうね。」
肩を落とす北斗に私は申し訳なく思うけど現実を言う。
「だよな…。」
北斗は肩を落とし、茜色の空を見ながら憂いに満ちた顔を上げるのだった。
「早く休もう。」
「それが一番だね。」
北斗と私はグランドに向かい、そして、最終チェックを終えるとまっすぐに寮に戻っていった。
外は茜色に染まって、綺麗だと思っている時、不意に私の脳裏にあるシーンがよぎった。
「あっ。」
「……。」
私の小さな呟きに北斗は軽く顔を上げる。
人がいるから北斗は声を出さないけれども、その目は私を促していた。
「あー、今更なんだけど、体育祭のイベント内容を思い出して。」
ああ、怪訝な顔をしている。
「えっとね、ヒロインの子が出場協議で、借り物で好きな人、というものが書かれてて、好感度が高い人三人の選択肢が出てくるの、それで、選んだ人の好感度がまた上がるんだよね。」
興味ないのか北斗は少し私から目線を逸らした。
あからさまだな…。
「で、体育祭のイベントでもう一つあって、それが、好感度の最下位のキャラの救済措置。
お昼休みにヒロインの子が女子に呼び出しを食らって、そこに最下位好感度キャラが登場するの。」
どうやら北斗はちゃんと私の話をちゃんと聞いているのか、少し小首を傾げている。
「うん、つまりはヒロインの好感度最下位キャラは北斗みたいだね。」
まあ、まともに会った事がないから当然と言えば、当然なんだけど、少しほっとした。
だって、ここは現実だと分かっているし、あのゲームは月子さんが作っているから強制力なんてものはないのは分かっているけど、それでも、何となく不安だった。
北斗が急にあの女の子を気にしたりしたら、私はどうなるんだろうって。
私の姿が見えるのは彼しかいない。
北斗しかいないのに、その彼が自分を気にしなくなったら、私は本当に幽霊になってしまう。
誰にも気づかれない。
誰も気にしない。
そんな寂しい存在になってしまう。
コンコンとペンが机に当たる音がして、そちらを見れば、心配そうに顔を歪めた北斗がいた。
「何でもないから、大丈夫。」
コンコンとまた北斗が叩く。
北斗の気づかいが嬉しかった。
だから、私は心から笑えた。
そして、それを見た北斗は小さくため息を吐いて、生徒会の方の話に意識を向けた。
本当に北斗は優しい。
だから、私はその優しさに甘えてしまう。
駄目だと分かっているのに、それでも、彼の優しさに浸ってしまう。
「それじゃ、今回事を起こした女生徒計十一名は三日の自宅謹慎に加え、一週間の奉仕活動という事でいいな。」
北斗の言葉に全員が是とする。
「それじゃ、今日はお疲れ様、ゆっくり休んでくれ。」
「副会長は?」
「グランドの確認をしてから帰るから大丈夫だ。」
北斗はそう言うと、グランドに向かって歩き出す。
「本当に面倒な事を起こしてくれるな。」
「そうだよね、現実にして咎めがあるって分からないのかな。」
「分からないんだろう、だから、実行する。」
「……。」
私は何とも言えない気持ちで北斗の隣にいる。
「北斗、大丈夫?」
「ああ、少し疲れているけど、これをしないと流石にな。」
「明日は休みだからゆっくりしようね。」
「ああ、休みは明日だけだからな。」
北斗は遠い目をする。
今日の運動会が終わっても、まだ、文化祭が残っていた。
こっちはクラスの出し物の他に生徒会からの出し物があるので、明後日からまた全力で挑まないといけなかった。
「来年は辞退できるか…。」
「無理だろうね。」
肩を落とす北斗に私は申し訳なく思うけど現実を言う。
「だよな…。」
北斗は肩を落とし、茜色の空を見ながら憂いに満ちた顔を上げるのだった。
「早く休もう。」
「それが一番だね。」
北斗と私はグランドに向かい、そして、最終チェックを終えるとまっすぐに寮に戻っていった。
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