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幽霊少女サイド

妬み嫉み

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 一時間ほど経っても、北斗の机に乗っている書類は減るどころか、逆に二倍ほど増えてしまった。
 それも、これも、会長の役についている人の机から未処理の書類が出てきてしまったのだ。
 しかも、期限切れの書類が。
 それを見つけた書記の人の顔は恐ろしいほど歪んでいた。
 その時、室内は一瞬、騒然となった。
 自らの能力を一瞬だけ皆が解放しかけたからだ、幸いにも誰も暴走する事はなかったので、生徒会室は悲惨な事にはならなかったが、それでも、全員の心は一致しただろう。

――会長殺す

 皆の心が一致した時、肩を落として会長を探しに来た二人が戻ってきた。
 それを見て、悟り、切り替える。
 これ以上時間を無駄にしても書類は片付くことはない。
 そこからは必死になって書類を捌く。

 一枚。

 一枚。

 書類を減らしていくけど、この部屋以外でも仕事はされるものだから、書類は持ち込まれ、それを持ってきた人はこの場にいる生徒会役員全員に睨みつけられた。
 八つ当たりだと分かっているだろうけど、それでも、笑っていられるほど寛容な人間はこの場にはいなかった。

「殺す。」
「ぶっ殺す。」
「滅殺。」

 物騒な言葉が言葉が全員の口から洩れる。
 私はただただ、それを見ている事しか出来ず、歯がゆかった。
 その時、あの綺麗な女性がおもむろに立ち上がり、給湯室に向かった。
 しばらく中で音がしたと思ったら、数分で彼女はお盆に複数のカップを載せて戻ってきた。

「これを飲んで頑張りましょう。」

 役員一人一人に励ましの言葉を言って、彼女は机に飲み物を置いていく、
 全員の好みを知っているのか、皆違う飲み物を置いていく。
 そして、最後に北斗の机にホットコーヒーを置く。

「すみません。」
「いいのよ、回せる仕事があったら言って、こっちでもやるわ。」
「いえ、他の人の負担が増えるのは…。」

 首を横に振る北斗にその人は彼の頬を引っ張った。

「貴方がわたしたちの最後の砦なのよ。」
「……。」
「貴方がここで倒れられたらこっちの方が困るの、分かる?」

 彼女はジッと北斗の目をのぞき込む。

 ズキリ

「社会に出たらきっと予想外の事は沢山起こるわ。
 その時一人で抱え込んでも貴方がつぶれるだけ、ここと違って誰も自分の仕事に精いっぱいで誰も貴方に気づかないんだから。
 今の貴方は一人で頑張るんじゃなくて、他人を頼る事を覚えなさい。」

 北斗を叱咤する彼女をもう見てられなかった。
 胸の痛みは私の限度を超えていた。
 無力な私は彼の隣に居られる綺麗な彼女を羨ましく思った。
 彼を叱咤激励できる彼女を憎らしく思った。

 今の自分の身を疎ましく思う。

 北斗の力になりたいのに、なれない。

 北斗を支えたいのに、支えることが出来ない。

 北斗に寄り添いたいのに、寄り添えない。

 唇を噛む。

 近いようで、遠い光景。

 この世界はまるで、ガラス一枚隔てた世界のようだった。

 触れたいのに触れられない。

 まるで、世界に拒絶されているそんな気持ちになった。
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