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北斗サイド
何を話せばいいの?
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「はじめまして、スピカちゃん。」
笑っている姉貴と反射的に頭を下げるスピカ。
自然な流れなはずだけれども、それは可笑しな光景としか俺の目には映らなかった。
「は、はじめまして、スピカと申します、えっと、北斗くんには大変お世話になっております……って?」
言って、何かに気づいたスピカが首を傾げる。
何というか、堅苦しく挨拶をしていたスピカが素を出し、思わず、俺は笑ってしまう。
「ぷくくく…。」
「北斗、何なの。」
「……。」
俺が笑った事で、水を差されたと思ったのか、スピカが睨んでくるが、これは駄目だ。
笑いが止まらない。
何とか声を殺すために口元を押さえるが、笑いが止まらなかった。
「北斗、何でお姉さんが私の事を知っているのよっ!」
プリプリと怒っているスピカを見て、ようやく引っ込みかけた笑いが再び出そうになったが、何とか気合でとどめて、平然と返せるように頑張った。
「伝えているからな。」
「伝えているって何なのよっ!」
「怒鳴るな、五月蠅い。」
「うるさいって何よ、私聞いてないっ!」
「言ってなかったからな。」
「北斗の鬼畜、鬼、悪魔っ!」
「何で黙っていただけで罵倒されないといけないんだよ。」
「胸に手を当てて考えてみてよ。」
子気味いいやり取りにようやく俺は平然を取り戻し、口角を上げ、俺は彼女の言うように自分の胸に手を当てた。
「何もねえな。」
俺が口角を上げて笑えば、スピカは可愛らしく睨んでくる。
「北斗っ!」
怒鳴ってくるが、本当に怖くないな。
なんて呑気な事を考えていたのに…。
パンパンと乾いた音がこの場に響いた。
「北斗いい加減にしなさいよね。」
「……。」
ああ、忘れていたかったのに…。
余計な事を言いやがって。
俺は不満を抱えるが、スピカは素で忘れていたのか、頭を抱えている。
お前は見えていないし、聞こえてねぇし問題ないだろう。
あるとすれば…。
「わたしだってスピカちゃんと話したいのよ。」
やっぱりな…。
「別にいいだろう。」
「何よ、せっかく、これ持ってきてあげたのに。」
俺は拗ねたように言えば、姉貴はひらひらと茶封筒を振る。
それってまさか…。
「それって。」
「あんたが欲しがっていたものよ。」
「マジで手に入ったのか。」
「当たり前よ、わたしを誰だと思っているのよ。」
「犯罪に手は出してねぇよな。」
「大丈夫よ、正規ルートから情報を入手しているは。」
「本当にか?」
「大丈夫よ。正規ルートギリギリの所だから。」
「それってやばくねぇかよ。」
「大丈夫よ、ばれなきゃ問題ない。」
「それって、マジアウトじゃないか。」
これはだいぶと前に姉貴に頼んでいたある資料だった。
まさか、これが手に入るだなんて現物を見てもびっくりした。
これで、うまくすれば、あのバ会長を脅す事が出来る。
というか、出てきたという事はあの噂は本当の事だったのか、と俺は思わず何とも言えない気持ちになる。
「さて、スピカちゃん、わたしの名前は赤塚 月子。」
なんか知らないがスピカは感心したように、俺と姉貴を交互に見て頷いている。
「それにしても、愚弟の面倒を見てもらって悪いわよね、寝起きとか悪いでしょ。」
「あー、はい。」
元気よく答えるスピカに俺は彼女を睨む。
「おい、スピカ。」
「だって、本当の事でしょ。」
「……。」
「北斗、通訳する気あるの?」
「……。」
不機嫌そうな声を出す姉に気に俺はそっぽを向く。
そして、俺の耳にスピカのため息が入る。
「スピカちゃん筆談とかできるの?」
「できないです。」
「………北斗。」
返事を伝えなさい、というような声出す姉貴に俺は渋々ながらスピカの言葉を返す。
「できねぇよ。」
「もう、本当に仕事しなさいよ。」
やっているだろうが、と思いながら、俺の口は違う言葉を吐いていた。
「やだ。」
「だったら、今度料金取るからね、家族割なしの、逆にマシマシで。」
つーか、何だよ、そのマシマシってどのくらいぼったくる気なんだよ。
「何でだよ。」
「貴方が義務を放棄しているからよ。」
「分かったよ。」
俺は唸るように頷き、やけくそで姉貴に訊く。
「んで、何が聞きて―んだよ。」
俺がそう言うと姉貴の目の色が変わったような気がした。
笑っている姉貴と反射的に頭を下げるスピカ。
自然な流れなはずだけれども、それは可笑しな光景としか俺の目には映らなかった。
「は、はじめまして、スピカと申します、えっと、北斗くんには大変お世話になっております……って?」
言って、何かに気づいたスピカが首を傾げる。
何というか、堅苦しく挨拶をしていたスピカが素を出し、思わず、俺は笑ってしまう。
「ぷくくく…。」
「北斗、何なの。」
「……。」
俺が笑った事で、水を差されたと思ったのか、スピカが睨んでくるが、これは駄目だ。
笑いが止まらない。
何とか声を殺すために口元を押さえるが、笑いが止まらなかった。
「北斗、何でお姉さんが私の事を知っているのよっ!」
プリプリと怒っているスピカを見て、ようやく引っ込みかけた笑いが再び出そうになったが、何とか気合でとどめて、平然と返せるように頑張った。
「伝えているからな。」
「伝えているって何なのよっ!」
「怒鳴るな、五月蠅い。」
「うるさいって何よ、私聞いてないっ!」
「言ってなかったからな。」
「北斗の鬼畜、鬼、悪魔っ!」
「何で黙っていただけで罵倒されないといけないんだよ。」
「胸に手を当てて考えてみてよ。」
子気味いいやり取りにようやく俺は平然を取り戻し、口角を上げ、俺は彼女の言うように自分の胸に手を当てた。
「何もねえな。」
俺が口角を上げて笑えば、スピカは可愛らしく睨んでくる。
「北斗っ!」
怒鳴ってくるが、本当に怖くないな。
なんて呑気な事を考えていたのに…。
パンパンと乾いた音がこの場に響いた。
「北斗いい加減にしなさいよね。」
「……。」
ああ、忘れていたかったのに…。
余計な事を言いやがって。
俺は不満を抱えるが、スピカは素で忘れていたのか、頭を抱えている。
お前は見えていないし、聞こえてねぇし問題ないだろう。
あるとすれば…。
「わたしだってスピカちゃんと話したいのよ。」
やっぱりな…。
「別にいいだろう。」
「何よ、せっかく、これ持ってきてあげたのに。」
俺は拗ねたように言えば、姉貴はひらひらと茶封筒を振る。
それってまさか…。
「それって。」
「あんたが欲しがっていたものよ。」
「マジで手に入ったのか。」
「当たり前よ、わたしを誰だと思っているのよ。」
「犯罪に手は出してねぇよな。」
「大丈夫よ、正規ルートから情報を入手しているは。」
「本当にか?」
「大丈夫よ。正規ルートギリギリの所だから。」
「それってやばくねぇかよ。」
「大丈夫よ、ばれなきゃ問題ない。」
「それって、マジアウトじゃないか。」
これはだいぶと前に姉貴に頼んでいたある資料だった。
まさか、これが手に入るだなんて現物を見てもびっくりした。
これで、うまくすれば、あのバ会長を脅す事が出来る。
というか、出てきたという事はあの噂は本当の事だったのか、と俺は思わず何とも言えない気持ちになる。
「さて、スピカちゃん、わたしの名前は赤塚 月子。」
なんか知らないがスピカは感心したように、俺と姉貴を交互に見て頷いている。
「それにしても、愚弟の面倒を見てもらって悪いわよね、寝起きとか悪いでしょ。」
「あー、はい。」
元気よく答えるスピカに俺は彼女を睨む。
「おい、スピカ。」
「だって、本当の事でしょ。」
「……。」
「北斗、通訳する気あるの?」
「……。」
不機嫌そうな声を出す姉に気に俺はそっぽを向く。
そして、俺の耳にスピカのため息が入る。
「スピカちゃん筆談とかできるの?」
「できないです。」
「………北斗。」
返事を伝えなさい、というような声出す姉貴に俺は渋々ながらスピカの言葉を返す。
「できねぇよ。」
「もう、本当に仕事しなさいよ。」
やっているだろうが、と思いながら、俺の口は違う言葉を吐いていた。
「やだ。」
「だったら、今度料金取るからね、家族割なしの、逆にマシマシで。」
つーか、何だよ、そのマシマシってどのくらいぼったくる気なんだよ。
「何でだよ。」
「貴方が義務を放棄しているからよ。」
「分かったよ。」
俺は唸るように頷き、やけくそで姉貴に訊く。
「んで、何が聞きて―んだよ。」
俺がそう言うと姉貴の目の色が変わったような気がした。
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