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幽霊少女サイド
イベント不発? 4
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私たちがたどり着いた現場は私が思ったよりも悲惨な状況だった。
幸いにも今は放課後だったので、被害者は平常時よりは少ないが、それでも、この理科室に続く一帯は煙に巻かれ、幾人もの生徒が倒れていた。
「くそ…。」
「北斗、助けたいのは分かるけど、問題はまだ煙がこっちに流れているの。」
「マジかよ。」
「多分、まだ、薬草が化学反応を起こしているんだと思うの。」
「マジかよ。」
北斗は悪態を吐き、私を見る。
「どうする気なんだ?」
「私の力を注げば中和されるはずなの。」
「そうなのか?」
「ゲームでもこのイベントでヒロインが自分の能力の開花で多くの人を助けた描写があったし、それに、そうしないといけないと思うの。」
「……そうか。」
「……。」
どこか浮かない顔をしている北斗に私はようやく気付く。
「どうしたの?」
「……お前を巻き込んでしまった。」
「えっ?」
「もし、俺と出会わなかったら、お前はこの惨状を目にする事はなかったはずなのにな。」
北斗の言葉に私は目を丸くする。
「そんな事――。」
「あるだろう。」
私の言葉を遮る北斗に私は苛立つ。
何でそんな事を言うのよ。
まるで、私と出会った事が間違いだったみたいじゃない。
後々思い返せば、彼は私を気遣った言葉だと分かるはずなのに。
この時、冷静じゃなかった私は爆発した。
「北斗のバカっ!」
「はぁ?」
行き成り叫んだ私に北斗は驚きのあまり足を止める。
「私と出会った事後悔しているのっ!」
「何でそうなるんだよ。」
「そう聞こえたんだもん。」
「それは違う。」
「何が違うというのよ。」
「お前は俺と出会わなければ、もっと平穏に、心穏やかにいただろう。」
「ただ、ぼーとして生きていくのと、はらはらして生きていくのなら、私ははらはらしてでも、生きているって感じた方がいい。」
「……。」
私の言葉に北斗は目を丸くさせる。
「スピカ。」
「だから、お願いだから出会わなかったら何て言わないでよ、私は北斗と出会えてよかったんだと思っているんだよ。」
「……スピカ。」
「って、今はこんな事をしている場合じゃなかった。」
私はハッとなり、止めていた足を動かす。
「どうしたの?北斗?」
てっきり北斗がすぐについてくるものだと思っていた私はなかなかついてこないものだから、振り返ると、何故か彼は項垂れていた。
「本当にどうしたの?」
「……お前はクラッシャーなのか?」
「ん?私の能力ってクラッシャーじゃないよね?」
「……。」
真顔な北斗がどこか怖い気がするが、それでも、私はそう言う。
「……。」
「……。」
「北斗?」
「ああ、スピカはスピカだもんな。」
かなり失礼な事を言われている気がするのだが、私は取り敢えず彼をひとにらみするだけで終わらせる。
「北斗。」
「分かった、急ごう。」
ようやく彼が私を追い越し、何となく釈然としなかったが、それでも、現状が変わるはずがないので、私は彼の後を追った。
幸いにも今は放課後だったので、被害者は平常時よりは少ないが、それでも、この理科室に続く一帯は煙に巻かれ、幾人もの生徒が倒れていた。
「くそ…。」
「北斗、助けたいのは分かるけど、問題はまだ煙がこっちに流れているの。」
「マジかよ。」
「多分、まだ、薬草が化学反応を起こしているんだと思うの。」
「マジかよ。」
北斗は悪態を吐き、私を見る。
「どうする気なんだ?」
「私の力を注げば中和されるはずなの。」
「そうなのか?」
「ゲームでもこのイベントでヒロインが自分の能力の開花で多くの人を助けた描写があったし、それに、そうしないといけないと思うの。」
「……そうか。」
「……。」
どこか浮かない顔をしている北斗に私はようやく気付く。
「どうしたの?」
「……お前を巻き込んでしまった。」
「えっ?」
「もし、俺と出会わなかったら、お前はこの惨状を目にする事はなかったはずなのにな。」
北斗の言葉に私は目を丸くする。
「そんな事――。」
「あるだろう。」
私の言葉を遮る北斗に私は苛立つ。
何でそんな事を言うのよ。
まるで、私と出会った事が間違いだったみたいじゃない。
後々思い返せば、彼は私を気遣った言葉だと分かるはずなのに。
この時、冷静じゃなかった私は爆発した。
「北斗のバカっ!」
「はぁ?」
行き成り叫んだ私に北斗は驚きのあまり足を止める。
「私と出会った事後悔しているのっ!」
「何でそうなるんだよ。」
「そう聞こえたんだもん。」
「それは違う。」
「何が違うというのよ。」
「お前は俺と出会わなければ、もっと平穏に、心穏やかにいただろう。」
「ただ、ぼーとして生きていくのと、はらはらして生きていくのなら、私ははらはらしてでも、生きているって感じた方がいい。」
「……。」
私の言葉に北斗は目を丸くさせる。
「スピカ。」
「だから、お願いだから出会わなかったら何て言わないでよ、私は北斗と出会えてよかったんだと思っているんだよ。」
「……スピカ。」
「って、今はこんな事をしている場合じゃなかった。」
私はハッとなり、止めていた足を動かす。
「どうしたの?北斗?」
てっきり北斗がすぐについてくるものだと思っていた私はなかなかついてこないものだから、振り返ると、何故か彼は項垂れていた。
「本当にどうしたの?」
「……お前はクラッシャーなのか?」
「ん?私の能力ってクラッシャーじゃないよね?」
「……。」
真顔な北斗がどこか怖い気がするが、それでも、私はそう言う。
「……。」
「……。」
「北斗?」
「ああ、スピカはスピカだもんな。」
かなり失礼な事を言われている気がするのだが、私は取り敢えず彼をひとにらみするだけで終わらせる。
「北斗。」
「分かった、急ごう。」
ようやく彼が私を追い越し、何となく釈然としなかったが、それでも、現状が変わるはずがないので、私は彼の後を追った。
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