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北斗サイド
生徒会
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スピカと別れ、何とか講堂の裏に来た俺は目の前の生徒会長にグチグチと文句を言われている。
「こんな生意気そうな子供が次期当主何て終わっているな。」
もし口出しが可能だったら同じ言葉をそっくりそのままこの男にいたと俺は思う。
「まあまあ、新入生なんだしね。」
「だがな。」
「そうそう、落ち着いてよ。」
「……。」
他の生徒会の役員に宥められ、会長がこちらを一瞥する。
「今度やったら、役員を降ろすからな。」
「はい。」
「会長優しい。」
「会長、出番ですよ。」
俺の横を通り過ぎた優男がポツリと呟いた言葉に俺は思わず顔を顰める。
『よかったですね、副会長様、まあ、どんな事があってもご実家が何でもしてくれるとは思わないでくださいね、こっちは皆同等の家なのですからね。』
本当に権力だけを見せびらかす奴らばかりだ。
あの純粋な目を向けるスピカに早く会いたい。
というか、どうにかして抱きしめられないだろうか。
きっと抱きしめることができればアニマルセラピー並みに効果があるぞ絶対。
「狐狸の巣窟。」
「ん?」
誰かが呟いた言葉に俺は顔をそちらに向けると、冷めた目をした女子生徒がいた。
「ここは狐狸の巣窟みたいなものよ、いつも化かし合い、本当に面倒よ。」
溜息を吐く彼女は確か庶務。
「藍川(あいかわ)いとはよ。」
「赤塚北斗です。」
「よくもまあ、新入生で生徒会に入ろうと思ったわね、わたしなら今だってお断りよ。」
「……なら、何でいるのですか?」
「仕方ないじゃない、双子の兄が生徒会を見張っていろって言うんだもの、本当に面倒よね。」
深く溜息を吐く彼女に俺は同情する。
「俺だって断れるのなら断りたかったですよ。」
「まあ、そうよね。」
「それにして、今回は本当に面倒事ばっかおきそうね。」
「どういう事ですか?」
「あら、遅刻したから知らなかったんだっけ?」
「青井(あおい)生徒会長が、ある新入生に懸想しているんですって。」
「……。」
「だから、あいつが来て早々、手を出すな~、とか言っていたけど、マジないわ。」
「ははは。」
俺は乾いた笑いを漏らしながら、思わず額に手を当てる。
「どうかしたの?」
「いや……。」
俺の頭の中にスピカの顔が思い浮かばれていた。
『そこの選択肢で攻略者の出会いイベントがあるんだけど、会長、新入生なのに副会長に選ばれる司狼、即ノーマルエンドに行くのどれにする?』
彼女はそう、ゲームの開始ですぐに出た選択肢でそう言ったじゃないか。
つまりはゲームのヒロインと同じ役割を持った奴がこの学校に本当に入学し、会長に接触した。
なんか厄介だ。
「……スピカ。」
あの陽だまりのような笑みをもう一度見たい。
俺は切実にそう思った。
でも、放課後まで俺は拘束されている。
本当に厄介だ。
「体調が悪いのなら、保健室にでも行く?」
「いや、本当に大丈夫です。」
「そう?」
「藍川先輩。」
「何かしら?」
「もし、よろしければでいいんですけど、全校生徒の資料を拝見する事ってできませんか?」
「……構わないわよ?」
「ありがとうございます。」
「ああ、一応生徒会室内で見てね、紛失したら怒られるどころの話しじゃないから。」
「分かっています。」
「それと、今年の一年生で訳ありの子がいるんだけど、その子の情報だけは見せられないわよ。」
「どういう事ですか?」
「……事故で意識不明でいつ目覚めるか分からなくて、取り敢えず今年度席は置いておくつもりらしいんだけどね。」
「……。」
俺は不運な人もいるものだと、どこか他人事のように思ってしまった。
「それ以外の子なら閲覧者の一覧に名前を書けば誰でも見れるから。」
「かなり甘くないですか、不安ですね。」
「そもそも、生徒会室に入るにはIDが必要だから、一部の人しか見れないわよ。」
「そうですか。」
「おっと、そろそろ、貴方の出番よ。」
「はい。」
俺は舞台に向かって歩き出す。
本当に面倒な役職についてしまったと、この時は後悔するのだが、後々感謝する事になるなんてこの時の俺が知るはずもなかった。
「こんな生意気そうな子供が次期当主何て終わっているな。」
もし口出しが可能だったら同じ言葉をそっくりそのままこの男にいたと俺は思う。
「まあまあ、新入生なんだしね。」
「だがな。」
「そうそう、落ち着いてよ。」
「……。」
他の生徒会の役員に宥められ、会長がこちらを一瞥する。
「今度やったら、役員を降ろすからな。」
「はい。」
「会長優しい。」
「会長、出番ですよ。」
俺の横を通り過ぎた優男がポツリと呟いた言葉に俺は思わず顔を顰める。
『よかったですね、副会長様、まあ、どんな事があってもご実家が何でもしてくれるとは思わないでくださいね、こっちは皆同等の家なのですからね。』
本当に権力だけを見せびらかす奴らばかりだ。
あの純粋な目を向けるスピカに早く会いたい。
というか、どうにかして抱きしめられないだろうか。
きっと抱きしめることができればアニマルセラピー並みに効果があるぞ絶対。
「狐狸の巣窟。」
「ん?」
誰かが呟いた言葉に俺は顔をそちらに向けると、冷めた目をした女子生徒がいた。
「ここは狐狸の巣窟みたいなものよ、いつも化かし合い、本当に面倒よ。」
溜息を吐く彼女は確か庶務。
「藍川(あいかわ)いとはよ。」
「赤塚北斗です。」
「よくもまあ、新入生で生徒会に入ろうと思ったわね、わたしなら今だってお断りよ。」
「……なら、何でいるのですか?」
「仕方ないじゃない、双子の兄が生徒会を見張っていろって言うんだもの、本当に面倒よね。」
深く溜息を吐く彼女に俺は同情する。
「俺だって断れるのなら断りたかったですよ。」
「まあ、そうよね。」
「それにして、今回は本当に面倒事ばっかおきそうね。」
「どういう事ですか?」
「あら、遅刻したから知らなかったんだっけ?」
「青井(あおい)生徒会長が、ある新入生に懸想しているんですって。」
「……。」
「だから、あいつが来て早々、手を出すな~、とか言っていたけど、マジないわ。」
「ははは。」
俺は乾いた笑いを漏らしながら、思わず額に手を当てる。
「どうかしたの?」
「いや……。」
俺の頭の中にスピカの顔が思い浮かばれていた。
『そこの選択肢で攻略者の出会いイベントがあるんだけど、会長、新入生なのに副会長に選ばれる司狼、即ノーマルエンドに行くのどれにする?』
彼女はそう、ゲームの開始ですぐに出た選択肢でそう言ったじゃないか。
つまりはゲームのヒロインと同じ役割を持った奴がこの学校に本当に入学し、会長に接触した。
なんか厄介だ。
「……スピカ。」
あの陽だまりのような笑みをもう一度見たい。
俺は切実にそう思った。
でも、放課後まで俺は拘束されている。
本当に厄介だ。
「体調が悪いのなら、保健室にでも行く?」
「いや、本当に大丈夫です。」
「そう?」
「藍川先輩。」
「何かしら?」
「もし、よろしければでいいんですけど、全校生徒の資料を拝見する事ってできませんか?」
「……構わないわよ?」
「ありがとうございます。」
「ああ、一応生徒会室内で見てね、紛失したら怒られるどころの話しじゃないから。」
「分かっています。」
「それと、今年の一年生で訳ありの子がいるんだけど、その子の情報だけは見せられないわよ。」
「どういう事ですか?」
「……事故で意識不明でいつ目覚めるか分からなくて、取り敢えず今年度席は置いておくつもりらしいんだけどね。」
「……。」
俺は不運な人もいるものだと、どこか他人事のように思ってしまった。
「それ以外の子なら閲覧者の一覧に名前を書けば誰でも見れるから。」
「かなり甘くないですか、不安ですね。」
「そもそも、生徒会室に入るにはIDが必要だから、一部の人しか見れないわよ。」
「そうですか。」
「おっと、そろそろ、貴方の出番よ。」
「はい。」
俺は舞台に向かって歩き出す。
本当に面倒な役職についてしまったと、この時は後悔するのだが、後々感謝する事になるなんてこの時の俺が知るはずもなかった。
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