88 / 98
第1章 再会
再会
しおりを挟む今は、絶賛作戦会議中。おそらく深海の神殿がこの町の近くにあるだろうと、ヒルさんの予想で来た町だが、何分それ以外に情報がないのだ。その情報収集をしなければならない。それに、もし見つけた場合、火山の神殿の様に苦戦する可能性があるため力をつけなければならない。それにシアのこともある。やることは山積みだ。ただ、俺の思いもよらない事実を知ることになる。
「え!?この辺りのダンジョンほとんど挑戦できないってどういうこと?」
「あんたねぇ、学校で習ったこと忘れたの?それにヒルさんがこの町を進めてくれたのは、深海の神殿のことだけじゃなかったでしょ」
「はははっ。ロガ君は本当に伝説のダンジョンのことで頭がいっぱいだね」
「ゔっ」
またもやディタの冷たい視線が突き刺さる。
「はあ、シア説明してあげて」
「あ、はい。えっとですね。ほとんどのダンジョンは国が管理しているんです。そして、選ばれた者だけがダンジョンに挑戦できるんです。ほら、魔法学校を卒業した時のバッジそれが証です。これは知って・・・なかったですか」
「本当にもう、呆れるわ」
「は、ははは」
そこに、カツッ、カツッと足音が聞こえてきた。どこかで見覚えがあるような足音。振り返るとそこには、目元がキリっとしていて、腰まで伸ばした髪を揺らしながら歩いている女性の姿があった。
「なにやら騒がしいと思ったら懐かしい顔ぶれじゃないか」
「「「リタ先生!?」」」
*
ディタは懐かしさからか嬉しそうにリタ先生に駆け寄っていった。
「久しぶりだな。それにしてもこの三人組とはな」
リタ先生は意味ありげに俺たちを見てきた。特に俺を見る時ニヤッと笑みがこぼれていたのは気のせいだろうか。なぜか居心地が悪い。
「それにしてもリタ先生、どうしてここに?」
「地元がここってこともあるが、そのほかに用があってな。何ヒルとはちょっとした知り合いで物音がしたんでもしやと思って来てみたんだ。そしたらお前らがいてびっくりしていたところだ」
「そういえば、リタ先生の出身ここでしたもんね。それより、ヒルさんの知り合いだったなんて驚きです」
ディタは、リタ先生と仲が良かったからな、出身も覚えていたんだろう。それにしても、リタ先生とヒルさんが知り合いだったのは俺も驚きだ。
「それより聞いてくださいよ。ロガったら、昇任試験のこと忘れているんですよ。だから今シアに説明してもらっていたところなんです」
もし、ここが教室であるならばそっと逃げ出しているところだが、今はそうもいかない。昔のように小突かれると思い身構えるも、リタ先生の顔は怒っているどころか声を上げて笑っている。
「あははは。相変わらずだな、ロガは。それより丁度いい、そういうことなら話は早い」
リタ先生はポケットからバッジらしきものを取り出した。どことなく魔法学校の卒業の証と似ているような気がする。
「縁あって昇任試験の監督役に選ばれたんだ。宜しくな。じゃあ私はこのあと仕事があって悪いが失礼するよ」
「そうですか、残念です。リタ先生ともっと話がしたかったのに」
「そう、残念がるな。そうだ、今夜料理を御馳走するとしよう。その時に話をするのはどうだ?」
「賛成」
「僕もいいですよ」
「ロガはどうする?」
この流れで行かないわけには・・・
「・・・御馳走になります」
「それじゃ決まりだな。ヒルも良かったらどうだ?」
「僕は遠慮しておくよ。先生と生徒で積る話もあるだろうし」
「・・・そうか、わかった。じゃあ、ちょうどいい時間に迎えに来るとしよう」
そう言うとリタ先生は、宿屋から出ていった。
*
その後、昇任試験もといダンジョンについてシアから講義を受けることになった。シアの話を要約するとこうだ。ダンジョンは危険なため認められたものしか入れないこと。そしてダンジョンに危険レベルがあり、昇任試験を受けて認められた証がないと入れないダンジョンがあることだ。”よく知らずに一人で旅をしようとしていたわね”とディタに悪態をつけられた。
「で、どうする?」
この“どうする”はどれを優先する?の”どうする”だろう。ディタは受ける気満々のようだ。かくいう俺も受ける気でいる。受けないで済むダンジョンを攻略する手もあるが、それではこの先やっていけないのは、火山の神殿の出来事もあり、容易に想像できる。悩む必要もないだろう
「昇任試験を先に受けよう」
「僕もそうした方がいいと思います」
「決まりね」
こうしてまず一つこの町でやることが決まった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
婚約破棄は結構ですけど
久保 倫
ファンタジー
「ロザリンド・メイア、お前との婚約を破棄する!」
私、ロザリンド・メイアは、クルス王太子に婚約破棄を宣告されました。
「商人の娘など、元々余の妃に相応しくないのだ!」
あーそうですね。
私だって王太子と婚約なんてしたくありませんわ。
本当は、お父様のように商売がしたいのです。
ですから婚約破棄は望むところですが、何故に婚約破棄できるのでしょう。
王太子から婚約破棄すれば、銀貨3万枚の支払いが発生します。
そんなお金、無いはずなのに。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
弓使いの成り上がり~「弓なんて役に立たない」と追放された弓使いは実は最強の狙撃手でした~
平山和人
ファンタジー
弓使いのカイトはSランクパーティー【黄金の獅子王】から、弓使いなんて役立たずと追放される。
しかし、彼らは気づいてなかった。カイトの狙撃がパーティーの危機をいくつも救った来たことに、カイトの狙撃が世界最強レベルだということに。
パーティーを追放されたカイトは自らも自覚していない狙撃で魔物を倒し、美少女から惚れられ、やがて最強の狙撃手として世界中に名を轟かせていくことになる。
一方、カイトを失った【黄金の獅子王】は没落の道を歩むことになるのであった。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる