アナスタシス・フルム

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第1章 再会

再会

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今は、絶賛作戦会議中。おそらく深海の神殿がこの町の近くにあるだろうと、ヒルさんの予想で来た町だが、何分それ以外に情報がないのだ。その情報収集をしなければならない。それに、もし見つけた場合、火山の神殿の様に苦戦する可能性があるため力をつけなければならない。それにシアのこともある。やることは山積みだ。ただ、俺の思いもよらない事実を知ることになる。

「え!?この辺りのダンジョンほとんど挑戦できないってどういうこと?」

「あんたねぇ、学校で習ったこと忘れたの?それにヒルさんがこの町を進めてくれたのは、深海の神殿のことだけじゃなかったでしょ」

「はははっ。ロガ君は本当に伝説のダンジョンのことで頭がいっぱいだね」

「ゔっ」

またもやディタの冷たい視線が突き刺さる。

「はあ、シア説明してあげて」

「あ、はい。えっとですね。ほとんどのダンジョンは国が管理しているんです。そして、選ばれた者だけがダンジョンに挑戦できるんです。ほら、魔法学校を卒業した時のバッジそれが証です。これは知って・・・なかったですか」

「本当にもう、呆れるわ」

「は、ははは」


そこに、カツッ、カツッと足音が聞こえてきた。どこかで見覚えがあるような足音。振り返るとそこには、目元がキリっとしていて、腰まで伸ばした髪を揺らしながら歩いている女性の姿があった。

「なにやら騒がしいと思ったら懐かしい顔ぶれじゃないか」

「「「リタ先生!?」」」







ディタは懐かしさからか嬉しそうにリタ先生に駆け寄っていった。

「久しぶりだな。それにしてもこの三人組とはな」

リタ先生は意味ありげに俺たちを見てきた。特に俺を見る時ニヤッと笑みがこぼれていたのは気のせいだろうか。なぜか居心地が悪い。

「それにしてもリタ先生、どうしてここに?」

「地元がここってこともあるが、そのほかに用があってな。何ヒルとはちょっとした知り合いで物音がしたんでもしやと思って来てみたんだ。そしたらお前らがいてびっくりしていたところだ」

「そういえば、リタ先生の出身ここでしたもんね。それより、ヒルさんの知り合いだったなんて驚きです」

ディタは、リタ先生と仲が良かったからな、出身も覚えていたんだろう。それにしても、リタ先生とヒルさんが知り合いだったのは俺も驚きだ。

「それより聞いてくださいよ。ロガったら、昇任試験のこと忘れているんですよ。だから今シアに説明してもらっていたところなんです」

もし、ここが教室であるならばそっと逃げ出しているところだが、今はそうもいかない。昔のように小突かれると思い身構えるも、リタ先生の顔は怒っているどころか声を上げて笑っている。

「あははは。相変わらずだな、ロガは。それより丁度いい、そういうことなら話は早い」

リタ先生はポケットからバッジらしきものを取り出した。どことなく魔法学校の卒業の証と似ているような気がする。

「縁あって昇任試験の監督役に選ばれたんだ。宜しくな。じゃあ私はこのあと仕事があって悪いが失礼するよ」

「そうですか、残念です。リタ先生ともっと話がしたかったのに」

「そう、残念がるな。そうだ、今夜料理を御馳走するとしよう。その時に話をするのはどうだ?」

「賛成」

「僕もいいですよ」

「ロガはどうする?」

この流れで行かないわけには・・・

「・・・御馳走になります」

「それじゃ決まりだな。ヒルも良かったらどうだ?」

「僕は遠慮しておくよ。先生と生徒で積る話もあるだろうし」

「・・・そうか、わかった。じゃあ、ちょうどいい時間に迎えに来るとしよう」

そう言うとリタ先生は、宿屋から出ていった。





その後、昇任試験もといダンジョンについてシアから講義を受けることになった。シアの話を要約するとこうだ。ダンジョンは危険なため認められたものしか入れないこと。そしてダンジョンに危険レベルがあり、昇任試験を受けて認められた証がないと入れないダンジョンがあることだ。”よく知らずに一人で旅をしようとしていたわね”とディタに悪態をつけられた。

「で、どうする?」

この“どうする”はどれを優先する?の”どうする”だろう。ディタは受ける気満々のようだ。かくいう俺も受ける気でいる。受けないで済むダンジョンを攻略する手もあるが、それではこの先やっていけないのは、火山の神殿の出来事もあり、容易に想像できる。悩む必要もないだろう

「昇任試験を先に受けよう」

「僕もそうした方がいいと思います」

「決まりね」

こうしてまず一つこの町でやることが決まった。
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