アナスタシス・フルム

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第4章 得たものとモノ

握られていたもの

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ヒルさんが何かもって奥から戻ってきた。あれは紙だろうか?丸くまとめられている。


「ん?この町の地図だよ」


「へえ」


「へえってあんた持ってないの?普通持ってるでしょ」


「そうなの?」


衝撃の事実である。確かにディタが買い物している時あんなの見ていた気がするが。そんなものがあるなら早く教えてくれればいいのに。まあ、俺は町にあんま出ていかないから必要ないので別にいいんだけど


「はあ、まあいいわ・・・それにしても、ヒルさんの地図。私の持っているのと違うような」


「ああ、これは僕が書き足してる部分があるからね。ディタちゃんのやつには乗ってない店もいくつかあるはずだよ。新しい場所だったり、地図に載りたくないって言う偏屈な人のところだったり。あとは個人的な感想とか聞いた情報とか書き込んでるんだ」


「すごいですね」


「そんなことないよ。暇なだけで・・・うーん、そうだな。加工が出来そうなところはこことかかな」


ヒルさんにいくつか店を紹介される。そして、午後早速行くことになった。昼食も食べ終え部屋で出発の準備をし、フロントに向かう。まだ、ディタは来てないみたいだ


「あっ、ロガ君。良かったまだ行ってなかったみたいだね。これよかったら」


ヒルさんはなぜか外からやってきた。その手には先ほどのものと似たモノが握りしめられていた


「それってまさか⁉」


「地図だよ。ロガ君が持ってないらしかったからね。あって損はないと思うよ。もしかしていらなかった?」


「あ、いやそんなことはないけど」


俺はあることを思ってしまう。ヒルさんの持っているものじゃないのかと。図々しいとはわかってはいるがそう思ってしまった。



「あっ。もしかして、僕の持ってるものだと思った?ダメだよ、ロガ君。そんな楽しようなんて。そう言うのは自分でやらないと」


ヒルさんには俺の考えはお見通しだったらしい。


「ははは、そうだよね」


「そんな残念そうな顔しない。ほら」



この時ヒルさんが何を言おうとしたのかなんとなくわかった。だって、そう自分に納得させようとしていたから


「“楽しんだもの勝ち”でしょ」


「はははっ、わかってるじゃないか。ああ、それと地図渡したことディタちゃんに内緒ね。“ヒルさんはいつもロガに甘いんだから”って言われそうで怖いから」


なんだか想像ができた。それにしても、ディタの物真似が結構似ていてびっくりしてしまった



「何?どうかしたんですか?」


そこにディタがやってくる。ヒルさんは俺の目をじっとみて何か訴えかけてきた。俺はいそいそとヒルさんにもらった地図をカバンのなかにしまう


「どうもしないよ」


「そうですか」


なんだか怪しんでいるようではあったが何も言ってこない。気付かれる前に出発しよう。


「そんなことより、行くぞ、ディタ」


「あっ、ちょっと待ちなさいよ」



「ふふふっ、いってらっしゃい」
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