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第三章 変化
魔物・魔族
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俺は図書室に来ていた。久しぶりに来たがあまり変わっていなかった。仕事ばかりで本を読む時間を作れていなかったのだ。辺りを見回すと、シェーンがいた。音をたてないように後ずさりをする。だが、努力虚しく気付かれてしまった。
「ビス、あなた何やってるのよ。」
「ははっ。何でしょう。」
多分俺の今の格好は変なポーズになっているだろう。右足はべたっと下にくっつき、左足はつま先のみくっついている。自然と口が開いた。
「・・・前に歩いているように見せながら後ろに滑る練習ですかね。」
「何よ、それ。それにそんなのこんなところで練習するんじゃないわよ。」
その通りである。何も言い返すことはない。
「すみません。」
「はあ、本を読みに来たんでしょ。・・・何なら私部屋に戻るけど。」
何かを読み取ったのかシェーンがそう言ってきた。
「い、いえ。そこにいていただいて大丈夫です。」
「そう、それならいいのだけれど。」
そう言うとシェーンは本に目を移していた。俺も何か本を読もう。そういえば、シェーンが前に新しい本が入ったと言っていた。俺が行先を迷って机の近くをウロウロしながら見回しているとシェーンが話しかけてきた。目線はそのままで。
「新しい本なら、魔法の本の近くよ。」
「あ、ありがとうございます。」
器用な人だな。俺はシェーンの言っていたところを目指す。そこに着くとすぐに新しい本がどれかわかった。汚れ具合が周りの本と全然違っていた。一冊取って見ると”魔物・魔族大全”と書かれている。
「こんなものが作られているなんてな。呼んでみるか。何か役に立つかもしれないし。」
俺はシェーンとは離れた席に座り読み始める。
「それにしても魔物・魔族か。なんとも安易な名前だよな。」
この言葉は数年でできた言葉だった。誰が言い出したのかわからない。自然発生的に出てきたのだ。魔法を使える生物を魔物、いままで種族で分類していたもののなかで魔法を使える種族を魔族と呼ぶようになったのだ。まあ、人間以外はほぼ魔族だが。安易だろう。かくいう俺も魔族ということになるのだろうか。ただ、俺は何の種族だがわからない。それはどうでもいいのだけどな。
「ふーん。こんなにいるもんなんだな。」
倒したことのある魔物もいたが、ほとんどが初見のものだった。それに魔族の方も初見のものが多かった。ただ、ここまで読んで疑問が浮かんだ。誰がこんなものを作っているのだろうということ。魔物や魔族との関わりはそんなに多くはないはず。傭兵として討伐に関わっているなら多少知っているとは思うが前線でやっている俺がこれなのだ。疑問が拭えない。
「何そんなに皺寄せて本読んでるのよ。」
考え事をしているとシェーンに話しかけられた。そんなに皺が寄っていただろうか。
「いや、別に深い意味はないよ。」
そう答えていた。あまり深く考えても意味がないと思ったからだ。知識が得られることに感謝しよう。
「ふーん。」
俺が読んでいる本をチラ見してなにか悟ったのかそれだけ言って元の位置に戻っていった。何かモヤモヤする反応だったが、気にしないように努め本に集中する。
「ビス、あなた何やってるのよ。」
「ははっ。何でしょう。」
多分俺の今の格好は変なポーズになっているだろう。右足はべたっと下にくっつき、左足はつま先のみくっついている。自然と口が開いた。
「・・・前に歩いているように見せながら後ろに滑る練習ですかね。」
「何よ、それ。それにそんなのこんなところで練習するんじゃないわよ。」
その通りである。何も言い返すことはない。
「すみません。」
「はあ、本を読みに来たんでしょ。・・・何なら私部屋に戻るけど。」
何かを読み取ったのかシェーンがそう言ってきた。
「い、いえ。そこにいていただいて大丈夫です。」
「そう、それならいいのだけれど。」
そう言うとシェーンは本に目を移していた。俺も何か本を読もう。そういえば、シェーンが前に新しい本が入ったと言っていた。俺が行先を迷って机の近くをウロウロしながら見回しているとシェーンが話しかけてきた。目線はそのままで。
「新しい本なら、魔法の本の近くよ。」
「あ、ありがとうございます。」
器用な人だな。俺はシェーンの言っていたところを目指す。そこに着くとすぐに新しい本がどれかわかった。汚れ具合が周りの本と全然違っていた。一冊取って見ると”魔物・魔族大全”と書かれている。
「こんなものが作られているなんてな。呼んでみるか。何か役に立つかもしれないし。」
俺はシェーンとは離れた席に座り読み始める。
「それにしても魔物・魔族か。なんとも安易な名前だよな。」
この言葉は数年でできた言葉だった。誰が言い出したのかわからない。自然発生的に出てきたのだ。魔法を使える生物を魔物、いままで種族で分類していたもののなかで魔法を使える種族を魔族と呼ぶようになったのだ。まあ、人間以外はほぼ魔族だが。安易だろう。かくいう俺も魔族ということになるのだろうか。ただ、俺は何の種族だがわからない。それはどうでもいいのだけどな。
「ふーん。こんなにいるもんなんだな。」
倒したことのある魔物もいたが、ほとんどが初見のものだった。それに魔族の方も初見のものが多かった。ただ、ここまで読んで疑問が浮かんだ。誰がこんなものを作っているのだろうということ。魔物や魔族との関わりはそんなに多くはないはず。傭兵として討伐に関わっているなら多少知っているとは思うが前線でやっている俺がこれなのだ。疑問が拭えない。
「何そんなに皺寄せて本読んでるのよ。」
考え事をしているとシェーンに話しかけられた。そんなに皺が寄っていただろうか。
「いや、別に深い意味はないよ。」
そう答えていた。あまり深く考えても意味がないと思ったからだ。知識が得られることに感謝しよう。
「ふーん。」
俺が読んでいる本をチラ見してなにか悟ったのかそれだけ言って元の位置に戻っていった。何かモヤモヤする反応だったが、気にしないように努め本に集中する。
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