73 / 171
第三章 変化
再戦(1)
しおりを挟む
ハウのいる部屋に入ると異様な雰囲気が漂っている。来るのがわかっていたのか堂々と椅子に座り手を膝の上で組んでいた。
「やっと来たか。リベも引き連れてみんなで俺をめった刺しってか。まあいい。座れよ。そのために来たんだろ。」
今朝よりも緊張感が増している。あの時もハウは冷静だったが、今は冷静というには足りない、まるで覚悟を決め、確固たる意志を示すべく感情を捨て去り、その覚悟のみを宿しているようなそんな感じ。少しというか全然違うが以前一瞬だがそんなやつに相対した気がする。こんな時に思い出すなんて。顔に一筋の粘度の高い汗がたらっと垂れてくる。
「ん?ビスどうした?早く座れ。」
その声で我に帰る。モルテとリベはすでに椅子に座っていた。俺は慌てて椅子に座る。
「あ、ああすみません。」
「大丈夫か?心ここにあらずって感じだったぞ。そんなんで俺を説得できるのか?まあ、意見を変える気はないが。」
ハウは俺というよりもモルテに視線を向けて言葉を発した。モルテの感情を逆なでするように。だが、モルテは気にしていないようだ。どちらかというとそのモルテの姿を見てハウの方がダメージを受けているようだった。
「っ。」
「お待たせしました。それと俺は説得しに来たんじゃないです。俺は報告しに来ただけです。」
「報告だぁ⁉」
ハウは出鼻を挫かれたのか、感情に揺らぎが見られる。
「ええ、俺はモルテに一緒に旅に出てくれと頼み、了承を得られました。以上です。」
「はははっ。お前頭でもおかしくなったのか。それではいそうですかっていうやつがいると思うか。それも、反対しているやつが。今朝と変わってないな。」
「落ち着いてくださいよ。俺は今報告をしているんですよ。先輩。」
「ビスてめぇ。おちょくってるのか。」
ハウの感情が徐々に飛んだり跳ねたりしている。最初からこうしておけばよかったのだ。親としてではなく傭兵の先輩として接すればよかったのだと俺は判断した。
「だから落ち着いてくださいって言ってるじゃないですか。それに説得しないとは一言も言ってませんよ。・・・俺ではなくモルテが先輩を説得します。」
俺はまっすぐハウを見つめる。俺の表情を見て何かを感じたらしい。
「はははっ。少しはマシな面になったじゃねぇか。」
そういい捨てた。ただ、また冷静に戻っている。さすがというべきか、これだけではたりないみたいだ。
「お前がそう来るのなら、乗ってやるよ。ただ、後悔するなよ。こっちの方が茨の道だってこと思い知らせてやる。」
ははっ。間違ったかな。そんな考えが過ぎってしまう。ただ、横目に見えるモルテの表情を見て改めさせられる。
「やっと来たか。リベも引き連れてみんなで俺をめった刺しってか。まあいい。座れよ。そのために来たんだろ。」
今朝よりも緊張感が増している。あの時もハウは冷静だったが、今は冷静というには足りない、まるで覚悟を決め、確固たる意志を示すべく感情を捨て去り、その覚悟のみを宿しているようなそんな感じ。少しというか全然違うが以前一瞬だがそんなやつに相対した気がする。こんな時に思い出すなんて。顔に一筋の粘度の高い汗がたらっと垂れてくる。
「ん?ビスどうした?早く座れ。」
その声で我に帰る。モルテとリベはすでに椅子に座っていた。俺は慌てて椅子に座る。
「あ、ああすみません。」
「大丈夫か?心ここにあらずって感じだったぞ。そんなんで俺を説得できるのか?まあ、意見を変える気はないが。」
ハウは俺というよりもモルテに視線を向けて言葉を発した。モルテの感情を逆なでするように。だが、モルテは気にしていないようだ。どちらかというとそのモルテの姿を見てハウの方がダメージを受けているようだった。
「っ。」
「お待たせしました。それと俺は説得しに来たんじゃないです。俺は報告しに来ただけです。」
「報告だぁ⁉」
ハウは出鼻を挫かれたのか、感情に揺らぎが見られる。
「ええ、俺はモルテに一緒に旅に出てくれと頼み、了承を得られました。以上です。」
「はははっ。お前頭でもおかしくなったのか。それではいそうですかっていうやつがいると思うか。それも、反対しているやつが。今朝と変わってないな。」
「落ち着いてくださいよ。俺は今報告をしているんですよ。先輩。」
「ビスてめぇ。おちょくってるのか。」
ハウの感情が徐々に飛んだり跳ねたりしている。最初からこうしておけばよかったのだ。親としてではなく傭兵の先輩として接すればよかったのだと俺は判断した。
「だから落ち着いてくださいって言ってるじゃないですか。それに説得しないとは一言も言ってませんよ。・・・俺ではなくモルテが先輩を説得します。」
俺はまっすぐハウを見つめる。俺の表情を見て何かを感じたらしい。
「はははっ。少しはマシな面になったじゃねぇか。」
そういい捨てた。ただ、また冷静に戻っている。さすがというべきか、これだけではたりないみたいだ。
「お前がそう来るのなら、乗ってやるよ。ただ、後悔するなよ。こっちの方が茨の道だってこと思い知らせてやる。」
ははっ。間違ったかな。そんな考えが過ぎってしまう。ただ、横目に見えるモルテの表情を見て改めさせられる。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる