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第一章 出会い
慢心と失敗
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野宿するのにぴったりのところを見つける。
僕はまださっきまでの出来事を引きずっていた。
「さあ、夕食で力をつけよう。といっても昼と同じ携帯食だが。」
「仕方ないわよ。それに慣れてくると癖になるわね。」
あんなにしぶしぶ食べていたのにあっという間になくなっていく。
なんであんなに食べられるだろう。僕は食欲がわかない。
それに気づいたのかペルが話しかけてくる。
「食べないと力が出ませんよ。一本だけでも食べてください。」
ペルは携帯食を差し出してくる。
「うん。」
無理矢理口にいれる。味がしなかったが、それがよかった。
なんとか、一本食べ切ることができた。みんなまだ食べていたが、
僕はその場にいるのがつらくて音を立てないように
気をつけてセフォンの元に向かった。
「ねぇ。セフォン。なんでみんなあんなに強いんだろう。
僕はあんな風に成れないや。」
セフォンは何も言わずジッと見つめている。
「着いて来なければよかったかな。」
急にセフォンがお尻を向けてくる。
何事かと思ったが、その瞬間はすぐにやってきた。
「っっ‼」
お腹に激痛が走る。
セフォンがお腹を後ろ足で思い切り蹴っ飛ばしてきた。尻もちをついてしまう。
「はははっ。セフォンにも嫌われちゃった。」
「こんなところにいましたか。お腹を押さえてどうかしましたか。」
ペルがやってくる。
「ううん。何でもない。やっとみんなと同じになれたよ。」
最後の言葉は小さく独り言のようにいった。ペルは僕の隣に座る。
「ねぇ。あの獣たちが消えてなくなったのはなんでだと思う?」
なんとなくわかっていたが、そうだと信じたくなくて聞いてしまう。
「あのヴォルフたちですか。
おそらく、自身の魔力量を越えて魔法を使っていたのでしょう。
その代償だと思います。」
やっぱり。
「僕、あの光景を見て怖くなっちゃったんだ。魔法を使う行為をじゃないよ。
魔法で僕がしようとしていたことが怖かったんだ。だから失敗した。」
「あまり気にしないでください。誰だって怖いです。
それに失敗は誰にでもあります。私だって失敗したことがありますよ。」
自然と声が出てくる。
「えっ。」
「そんなに驚くことですか。
まあ、失敗する前の私が同じ言葉を聞いたら、
ビス様と同じ反応していたかもしれませんね。」
遠くを見てそう言っていた。
「私の昔話聞いてくれますか?」
僕は声を出さず頷くと、ペルがゆっくりとそして優しい声で話し始める。
「私は、レーグル王国で奴隷として売られていたんです。
レーグル王国では奴隷として魔力を持つものを扱っていました。
そんなところをルトさんに助けられたんです。
大勢いたなかでなぜ私だったのかはわかりませんが。
そしてモーヴェ王国に連れてこられ、
最初の頃は、ルトさんから教養を学び基本的な魔法のことも教えて貰いました。
魔法の使い方は独学でした。そして授業の最後に必ず一言
”学びなさい、そして強くなりなさい。”と。
その頃はその意味がわかりませんでした。
それからしばらくしてシェーン様のお付きになりました。
シェーン様は今と変わらずお転婆で何にでも挑戦する方でした。
失敗しても何度も何度も。
当時の私は失敗しているのにそんなに楽しそうなのだろう。
というのも、私はシェーン様とは真逆でしたから。
自分で言うのはあれですが一度聞いたらすぐにできる方でした。
周りの同僚たちにも一目置かれていたんですよ。
すぐにできるのでみんなにすごい、すごいって持てはやされていました。
できることが楽しくて、楽しくて仕方なかったんです。
だからシェーン様のことをそういう風に思ってしまったんです。
そんなある日一つ目の失敗をしてしまいました。魔法を使ってしまったんです。
仲のいい同い年ぐらいの子に。
私の魔力のことを知っているのは王様とルトさんそれとシェーン様でした。
まあ、大人たちは疑いの目をしている人もいましたが、
単に耳が尖っている人間と認識している人がほとんどでした。
なにより連れてきたのがルトさんだったのが大きかったのでしょう。
ルトさんがエルフを連れてくるわけがないと。
昔からすごかったですからルトさんは。
話を戻しますが、私が魔法を使えると知ったシェーン様はすごかったです。
いつも目を輝かせてねだってきて。私はそれに答えていました。
そんなある日、その子が怪我をしてしまったんです。
いつもなら、魔法で治すことなんて絶対にしませんでした。
ルトさんから、”知っている人以外の前で魔法はまだ使うな”と
止められていましたから。でも、感覚がおかしくなっていたのかもしれません。
誰でもシェーン様みたいに喜んでくれるものだと、
受け入れてくれると。気付くとその子はビクビク震えて、
しばらくして何も言わずその場を去って行きました。
その場に残された私は、あっ。やってしまった、
判断を間違えてしまったと思いました。
その次の日、その子はお礼を言ってくれ、普通に接してくれているみたいでした。
ただ、私にはよそよそしく感じられて、
当たり障りない会話しかしていないことに気付きました。
その子にとって私は、恐怖の対象になったのでしょう。
だから当たり障りない会話をして私を刺激しないようにしたんだと思います。
無視されていた方がましでした。中途半端な接し方。
避けられていながら普通に接しなければならない。
子どもながらにつらかったです。
それ以来人の顔色を窺うようになりました。
・・・あっ。ごめんなさい。重かったですよね。止めますか?」
僕はペルの話に聴き入っていた。それがつまらなそうに感じたのかもしれない。
「ううん。もっと聴かせて。」
「そうですか、それでは。」とペルは続ける。
「それから、裏でひそひそ陰口を言われるようになり、
徐々に当たり障りのない対応が増えていきました。その子が話たんでしょうね。
それでも、私には知識があった、魔法があった、
そしてなんでも器用にこなす力があった。
完璧に仕事をこなしさえすれば、実害はありませんでした。
ただ、確実に心がすり減っていくのを感じました。
だから、仮面をつけることにしたんです。
そうすれば、心がすり減ることがなかったから。
自分自身のために。
ただ、シェーン様と一緒にいる時は楽でした。
無邪気で汚れを知らない子に安らぎを感じていました。
シェーン様の前では素に慣れました。
これは内緒ですが、夜は毎日一緒に寝ていたんですよ。
でも、安心感と私の慢心はまた、失敗をさせました。
シェーン様に大きな怪我をさせてしまいました。
唯一の存在理由が崩れ落ちた瞬間でした。
結果的に私はシェーン様を治すことができましたが、
私も魔力の使いすぎで倒れる結果になりました。
その時痛みと戦いながら、一人で考えてしまうんです。
ああ、私は何をしているんだろうって、何のためにここにいるんだろうって。
それから二週間程度で治りました。でも、周りの反応は冷ややかでした。
心配そうに声をかけてくれるんです。
でも、陰口が増えていく、私だけならまだしも、シェーン様のことまでも。
私は自分の情けなさとシェーン様に矛先が向いたことに怒りを感じました。
私は一刻も早くシェーン様に誤りたくて部屋に向いました。
部屋に入ってシェーン様と目が合った時、
言葉は出てこなくて、なぜか体が先に動いていました。
二人で抱き締めあって、声を出しながら何時間も泣いていました。
それで決意しました。この私のために泣いてくれる人のために強くなろうと。
完璧になろうと。そして絶対にこの人を守るんだと。
誰に何を言われようが。
・・・これで私の話は終わりです。難しかったですかね。」
最後まで聴いた。そして僕の思ったことを声に出す。
「やっぱりペルはすごいや。僕だったら耐えられそうにない。」
「私も一人だったら耐えられなかったと思います。
シェーン様がいたからこそ耐えられたんです。」
あの時のことを思い出す。なんだかモヤモヤする。
「僕だって、僕だってシェーンを守りたかった
・・・思いが足りなかったのかな。」
ペルが抱き締めてくる。
「そうじゃないですよ。ただ、ビス様が優しすぎるんです。」
抱き締めるのを止めて肩を抱いて目をじっと見つめてくる。
「これだけは覚えていてください。
すべてを守るなんてどれだけ完璧な人でも無理です。
あれもこれもなんて贅沢過ぎます。
何かを諦めなくちゃ、何かを手に入れられません。」
「じゃあ、いくら努力しても無駄じゃないか‼」
「そうかもしれませんね。でも、努力するんです。
完璧に近づいて許容量を増やすために。」
「わからない。わからないよ。」
本当はわかっている。それでも、拒絶してしまう。目を逸らして。
「目を逸らさないでください‼現実を見て。
いつまでも子どものままではいられないんですよ。
そんなでは誰も守れません‼」
悲痛な叫び。何も言葉が出てこない。
何ていえばいいんだ。いや、なんていってあげればいいんだろう。
しばらく沈黙が流れる。
「すみません。少し取り乱しました。」
「ううん。僕こそごめん。」
「ビス様なら、大丈夫です。乗り越えられます。」
また、ペルに抱き締められる。
「しばらく、こうさせてください。」
「ペル、ごめんね。僕頑張るから。強くなるから。」
だからもう少しだけ子どもでいさせて・・・
僕はまださっきまでの出来事を引きずっていた。
「さあ、夕食で力をつけよう。といっても昼と同じ携帯食だが。」
「仕方ないわよ。それに慣れてくると癖になるわね。」
あんなにしぶしぶ食べていたのにあっという間になくなっていく。
なんであんなに食べられるだろう。僕は食欲がわかない。
それに気づいたのかペルが話しかけてくる。
「食べないと力が出ませんよ。一本だけでも食べてください。」
ペルは携帯食を差し出してくる。
「うん。」
無理矢理口にいれる。味がしなかったが、それがよかった。
なんとか、一本食べ切ることができた。みんなまだ食べていたが、
僕はその場にいるのがつらくて音を立てないように
気をつけてセフォンの元に向かった。
「ねぇ。セフォン。なんでみんなあんなに強いんだろう。
僕はあんな風に成れないや。」
セフォンは何も言わずジッと見つめている。
「着いて来なければよかったかな。」
急にセフォンがお尻を向けてくる。
何事かと思ったが、その瞬間はすぐにやってきた。
「っっ‼」
お腹に激痛が走る。
セフォンがお腹を後ろ足で思い切り蹴っ飛ばしてきた。尻もちをついてしまう。
「はははっ。セフォンにも嫌われちゃった。」
「こんなところにいましたか。お腹を押さえてどうかしましたか。」
ペルがやってくる。
「ううん。何でもない。やっとみんなと同じになれたよ。」
最後の言葉は小さく独り言のようにいった。ペルは僕の隣に座る。
「ねぇ。あの獣たちが消えてなくなったのはなんでだと思う?」
なんとなくわかっていたが、そうだと信じたくなくて聞いてしまう。
「あのヴォルフたちですか。
おそらく、自身の魔力量を越えて魔法を使っていたのでしょう。
その代償だと思います。」
やっぱり。
「僕、あの光景を見て怖くなっちゃったんだ。魔法を使う行為をじゃないよ。
魔法で僕がしようとしていたことが怖かったんだ。だから失敗した。」
「あまり気にしないでください。誰だって怖いです。
それに失敗は誰にでもあります。私だって失敗したことがありますよ。」
自然と声が出てくる。
「えっ。」
「そんなに驚くことですか。
まあ、失敗する前の私が同じ言葉を聞いたら、
ビス様と同じ反応していたかもしれませんね。」
遠くを見てそう言っていた。
「私の昔話聞いてくれますか?」
僕は声を出さず頷くと、ペルがゆっくりとそして優しい声で話し始める。
「私は、レーグル王国で奴隷として売られていたんです。
レーグル王国では奴隷として魔力を持つものを扱っていました。
そんなところをルトさんに助けられたんです。
大勢いたなかでなぜ私だったのかはわかりませんが。
そしてモーヴェ王国に連れてこられ、
最初の頃は、ルトさんから教養を学び基本的な魔法のことも教えて貰いました。
魔法の使い方は独学でした。そして授業の最後に必ず一言
”学びなさい、そして強くなりなさい。”と。
その頃はその意味がわかりませんでした。
それからしばらくしてシェーン様のお付きになりました。
シェーン様は今と変わらずお転婆で何にでも挑戦する方でした。
失敗しても何度も何度も。
当時の私は失敗しているのにそんなに楽しそうなのだろう。
というのも、私はシェーン様とは真逆でしたから。
自分で言うのはあれですが一度聞いたらすぐにできる方でした。
周りの同僚たちにも一目置かれていたんですよ。
すぐにできるのでみんなにすごい、すごいって持てはやされていました。
できることが楽しくて、楽しくて仕方なかったんです。
だからシェーン様のことをそういう風に思ってしまったんです。
そんなある日一つ目の失敗をしてしまいました。魔法を使ってしまったんです。
仲のいい同い年ぐらいの子に。
私の魔力のことを知っているのは王様とルトさんそれとシェーン様でした。
まあ、大人たちは疑いの目をしている人もいましたが、
単に耳が尖っている人間と認識している人がほとんどでした。
なにより連れてきたのがルトさんだったのが大きかったのでしょう。
ルトさんがエルフを連れてくるわけがないと。
昔からすごかったですからルトさんは。
話を戻しますが、私が魔法を使えると知ったシェーン様はすごかったです。
いつも目を輝かせてねだってきて。私はそれに答えていました。
そんなある日、その子が怪我をしてしまったんです。
いつもなら、魔法で治すことなんて絶対にしませんでした。
ルトさんから、”知っている人以外の前で魔法はまだ使うな”と
止められていましたから。でも、感覚がおかしくなっていたのかもしれません。
誰でもシェーン様みたいに喜んでくれるものだと、
受け入れてくれると。気付くとその子はビクビク震えて、
しばらくして何も言わずその場を去って行きました。
その場に残された私は、あっ。やってしまった、
判断を間違えてしまったと思いました。
その次の日、その子はお礼を言ってくれ、普通に接してくれているみたいでした。
ただ、私にはよそよそしく感じられて、
当たり障りない会話しかしていないことに気付きました。
その子にとって私は、恐怖の対象になったのでしょう。
だから当たり障りない会話をして私を刺激しないようにしたんだと思います。
無視されていた方がましでした。中途半端な接し方。
避けられていながら普通に接しなければならない。
子どもながらにつらかったです。
それ以来人の顔色を窺うようになりました。
・・・あっ。ごめんなさい。重かったですよね。止めますか?」
僕はペルの話に聴き入っていた。それがつまらなそうに感じたのかもしれない。
「ううん。もっと聴かせて。」
「そうですか、それでは。」とペルは続ける。
「それから、裏でひそひそ陰口を言われるようになり、
徐々に当たり障りのない対応が増えていきました。その子が話たんでしょうね。
それでも、私には知識があった、魔法があった、
そしてなんでも器用にこなす力があった。
完璧に仕事をこなしさえすれば、実害はありませんでした。
ただ、確実に心がすり減っていくのを感じました。
だから、仮面をつけることにしたんです。
そうすれば、心がすり減ることがなかったから。
自分自身のために。
ただ、シェーン様と一緒にいる時は楽でした。
無邪気で汚れを知らない子に安らぎを感じていました。
シェーン様の前では素に慣れました。
これは内緒ですが、夜は毎日一緒に寝ていたんですよ。
でも、安心感と私の慢心はまた、失敗をさせました。
シェーン様に大きな怪我をさせてしまいました。
唯一の存在理由が崩れ落ちた瞬間でした。
結果的に私はシェーン様を治すことができましたが、
私も魔力の使いすぎで倒れる結果になりました。
その時痛みと戦いながら、一人で考えてしまうんです。
ああ、私は何をしているんだろうって、何のためにここにいるんだろうって。
それから二週間程度で治りました。でも、周りの反応は冷ややかでした。
心配そうに声をかけてくれるんです。
でも、陰口が増えていく、私だけならまだしも、シェーン様のことまでも。
私は自分の情けなさとシェーン様に矛先が向いたことに怒りを感じました。
私は一刻も早くシェーン様に誤りたくて部屋に向いました。
部屋に入ってシェーン様と目が合った時、
言葉は出てこなくて、なぜか体が先に動いていました。
二人で抱き締めあって、声を出しながら何時間も泣いていました。
それで決意しました。この私のために泣いてくれる人のために強くなろうと。
完璧になろうと。そして絶対にこの人を守るんだと。
誰に何を言われようが。
・・・これで私の話は終わりです。難しかったですかね。」
最後まで聴いた。そして僕の思ったことを声に出す。
「やっぱりペルはすごいや。僕だったら耐えられそうにない。」
「私も一人だったら耐えられなかったと思います。
シェーン様がいたからこそ耐えられたんです。」
あの時のことを思い出す。なんだかモヤモヤする。
「僕だって、僕だってシェーンを守りたかった
・・・思いが足りなかったのかな。」
ペルが抱き締めてくる。
「そうじゃないですよ。ただ、ビス様が優しすぎるんです。」
抱き締めるのを止めて肩を抱いて目をじっと見つめてくる。
「これだけは覚えていてください。
すべてを守るなんてどれだけ完璧な人でも無理です。
あれもこれもなんて贅沢過ぎます。
何かを諦めなくちゃ、何かを手に入れられません。」
「じゃあ、いくら努力しても無駄じゃないか‼」
「そうかもしれませんね。でも、努力するんです。
完璧に近づいて許容量を増やすために。」
「わからない。わからないよ。」
本当はわかっている。それでも、拒絶してしまう。目を逸らして。
「目を逸らさないでください‼現実を見て。
いつまでも子どものままではいられないんですよ。
そんなでは誰も守れません‼」
悲痛な叫び。何も言葉が出てこない。
何ていえばいいんだ。いや、なんていってあげればいいんだろう。
しばらく沈黙が流れる。
「すみません。少し取り乱しました。」
「ううん。僕こそごめん。」
「ビス様なら、大丈夫です。乗り越えられます。」
また、ペルに抱き締められる。
「しばらく、こうさせてください。」
「ペル、ごめんね。僕頑張るから。強くなるから。」
だからもう少しだけ子どもでいさせて・・・
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