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ホカイ視点 欲しかった配達のプロを手に入れた。これで一件落着だ、よな?

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 言葉が通じるようになり、色々話をした。彼女は、俺の言葉で少しはこちらの世界のことを知ってくれたようだ。細かいところは、おいおい覚えてもらえればいい。

 で、だ。

 いつになったら、ツガイの話になるのかなーとドキドキしていたわけなのだが、なんと彼女にはその気はないという。地球という星で結婚をしていたらしい。

(既婚者だたのか。でも、別れたってことはフリーってことだよな。俺としては、まあ。できれはハジメテ同士がいいっちゃいいが、すごくこだわっているわけではない。今までよりもこれからだ。これから、俺と幸せな家庭を築いていってくれれば)

 ツガイを望んでいたわけではない。決して。そうはいってもこの状況だ。ここにひとりで来た彼女を幸せにしようと、そんな風に思っていたのだが、彼女はそんな気はないという。

(は? え? 独り立ちする、だと?)

 聞き間違えかと思った。どこの世界に、若い女性が一人で生活できる場所があるというのか。あ、彼女のいた世界では普通なのか。

 驚くべきことに、彼女の住んでいた場所は、男女比が若いほど女性のほうが少ないが、全体的に女性の方が多いという。男性のほうが寿命が短い分、そうなっているのだとか。

 しかも、女性の社会進出や、生涯独り身の人口もどんどん増えているなんて、考えられない。

「は? いちおくごせんまん?」
「はい。あ、日本っていう小さな島国だったんですけど、私が住んでいた国はそのくらいだったかと。ただ、少子化で、このままいくと近いうちに半減するらしいです。世界中だと、わかっているだけで、80億だったかな。未開の地や出生届がない地域を含めたらもっとでしょうけど」

(いちおく、って、えーと、この世界が1000だから。いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……ぴゅぅ……ぴぅ? ぴー!)

 自慢じゃないが、俺はツバメの脳しか持ってない。頭の中がパンクして、悲鳴があがる。大型の獣や、神獣とされるドラゴンなら、計算など一瞬だろうが。かといって、頭が残念なのは知られたくないので、彼女にバレないようにAIにこっそり比率を計算してもらった。

「この世界の80万倍か。それは、すごい数ですね。地球という星は、とても大きかったのでしょうね」
「わぁ、ホカイさんは、言語習得だけじゃなくて計算も速いんですね! 私なんて、そんな計算、スマホとかがなかったらできませんよ」

 全ては、チップやAIシステムのおかげなのだが、彼女が俺を手放しに誉めてくれるのは心地いい。システムは生涯にわたって日常的に使うし、わざわざ俺の頭脳指数を説明する必要もないだろう。

 ちなみに、一番頭脳指数が低いのは俺ではない。コアラなんかは好物でも形が変わると認識できないほどだし、三歩歩けば、家族すら忘れてしまうダチョウなんかもいるから大丈夫、だと思う。
 それに比べれば、俺なんて地図がわかる。目的地を見失わないし、スイーツに限るが、様々な食材や調味料、調合や温度などは全て記憶しているのだから。

「こんなの、大した計算じゃないですよ。ははは。ところでスマホとはなんですか?」
「あ、これなんです。が欲しがった最新式のユーフォーンだから、高かったんですよね」

 初めて聞くアイテムに興味を惹かれた。見せてもらったそれは、はるか昔、機械ができ始めたころの古代のアイテムのようだった。画像も悪いし、容量なんかアリんこ並みだろう。しかも、バッテリーとかいう固体燃料が搭載されていて、定期的に電気を補充しなくてはならないという、ものすごい不便なものだった。

(それにしても、元夫という言葉が彼女から出ると無性に腹が立つ。はやく忘れてくれたらいいのに)

「残念ながら、そのスマホは壊れたら修理できないと思う。データだけでも、こっちにダウンロードしておこうか?」
「わあ、ホカイさん、ありがとうございます。正直、諦めていたんですよね。いらないものもあるんですけど」
「今はいらないって思っても、将来的にもう一度見たいと思うときもあるでしょう? 全部残しておいたほうがいいです。ほら、貸して」

 古代のデータでも、俺のシステムなら取り込めるはずだ。手首に入れているチップにそれを当てると、転送が始まった。空間に、様々なデータが映し出される。
 途中、彼女と仲が良さそうにしているぶさいくな男がいた。そいつが元夫だろう。

(全部残すように助言したものの、こいつだけは消去していいだろうか? こちらの世界には、うまく転送できなかったと言えば彼女は信じてくれるだろうし。いやいや、そんな嘘は、オスとして最低だ)

 100枚以上はあるその男とのデータも含めて、若干データ様式は違うものの、ほぼ完ぺきにできたはずだ。




 


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