上 下
37 / 41

35 ペンギンになれない人と、初めてのゆっくりなふれあい R18

しおりを挟む
 今日はゼファーと、久しぶりに義母たちと過ごしたに来ている。近くだから、時速30キロから50キロまで上限スピードをあげたカレンに乗って来た。
 ゼファーは、なんとハヤブサなのに、私の速さに合わせて超低速だ。ある意味すごいスーパーテクニックだ。

 私のカレンは、いわゆる原動付き自転車のスーパーカブで、デザインは昔風の古いものよりも可愛くなっている。ベースカラーはハニーブランにしてくれていた。パーツによっては、ゼクスの金に、シビルの黒、そしてゼファーの焦げ茶色で模様が描かれている。

「カレン、もっとゆっくり走って……ああ、ほら、前に大きな石が! 危ないですよ!」

「ゼファーったら。ゼファーが作ったんだから、そんな1センチもないような小石なんてどうってことないでしょ? ふふふ」

らったったー、らったったー

 故郷の母がよくバイクのエンジンをかける時に、そんな風に口ずさんでいた。楽しくて心が弾み、昔のCMで流れていたというこの言葉で鼻歌を歌う。

 すると、ゼファーがなぜか考え込んでいたので、どうしたのかと問うと、なんでもないって言った。ゼファーの様子が気にかかるものの、それからすぐにの侯爵家にたどり着く。

「わーい、カレンおねぇちゃーん」
「ぜふぁおじちゃん、こんにちは!」

 すると、正面玄関に着いた途端、義姉が産んだミニペンギンたちが笑顔で駆けて来てくれる。最初はヨチヨチのミニペンギン姿だったのに、それだと遅いから途中で人化したから裸だ。しかもバイクが止まっていないから危ない。

「ハーレイちゃん、シャドウくん、こんにちは。危ないから少し離れて、お洋服を着ておりこうで待っていてね」
「……シャドウ、俺の事をおじさんって言うのはやめてくださいとあれほど……」

 ちびっこたちは、素直に下がり、義姉とそのご主人たちに服を着せてもらっていた。その間に私たちはバイクを止める。

 バイクのカレンを初めて見た時、義姉がとても乗りたがった。危ないからダメだと、ご主人たちの猛反対を受けたものの、ゼファーが安全について説明し、時速が50キロしか出せない事を知ると許可が下りたみたい。
 個人所有となるとご主人たちの心配が尽きなくなるから、こうして私がカレンに乗って実家に帰ると、時々ご主人さんたちの鉄壁の守りの中カレンで遊んでいる。

 魔法も使える獣人であるこの国の人たちにとっては、50キロって散歩ほどのゆっくりペースなのだ。

 ちびっこたちも乗りたがるけれど体が小さいため、今度、彼らに子供用のお遊びのバイクを試作品がてら作るらしい。

「カレンちゃん、お帰りなさい!」

「お義母様、ただいま帰りました!」

 義姉たちとわいわいしていると、奥から義母のイーゼフが現れた。一時期、私の事を思い悩んで痩せていた面影はもうない。

「カレンちゃん、バイクの運転だなんて。殿下の子がいつ出来てもおかしくないんだから大事にしないと……」

 残念ながら、ゼクスとの初めての巣ごもりでは懐妊しなかったのである。こればかりは授かりものだ。天に任せてのんびり待とうと、夫たちも彼らの実家も言ってくれているから嬉しい。

 
「ふふふ、お義母様。それは大丈夫ですよ。それよりも、今日はお土産があるんです」

 私はそう言うと、カレンの前かごに乗せていた箱を義母に渡した。

 アルファホーレという、故郷の天使のパイよりももっと濃厚な甘さのあるお菓子だ。義母が好きだと聞いて、一生懸命作り、やっと見た目も味も大分マシになったから持って来たのである。

「まあ、これ……カレンちゃんが作ってくれたの?」

「はい、お義姉様に聞いて、なんとかうまく作れるようになったので。お口に合えばいいんですけれど……」

「嬉しいわ! ふふ、私の舌のほうが勝手にアルファホーレに合うに決まっているわ。うーん、楽しみね。早速お茶にしましょうか」

 義母が準備をしてくれていた場所は、キング・プロテアというゴージャスな花が咲き誇っている。その名の通り、花の王様だ。
 ちなみに、お見合いをしていた頃の庭は、すでにその場所が大改装されていて、ミニペンギンたちの遊び場になっている。

 この国では珍しくないらしいけれど、私にとっては珍しい。20センチもの大きさの花を楽しみながら、アルファホーレをつまんではお茶を飲んだ。

「カレンちゃん、ゼファー。今日は泊って行ってくれるんでしょう?」

「母上、この家はカレンには……」

 恐る恐る、義母が訊ねて来る。それもそのはず、この場所は私にとっては楽しくて幸せで、そして辛い場所でもあるから。
 でも、義母たちやゼファーが、当時の面影をなるべくないように随分リフォームしてくれているし、ミニペンギンたちが、膝の上に乗って「帰らないで遊んで~、泊って行って~」とぴぃぴぃ甘えてくるのだ。私だってまだここで過ごしたいとも思う。
 
 もう、あの頃の私じゃない。今の私には頼もしくて愛しい夫たちがいる。それに、今はゼファーと一緒だ。何をこわがる事があるというのだろう。

「お義母様、喜んで。ふふ、随分里帰りしてなかったなあ。ね、ゼファー、いいでしょう?」

 義母が瞳を潤ませて満面の笑顔で何度も何度も頷く。私も嬉しくなって涙ぐんだ。

 ゼファーも、そんな私の表情を、注意深く覗き込む。あの頃とは違って、これっぽっちも無理をしていない事がわかったのか、ゼファーの許可も下りた。

 夕食を大人数で楽しく食べる。今日はアサードというお肉中心の料理が所狭しと並んだ。やっぱり私はミニペンギンたちよりも小食らしく、ちっちゃなハーレイちゃんやシャドウくんがパクパクもりもり食べるのを唖然と見ていたのであった。


※※※※


「ゼファー、ちょっと今日は……」

「シー、カレン。一応本邸の皆と離れた別邸ですけれど静かにしてくださいね」

「いや、だからね。今日は里帰りで……。そういう事はちょっと……あん、もう……」

「カレンを独占できるみたいで嬉しいんです。だから、ね? 無茶はしませんから。キスをください」

 ゼファーが私を抱え込むみたいにソファで抱きかかえてキスを強請って来る。身を捩って逃げようとする私を離さないと逞しい腕が捕えてきつつ、右手が思わせぶりにくすぐってくるから少し睨んだ。

 どうも私はゼファーに弱いみたい。
 
 なんというか、ゼファーのお願いならなんでも聞いてあげたくなる。
 普段甘やかされているから、そのお返しというわけじゃないし、ゼクスの事もシビルの事もそうなんだけど。どことなく、違和感を感じるほどの小さな何かが、彼の事をとても大切にしたいと訴えかけてくるのだ。

「……激しいのはダメだからね?」

「勿論。カレン、愛しています」
 
 ゆっくり、貴重な食材を味わうかのように、肌を味わい舐めて来る。私の小さな反応も見逃すまいと、ゼファーが見つめる瞳はとんでもなく優しくて、深い深い海溝のようにも見えてほんの少しの怖さが生まれる。

 ふるりと、彼から与えられる快感以外の何かが私の中に生まれて体が震えた。すると、私の些細な変化に目ざといゼファーが、胸と付け根のぬかるみを指で愛撫していた手を止めて、そっと私を伺う。

「カレン、大丈夫ですか? ……無理を、させてしまいましたか……?」

「ううん、違うの。ゼファーと出会ってこうして愛されるなんて、とても幸せで。幸せすぎて怖くなる感じ……だから、心配しないで。お願い……」

 ゼファーも、この家で私の心が徐々にぎゅうぎゅうに締め付けられてしまっていた過去を気にしている。側にいながら私の心の機微を悟れなかったと、今も後悔しているから暗闇の中におちている木の葉一枚をも見逃さないほどの集中力で私に傷をつけないようにしてくれているのだった。

 言葉だけでは、本当に無理をさせていないか不安なのだろう。ゼファーは衣服の乱れを直しながら普通に寝ようとした。だから私はゼファーの高ぶりにそっと手を添えたのである。

 指先から手首の長さよりも長いソレは、熱く張り詰めている。そっと手で包み込み優しく擦る。

「……俺が我が儘を言いましたね。気を使わなくていいですから、今日はもう寝ましょう」

 ところがゼファーは、そんな私の手をそっとソコからはずした。途端に、私はそれが寂しくなってしまった。拒んだ形になって、彼を傷つけたかと今度は私が心配になる。

「ゼファー。あのね、本当に大丈夫なの。その、私だってゼファーを感じたいし触れたい。このまま眠りたくない……ダメ?」

 私がゼファーに強請るようにそう言うと、お互いに愛を伝えあうかのように、初めて、ゆっくりと激しさのない交わりをした。

 優しく、もどかしいほどのソフトな触れ合いは、今までにない気持と快楽をお互いに呼び覚まし、新たな心地よさと多幸感が生まれる。

 十分に高め合い、ぴたりとはまるかのように一対になったそこを合わせると、愛で体も心も満たされた。

 体にも負担が少ないのか、終わった後も私はぐったりしていない。

  ゼファーとゆりかごに揺られているかのように幸せな時間を過ごしたのであった。



 





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

日本人顔が至上の世界で、ヒロインを虐げるモブA君が婚約者になりました

トール
恋愛
駅の階段から足を滑らせて死亡した高橋由利(享年25)は、親友がハマっていた乙女ゲームの世界に似た、しかし微妙に異なる世界へと転生してしまった。 そこは平凡な日本人顔が絶世の美人と言われる、美醜逆転の世界で、ゲームに出てくる攻略対象者達は面影を残しながらも、地味な日本人顔になっていた! そんな世界で、絶世の美女と呼ばれ、大富豪で王族よりも権力があるといわれている公爵家の跡取り娘として転生した由利だったが、まさかの悪役令嬢だった?! しかし、悪役令嬢のフラグを折る運命の相手(婚約者)が現れる。それはヒロインに罵詈雑言吐きまくる名も無きブサモブ(由利視点では超絶美形)。 確かこのモブ君、ヒロインを虐めたとかでゲームの前半に学校を退学させたられたよね? 学校を卒業しないと貴族とは認められないこの世界で、果たして攻略対象者、ヒロインから婚約者を守れるのか!? 良識のある口の悪いモブ(超絶美形)な婚約者と、絶世の美女(地味な日本人顔)主人公との、ざまぁありの美醜逆転ラブファンタジー。 ※この作品は、『小説家になろう』でも掲載しています。

【完結】何度時(とき)が戻っても、私を殺し続けた家族へ贈る言葉「みんな死んでください」

リオール
恋愛
「リリア、お前は要らない子だ」 「リリア、可愛いミリスの為に死んでくれ」 「リリア、お前が死んでも誰も悲しまないさ」  リリア  リリア  リリア  何度も名前を呼ばれた。  何度呼ばれても、けして目が合うことは無かった。  何度話しかけられても、彼らが見つめる視線の先はただ一人。  血の繋がらない、義理の妹ミリス。  父も母も兄も弟も。  誰も彼もが彼女を愛した。  実の娘である、妹である私ではなく。  真っ赤な他人のミリスを。  そして私は彼女の身代わりに死ぬのだ。  何度も何度も何度だって。苦しめられて殺されて。  そして、何度死んでも過去に戻る。繰り返される苦しみ、死の恐怖。私はけしてそこから逃れられない。  だけど、もういい、と思うの。  どうせ繰り返すならば、同じように生きなくて良いと思うの。  どうして貴方達だけ好き勝手生きてるの? どうして幸せになることが許されるの?  そんなこと、許さない。私が許さない。  もう何度目か数える事もしなかった時間の戻りを経て──私はようやく家族に告げる事が出来た。  最初で最後の贈り物。私から贈る、大切な言葉。 「お父様、お母様、兄弟にミリス」  みんなみんな 「死んでください」  どうぞ受け取ってくださいませ。 ※ダークシリアス基本に途中明るかったりもします ※他サイトにも掲載してます

完結 R20 罪人(つみびと)の公爵令嬢と異形の辺境伯~呪われた絶品の契約結婚をお召し上がりくださいませ 改稿版

にじくす まさしよ
恋愛
R20 昨年のタイトルの改稿版になります  あれは、いつの事だっただろうか──父に連れられた王宮の庭で迷子になった時に、少し年上の少年がいた。美しく生い茂る花々が霞んで見えるほどに父を探してわんわん泣いていたキャロルは涙が止まる。少年がこちらに気づいて── (その後、どうしたんだっけ?) 「お前のような犯罪者とは婚約破棄だ」と言い出した婚約者がキャンキャン吠えているのを、キャロルは別の事を考えながら右から左に受け流すどころか、耳に入ってこないように魔法でバリアを張っていた。 目の前の二人がいちゃこら始めたのでアホらしくなる。二人の行く末は明るくないだろう、とため息を吐いた。  キャロルは元婚約者の王子に着せられた冤罪によって、辺境伯に嫁ぐ事になる。  辺境伯は人を恐怖に貶め、悪夢に苛まれるほどの醜悪な異形だという噂がある。その人に嫁がねば死に至る、一方的な契約印を首に施された。  辺境に行くと、彼とは会えず仕舞い。執事に、「王族の命令だから凶悪な罪人を娶ったが、お飾りの妻として過ごすように」という辺境伯からの言葉を伝えられた。嫌われたキャロルは、苦々しく見つめる使用人たちにも厳しい視線にさらされる。  結婚なんてしたくないと思っていた彼女は、これ幸いと楽しくぐーたらな日常を過ごすために契約結婚を提案するのであった。 旧題 【完結】【R18】婚約者に冤罪を吹っ掛けられたあげく罰として、呪われた異形に嫁ぐことになりました~嫌われているらしいので契約結婚しちゃいます キャラクター、ざまぁ要素など、かなり変更しています。 コメント欄をしばらくオープンにしておきます。 2023,7,24コメントとじました

腐女子で引きこもりの姉は隠居したいが、義弟がそれを許してくれない

薄影メガネ
恋愛
・7/3(金)電子書籍化されました!  6/15~6/21紀伊国屋書店調べアルファポリス内、書籍売上3位…‼ありがとうございます。2020/7/1 ・6/15(月)発売されました…! 近況ボードにその他ご連絡事項(番外編SS&お試し読み&レンタル開始)アップしました。2020/6/15 ・6/11(木)より書店等への出荷(発送)が開始されました…! 詳しくは近況ボードにアップいたしました。2020/6/11 ・アルファポリス様のレーベル「ノーチェブックス」HPに出荷予定日が公開されました…! 【出荷予定「6月11日頃」】となります。2020/6/4 ・刊行予定が掲載されました。 【刊行予定「6月中旬頃」】2020/5/22 ・書籍化作業に伴いまして、一部引き下げました。2020/5/10 ノーチェブックスHPはこちら↓ https://www.noche-books.com/ ノーチェブックスHPより抜粋↓ 父の死をきっかけに、女ながらも伯爵家の当主となってしまった、腐女子で引きこもりの伯爵令嬢ユイリー。そんな彼女を支えてくれたのは、有能で超美形な義弟ラースだった。養子であるラースだけれど、不甲斐ない義姉に代わり、当主代行の務めを立派に果たしてくれている。そこでユイリーは、成人したラースに家督を譲り、彼の邪魔にならないよう田舎で隠居生活を送ろうと決意する。これで夢の腐女子ライフが送れるわ……とほくそ笑み、いざ出立の日。どういうわけか隠居計画があっさりラースにバレてしまい、おまけに「姉さんを妻にする」と宣言されて――クールな義弟の執着愛が炸裂!? 独占欲が大・爆・発の蜜愛ファンタジー!! ↑ここまで、 ※何だかんだで元々図太い気質の主人公が、シリアスになり切れずポジティブに頑張るお話です。

【R18】聖女は政略で結ばれた婚約相手の王太子殿下を溺愛して癒したい~婚約者は生真面目で冷徹と言われているけれど~

弓はあと
恋愛
今日もふたりの間に会話はほとんど無い。 でもお茶を出せばこちらを見て「ありがとう」と言ってくれる。 言葉数は少ないけれど、私に優しい婚約者。 だから私も、その優しさに応えたい。 ※2話目まではシリアス風ですがその後はコメディでえっちなお話です。 ※予告なくエッチな場面(R18エロシーン)がでてきますのでご注意ください。 ※設定ゆるめ、ご都合主義です。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!

ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。 自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。 しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。 「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」 「は?」 母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。 「もう縁を切ろう」 「マリー」 家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。 義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。 対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。 「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」 都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。 「お兄様にお任せします」 実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

処理中です...