10 / 41
9 ふたりの正体
しおりを挟む
チュンチュン
朝が来たのを知らせるスズメみたいな鳥が鳴いている。窓から朝日もしっかり入り込んでいて、私は目を開けた。まるで北海道の春のように涼しい。
ほんの少し身震いして伸びをしようとするが体が動かない。頭もはっきりしたところで、金髪のイケメンに抱き締められている事を思い出して目を瞬かせた。彼の黒い瞳はいつ見ても優しさで溢れている。
金髪のイケメンは、私が起きた事を知ると、とても嬉しそうににっこり笑ってこう言うのだ。
「おはよう、カレン」
「おはようございます……ゼクス」
あれからすでに一週間が経過している。
頬にちゅっとキスされて肩をすぼめた。
※※※※
やはりふたりは私の事を小学校低学年くらいかと思っているようで、とにかく甘やかしすぎる。私が心細いだろうからって、こうしてベッドで添い寝を交代ですると言って聞かなかった。
ひとりで眠れるし心配ないって言ったんだけど、初日に涙を流しながら寝言で家族を繰り返し呼んでいたのを見て聞いたらしい。せめて、大きくなるまではひとり寂しく眠らずに済むよう、自分たちに遠慮するなと強引に抱っこされてしまう。
どうやら、私は自覚がないというか夢を覚えていないんだけど毎日寝ながら泣いているらしい。
昨日寝る時も、もう大丈夫って言ったのに、ゼクスが泣いているからって横に並ぶんだもん。
そりゃ、今でも故郷の家族が恋しいし事ある毎に目が潤んじゃうけれど、実際はもうすぐ16才。日本でも結婚できる年齢でもうすぐ高校生になっていたはずなのだ。
そんな私が、イケメンとひとつのベッドで寝るなんて恥ずかしすぎる。
しかも、ゼクスも鍛えているのか、私よりも30センチは背が高くてサッカー選手とかバスケット選手みたいな体つきだ。
力強くてスタイルのいい彼に抱っこされてしまうと、最初はドキドキドキドキして目が冴える。
でも眠りだした彼の寝息が始まると温かいし眠いから、目がとろんとしていつの間にか眠っちゃう。
そんな彼は14才だという。
年齢を聞いた時にびっくりしたのは言うまでもない。どこの世界にこんなに体がしっかりと大きく成長して、優しくて大人な感じの14才がいるというのだろう。
いや、ここにいた。
20才くらいかと思っていたのに、まさかの年下だった。
ジスクールは、17才らしい。で、シビルが20才って考えられない。特にシビルなんて25才以上かと(実は30才くらいかなーなんて失礼な事を)思ったくらい。
この世界の人は、15才で成人らしいから、日本とは比べものにならないほどしっかりしているっぽい。元騎士団長のシビルの父である人に体も鍛え上げられたらしいから騎士じゃない王子なのにがっしりしている。
ゼクスに、朝の挨拶だからって頬にちゅってされるのも、まだ恥ずかしい。私が顔を真っ赤にして、うつむくとなんだか楽しそうに笑われる。
お返しに頬にキスが欲しいとか言われるけど無理。
そこは、文化の違いをふたりに一生懸命伝えた。外国では挨拶でハグしてちゅってしていたけど、私には難易度が高すぎる。
大好きな人とキスは贈り合うもので、女の子からのキスは、頬やおでことかは勿論、唇なんかは絶対に結婚したいって思う人とじゃないとダメだって言った。
そうしたらイケメンふたりがかりで、自分達からの挨拶のキスはさせて欲しいってお願いスタイルで来られちゃって断れなかった。
それに、私は彼らにとって小学校低学年の子供だ。結局恥ずかしがりながらもこうして受け入れちゃってる。
「おはようございます。殿下、朝食の準備が出来ました。カレン、今日は塩ふったシャケの焼いただけ(焼き鮭)と、ほうれん草を茹でて醤油で味付けした(ほうれん草のおひたし)のと、米の塩だけの味付け茹で(おかゆ)だ。本当にこんなのでいいのか?」
「おはようございます、シビル。はい。朝はあまり食べないのでパンとスープだけでも十分なんです」
「それはダメだよ。カレンは小さいんだから、もっと食べて大きくならないと。ダイエットしているわけでもないんだろう?」
「ゼクス、初日にも言ったけど、ふたりがたくさん食べ過ぎるんですってば!」
朝の着替えとかは流石にひとりにしてもらえるから、顔を洗って準備された服に着替えた。髪はゼクスよりも器用なシビルが大きな節くれだった手で整えてくれる。
今日は、耳の上からツインテールにされた。大きなリボンつき。
ますます子供っぽく見えるけど、今更本当の年齢をカミングアウトできるはずもなく。毎日小学生っぽいライフを過ごしていた。
※※※※
「いただきまーす!」
ゼクスとシビルは私に約束した通り、とても大事にしてくれている。
食事もひとつとっても、ないものは仕方がないけれども、なるべく私の好みの物を用意してくれた。
異世界なのに、知っている名前に食べ物とかがとても多いから通じやすい。
お米は日本みたいなのじゃなくて、細長いパサパサしたやつだった。館の外にゼクス用のコックさんがいるこの国仕様の暖かい厨房で、料理法方を家庭科の授業で習った通りにした。
当たり前なんだけど種類が違うせいか美味しく炊き上がらずしょんぼりした。
だけど、醤油やお味噌に似た調味料や、食材などは似ているのも多い。こちらの国の味付けは少々濃い感じだったけれど私に合うようにコックさんが毎日試してくれている。
基本的に、この屋敷に来る人は少ない。
どうやら、この屋敷の気温は魔法で外気よりも涼しくしているらしい。
廊下は、肌寒いかなくらいの設定ではあるけれども、ゼクスたちが過ごす部屋は10度くらい。
この国ではとんでもなく寒い気温設定みたいで、用事のある時以外に使用人さんたちすら訪れないようだった。
『カレン、寒くないかい? 僕たちはこれよりも温度をあげても大丈夫だよ?』
『はい、ゼクス殿下。私が住んでいたところは氷点下になることもあったし、雪が降っていましたから大丈夫です』
『そうか? 遠慮しなくていいぞ? 我慢して風邪をひいては大変だ』
『シビルさんまで。ふふ、本当に大丈夫ですよ? 兄は0℃でも半袖だったくらいですし、私もちょうどいいくらい。夏の方が辛かったです。地域によりますけれど、40℃とかになってましたもん』
『本当に、異界の乙女というのは環境に強いんだね……』
私がそう言うと、ふたりとも鳩が豆鉄砲をくらったみたいにびっくりしていたけれども、イケメンはそんな顔でもイケメンだった。
警護とは大丈夫なのかと問うと、ゼクスもシビルもすんごく強いみたい。今のところは平和だから大丈夫だとのこと。一応王族だから、館の外は警護されていて魔法の保護結界が施されているから万が一泥棒とかが来ても大丈夫らしい。
そんなこんなで、子供扱いだけど優しいふたりに囲まれて過ごすうちに、この国がわざと私を召喚したつもりもなく、先輩に対しても無理にどうこうする事もないというのが本当なんだなって安心し始めたのである。
『ところでカレン。僕の事は、まだ成人していないし殿下とかつけないで? 成人するまではお兄ちゃんみたいに接して欲しい』
『それは良いですね、殿下。ではカレン、俺の事はシビルと』
名前も成人したら人前では敬称をつけたらいいからとふたりがかりで呼び捨てをお願いされたから、最初は口ごもったけれどその都度請われ続けた。今ではすっかり呼び捨てに慣れた。
ある日、ふたりが館で一番寒い、氷の床の部屋で本性を見せてくれた。
「うわあ~かっわい~!」
「きゅーい」
「きゅっきゅっ」
私はいつもは見上げるふたりを見下ろした。
そこには、皇帝ペンギンと、アデリーペンギンがちょこんと立っていて、私を見上げていた。つぶらな真っ黒な瞳、小さな羽をパタパタさせている。お腹のあたりが白くて黒い場所が多い。
故郷でいうところの南極にいる、皇帝ペンギンがゼクスで、アデリーペンギンがシビル。
この国の人たちは南米に住んでいるケープペンギンなんだって。
ペンギンって、南極みたいに極寒の地方だけにいると思っていたけど、寒さにも強いのはゼクスとシビルのペンギンだけらしい。極寒が好きとかじゃないけど、暑いのは苦手。
私はいつもと違うふたりのかわいい姿に、はしゃいでしまった。一緒に氷の上で暫く遊ぶ。
とても楽しい時間を過ごしたのもあって、ふたりは私が落ち込むとこうしてペンギンになって和ませてくれるのだった。
朝が来たのを知らせるスズメみたいな鳥が鳴いている。窓から朝日もしっかり入り込んでいて、私は目を開けた。まるで北海道の春のように涼しい。
ほんの少し身震いして伸びをしようとするが体が動かない。頭もはっきりしたところで、金髪のイケメンに抱き締められている事を思い出して目を瞬かせた。彼の黒い瞳はいつ見ても優しさで溢れている。
金髪のイケメンは、私が起きた事を知ると、とても嬉しそうににっこり笑ってこう言うのだ。
「おはよう、カレン」
「おはようございます……ゼクス」
あれからすでに一週間が経過している。
頬にちゅっとキスされて肩をすぼめた。
※※※※
やはりふたりは私の事を小学校低学年くらいかと思っているようで、とにかく甘やかしすぎる。私が心細いだろうからって、こうしてベッドで添い寝を交代ですると言って聞かなかった。
ひとりで眠れるし心配ないって言ったんだけど、初日に涙を流しながら寝言で家族を繰り返し呼んでいたのを見て聞いたらしい。せめて、大きくなるまではひとり寂しく眠らずに済むよう、自分たちに遠慮するなと強引に抱っこされてしまう。
どうやら、私は自覚がないというか夢を覚えていないんだけど毎日寝ながら泣いているらしい。
昨日寝る時も、もう大丈夫って言ったのに、ゼクスが泣いているからって横に並ぶんだもん。
そりゃ、今でも故郷の家族が恋しいし事ある毎に目が潤んじゃうけれど、実際はもうすぐ16才。日本でも結婚できる年齢でもうすぐ高校生になっていたはずなのだ。
そんな私が、イケメンとひとつのベッドで寝るなんて恥ずかしすぎる。
しかも、ゼクスも鍛えているのか、私よりも30センチは背が高くてサッカー選手とかバスケット選手みたいな体つきだ。
力強くてスタイルのいい彼に抱っこされてしまうと、最初はドキドキドキドキして目が冴える。
でも眠りだした彼の寝息が始まると温かいし眠いから、目がとろんとしていつの間にか眠っちゃう。
そんな彼は14才だという。
年齢を聞いた時にびっくりしたのは言うまでもない。どこの世界にこんなに体がしっかりと大きく成長して、優しくて大人な感じの14才がいるというのだろう。
いや、ここにいた。
20才くらいかと思っていたのに、まさかの年下だった。
ジスクールは、17才らしい。で、シビルが20才って考えられない。特にシビルなんて25才以上かと(実は30才くらいかなーなんて失礼な事を)思ったくらい。
この世界の人は、15才で成人らしいから、日本とは比べものにならないほどしっかりしているっぽい。元騎士団長のシビルの父である人に体も鍛え上げられたらしいから騎士じゃない王子なのにがっしりしている。
ゼクスに、朝の挨拶だからって頬にちゅってされるのも、まだ恥ずかしい。私が顔を真っ赤にして、うつむくとなんだか楽しそうに笑われる。
お返しに頬にキスが欲しいとか言われるけど無理。
そこは、文化の違いをふたりに一生懸命伝えた。外国では挨拶でハグしてちゅってしていたけど、私には難易度が高すぎる。
大好きな人とキスは贈り合うもので、女の子からのキスは、頬やおでことかは勿論、唇なんかは絶対に結婚したいって思う人とじゃないとダメだって言った。
そうしたらイケメンふたりがかりで、自分達からの挨拶のキスはさせて欲しいってお願いスタイルで来られちゃって断れなかった。
それに、私は彼らにとって小学校低学年の子供だ。結局恥ずかしがりながらもこうして受け入れちゃってる。
「おはようございます。殿下、朝食の準備が出来ました。カレン、今日は塩ふったシャケの焼いただけ(焼き鮭)と、ほうれん草を茹でて醤油で味付けした(ほうれん草のおひたし)のと、米の塩だけの味付け茹で(おかゆ)だ。本当にこんなのでいいのか?」
「おはようございます、シビル。はい。朝はあまり食べないのでパンとスープだけでも十分なんです」
「それはダメだよ。カレンは小さいんだから、もっと食べて大きくならないと。ダイエットしているわけでもないんだろう?」
「ゼクス、初日にも言ったけど、ふたりがたくさん食べ過ぎるんですってば!」
朝の着替えとかは流石にひとりにしてもらえるから、顔を洗って準備された服に着替えた。髪はゼクスよりも器用なシビルが大きな節くれだった手で整えてくれる。
今日は、耳の上からツインテールにされた。大きなリボンつき。
ますます子供っぽく見えるけど、今更本当の年齢をカミングアウトできるはずもなく。毎日小学生っぽいライフを過ごしていた。
※※※※
「いただきまーす!」
ゼクスとシビルは私に約束した通り、とても大事にしてくれている。
食事もひとつとっても、ないものは仕方がないけれども、なるべく私の好みの物を用意してくれた。
異世界なのに、知っている名前に食べ物とかがとても多いから通じやすい。
お米は日本みたいなのじゃなくて、細長いパサパサしたやつだった。館の外にゼクス用のコックさんがいるこの国仕様の暖かい厨房で、料理法方を家庭科の授業で習った通りにした。
当たり前なんだけど種類が違うせいか美味しく炊き上がらずしょんぼりした。
だけど、醤油やお味噌に似た調味料や、食材などは似ているのも多い。こちらの国の味付けは少々濃い感じだったけれど私に合うようにコックさんが毎日試してくれている。
基本的に、この屋敷に来る人は少ない。
どうやら、この屋敷の気温は魔法で外気よりも涼しくしているらしい。
廊下は、肌寒いかなくらいの設定ではあるけれども、ゼクスたちが過ごす部屋は10度くらい。
この国ではとんでもなく寒い気温設定みたいで、用事のある時以外に使用人さんたちすら訪れないようだった。
『カレン、寒くないかい? 僕たちはこれよりも温度をあげても大丈夫だよ?』
『はい、ゼクス殿下。私が住んでいたところは氷点下になることもあったし、雪が降っていましたから大丈夫です』
『そうか? 遠慮しなくていいぞ? 我慢して風邪をひいては大変だ』
『シビルさんまで。ふふ、本当に大丈夫ですよ? 兄は0℃でも半袖だったくらいですし、私もちょうどいいくらい。夏の方が辛かったです。地域によりますけれど、40℃とかになってましたもん』
『本当に、異界の乙女というのは環境に強いんだね……』
私がそう言うと、ふたりとも鳩が豆鉄砲をくらったみたいにびっくりしていたけれども、イケメンはそんな顔でもイケメンだった。
警護とは大丈夫なのかと問うと、ゼクスもシビルもすんごく強いみたい。今のところは平和だから大丈夫だとのこと。一応王族だから、館の外は警護されていて魔法の保護結界が施されているから万が一泥棒とかが来ても大丈夫らしい。
そんなこんなで、子供扱いだけど優しいふたりに囲まれて過ごすうちに、この国がわざと私を召喚したつもりもなく、先輩に対しても無理にどうこうする事もないというのが本当なんだなって安心し始めたのである。
『ところでカレン。僕の事は、まだ成人していないし殿下とかつけないで? 成人するまではお兄ちゃんみたいに接して欲しい』
『それは良いですね、殿下。ではカレン、俺の事はシビルと』
名前も成人したら人前では敬称をつけたらいいからとふたりがかりで呼び捨てをお願いされたから、最初は口ごもったけれどその都度請われ続けた。今ではすっかり呼び捨てに慣れた。
ある日、ふたりが館で一番寒い、氷の床の部屋で本性を見せてくれた。
「うわあ~かっわい~!」
「きゅーい」
「きゅっきゅっ」
私はいつもは見上げるふたりを見下ろした。
そこには、皇帝ペンギンと、アデリーペンギンがちょこんと立っていて、私を見上げていた。つぶらな真っ黒な瞳、小さな羽をパタパタさせている。お腹のあたりが白くて黒い場所が多い。
故郷でいうところの南極にいる、皇帝ペンギンがゼクスで、アデリーペンギンがシビル。
この国の人たちは南米に住んでいるケープペンギンなんだって。
ペンギンって、南極みたいに極寒の地方だけにいると思っていたけど、寒さにも強いのはゼクスとシビルのペンギンだけらしい。極寒が好きとかじゃないけど、暑いのは苦手。
私はいつもと違うふたりのかわいい姿に、はしゃいでしまった。一緒に氷の上で暫く遊ぶ。
とても楽しい時間を過ごしたのもあって、ふたりは私が落ち込むとこうしてペンギンになって和ませてくれるのだった。
0
お気に入りに追加
1,287
あなたにおすすめの小説
日本人顔が至上の世界で、ヒロインを虐げるモブA君が婚約者になりました
トール
恋愛
駅の階段から足を滑らせて死亡した高橋由利(享年25)は、親友がハマっていた乙女ゲームの世界に似た、しかし微妙に異なる世界へと転生してしまった。
そこは平凡な日本人顔が絶世の美人と言われる、美醜逆転の世界で、ゲームに出てくる攻略対象者達は面影を残しながらも、地味な日本人顔になっていた!
そんな世界で、絶世の美女と呼ばれ、大富豪で王族よりも権力があるといわれている公爵家の跡取り娘として転生した由利だったが、まさかの悪役令嬢だった?!
しかし、悪役令嬢のフラグを折る運命の相手(婚約者)が現れる。それはヒロインに罵詈雑言吐きまくる名も無きブサモブ(由利視点では超絶美形)。
確かこのモブ君、ヒロインを虐めたとかでゲームの前半に学校を退学させたられたよね?
学校を卒業しないと貴族とは認められないこの世界で、果たして攻略対象者、ヒロインから婚約者を守れるのか!?
良識のある口の悪いモブ(超絶美形)な婚約者と、絶世の美女(地味な日本人顔)主人公との、ざまぁありの美醜逆転ラブファンタジー。
※この作品は、『小説家になろう』でも掲載しています。
【完結】何度時(とき)が戻っても、私を殺し続けた家族へ贈る言葉「みんな死んでください」
リオール
恋愛
「リリア、お前は要らない子だ」
「リリア、可愛いミリスの為に死んでくれ」
「リリア、お前が死んでも誰も悲しまないさ」
リリア
リリア
リリア
何度も名前を呼ばれた。
何度呼ばれても、けして目が合うことは無かった。
何度話しかけられても、彼らが見つめる視線の先はただ一人。
血の繋がらない、義理の妹ミリス。
父も母も兄も弟も。
誰も彼もが彼女を愛した。
実の娘である、妹である私ではなく。
真っ赤な他人のミリスを。
そして私は彼女の身代わりに死ぬのだ。
何度も何度も何度だって。苦しめられて殺されて。
そして、何度死んでも過去に戻る。繰り返される苦しみ、死の恐怖。私はけしてそこから逃れられない。
だけど、もういい、と思うの。
どうせ繰り返すならば、同じように生きなくて良いと思うの。
どうして貴方達だけ好き勝手生きてるの? どうして幸せになることが許されるの?
そんなこと、許さない。私が許さない。
もう何度目か数える事もしなかった時間の戻りを経て──私はようやく家族に告げる事が出来た。
最初で最後の贈り物。私から贈る、大切な言葉。
「お父様、お母様、兄弟にミリス」
みんなみんな
「死んでください」
どうぞ受け取ってくださいませ。
※ダークシリアス基本に途中明るかったりもします
※他サイトにも掲載してます
完結 R20 罪人(つみびと)の公爵令嬢と異形の辺境伯~呪われた絶品の契約結婚をお召し上がりくださいませ 改稿版
にじくす まさしよ
恋愛
R20 昨年のタイトルの改稿版になります
あれは、いつの事だっただろうか──父に連れられた王宮の庭で迷子になった時に、少し年上の少年がいた。美しく生い茂る花々が霞んで見えるほどに父を探してわんわん泣いていたキャロルは涙が止まる。少年がこちらに気づいて──
(その後、どうしたんだっけ?)
「お前のような犯罪者とは婚約破棄だ」と言い出した婚約者がキャンキャン吠えているのを、キャロルは別の事を考えながら右から左に受け流すどころか、耳に入ってこないように魔法でバリアを張っていた。
目の前の二人がいちゃこら始めたのでアホらしくなる。二人の行く末は明るくないだろう、とため息を吐いた。
キャロルは元婚約者の王子に着せられた冤罪によって、辺境伯に嫁ぐ事になる。
辺境伯は人を恐怖に貶め、悪夢に苛まれるほどの醜悪な異形だという噂がある。その人に嫁がねば死に至る、一方的な契約印を首に施された。
辺境に行くと、彼とは会えず仕舞い。執事に、「王族の命令だから凶悪な罪人を娶ったが、お飾りの妻として過ごすように」という辺境伯からの言葉を伝えられた。嫌われたキャロルは、苦々しく見つめる使用人たちにも厳しい視線にさらされる。
結婚なんてしたくないと思っていた彼女は、これ幸いと楽しくぐーたらな日常を過ごすために契約結婚を提案するのであった。
旧題
【完結】【R18】婚約者に冤罪を吹っ掛けられたあげく罰として、呪われた異形に嫁ぐことになりました~嫌われているらしいので契約結婚しちゃいます
キャラクター、ざまぁ要素など、かなり変更しています。
コメント欄をしばらくオープンにしておきます。
2023,7,24コメントとじました
腐女子で引きこもりの姉は隠居したいが、義弟がそれを許してくれない
薄影メガネ
恋愛
・7/3(金)電子書籍化されました!
6/15~6/21紀伊国屋書店調べアルファポリス内、書籍売上3位…‼ありがとうございます。2020/7/1
・6/15(月)発売されました…!
近況ボードにその他ご連絡事項(番外編SS&お試し読み&レンタル開始)アップしました。2020/6/15
・6/11(木)より書店等への出荷(発送)が開始されました…!
詳しくは近況ボードにアップいたしました。2020/6/11
・アルファポリス様のレーベル「ノーチェブックス」HPに出荷予定日が公開されました…!
【出荷予定「6月11日頃」】となります。2020/6/4
・刊行予定が掲載されました。
【刊行予定「6月中旬頃」】2020/5/22
・書籍化作業に伴いまして、一部引き下げました。2020/5/10
ノーチェブックスHPはこちら↓
https://www.noche-books.com/
ノーチェブックスHPより抜粋↓
父の死をきっかけに、女ながらも伯爵家の当主となってしまった、腐女子で引きこもりの伯爵令嬢ユイリー。そんな彼女を支えてくれたのは、有能で超美形な義弟ラースだった。養子であるラースだけれど、不甲斐ない義姉に代わり、当主代行の務めを立派に果たしてくれている。そこでユイリーは、成人したラースに家督を譲り、彼の邪魔にならないよう田舎で隠居生活を送ろうと決意する。これで夢の腐女子ライフが送れるわ……とほくそ笑み、いざ出立の日。どういうわけか隠居計画があっさりラースにバレてしまい、おまけに「姉さんを妻にする」と宣言されて――クールな義弟の執着愛が炸裂!? 独占欲が大・爆・発の蜜愛ファンタジー!!
↑ここまで、
※何だかんだで元々図太い気質の主人公が、シリアスになり切れずポジティブに頑張るお話です。
【R18】聖女は政略で結ばれた婚約相手の王太子殿下を溺愛して癒したい~婚約者は生真面目で冷徹と言われているけれど~
弓はあと
恋愛
今日もふたりの間に会話はほとんど無い。
でもお茶を出せばこちらを見て「ありがとう」と言ってくれる。
言葉数は少ないけれど、私に優しい婚約者。
だから私も、その優しさに応えたい。
※2話目まではシリアス風ですがその後はコメディでえっちなお話です。
※予告なくエッチな場面(R18エロシーン)がでてきますのでご注意ください。
※設定ゆるめ、ご都合主義です。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~
日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。
もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。
そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。
誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか?
そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる