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目が覚めるとそこには筋肉があったようです
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なんだろう、ゆらゆらと温かい水面をただよっているかのように心地いい。うっとりとその気持ちよさに体を預けていると、とん、と背中に何かが当たった。
──なに……?
徐々に意識が浮上しているが、体が主だるくて腕一本動かせない。どうやら、柔らかなベッドに横たわっているようだ。
──ああ、そういえば苦しくて気を失って……。そうしたらナイトハルト様の声が遠くに聞こえて。ああ、これは夢ね。あんな風に声を荒げて焦るように名前を呼んでくださるなんて有り得ないもの。
侍女だろうか、おそらく、体を締め付けられて苦しい体を解放するべくドレスがゆっくりとはだけられた。目も重くて開けられない。侍女には小さな頃から風呂も全て任せている。折角楽な服装に着替えさせてくれるというなら、拒否する事もあるまい。
──あら? 新人の侍女なのかしら? うーん、元王子の婚約者で侯爵令嬢とはいえ罪人相手には上級侍女や下働きは遣わせないのね。ああ、そうじゃない、先ずは、しっかりと縫い付けられた糸を切って。ほら、無理やりひっぱるからレースや縫製が破れたじゃないの。まあいいわ。やっと息が吸えて来た。あら?
くるりと体を反転させられる。要するに腹ばいの状態だ。
──ああ、コルセットの背中の紐をほどくのね。こんな180度回転させるなんて……。もうちょっとましな侍女くらいよこしなさいよ……。
紐をほどき、クロスさせている部分を緩めればそれでいいのに、一つ一つ穴から紐を外されている。
──一体、何分かける気よ。もう、がーっと広げて行ったらすっぽりと抜けるでしょう? まったく。目が覚めたらこの子をきちんと教育してあげないと、この子はこのままだと、今後の勤務が大変でしょうね。
「ん……、はぁ……」
とはいえ、すっかり体幹の締め付けがなくなり、やっと一息つけた。まあ、不器用だったけれど、お礼を言わないといけないだろう。
「あ、あり……、がと」
先ほどまで締め付けられ、疲労困憊で咽がカラカラだ。やっとの思いでお礼を言うと、コルセットの紐に悪戦苦闘してわたくしの腰に馬乗りになってしまっていた人物がびくりと体をゆらしたようだ。
──貴族の腰に乗るだなんて。さては、侍女ではないわね、平民の気が利かない下女なのかも。それにしても、随分体の大きな下女ねえ……。まあ、重量のあるドレス付きのわたくしを抱えるのだから、逞しい女の人が担当になったのでしょう。
やっと、体の上からどいたのだろう。重かった腰が軽くなった。息が出来るようになり、わたくしもようやく体を動かせるようだ。ゆっくりと上に向こうと体を反転させた。
「……! あ、あ! 私は、その、そんなつもりではっ! し、失礼っ!」
「え……?」
視線を、下女だと思っていた人物のほうに投げかけると、顔を真っ赤にして目を大きな手で覆い、慌てふためくナイトハルト様が背を向けてそこにいた。
わたくしは、まろびでるなだらかな二つの曲線とその先端を隠す事も出来ずに、呆然と彼を見続けたのであった。
──なに……?
徐々に意識が浮上しているが、体が主だるくて腕一本動かせない。どうやら、柔らかなベッドに横たわっているようだ。
──ああ、そういえば苦しくて気を失って……。そうしたらナイトハルト様の声が遠くに聞こえて。ああ、これは夢ね。あんな風に声を荒げて焦るように名前を呼んでくださるなんて有り得ないもの。
侍女だろうか、おそらく、体を締め付けられて苦しい体を解放するべくドレスがゆっくりとはだけられた。目も重くて開けられない。侍女には小さな頃から風呂も全て任せている。折角楽な服装に着替えさせてくれるというなら、拒否する事もあるまい。
──あら? 新人の侍女なのかしら? うーん、元王子の婚約者で侯爵令嬢とはいえ罪人相手には上級侍女や下働きは遣わせないのね。ああ、そうじゃない、先ずは、しっかりと縫い付けられた糸を切って。ほら、無理やりひっぱるからレースや縫製が破れたじゃないの。まあいいわ。やっと息が吸えて来た。あら?
くるりと体を反転させられる。要するに腹ばいの状態だ。
──ああ、コルセットの背中の紐をほどくのね。こんな180度回転させるなんて……。もうちょっとましな侍女くらいよこしなさいよ……。
紐をほどき、クロスさせている部分を緩めればそれでいいのに、一つ一つ穴から紐を外されている。
──一体、何分かける気よ。もう、がーっと広げて行ったらすっぽりと抜けるでしょう? まったく。目が覚めたらこの子をきちんと教育してあげないと、この子はこのままだと、今後の勤務が大変でしょうね。
「ん……、はぁ……」
とはいえ、すっかり体幹の締め付けがなくなり、やっと一息つけた。まあ、不器用だったけれど、お礼を言わないといけないだろう。
「あ、あり……、がと」
先ほどまで締め付けられ、疲労困憊で咽がカラカラだ。やっとの思いでお礼を言うと、コルセットの紐に悪戦苦闘してわたくしの腰に馬乗りになってしまっていた人物がびくりと体をゆらしたようだ。
──貴族の腰に乗るだなんて。さては、侍女ではないわね、平民の気が利かない下女なのかも。それにしても、随分体の大きな下女ねえ……。まあ、重量のあるドレス付きのわたくしを抱えるのだから、逞しい女の人が担当になったのでしょう。
やっと、体の上からどいたのだろう。重かった腰が軽くなった。息が出来るようになり、わたくしもようやく体を動かせるようだ。ゆっくりと上に向こうと体を反転させた。
「……! あ、あ! 私は、その、そんなつもりではっ! し、失礼っ!」
「え……?」
視線を、下女だと思っていた人物のほうに投げかけると、顔を真っ赤にして目を大きな手で覆い、慌てふためくナイトハルト様が背を向けてそこにいた。
わたくしは、まろびでるなだらかな二つの曲線とその先端を隠す事も出来ずに、呆然と彼を見続けたのであった。
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