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「トーラ、この恰好は……?」
「前に、女性はうつ伏せにするといいと部下たちが言っていたんだ。その……たぶん、僕のはキツイと思うし、キャロルが少しでも楽なほうがいいと思って……」

 タオルを巻かれているから、正面を向いていても闇、こうしていても闇。暗闇じゃなくても、どの格好でも不安と期待混じりのドキドキは止められないだろう。彼の気遣いがとても嬉しい。胸がいっぱいになって、少しでも楽になるという彼の気遣いを受け入れた。

「辛かったら言って」
「はい……」

 するりと、彼がお尻を撫でた後、眠っている時のようにぴったり体をくっつけてくれた。横にいるよりも少しだけずしりと彼の重さを感じるけれど、それがかえって嬉しいと思う。

 硬いのにぷにっとしたものが、おしりと足の付け根にゆっくり入ってきた。小刻みに出たり入ったりを繰り返しつつ、徐々に奥までこようとする。

「あ……」
「ここかな……。いくよ」

 トーラがわたくしに覆いかぶさりながらそう言うと、ぴたりと当てられた彼の象徴の先端が入ってきた。考えていた以上に、狭い場所を無理やり広げてくるような痛みに、力を抜きたくてもより一層体が強張る。

「……っ!」

 痛いと言えば、彼はやめてしまうだろう。名実ともに彼の妻にやっとなれるのだから、最後までやり遂げたくて必死に耐えた。
 もうどのくらい進んだのか。半分以上は入ったのかもしれない。あと半分。そう思っていた所、彼が言った言葉にびっくりした。

「う……狭いな。それに、とても熱い……。大丈夫かい?」
「は、はい……。どうぞ、そのまま、ああっ!」
「ごめん、キャロル。ゆっくりしようと思っていたんだ。まだ、半分も入っていないんだけど。けど、もう無理だ……!」

 気持ち良すぎると呟いた彼が、一気にずどんとあまりにも大きすぎる剛直を押し込んできた。ゆっくりされても痛かっただろうその衝撃に、口がだらしなく開いて息が止まる。

「はぁ、キャロル……!」
「と……ら、さま……」

 わたくしをぎゅうっと抱きしめ、微動だにしない彼の息がとても熱くて、その熱が彼の気持ちと共にわたくしに伝わる。

(ああ、ようやく、ひとつになれたのだわ。とてもジンジンギリギリを通り越して、焼け付くほど痛いけれど、幸せ……)

「ああ、キャロル。やっとだ。やっと、君とひとつになれた。もうどうなってもかまわないほど幸せすぎる。愛している」
「わたくしも。わたくしも、同じ気持ちです。トーラ、愛しいあなた。これからも、わたくしを側においてください」
「キャロルこそ僕の側にずっといるんだよ。一生離すものか」
「はい。ずっといます。嬉しい……」

 ちゅっちゅと、唇が届く範囲全てにキスを落された。今、一番して欲しい所に届くように、顔を彼の方に向けた。すると、すぐに彼の顔の気配が近づいて唇が当たる。

 体の中に入ったままの彼の熱と、全体を覆う汗ばんだ肌、柔らかな唇に、愛しむようにそっと撫でてくれる手。そのどれもが、わたくしだけに向かっている。
 間違いなく、彼はわたくしを愛して全てを与えてくれたのだ。わたくしも、彼に全てをあげたいし、この思いをわかって欲しい。なのに、きっと、どれほど彼を愛しいと思っているのかなんて、ほんの少ししか伝わっていないだろう。

「トーラ、わたくし、あなたを本当に愛しているのです」

 言葉の一字一句に、この思いを余すことなく乗せて伝えたい。こんなものでは足りない。少しでも彼に届くように、彼の名前を呼び続けた。

「キャロル。僕の唯一。君さえいれば、何もいらない……。僕の方が、君よりももっと深く愛しているよ」
「そんな事……。わたくしの気持ちなんて、半分もわかってらっしゃらないわ」
「そうかな?」
「そうですわ」
「嬉しいよ。でも、僕の方が絶対に君より愛してる」

 彼もわたくしと同じように、心を完全に通わせないもどかしさを感じているのだろうか。だとしたら、とても嬉しい。誰かとどちらがより相手を想っているのかを、言葉を尽くして伝えあえる日が来るなんて、彼と出会うまで思ってもみなかった。

 ベッドでの男の言葉ほど当てにならないと、ウールスタが何かの時に言っていた。でも、今の彼のこの言葉は、きっとそんなんじゃない。真心を込めた真実だと確信出来るほど、温かい何かで身も心も満たされた。

「キャロル、そろそろいいかな?」
「はい」

(そろそろ、体の中から出て行ってしまうのね。もっと繋がっていたいのに……)

 ずるりと、彼の長大な熱が、体の奥から去って行く。ずっとこのままくっついているなんて不可能だ。そう理解しているのに、心は行かないでと叫んで、寂しさを訴えた。

「動かすと痛かったかい?」
「もう痛くはありません。トーラの仰ったように、この姿勢で良かったかもしれませんわね。大丈夫です」
「じゃあ、動くよ」

(動く、とは?)

 そう疑問に思ったのと同時に、再び彼の男の部分が奥を押し上げた。そのまま出て行ってしまうと感傷に浸っていたから、完全に不意を突かれてびっくりしたまま、彼の腰がおしりを叩くたびに我慢できなくなった音が口から漏れる。

「ああ、あっ!」
「キャロル、キャロル……!」

 驚愕と幸福と羞恥と、その他の様々な感情が、胸の中で大騒動を起こしている。でも、彼に名前を呼ばれて、中を刺激されると、たとえようもない感覚がせりあがった。
 ただでさえ、中を押し広げている彼の熱が一際膨らみ、更に圧迫感を感じる。

「う……。キャロル、締め付けないで」
「ああ、あんっ、そんな事は……」

 苦しいほどの大きさのある杭を、締め付けた覚えはない。彼のほうが大きくなったに違いない。そう反論しようとしても、腰を打ち付けられ体がその度に激しく揺れ動くため咽が震える。言い尽くせないほどの感情と、初めて味わう感覚でいっぱいいっぱいになったわたくしは、ひとつたりとも言葉に出来なかった。

「う……」

 考えられない速さで体を揺すられ続けた後、彼が焦るかのように中から出て行く。腰やおしりに、熱い何かが勢いよくかけられ、それは瞬く間に冷たくなった。

「はぁ、はぁ……」

 トーラの息が上がり切り、そっと首と背中の境界あたりの背骨に唇を落された。かけられたものは、本来であればわたくしの中に注がれるものだったのだと気づき、どうして外に出したのかと思うと悲しくなる。

「キャロル、愛している」
「トーラ、わたくしも……え?」

 必死に枕に顔をつけていたわたくしは、見えないけれど彼のほうを見たくて振り返った。すると、そこには、暗闇ではなく、思わず見惚れてしまう煌めいた青と、見知った色と形をした物があったのである。




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