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筋トレ5日目 1/2 弁明すらできず、会えば毎回ラキスケで嫌われる。状況打破のために召喚して現れたのは……? 2/2は右手

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「あぶないっ!」

 俺を見て、一目散に方向転換して逃げたベアトリーチェの背中に向かって、部活中の男子生徒が放ったファイアーボールが迫っていた。ファイアーボールとは、火だるま状態のサッカーボールを上手くゴールに入れた者が勝者となる競技だ。おそらく、練習中に方向が狂ったのだろう。

 それに気づかないベアトリーチェを守るために抱きしめて避ける。彼女に火傷などを負わす事がなくほっとすると同時に、ベアトリーチェはわけのわからないまま、俺に抱きしめられ左手でおっぱいをわしずかみにされている事に気付く。
 俺も勿論、彼女のふにっとしたおっぱいを握りしめている事に気付いた。俺の手でも余って零れそうなほど、まぁるいそこは、一瞬で俺の頭を99%ピンクに染める。指の間付近にある、小指の先ほどの大きさでなんだか変わった感触は、考えなくてもおっぱいのピンク(見た事はないが絶対ピンクだ!)の飾りだろう。

 永遠かとも思える一瞬、至福の右手の中と、俺の体にすっぽりはまる彼女自身を堪能していると彼女が悲鳴をあげた。
 
 彼女の悲鳴を聞き、残りの1%がピンクの99%を退け、俺は慌てておっぱいから手を離すのだ。

「きゃああああああっ! フランチェスコ様、またあなたなの?! いい加減にしてください!」
「わ、わざとじゃ……! さっき、向こうからファイアボー……」
「毎日、毎日……! あなた、私に何か恨みでもあるのですかああ? 嫌がらせにも程があるわ!」
「い、嫌がらせなんかじゃ……」
「じゃあ、単なる痴漢? セクハラ? さいてー、最低よー!  き、嫌い、……だいっきらいっ!」

 俺は状況を弁明する暇もなく、彼女が悲鳴を上げて去って行くのだ。

 とにかく、そういったラッキースケベアンラッキースケベという出来事が何度も繰り返され、俺は彼女にこの世で一番嫌われてしまっていたのである。

 俺のヴィーナスは、俺が視界に入るや否や睨みつけるどころか、すぐに、瞬く間に、一瞬で、どこかに去って行くようになった。わざとじゃなくて事故だと伝えたくても、俺のハートはブレイク、ブローク、ブロークン。いや、なんとかかんとかブレイキングだな。過去形ですでに壊れていたけれど、今も尚壊れ続けているのだから現在進行形ってやつだ。

 走り去るスカートの中の銀河は、思わずそこをガン見してしまうけど、なぜか見えない。スカートの裾は確かに跳ね上がっているというのに……。去って行く彼女の小さな背と、スカートに辛うじて隠されたおしり、そして細くて柔らかい太ももを大人しく見送る日々を送っていた。


※※※※



 俺は少しずつ、この体の持ち主の事が分かってきだした。デジタル化ペーパーレス化が進んだ今は廃れた、古いアルバムを順繰り捲っているような感じだ。授業などは、フランチェスコ君はとても優秀だったようで、体がオートでこなすから困った事はない。
 あの日の翌日、目が覚めても転生したままだったので諦めて学園に行ってみた。クラスメイトに挨拶をしてもびっくりされて挨拶を返されるがそれだけ。クラス中の空気を読むのは前から得意だった俺は、クラスにもどこにも、友達という存在がないのだけはすぐに分かった。



 この世界は、神というよりも精霊みたいな存在が作ったらしい。彼らがバランスを取り、こうして俺たち人間が住まう事を許してくれている。だから、自然を破壊し、精霊を怒らせればあっという間に彼らに滅ぼされるだろう。迷信などではない。実際、魔法を使うにあたり、精霊の力を貸してもらえなければ何も出来ないのだからな。

 昔、自分の力を過信し、精霊に喧嘩を売った者は空気の精霊にあっという間に空気の加護を無くされ呼吸が出来ずに亡くなったとかなんとか。つまり、彼らを怒らせては絶対にならないのである。



 この体の持ち主はフランチェスコ・ザビエルではない。当然だろう。宗教も全く違うからな。


 俺の体の持ち主の名は──つまり、今の俺だが──、フランチェスコ・ザビーリョという、由緒正しき伯爵家の後継者らしい。実家の両親は可もなく不可もない政略結婚同士で仲はそこそこいいみたいだ。家も、領地が貧困にあえいでいるとか、犯罪に手を染めているなどといった事実もなく、THE平凡を絵に描いたような伯爵という地位の中でも中の中だ。

 そんな俺の家は召喚魔法が得意とされている。代々、高位召喚獣を数体も呼び出し国と領民に貢献しているという。

 その事からも、俺は王子の側近候補として注目を置かれていたらしい。

  同い年の王子と一緒に学園に入学してからというもの、王子のために人には言えない事をたくさんしてきた。

──王子のせいで、をずっとさせられていたら、そりゃ嫌になるわなぁ……

 俺は、この体の持ち主のフランチェスコ君に同情した。これもあるあるだが、この人生に嫌気がさして消えたかったフランチェスコ君の代わりに俺がここに来たのかもしれないなんて考察する。

 いったい、なぜ、どうしてこの体に転生したのかは相変わらずわからない。

 ただ、こうして少しずつ記憶の穴埋めをしていくうちに、どうやらこの体の持ち主であるフランチェスコの知られざる秘密をも知る事になったのである。





it keeps breaking.:壊れ続けている
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