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18 ※後半以降R15~完結まで毎回R18前後は組み込まれています
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半ばくらいから性的描写が入って行きます。不快な方はバックお願いします。
※※※※
「ビオラ、もう大丈夫だ。ありがとう」
「マロウ様、申し訳ありません。わたくしがもっと気遣っていたら……自分だけ楽しむ事に夢中になって、貴方を辛い目に合わせてしまいました」
「いや、俺もまさか自分があんな醜態をさらす事になるなど初めてだったから。情けなくてすまない。それに、やみくもに大騒ぎせず、すぐに人目をさけて俺を介抱し続けてくれたんだ。こんなにも優しい人を妻に出来るなんて、これ以上の幸せはない。それに、俺としては、このままずっと、こうしてビオラの膝の上で甘えていさせてもらいたいくらいだ」
元気になったとはいえ、きっと体中が酷い倦怠感に見舞われているにちがいない。だというのに、マロウ様はいつだって私の事ばかりだ。
私が泣いちゃダメだと思えば思うほど、目はいう事を聞いてくれなくて、どんどん涙を作る。
「マロウ様……ぐすっ。わたくしのほうが、絶対に幸せ者なんです」
「ほら、ビオラ。涙を拭いて。泣いているビオラも可愛いが、笑顔が見たい」
「……そうですね。折角の旅行ですものね。ふふ……、そうだ。ねぇ、マロウ様。今まではわたくしがしたい事につきあってくださいました。マロウ様は何をなさりたいの?」
「俺のしたい事は、ビオラと一緒にいる事だ」
「まぁ……でしたら、わたくしと一緒ですね」
マロウ様がようやく立ち上がれるようになってからは、涼しいオープンカフェで冷たいデザートとドリンクをお互いに口に運び、のんびりとゆったりした時間を楽しんだ。
時々、色んな人が話しかけて来てくれて、始終ひやかされてしまった。こそばゆいような、でも、とても嬉しい気持ちで過ごした。
海の見える、テーマパークの象徴ともいえるお城のバルコニーに連れてこられたのは、日が沈む寸前だった。
水平線を朱色に染めながら、海にその姿を映し消えていく大きな太陽。爽やかな潮風が、頬や髪を撫でるから気持ちがいい。
まるで、この世界に、マロウ様とふたりきりになったかのようで、物悲しさや心もとなさが生まれる。だけど、たとえ、マロウ様とふたりきりになっても構わないと思った。
彼と一緒にいるこの一瞬が愛おしい。太陽を溶け込ませたかに見えた広い広い海のように、彼という存在に沈み込んで一つになりたいと思う。
すっかり太陽の光がなくなり、テーマパークはほどよい灯りがぽつぽつついていた。今いる城は、全体がぼんやり輝いて見えるようにライトアップされている。
「ビオラ、目を閉じて」
マロウ様が、私の真正面に立った。言われるがまま、目を閉じて数秒。
「いいよ、目を開けて」
目を開けると、テーマパークのライトが極限まで落とされていて暗闇になっていた。今日は満月だ。優しい月明かりが地上を照らしているけれど、マロウ様がぼんやりしか見えなくて、彼がどこにも行かないようにきゅっと腕をつかんだ。
すると、マロウ様は、私の背後に廻り、しっかり背中から抱きしめてくれた。
「満月じゃないほう、暗い空を見上げてごらん」
「……? わ、わぁ……!」
夜空には、きらきら瞬く星々が散りばめられていた。すると、スーッ、スッと、見間違えたかくらいの星の光が流れていった。
マロウ様が見せてくれたのは、見事な天体ショーだった。ポツポツと、この時期は数が少ないけれど流星が見える。
どいなかの故郷では、珍しくもなんともない煌めく星たちを、これほどまでに天候に恵まれた状態で彼と一緒に見る事が出来るなんて。
背中には、彼の温もりがある。安心しきって心から何かが湧き起こってきそうな、なんでも出来そうなほど浮き立つ気持ちのまま、口を大きく開けたまま夜空を見上げていた。
「あ! マロウ様、今!」
「ああ、すごいな。とても大きな燃える火球だった。俺も初めて見る」
ちょうど、私たちの国の方角に一際大きく、燃え盛る流星が流れたのである。他の皆も見ているにちがいないのに、なんだか、私たちふたりだけの特別な流れ星のように感じて、気が付けば目が潤みを帯びていた。
「ビオラ・バイオレット嬢」
マロウ様が、私が感動して空を見上げていると、そっと体の位置を変えて、私の目の前で片膝をついてくれた。
「はい……」
彼の緊張しきった真剣な眼差しは、とても久しぶりに見る。この視線を、出会った当初は私に対して怒りと嫌悪を抱いていると勘違いしていたのも懐かしい思い出だ。
よく見ると、怒ったかに見えるその瞳の中には、私が愛しくて堪らないと、唇よりもはっきりと彼の気持ちを伝える、流星よりも明るい灯が宿っている。
「初めて見かけた時から、婚約者がいるというのに惹かれていました。あの夜、偶然、貴女と出会って言葉を交わす事がなかったら、私はこんなにも幸せな今日を過ごしていない。貴女が私を見てくれるだけで、私の名を呼んでくれる、たったそれだけで私は天にも昇るほどの至福のひと時を貰えた。どうか、私の妻となり、生涯を貴女の側で共に過ごし守り続ける事をお許しください」
以前私に約束してくれていた、私が弟に冗談半分で言っていたうっとりする憧れの求婚の状況を再現してくれたのだと気づく。彼は、私に嘘は言わない。そして、決して叶えられない約束もしない。
この世界で、彼だけが私にとってのたったひとつの真実。
「マロウ様、わたくしも貴方をずっとお慕いしておりました。貴方とこうしていられる幸せな日々が、今でも夢のようで、目を覚ませば消えてしまうのではないかと怖く感じる時があります。でも、目を開けて見ている今が、たとえ夢だとしても、この夢だけが、わたくしにとっての現実です。どうぞ、わたくしと一緒にいてくださいませ」
マロウ様の差し出す手に、手を重ねた瞬間、強く抱きしめられ唇を奪われた。まるで、私の人生そのものを彼が食べつくすかのような激しいそれに酔いしれる。
「結婚式まで待つと言ったが……すまない、もう待てそうにない。ビオラ、いいか?」
先日、私は誕生日を迎えた。もう彼に全てを捧げる覚悟も出来ているし、私が彼を求めてやまないのは私のほうだ。
彼が、欲しい──
「はい。どうぞ、妻にしてください」
一般には知らされていないけれど、城のバルコニーの側にはゲストルームがある。私たちが宿泊できるように整えられたそこに、マロウ様が私を連れて行く。
そのまま、大きなベッドのシーツの白の中にそっと横たえられた。
※※※※
「マロウ様、愛しています」
私のほうから、彼の唇を求める。
口づけを交わしながら、彼の手が、私のワンピースを一枚一枚丁寧に剥いていくと同時に、私も彼の服を取り除いた。
お互いに、一糸まとわぬ姿になると、ぼんやり白い肌が浮かび上がるほどの、ささやかな月明かりが入り込んでいて、羞恥心にベールをかけてくれる。
「ビオラ、ああ、綺麗だ。愛している」
マロウ様の口が、私の胸の先端をいきなり食んだ。ぬるりとした熱い舌で転がされ、閉じた唇から、意図せぬ声が漏れる。
「……ん。ふわぁ……やっ」
彼にこうして胸を触られるのは、初めてではない。
私が彼を満足させる数よりも、もっと多く、私は深い快楽をマロウ様に教え込まれていた。
足の付け根は、初めて触れられたあの時から、私を怖がらせないために触らないように気遣ってくれている。もどかしくて、切なくなって、私から彼の手をそこに誘導してから、恐々触れてくれるようになったのは最近の事だ。
お互いに、それほど慣れているわけではない。少しずつ、反応を見て高め合っていくうちに、私が余裕をなくして翻弄されるようになったのはあっという間だった。
それを証拠に、彼に今から淫らな事をされるのだと期待するだけで、私の体ははしたなく開いて悦びの向こう側へ駆けていく。
マロウ様の熱は、なんだか今まで見て来た中でも一番大きくなっていて、小さな口からは透明の少し苦い液体がだらだら流れていた。
いつものように、マロウ様を慰めようと、くびれのあたりをくいっと下におろして先端剥き出しにした。ずっとズボンの中にあったそこは、いつものお風呂上りの石鹸の香りなどしなかった。愛しい彼の場所じゃなかったら、絶対に近づきたくないし、触れたくないし、キスなんてとんでもない。だけど、マロウ様のだと思えば、とても素敵に思える。そこに、ちゅっとキスをしようとした途端、止められた。
「ビオラ、汚れているからしなくていい」
「汚れてなんていません」
むわっとした熱のこもった、マロウ様のそこを愛したくて、強引にしようとしたら、身動きできないほど抱きしめられた。
「ビオラ……、本当にいいから。その、ようやくビオラと一つになれるんだ。今日は全てここに出したい」
そう言いながら、足の付け根あたりの下腹をくいっと指先で押された。痛くはないし、ほんの少ししか力を入れられていないのに、彼の指先から出る何かの力が、その奥まで届いた気がした。
そう宣言されて、私は体の力を抜いて、マロウ様のなすがまま、足を広げて太ももで彼の腰をはさんだ。もう閉じられないし、後戻りできない。
きゅうんと、どこかお腹の奥がもどかしそうに、今から与えられる彼の熱と愛を早く受け入れたいと、我がままを叫んでいるみたい。正直すぎる体は、マロウ様以上に私の秘めた場所をびしょぬれにしていた。
「ビオラ、こんなにも濡れて……嬉しいよ」
「や、言わないでください……あぁ……」
足を折りたたまれ、彼のそそり立つ杭が、思わせぶりに私の足の付け根を行ったり来たりしている。なんていやらしい光景なのだろう。まるで、普段の人間という皮を取り払ってしまった獣のようだ。
でも、私は知っている。彼が世界一優しい事を。とても素敵な、私だけの旦那様は私を裏切ったりしない。だからこそ、安心して受け入れられる。
彼の腕のくぼみが力を入れて盛り上がって、私をもう捕えて離さないと言わんばかりに、彼の止める気はないという意思が現れている。
逞しい胸元は、汗がじんわり水滴を作っている。いつも思うのだけれども、割れたお腹から腰にかけて、男の人なのにとても色気があって、全身で私が欲しいと虎視眈々と狙われているみたいにも見える。それほど求められているかと思うと、嬉しい気持ちのほうが強くなる。
マロウ様が愛していると伝えてくれたと同時に、切っ先がじわじわと私の中に入って来るのを感じて、目をぎゅっと閉じたのであった。
※※※※
「ビオラ、もう大丈夫だ。ありがとう」
「マロウ様、申し訳ありません。わたくしがもっと気遣っていたら……自分だけ楽しむ事に夢中になって、貴方を辛い目に合わせてしまいました」
「いや、俺もまさか自分があんな醜態をさらす事になるなど初めてだったから。情けなくてすまない。それに、やみくもに大騒ぎせず、すぐに人目をさけて俺を介抱し続けてくれたんだ。こんなにも優しい人を妻に出来るなんて、これ以上の幸せはない。それに、俺としては、このままずっと、こうしてビオラの膝の上で甘えていさせてもらいたいくらいだ」
元気になったとはいえ、きっと体中が酷い倦怠感に見舞われているにちがいない。だというのに、マロウ様はいつだって私の事ばかりだ。
私が泣いちゃダメだと思えば思うほど、目はいう事を聞いてくれなくて、どんどん涙を作る。
「マロウ様……ぐすっ。わたくしのほうが、絶対に幸せ者なんです」
「ほら、ビオラ。涙を拭いて。泣いているビオラも可愛いが、笑顔が見たい」
「……そうですね。折角の旅行ですものね。ふふ……、そうだ。ねぇ、マロウ様。今まではわたくしがしたい事につきあってくださいました。マロウ様は何をなさりたいの?」
「俺のしたい事は、ビオラと一緒にいる事だ」
「まぁ……でしたら、わたくしと一緒ですね」
マロウ様がようやく立ち上がれるようになってからは、涼しいオープンカフェで冷たいデザートとドリンクをお互いに口に運び、のんびりとゆったりした時間を楽しんだ。
時々、色んな人が話しかけて来てくれて、始終ひやかされてしまった。こそばゆいような、でも、とても嬉しい気持ちで過ごした。
海の見える、テーマパークの象徴ともいえるお城のバルコニーに連れてこられたのは、日が沈む寸前だった。
水平線を朱色に染めながら、海にその姿を映し消えていく大きな太陽。爽やかな潮風が、頬や髪を撫でるから気持ちがいい。
まるで、この世界に、マロウ様とふたりきりになったかのようで、物悲しさや心もとなさが生まれる。だけど、たとえ、マロウ様とふたりきりになっても構わないと思った。
彼と一緒にいるこの一瞬が愛おしい。太陽を溶け込ませたかに見えた広い広い海のように、彼という存在に沈み込んで一つになりたいと思う。
すっかり太陽の光がなくなり、テーマパークはほどよい灯りがぽつぽつついていた。今いる城は、全体がぼんやり輝いて見えるようにライトアップされている。
「ビオラ、目を閉じて」
マロウ様が、私の真正面に立った。言われるがまま、目を閉じて数秒。
「いいよ、目を開けて」
目を開けると、テーマパークのライトが極限まで落とされていて暗闇になっていた。今日は満月だ。優しい月明かりが地上を照らしているけれど、マロウ様がぼんやりしか見えなくて、彼がどこにも行かないようにきゅっと腕をつかんだ。
すると、マロウ様は、私の背後に廻り、しっかり背中から抱きしめてくれた。
「満月じゃないほう、暗い空を見上げてごらん」
「……? わ、わぁ……!」
夜空には、きらきら瞬く星々が散りばめられていた。すると、スーッ、スッと、見間違えたかくらいの星の光が流れていった。
マロウ様が見せてくれたのは、見事な天体ショーだった。ポツポツと、この時期は数が少ないけれど流星が見える。
どいなかの故郷では、珍しくもなんともない煌めく星たちを、これほどまでに天候に恵まれた状態で彼と一緒に見る事が出来るなんて。
背中には、彼の温もりがある。安心しきって心から何かが湧き起こってきそうな、なんでも出来そうなほど浮き立つ気持ちのまま、口を大きく開けたまま夜空を見上げていた。
「あ! マロウ様、今!」
「ああ、すごいな。とても大きな燃える火球だった。俺も初めて見る」
ちょうど、私たちの国の方角に一際大きく、燃え盛る流星が流れたのである。他の皆も見ているにちがいないのに、なんだか、私たちふたりだけの特別な流れ星のように感じて、気が付けば目が潤みを帯びていた。
「ビオラ・バイオレット嬢」
マロウ様が、私が感動して空を見上げていると、そっと体の位置を変えて、私の目の前で片膝をついてくれた。
「はい……」
彼の緊張しきった真剣な眼差しは、とても久しぶりに見る。この視線を、出会った当初は私に対して怒りと嫌悪を抱いていると勘違いしていたのも懐かしい思い出だ。
よく見ると、怒ったかに見えるその瞳の中には、私が愛しくて堪らないと、唇よりもはっきりと彼の気持ちを伝える、流星よりも明るい灯が宿っている。
「初めて見かけた時から、婚約者がいるというのに惹かれていました。あの夜、偶然、貴女と出会って言葉を交わす事がなかったら、私はこんなにも幸せな今日を過ごしていない。貴女が私を見てくれるだけで、私の名を呼んでくれる、たったそれだけで私は天にも昇るほどの至福のひと時を貰えた。どうか、私の妻となり、生涯を貴女の側で共に過ごし守り続ける事をお許しください」
以前私に約束してくれていた、私が弟に冗談半分で言っていたうっとりする憧れの求婚の状況を再現してくれたのだと気づく。彼は、私に嘘は言わない。そして、決して叶えられない約束もしない。
この世界で、彼だけが私にとってのたったひとつの真実。
「マロウ様、わたくしも貴方をずっとお慕いしておりました。貴方とこうしていられる幸せな日々が、今でも夢のようで、目を覚ませば消えてしまうのではないかと怖く感じる時があります。でも、目を開けて見ている今が、たとえ夢だとしても、この夢だけが、わたくしにとっての現実です。どうぞ、わたくしと一緒にいてくださいませ」
マロウ様の差し出す手に、手を重ねた瞬間、強く抱きしめられ唇を奪われた。まるで、私の人生そのものを彼が食べつくすかのような激しいそれに酔いしれる。
「結婚式まで待つと言ったが……すまない、もう待てそうにない。ビオラ、いいか?」
先日、私は誕生日を迎えた。もう彼に全てを捧げる覚悟も出来ているし、私が彼を求めてやまないのは私のほうだ。
彼が、欲しい──
「はい。どうぞ、妻にしてください」
一般には知らされていないけれど、城のバルコニーの側にはゲストルームがある。私たちが宿泊できるように整えられたそこに、マロウ様が私を連れて行く。
そのまま、大きなベッドのシーツの白の中にそっと横たえられた。
※※※※
「マロウ様、愛しています」
私のほうから、彼の唇を求める。
口づけを交わしながら、彼の手が、私のワンピースを一枚一枚丁寧に剥いていくと同時に、私も彼の服を取り除いた。
お互いに、一糸まとわぬ姿になると、ぼんやり白い肌が浮かび上がるほどの、ささやかな月明かりが入り込んでいて、羞恥心にベールをかけてくれる。
「ビオラ、ああ、綺麗だ。愛している」
マロウ様の口が、私の胸の先端をいきなり食んだ。ぬるりとした熱い舌で転がされ、閉じた唇から、意図せぬ声が漏れる。
「……ん。ふわぁ……やっ」
彼にこうして胸を触られるのは、初めてではない。
私が彼を満足させる数よりも、もっと多く、私は深い快楽をマロウ様に教え込まれていた。
足の付け根は、初めて触れられたあの時から、私を怖がらせないために触らないように気遣ってくれている。もどかしくて、切なくなって、私から彼の手をそこに誘導してから、恐々触れてくれるようになったのは最近の事だ。
お互いに、それほど慣れているわけではない。少しずつ、反応を見て高め合っていくうちに、私が余裕をなくして翻弄されるようになったのはあっという間だった。
それを証拠に、彼に今から淫らな事をされるのだと期待するだけで、私の体ははしたなく開いて悦びの向こう側へ駆けていく。
マロウ様の熱は、なんだか今まで見て来た中でも一番大きくなっていて、小さな口からは透明の少し苦い液体がだらだら流れていた。
いつものように、マロウ様を慰めようと、くびれのあたりをくいっと下におろして先端剥き出しにした。ずっとズボンの中にあったそこは、いつものお風呂上りの石鹸の香りなどしなかった。愛しい彼の場所じゃなかったら、絶対に近づきたくないし、触れたくないし、キスなんてとんでもない。だけど、マロウ様のだと思えば、とても素敵に思える。そこに、ちゅっとキスをしようとした途端、止められた。
「ビオラ、汚れているからしなくていい」
「汚れてなんていません」
むわっとした熱のこもった、マロウ様のそこを愛したくて、強引にしようとしたら、身動きできないほど抱きしめられた。
「ビオラ……、本当にいいから。その、ようやくビオラと一つになれるんだ。今日は全てここに出したい」
そう言いながら、足の付け根あたりの下腹をくいっと指先で押された。痛くはないし、ほんの少ししか力を入れられていないのに、彼の指先から出る何かの力が、その奥まで届いた気がした。
そう宣言されて、私は体の力を抜いて、マロウ様のなすがまま、足を広げて太ももで彼の腰をはさんだ。もう閉じられないし、後戻りできない。
きゅうんと、どこかお腹の奥がもどかしそうに、今から与えられる彼の熱と愛を早く受け入れたいと、我がままを叫んでいるみたい。正直すぎる体は、マロウ様以上に私の秘めた場所をびしょぬれにしていた。
「ビオラ、こんなにも濡れて……嬉しいよ」
「や、言わないでください……あぁ……」
足を折りたたまれ、彼のそそり立つ杭が、思わせぶりに私の足の付け根を行ったり来たりしている。なんていやらしい光景なのだろう。まるで、普段の人間という皮を取り払ってしまった獣のようだ。
でも、私は知っている。彼が世界一優しい事を。とても素敵な、私だけの旦那様は私を裏切ったりしない。だからこそ、安心して受け入れられる。
彼の腕のくぼみが力を入れて盛り上がって、私をもう捕えて離さないと言わんばかりに、彼の止める気はないという意思が現れている。
逞しい胸元は、汗がじんわり水滴を作っている。いつも思うのだけれども、割れたお腹から腰にかけて、男の人なのにとても色気があって、全身で私が欲しいと虎視眈々と狙われているみたいにも見える。それほど求められているかと思うと、嬉しい気持ちのほうが強くなる。
マロウ様が愛していると伝えてくれたと同時に、切っ先がじわじわと私の中に入って来るのを感じて、目をぎゅっと閉じたのであった。
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