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最近、若者を中心に流行している恋物語がある。
それは、絵本だったり、短編小説だったり、劇だったり、歌だったり、形を変えてあちこちで話題になっており、今では知らない若い世代はいないほどの人気を博していた。
「マロウ様、ビオラさん、おめでとうございます」
「ローズ嬢、ありがとう。殿下や君たちの多大なる支援のおかげで、私は愛する人とこうして婚約できる日を迎える事ができた」
「ローズ様、ありがとうございます。わたくし、今とても幸せで……ローズ様がたのおかげです」
私たちのそんなやりとりを聞いた、特に若い世代の人々の口から、やはりそうだったのか、殿下にはすっかり騙されていた、チェリーさんも辛かったのね、マロウ様もビオラさんも本当に良かったわ、などという声が上がり始めた。
物語を知らない大人たちは、若い令息や令嬢たちが嬉しそうに興奮して沸き始めたのを見て、どういうとこか首を傾げながら周囲を伺い始めた時、ゼニアオイ侯爵が大きな声で高らかに宣言したのである。
「今日のこのよき日を迎えた事は、我がゼニアオイ家にとっても、バイオレット家にとっても大変喜ばしい。これもひとえに、皆様がたのご支援があればこそ。そして、私事ではありますがもう一人の息子について、この場を借りて伝えたい」
私とマロウ様が並んで一歩下がると、ウスベニ様がローズ様と共に前に立った。
「次男であるウスベニと、キンギョソウ家のローズ嬢の婚約が内々ですが決まりました!」
一瞬、シーンと静まり返ったあと、わぁっと大きなざわめきが、会場内を埋め尽くした。
「なに? ローズ嬢は殿下の婚約者だぞ? どうなっている!」
「これは一体どうした事だ! 我々は何も聞いておらんぞ!」
「とんでもない事でございますわ。なんという……。王家は知っているのでしょうか?」
「そう言えば、娘から、近々殿下とローズ様の婚約がなくなるかもと馬鹿げた話を聞いていましたが、まさか本当に……?」
予想通り、驚愕しているのは大人たちだけだった。この日のために、私たちは若者を中心に、とある悲恋物語を広めたのだから。名前などは微妙に変えているが、庶民ですら殿下とローズ様、それに、チェリーだとわかる内容だ。
※※※※
その物語は、小さな王子が、大人に叱られて隠れてふてくされているシーンから始まる。
王子は小さな手の平で動くカタツムリを見ていた。すると、迷子になり偶然鉢合わせた可愛らしい少女と出会う。その少女は、女の子なのにカタツムリを怖がるどころか興味津々で、あっという間に打ち解けた。彼女は貴族令嬢ではなさそうだ。王子を探しに来た大人たちに見つかると叱られると少女はあっという間に去っていく。
それ以降、その少女と会う事はなかった。まるで小さな花が根付いたかのように、王子の心の片隅に咲く少女の笑顔は、ずっと忘れる事はなかった。
王子として厳しい教育をこなす彼に、やがて婚約者が宛がわれる。その令嬢はとても美しく、賢い子だった。王子とも仲良くなり、お互いに切磋琢磨して育つ。
だが、王子はたった一度会っただけの弾けるような笑顔の女の子を忘れる事は出来なかった。
そんな王子の気持ちを、婚約者の令嬢は聞いた時からずっと応援していて、彼女もまた、心から慕う少年がいる事を打ち明ける。
ふたりは婚約を解消して欲しいとずっと願い出ていたものの、政略結婚として定められた、あまりにも身分の高すぎるふたりのその願いは、叶えられる事はなかった。
やがて王子たちは成長し、学園で抜きんでた才能を惜しげもなく発揮する。ふたりは、このまま政略結婚をして、穏やかでお互いを思いやる家庭を築く決意をしていたのである。
そんなある日、平民だった少女が、伯爵令嬢として学園に入学して来た。なんと、その令嬢は、王子が幼い頃に出会った初恋の人だったのだ。
再会に喜んだのも束の間、自分だけでなく、彼女にもとある侯爵家の後継者という婚約者がいる事を知りショックを受ける。
それ以来、偶然が重なり、ふたりの仲は急接近する。重圧に苦しむ王子に寄り添い、明るく優しい彼女は、献身的に王子を支えた。
お互いに、気持ちを隠したまま月日が過ぎていく。ふたりの結ばれる事のない恋は消えるどころか、ますます大きくなるふたりの心は切なくも悲しみで満ち溢れる。
そんなふたりの切ない恋心を知った婚約者は、王子の背中を押すのだった。王子と婚約者の令嬢はふたたび婚約解消のために動き出す。小さく何も知らなかった子供のままではない。
彼らは協力し合い、降りかかるあらゆる苦難を乗り越え、ついに王は折れた。王を支える重鎮たちも項垂れ、若いふたりの願いを聞き届けたのである。
※※※※
そんな物語は、どう考えても目の前の4人を彷彿とさせた。ダブルヒロインのひとりでもあるチェリーはマロウ様の元婚約者でもあり、マロウ様や私もまた、様々な苦しくも切ない想いを抱え、ようやく結ばれる時を迎えたのだと感動して瞳を潤ませる令嬢もちらほら見受けられる。
会場のあちらこちらで、興奮した彼女たちが知らない周囲にかいつまんで、その真実を含めたフィクションを説明すると、大人たちは鼻白んだものの、ゼニアオイ侯爵が、内定状態ではあるが殿下とローズ様の婚約がなくなり、ウスベニ様がキンギョソウ侯爵に婿入りする事を暗に告げたのだ。
この事で、様々な事情が変化する。喜ぶ者もいれば、阻止したい者もいるだろう。予定外ではあるがあまり影響のない者のほうが大半で、概ね会場の雰囲気が好意的になった頃、ローズ様が口を開いた。
静かだが、会場中に響き渡る、その音楽のような声は人々を魅了するかのよう。
「叔父様、気が早いですわ。殿下とわたくしの婚約の解消を、正式には許可をいただいておりませんのに……」
正式にも何も、今回の事は、陛下たちも寝耳に水の話だ。かなり強引な手段ではあるけれど、今日の私たちの婚約発表の場には、様々な高位貴族が参加している。
明日にも、国をというよりも、中枢部を揺るがす大騒動になるだろう。
だが、殿下の兄でもある王太子殿下がたが、殿下とローズ様の婚約解消が、国家を揺るがすほどの重大事項でない事もあり、王があまりにも頑なであれば、時代に則さない頭の固い高齢者は退陣してもらって、自分筆頭に若い世代に椅子を譲ってもらう事をワクワクして楽しそうに殿下に約束してくれたらしい。
なんでも、殿下も古い考えに思う所があり、これからの時代を自らの手で築き上げたいようだ。
王弟殿下も、協力をしてくれている。
ローズ様が考え、殿下たちが実行した水面下の私たちの行動は、運命の女神の微笑みを得るかどうか、本当は私たちも不安で仕方がない。
『女神の心の赴くままではないわ。極上の微笑みを浮かばせて見せるのよ』
とローズ様が心配な心を微塵も見せずに、不敵に微笑んだあと、殿下もまた胸を張り、自信満々で具体的な計画を述べていったのである。
チェリーが、ウスベニ様がいなかったら、きっとふたりはバディともいえる生涯を支え合い高めあえるパートナーになったに違いない。その事をマロウ様にこっそり伝えると、あれはどちらかというと悪だくみをする悪友同士だなんて意地悪を言っていた。
「ははは、そう言えば、ズッキーニ閣下が手掛ける劇はロングランで歴代最高の観客動員数を誇っているらしいな。殿下も協力されたとか。今や本になったりグッズが出たりと凄いじゃないか。なに、どこかで聞いた話と似通っているという物語は感動を呼ぶらしい。もし見た事のない方がおられるのなら、一度ご覧になるとよろしかろう」
そんな風に、世間話として話をしていると、周囲の視線ががらりと変わったのだった。
マロウ様の婚約解消も、未だに口さがなく言っていた人々すら、殿下やズッキーニ公爵の名が事ある毎に繰り返された事で口を閉ざし、チェリーを殿下を誑かした元平民の悪女だ娼婦だなと言っていた夫人たちも、その事を言っていたのを忘れたのか記憶がぽっかりなくなったのかと思えるほどの手のひら返しを華麗にきめて、口々に賞賛と今後の事を応援し始めたのである。
私とマロウ様の婚約式は、予定外の二組の新しい門出も祝う、近年まれに見る大賑わいを見せて終わりを告げたのであった。
ローズ様とウスベニ様、殿下とチェリーの新たな婚約が正式に発表されたのは、それから3か月後の事であった。
いくら、大多数の国民や若い世代の支持を得て、ゼニアオイ侯爵の派閥が彼らを支援し始めたとはいえ、やはり王たちが抵抗したため難航した。
一度決めて対外的にそれを覆す事は、周囲への信頼が、パワーバランスが、などと言い張るため、宰相の息子である王太子殿下の最側近が集めた数々の横領の証拠を突き付ける事態になった。
それらは公にされる事なかったが、公金を返還し、罪を犯した人はその座から引きずり降ろされ貴族籍を抜かれて辺境の地へ更迭された。王は、知っていてそれらを止めなかった事を追及され、王太子殿下に実権を譲り、名目上は離宮で療養生活をしているという事になった。
王を放逐すれば、彼を筆頭にして内乱を企むものもいるだろう。実質は体のいい幽閉状態だ。
彼らは二度と、中央に戻って来る事はない。
多数の急な人事異動は、多少の混乱を生じたものの、予め殿下たちが土台を築いていてくれたおかげで徐々に収束に向かっていった。
そして、私とマロウ様は、ローズ様とウスベニ様の婚約式の後、以前の約束通り婚前旅行に向かうための船に乗り込もうとしていたのである。
それは、絵本だったり、短編小説だったり、劇だったり、歌だったり、形を変えてあちこちで話題になっており、今では知らない若い世代はいないほどの人気を博していた。
「マロウ様、ビオラさん、おめでとうございます」
「ローズ嬢、ありがとう。殿下や君たちの多大なる支援のおかげで、私は愛する人とこうして婚約できる日を迎える事ができた」
「ローズ様、ありがとうございます。わたくし、今とても幸せで……ローズ様がたのおかげです」
私たちのそんなやりとりを聞いた、特に若い世代の人々の口から、やはりそうだったのか、殿下にはすっかり騙されていた、チェリーさんも辛かったのね、マロウ様もビオラさんも本当に良かったわ、などという声が上がり始めた。
物語を知らない大人たちは、若い令息や令嬢たちが嬉しそうに興奮して沸き始めたのを見て、どういうとこか首を傾げながら周囲を伺い始めた時、ゼニアオイ侯爵が大きな声で高らかに宣言したのである。
「今日のこのよき日を迎えた事は、我がゼニアオイ家にとっても、バイオレット家にとっても大変喜ばしい。これもひとえに、皆様がたのご支援があればこそ。そして、私事ではありますがもう一人の息子について、この場を借りて伝えたい」
私とマロウ様が並んで一歩下がると、ウスベニ様がローズ様と共に前に立った。
「次男であるウスベニと、キンギョソウ家のローズ嬢の婚約が内々ですが決まりました!」
一瞬、シーンと静まり返ったあと、わぁっと大きなざわめきが、会場内を埋め尽くした。
「なに? ローズ嬢は殿下の婚約者だぞ? どうなっている!」
「これは一体どうした事だ! 我々は何も聞いておらんぞ!」
「とんでもない事でございますわ。なんという……。王家は知っているのでしょうか?」
「そう言えば、娘から、近々殿下とローズ様の婚約がなくなるかもと馬鹿げた話を聞いていましたが、まさか本当に……?」
予想通り、驚愕しているのは大人たちだけだった。この日のために、私たちは若者を中心に、とある悲恋物語を広めたのだから。名前などは微妙に変えているが、庶民ですら殿下とローズ様、それに、チェリーだとわかる内容だ。
※※※※
その物語は、小さな王子が、大人に叱られて隠れてふてくされているシーンから始まる。
王子は小さな手の平で動くカタツムリを見ていた。すると、迷子になり偶然鉢合わせた可愛らしい少女と出会う。その少女は、女の子なのにカタツムリを怖がるどころか興味津々で、あっという間に打ち解けた。彼女は貴族令嬢ではなさそうだ。王子を探しに来た大人たちに見つかると叱られると少女はあっという間に去っていく。
それ以降、その少女と会う事はなかった。まるで小さな花が根付いたかのように、王子の心の片隅に咲く少女の笑顔は、ずっと忘れる事はなかった。
王子として厳しい教育をこなす彼に、やがて婚約者が宛がわれる。その令嬢はとても美しく、賢い子だった。王子とも仲良くなり、お互いに切磋琢磨して育つ。
だが、王子はたった一度会っただけの弾けるような笑顔の女の子を忘れる事は出来なかった。
そんな王子の気持ちを、婚約者の令嬢は聞いた時からずっと応援していて、彼女もまた、心から慕う少年がいる事を打ち明ける。
ふたりは婚約を解消して欲しいとずっと願い出ていたものの、政略結婚として定められた、あまりにも身分の高すぎるふたりのその願いは、叶えられる事はなかった。
やがて王子たちは成長し、学園で抜きんでた才能を惜しげもなく発揮する。ふたりは、このまま政略結婚をして、穏やかでお互いを思いやる家庭を築く決意をしていたのである。
そんなある日、平民だった少女が、伯爵令嬢として学園に入学して来た。なんと、その令嬢は、王子が幼い頃に出会った初恋の人だったのだ。
再会に喜んだのも束の間、自分だけでなく、彼女にもとある侯爵家の後継者という婚約者がいる事を知りショックを受ける。
それ以来、偶然が重なり、ふたりの仲は急接近する。重圧に苦しむ王子に寄り添い、明るく優しい彼女は、献身的に王子を支えた。
お互いに、気持ちを隠したまま月日が過ぎていく。ふたりの結ばれる事のない恋は消えるどころか、ますます大きくなるふたりの心は切なくも悲しみで満ち溢れる。
そんなふたりの切ない恋心を知った婚約者は、王子の背中を押すのだった。王子と婚約者の令嬢はふたたび婚約解消のために動き出す。小さく何も知らなかった子供のままではない。
彼らは協力し合い、降りかかるあらゆる苦難を乗り越え、ついに王は折れた。王を支える重鎮たちも項垂れ、若いふたりの願いを聞き届けたのである。
※※※※
そんな物語は、どう考えても目の前の4人を彷彿とさせた。ダブルヒロインのひとりでもあるチェリーはマロウ様の元婚約者でもあり、マロウ様や私もまた、様々な苦しくも切ない想いを抱え、ようやく結ばれる時を迎えたのだと感動して瞳を潤ませる令嬢もちらほら見受けられる。
会場のあちらこちらで、興奮した彼女たちが知らない周囲にかいつまんで、その真実を含めたフィクションを説明すると、大人たちは鼻白んだものの、ゼニアオイ侯爵が、内定状態ではあるが殿下とローズ様の婚約がなくなり、ウスベニ様がキンギョソウ侯爵に婿入りする事を暗に告げたのだ。
この事で、様々な事情が変化する。喜ぶ者もいれば、阻止したい者もいるだろう。予定外ではあるがあまり影響のない者のほうが大半で、概ね会場の雰囲気が好意的になった頃、ローズ様が口を開いた。
静かだが、会場中に響き渡る、その音楽のような声は人々を魅了するかのよう。
「叔父様、気が早いですわ。殿下とわたくしの婚約の解消を、正式には許可をいただいておりませんのに……」
正式にも何も、今回の事は、陛下たちも寝耳に水の話だ。かなり強引な手段ではあるけれど、今日の私たちの婚約発表の場には、様々な高位貴族が参加している。
明日にも、国をというよりも、中枢部を揺るがす大騒動になるだろう。
だが、殿下の兄でもある王太子殿下がたが、殿下とローズ様の婚約解消が、国家を揺るがすほどの重大事項でない事もあり、王があまりにも頑なであれば、時代に則さない頭の固い高齢者は退陣してもらって、自分筆頭に若い世代に椅子を譲ってもらう事をワクワクして楽しそうに殿下に約束してくれたらしい。
なんでも、殿下も古い考えに思う所があり、これからの時代を自らの手で築き上げたいようだ。
王弟殿下も、協力をしてくれている。
ローズ様が考え、殿下たちが実行した水面下の私たちの行動は、運命の女神の微笑みを得るかどうか、本当は私たちも不安で仕方がない。
『女神の心の赴くままではないわ。極上の微笑みを浮かばせて見せるのよ』
とローズ様が心配な心を微塵も見せずに、不敵に微笑んだあと、殿下もまた胸を張り、自信満々で具体的な計画を述べていったのである。
チェリーが、ウスベニ様がいなかったら、きっとふたりはバディともいえる生涯を支え合い高めあえるパートナーになったに違いない。その事をマロウ様にこっそり伝えると、あれはどちらかというと悪だくみをする悪友同士だなんて意地悪を言っていた。
「ははは、そう言えば、ズッキーニ閣下が手掛ける劇はロングランで歴代最高の観客動員数を誇っているらしいな。殿下も協力されたとか。今や本になったりグッズが出たりと凄いじゃないか。なに、どこかで聞いた話と似通っているという物語は感動を呼ぶらしい。もし見た事のない方がおられるのなら、一度ご覧になるとよろしかろう」
そんな風に、世間話として話をしていると、周囲の視線ががらりと変わったのだった。
マロウ様の婚約解消も、未だに口さがなく言っていた人々すら、殿下やズッキーニ公爵の名が事ある毎に繰り返された事で口を閉ざし、チェリーを殿下を誑かした元平民の悪女だ娼婦だなと言っていた夫人たちも、その事を言っていたのを忘れたのか記憶がぽっかりなくなったのかと思えるほどの手のひら返しを華麗にきめて、口々に賞賛と今後の事を応援し始めたのである。
私とマロウ様の婚約式は、予定外の二組の新しい門出も祝う、近年まれに見る大賑わいを見せて終わりを告げたのであった。
ローズ様とウスベニ様、殿下とチェリーの新たな婚約が正式に発表されたのは、それから3か月後の事であった。
いくら、大多数の国民や若い世代の支持を得て、ゼニアオイ侯爵の派閥が彼らを支援し始めたとはいえ、やはり王たちが抵抗したため難航した。
一度決めて対外的にそれを覆す事は、周囲への信頼が、パワーバランスが、などと言い張るため、宰相の息子である王太子殿下の最側近が集めた数々の横領の証拠を突き付ける事態になった。
それらは公にされる事なかったが、公金を返還し、罪を犯した人はその座から引きずり降ろされ貴族籍を抜かれて辺境の地へ更迭された。王は、知っていてそれらを止めなかった事を追及され、王太子殿下に実権を譲り、名目上は離宮で療養生活をしているという事になった。
王を放逐すれば、彼を筆頭にして内乱を企むものもいるだろう。実質は体のいい幽閉状態だ。
彼らは二度と、中央に戻って来る事はない。
多数の急な人事異動は、多少の混乱を生じたものの、予め殿下たちが土台を築いていてくれたおかげで徐々に収束に向かっていった。
そして、私とマロウ様は、ローズ様とウスベニ様の婚約式の後、以前の約束通り婚前旅行に向かうための船に乗り込もうとしていたのである。
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