21 / 39
11 R15未満くらい? 直接的な描写はありませんし、内容も生理的な仕方のない現象です
しおりを挟む
交差する事のない別れたふたつの道が重なり、大きな道になったかのようにひとつになりたくてお互いを求めあい、夢中でキスを繰り返していると、小さくドアがノックされた。
コンコン
「マロウ様、ビオラさん、入ってもよろしくて?」
「マロウさま、ローズさまが……」
「……ビオラの声だけ聞かせてくれ」
ふたりきりになってから、かなりの時間が経過している。よもや、私とマロウ様がキスをしているだなんて思いもよらないだろうから、この事が知られたらマロウ様はどうなるのだろうか。
マロウ様にそっと小さな声でローズ様の来訪を告げたというのに、彼が聞こえていないはずはないのに、そんな事を言い切って私の唇を貪るように合わせて来る。
初めて経験する、くらくらするほどの甘さなんて全く感じないほどの強いキスは、母の読んでいた恋愛小説の文章のように蕩けてドロドロになってしまいそうだ。
コンコンコンコン
「ビオラさん大丈夫ですの? マロウ様、今すぐ開けないと、どうなるかお分かりでしょうね?」
私も、マロウ様と同じく、このまま誰にも邪魔されず一緒にいたい。
応答をしなければこのまま帰ってくれるかもしれない、とちょっとだけ思っていても立ち去るわけがない。逆の立場なら、心配でなおさらここから離れるなんて事は思わないだろう。
コンコンコン、コンコンココココココンッ! ドンッッ!
「兄上! 5秒待ちますから、すぐ開けてください。ごー、よん、さん、にーぃ」
さっきよりも強いノックと口調でローズ様たちが話しかけてきた。乱暴にドアを開け放たないのは流石紳士淑女と言ったところ。
もしも、チェリーのように無礼極まりなく全力でフルでオープンされたら、マロウ様は速攻で怒りに満ちたウスベニ様に大変な目に合わされるかもしれない。
「マロウさま……あの……あの!」
「いいところで……ビオラ、続きはまた」
最後に、私の唇にちゅっと軽く触れるか触れないかのキスをしたあと、マロウ様は長い足を出入り口に向けて颯爽と動かしてドアを開けた。そんな姿もとても素敵だ。キスの余韻もあってうっとりしてしまう。
マロウ様の広い背中を、熱い抱擁の酔いが残っているのか、ぼうっとしたまま見つめていた。彼に触れられたひりひりする唇だけじゃなくて、背中や腰にあった大きくて温かい掌がなくなり、寂しさが押し寄せて来る。
すぐにここに帰って来て抱きしめていて欲しいなんて思ってしまう。彼は目の前にいるというのに、まるで我がままな子供のようだ。
「……兄上、はぁ……どうしようもありませんね。口元をこれで拭いてください。まったく、言わんこっちゃない。一応確認しますが、嫌がるビオラ嬢を無理やり抑え込んだり、乱暴で不埒な真似をしたとかはありませんね?」
「……そんなわけないだろう。事情を察したのなら知らんぷりして立ち去るのが礼儀だぞ?」
「あのですね、このまま今の兄上をビオラさんとふたりきりにしたら、取り返しがつかない事態になりかねないでしょう! 兄上は、まだチェリー嬢と婚約しているのですよ? 適切な距離を保ち、自重自粛できないのであれば兄上を拘束させていただきます!」
「なっ! ウスベニ、兄に対してなんという酷い事を……」
「紳士の皮を被ったケダモノ、スケベじじいという烙印を押されたくなければ、頭とソコを冷やしてください」
そうだった。忘れていたわけではないけれど、キスの間はすっかり忘却の彼方に追いやっていたかもしれないけど、マロウ様はまだ仮のような書類上だけど婚約者がいたと我に返った。
恐らく、マロウ様には私のリップがついていたのだと思うから、自分の口周りもボロボロだろう。その事が気になってそっと手で隠した。
それにしても、頭はわかるけれど、ソコとは、どこなのだろう?
こんな風に考えられるほど落ち着きを取り戻していった。
「まあ、ビオラさん……。泣いてらしたの? 髪も乱れて……ねぇ、ビオラさん。まさかとは思いたいのですが……」
「あの、あの。ローズ様。これは、違うんです……」
私は、慌てて頬を手で拭い去ろうとした。けれど、ローズ様が、柔らかくてさらりとした絹のハンカチでそっと頬を撫でてくれた。腫れたり痛まないようにゆっくりと優しく。
ふわっと、メリッサの香りがして少しずつ高ぶっていた気持ちが更に凪いでいく。
「誤解しないでください……マロウ様は紳士的に距離を保ってくれていました。ただ、私が感情が高ぶりすぎて泣いてしまって……でも、その、おふたりが心配なさるような事は決してありませんでした」
「ビオラ嬢、先ほども言いましたが、これっぽっちも兄上を庇わなくていいんですよ?」
そこに、ウスベニ様が横やりを入れて来たので少々話が脱線していく。
「ウスベニ、お前、兄を信じられないのか?」
「……ええ、信じられませんね。特にソコ。恥を知ってください」
「それこそ、視線と思考を反らせるものだ」
「いいから、隠れてないソコを早く鎮めてください! 何堂々としているんです! 全くもう……こっちが恥ずかしくなるじゃないですか。それに、チェリー嬢との婚約解消がダメになったらどうするんです?」
「堂々とはしていない。お前だって人の事は言えないくせに、勝手にわめいているだけだろう。だが解消が出来なくなるはいかんな」
ウスベニ様が、マロウ様を苦虫を噛んだような顔で睨みつけている。
でも、あら? ちょっとまって。視線が胸元よりももっと下のような……? 腰……、よりも下かも。
ウスベニ様が、マロウ様のどこを見ているのだろうと思っていると、ローズ様が耳を赤くしてふたりのほうを見ないように体ごとくるりと反転させてきた。
「あの、ローズ様?」
「ビオラさんは見てはいけません。まったく、男ときたら殿下とあまりかわらないというかなんというか……はぁ、仕方のない生理的な現象だとはいえ、情けない事ですわ」
ローズ様は、どうやら思わせぶりなウスベニ様の言動や、マロウ様の腰が少し引けている理由が分かっているようだ。私も知りたくなったけど、微笑むローズ様の有無を言わせないオーラを感じて口を閉ざした。
これは興味を持ったらダメなやつだと本能的に悟る。
なんだかんだすったもんだあったあと、私の涙で汚れた顔は、ローズ様がポーチにある化粧で軽く手直ししてくれた。何をしても様になるし、メイクも天下一品。天が二物も三物も四物与えた、宇宙の愛されっ子とはローズ様の事に違いない。
ウスベニ様が、マロウ様を複雑そうに表情をゆがめて見つめていたけれど、長いため息を吐いたのを切欠に、私たちは4人でソファに座った。
マロウ様は私の隣どころか、ぬいぐるみのように抱っこしたまま座ろうとしたけれど、それはふたりに止められた。せめて隣に座ると言い張るのを、ローズ様が私の手を握ってぴったり横に座ったのである。
大柄なマロウ様と、さらに大きなウスベニ様が並んでソファにすわると、なんだかソファが小さく見えるし、壊れそうだ。
「俺たちふたりは、確かに言葉が少なかった。だが、きちんと想いを伝えあった事で、身分差をビオラが気にしすぎている事がわかった。身分など俺には取るに足らない事なのだが、そのために、ビオラの心に寄り添えず辛い思いをさせていて申し訳ない。だが、こうして話をしてお互いを深く知る機会を貰えて、ローズ嬢とウスベニに感謝する。ビオラの杞憂は、うちに来れば全く問題ない事がわかるだろう」
「そうですわね。そもそも建国当時からの長い歴史を誇る子爵家ですし、ビオラさんの立ち振る舞いや賢さは私が及第点以上のサインを認めますわ。ウスベニ様も、ビオラさんのご意思があれば歓迎でしょう?」
「ええ。ビオラ嬢さえ、心の底から兄上に嫁ぐ意思があるのなら、素晴らしい女性ですし、兄上には勿体ないと思います。父母も気に入るでしょうし、何よりも、ビオラ嬢のように奇特な趣味を持つ令嬢は二度と現れませんでしょうからね。歓迎します」
「ウスベニ様、奇特は失礼かと。でも、ふふ……。ご意見には同意ですわ。マロウ様をカッコよくて素敵だという令嬢は珍しいですから、マロウ様にはビオラさんだけですわね」
「あの、ウスベニ様もローズ様も。マロウ様は本当に見目麗しくて素敵な方なのですから、先ほどの事があるからって、そんな意地悪を仰らないでくださいませ」
「ああ、そうでしたわね。マロウ様、親戚で気安い仲とはいえ、口が過ぎました。謝罪します。ふふ、わたしく、ビオラさんと早く親戚になりたいですわ」
「兄上、ごめん。だけど、兄上だって否定は出来ないと思うけど」
「俺の事は俺が良く知っている。だがな、ビオラにさえモテて、一生彼女が俺に夢中になってくれればそれでいい。他の令嬢の不快なさえずりなど知るか。そんな事よりも、チェリー嬢と縁が切れたら、俺たちは婚前旅行に行く事が決まったからな」
「まあまあまあ。ふふふ、ええ、ええ。マロウ様が身軽になった暁には、どうぞ婚前旅行と言わず、そのまま新婚旅行に行ってきてくださいませ」
マロウ様が自信満々に婚前旅行だなんて嬉し恥ずかしい事を言うと、ローズ様は手を叩きながら、ウスベニ様はやれやれといった具合に肩を竦めながらではあるものの、ふたりとも喜んでくれた。
「そうそう、先ほど殿下にお会いしたのです。ふふ、チェリーさんと一緒にふたりきりで、仲良くしてらしたの」
「ローズ嬢、それは……」
「ウスベニ様、先ほどは、わたくしを守ってくださってありがとうございました。あの事は、今のうちに伝えておいた方がいいと思いますの。マロウ様たちにとっても悪くない流れですわよ?」
私は、ローズ様の、ちょっぴり意地悪そうに光る女神のはずなのに小悪魔のような瞳に魅入られて、続く言葉に驚愕したのであった。
コンコン
「マロウ様、ビオラさん、入ってもよろしくて?」
「マロウさま、ローズさまが……」
「……ビオラの声だけ聞かせてくれ」
ふたりきりになってから、かなりの時間が経過している。よもや、私とマロウ様がキスをしているだなんて思いもよらないだろうから、この事が知られたらマロウ様はどうなるのだろうか。
マロウ様にそっと小さな声でローズ様の来訪を告げたというのに、彼が聞こえていないはずはないのに、そんな事を言い切って私の唇を貪るように合わせて来る。
初めて経験する、くらくらするほどの甘さなんて全く感じないほどの強いキスは、母の読んでいた恋愛小説の文章のように蕩けてドロドロになってしまいそうだ。
コンコンコンコン
「ビオラさん大丈夫ですの? マロウ様、今すぐ開けないと、どうなるかお分かりでしょうね?」
私も、マロウ様と同じく、このまま誰にも邪魔されず一緒にいたい。
応答をしなければこのまま帰ってくれるかもしれない、とちょっとだけ思っていても立ち去るわけがない。逆の立場なら、心配でなおさらここから離れるなんて事は思わないだろう。
コンコンコン、コンコンココココココンッ! ドンッッ!
「兄上! 5秒待ちますから、すぐ開けてください。ごー、よん、さん、にーぃ」
さっきよりも強いノックと口調でローズ様たちが話しかけてきた。乱暴にドアを開け放たないのは流石紳士淑女と言ったところ。
もしも、チェリーのように無礼極まりなく全力でフルでオープンされたら、マロウ様は速攻で怒りに満ちたウスベニ様に大変な目に合わされるかもしれない。
「マロウさま……あの……あの!」
「いいところで……ビオラ、続きはまた」
最後に、私の唇にちゅっと軽く触れるか触れないかのキスをしたあと、マロウ様は長い足を出入り口に向けて颯爽と動かしてドアを開けた。そんな姿もとても素敵だ。キスの余韻もあってうっとりしてしまう。
マロウ様の広い背中を、熱い抱擁の酔いが残っているのか、ぼうっとしたまま見つめていた。彼に触れられたひりひりする唇だけじゃなくて、背中や腰にあった大きくて温かい掌がなくなり、寂しさが押し寄せて来る。
すぐにここに帰って来て抱きしめていて欲しいなんて思ってしまう。彼は目の前にいるというのに、まるで我がままな子供のようだ。
「……兄上、はぁ……どうしようもありませんね。口元をこれで拭いてください。まったく、言わんこっちゃない。一応確認しますが、嫌がるビオラ嬢を無理やり抑え込んだり、乱暴で不埒な真似をしたとかはありませんね?」
「……そんなわけないだろう。事情を察したのなら知らんぷりして立ち去るのが礼儀だぞ?」
「あのですね、このまま今の兄上をビオラさんとふたりきりにしたら、取り返しがつかない事態になりかねないでしょう! 兄上は、まだチェリー嬢と婚約しているのですよ? 適切な距離を保ち、自重自粛できないのであれば兄上を拘束させていただきます!」
「なっ! ウスベニ、兄に対してなんという酷い事を……」
「紳士の皮を被ったケダモノ、スケベじじいという烙印を押されたくなければ、頭とソコを冷やしてください」
そうだった。忘れていたわけではないけれど、キスの間はすっかり忘却の彼方に追いやっていたかもしれないけど、マロウ様はまだ仮のような書類上だけど婚約者がいたと我に返った。
恐らく、マロウ様には私のリップがついていたのだと思うから、自分の口周りもボロボロだろう。その事が気になってそっと手で隠した。
それにしても、頭はわかるけれど、ソコとは、どこなのだろう?
こんな風に考えられるほど落ち着きを取り戻していった。
「まあ、ビオラさん……。泣いてらしたの? 髪も乱れて……ねぇ、ビオラさん。まさかとは思いたいのですが……」
「あの、あの。ローズ様。これは、違うんです……」
私は、慌てて頬を手で拭い去ろうとした。けれど、ローズ様が、柔らかくてさらりとした絹のハンカチでそっと頬を撫でてくれた。腫れたり痛まないようにゆっくりと優しく。
ふわっと、メリッサの香りがして少しずつ高ぶっていた気持ちが更に凪いでいく。
「誤解しないでください……マロウ様は紳士的に距離を保ってくれていました。ただ、私が感情が高ぶりすぎて泣いてしまって……でも、その、おふたりが心配なさるような事は決してありませんでした」
「ビオラ嬢、先ほども言いましたが、これっぽっちも兄上を庇わなくていいんですよ?」
そこに、ウスベニ様が横やりを入れて来たので少々話が脱線していく。
「ウスベニ、お前、兄を信じられないのか?」
「……ええ、信じられませんね。特にソコ。恥を知ってください」
「それこそ、視線と思考を反らせるものだ」
「いいから、隠れてないソコを早く鎮めてください! 何堂々としているんです! 全くもう……こっちが恥ずかしくなるじゃないですか。それに、チェリー嬢との婚約解消がダメになったらどうするんです?」
「堂々とはしていない。お前だって人の事は言えないくせに、勝手にわめいているだけだろう。だが解消が出来なくなるはいかんな」
ウスベニ様が、マロウ様を苦虫を噛んだような顔で睨みつけている。
でも、あら? ちょっとまって。視線が胸元よりももっと下のような……? 腰……、よりも下かも。
ウスベニ様が、マロウ様のどこを見ているのだろうと思っていると、ローズ様が耳を赤くしてふたりのほうを見ないように体ごとくるりと反転させてきた。
「あの、ローズ様?」
「ビオラさんは見てはいけません。まったく、男ときたら殿下とあまりかわらないというかなんというか……はぁ、仕方のない生理的な現象だとはいえ、情けない事ですわ」
ローズ様は、どうやら思わせぶりなウスベニ様の言動や、マロウ様の腰が少し引けている理由が分かっているようだ。私も知りたくなったけど、微笑むローズ様の有無を言わせないオーラを感じて口を閉ざした。
これは興味を持ったらダメなやつだと本能的に悟る。
なんだかんだすったもんだあったあと、私の涙で汚れた顔は、ローズ様がポーチにある化粧で軽く手直ししてくれた。何をしても様になるし、メイクも天下一品。天が二物も三物も四物与えた、宇宙の愛されっ子とはローズ様の事に違いない。
ウスベニ様が、マロウ様を複雑そうに表情をゆがめて見つめていたけれど、長いため息を吐いたのを切欠に、私たちは4人でソファに座った。
マロウ様は私の隣どころか、ぬいぐるみのように抱っこしたまま座ろうとしたけれど、それはふたりに止められた。せめて隣に座ると言い張るのを、ローズ様が私の手を握ってぴったり横に座ったのである。
大柄なマロウ様と、さらに大きなウスベニ様が並んでソファにすわると、なんだかソファが小さく見えるし、壊れそうだ。
「俺たちふたりは、確かに言葉が少なかった。だが、きちんと想いを伝えあった事で、身分差をビオラが気にしすぎている事がわかった。身分など俺には取るに足らない事なのだが、そのために、ビオラの心に寄り添えず辛い思いをさせていて申し訳ない。だが、こうして話をしてお互いを深く知る機会を貰えて、ローズ嬢とウスベニに感謝する。ビオラの杞憂は、うちに来れば全く問題ない事がわかるだろう」
「そうですわね。そもそも建国当時からの長い歴史を誇る子爵家ですし、ビオラさんの立ち振る舞いや賢さは私が及第点以上のサインを認めますわ。ウスベニ様も、ビオラさんのご意思があれば歓迎でしょう?」
「ええ。ビオラ嬢さえ、心の底から兄上に嫁ぐ意思があるのなら、素晴らしい女性ですし、兄上には勿体ないと思います。父母も気に入るでしょうし、何よりも、ビオラ嬢のように奇特な趣味を持つ令嬢は二度と現れませんでしょうからね。歓迎します」
「ウスベニ様、奇特は失礼かと。でも、ふふ……。ご意見には同意ですわ。マロウ様をカッコよくて素敵だという令嬢は珍しいですから、マロウ様にはビオラさんだけですわね」
「あの、ウスベニ様もローズ様も。マロウ様は本当に見目麗しくて素敵な方なのですから、先ほどの事があるからって、そんな意地悪を仰らないでくださいませ」
「ああ、そうでしたわね。マロウ様、親戚で気安い仲とはいえ、口が過ぎました。謝罪します。ふふ、わたしく、ビオラさんと早く親戚になりたいですわ」
「兄上、ごめん。だけど、兄上だって否定は出来ないと思うけど」
「俺の事は俺が良く知っている。だがな、ビオラにさえモテて、一生彼女が俺に夢中になってくれればそれでいい。他の令嬢の不快なさえずりなど知るか。そんな事よりも、チェリー嬢と縁が切れたら、俺たちは婚前旅行に行く事が決まったからな」
「まあまあまあ。ふふふ、ええ、ええ。マロウ様が身軽になった暁には、どうぞ婚前旅行と言わず、そのまま新婚旅行に行ってきてくださいませ」
マロウ様が自信満々に婚前旅行だなんて嬉し恥ずかしい事を言うと、ローズ様は手を叩きながら、ウスベニ様はやれやれといった具合に肩を竦めながらではあるものの、ふたりとも喜んでくれた。
「そうそう、先ほど殿下にお会いしたのです。ふふ、チェリーさんと一緒にふたりきりで、仲良くしてらしたの」
「ローズ嬢、それは……」
「ウスベニ様、先ほどは、わたくしを守ってくださってありがとうございました。あの事は、今のうちに伝えておいた方がいいと思いますの。マロウ様たちにとっても悪くない流れですわよ?」
私は、ローズ様の、ちょっぴり意地悪そうに光る女神のはずなのに小悪魔のような瞳に魅入られて、続く言葉に驚愕したのであった。
0
お気に入りに追加
901
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福
ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話。加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は、是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン🩷
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
◇稚拙な私の作品📝にお付き合い頂き、本当にありがとうございます🧡
孕まされて捨てられた悪役令嬢ですが、ヤンデレ王子様に溺愛されてます!?
季邑 えり
恋愛
前世で楽しんでいた十八禁乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生したティーリア。婚約者の王子アーヴィンは物語だと悪役令嬢を凌辱した上で破滅させるヤンデレ男のため、ティーリアは彼が爽やかな好青年になるよう必死に誘導する。その甲斐あってか物語とは違った成長をしてヒロインにも無関心なアーヴィンながら、その分ティーリアに対してはとんでもない執着&溺愛ぶりを見せるように。そんなある日、突然敵国との戦争が起きて彼も戦地へ向かうことになってしまう。しかも後日、彼が囚われて敵国の姫と結婚するかもしれないという知らせを受けたティーリアは彼の子を妊娠していると気がついて……
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる