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こんなはずじゃあ……。どうしよう……
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「いやぁ、おねえさま! おねえさまあああああ!」
シモンのスキルによって消えてしまったシルヴィア。ゾフィアは半狂乱になり、ドレスと宝飾品だけを残して消えたシルヴィアの所に行き、膝をついて泣き叫ぶ。
「ああ、わたくしは、ただ、シモン様と結ばれたくって……。シモン様と苦労もなく結婚出来るお姉様が羨ましくて妬ましくて……。まさか、こんな事になるなんて……! ごめんなさい、ごめんなさいっ! おねえさまあああ、うううう」
先ほどまでシルヴィアを意地悪く勝ち誇った表情をしていたとは思えないほどの半狂乱ぶりだ。
「ゾフィア……、すまない。私もまさか……自分のスキルがこんな風に発動するなんて……」
シモンもまた、愛するゾフィアの家を脅し、騙して傷つけたとはいえ、存在を消そうなどとは思わなかった。それによる憎悪がきっかけで自らが持つ〈呪い〉という制御できないスキルが発動してしまい呆然としてて頭が追い付かない。
正義感あふれる彼は、正規に則った方法でシルヴィアをきちんと裁くつもりだった。だが、これでは私刑そのものである。
自ら犯してしまった過ちに魂までも凍り付いたように感じるが、愛するゾフィアを守らねばならないと自身を奮い立たせて彼女に声をかける。
「いいえ、いいえ。シモン様のせいではありませんの……。わたくしが、ちょっとお姉様を困らせたくて、シモン様をどうしても諦められなくて、だからといって、意地悪をしようとした醜い心を持ったわたくしが悪いんです……!」
「ゾフィアは悪くない……! それを言うなら私が……。ゾフィアに恋をする事を止めることもできず、こうしてスキルを彼女にかけてしまった私が、全て悪いんだ……」
完全に二人の能力ではどうする事もできない事態に対して何ら解決策が見いだせない。そもそも、シモンすら〈呪い〉という家に伝わる忌まわしいスキルの事をそれほど知らないのだ。
「シモン様ぁ……うう、お姉様は一体どこにいったのです? シモン様の家に代々伝わるスキルは〈呪い〉でございますよね? それはどういったものなのですか……? うう、ひっく、ひっく」
「すまない、ゾフィア、わからない、わからないんだ……。歴代当主も最後に発動したのが数百年も前だとされていて……。だが、発動条件は恐らく憎しみだと思う。あの時、私はシルヴィアに対してとても怒っていたから……。だけど、消滅させたいなど、そんな風に思ってはいなかったんだ」
「シモン様のお怒りはごもっともなんです……。だって、お姉様がシモン様を騙していたのは事実なのですもの……。ああ、でも、こんな……どうして……。お姉様はどこに行ってしまったの? ま、まさか、このまま天に?」
「ゾフィア、こうなった以上、この事を公表して然るべき機関に協力を求めてシルヴィアを探そう。きっと彼女は生きている。彼女を危めてしまったこの事を私は隠すつもりはないし罰はきちんと享受する。だが、原因なども全て聴取されるだろうから、シルヴィアの名誉は失墜するかもしれないが……」
「お姉様なら、名誉などお気になさらないと思います……。わたくし、お姉様に謝りたい……。きっと、きちんと筋道を立てて相談すれば、お優しいお姉様はきっとわたくしとシモン様を祝福してくださいましたもの。そう、平民のお母さまをお持ちになっていたからといって、お姉様はずっとわたくしや弟に優しかった……。なんでも自分は二の次で……。きっとこんな、カミンスキ侯爵家を騙す大それたことをするなんて、何か事情があったに違いないわ! なのに、わたくしは自分の恋に心を醜くして、このような愚かなマネを……。お姉様が生きていらしてくれれば……、わたくしはそれで……」
「ああ、シルヴィアはきっと生きている。なんとなくだが、そう感じるんだ。私が発動したスキルなんだ。もしも彼女を死に至らしめていたのであればわかるはず……! ゾフィア、まずは私の父に報告をしよう……。現場はそのままのほうがいいだろうから、辛いだろうが立てるかい……?」
「はい……、シモン様……、うう…………お姉様、どうぞご無事で……」
二人は頷き合い、シルヴィアを探すためにカミンスキ侯爵の元に歩いて行った。
シモンのスキルによって消えてしまったシルヴィア。ゾフィアは半狂乱になり、ドレスと宝飾品だけを残して消えたシルヴィアの所に行き、膝をついて泣き叫ぶ。
「ああ、わたくしは、ただ、シモン様と結ばれたくって……。シモン様と苦労もなく結婚出来るお姉様が羨ましくて妬ましくて……。まさか、こんな事になるなんて……! ごめんなさい、ごめんなさいっ! おねえさまあああ、うううう」
先ほどまでシルヴィアを意地悪く勝ち誇った表情をしていたとは思えないほどの半狂乱ぶりだ。
「ゾフィア……、すまない。私もまさか……自分のスキルがこんな風に発動するなんて……」
シモンもまた、愛するゾフィアの家を脅し、騙して傷つけたとはいえ、存在を消そうなどとは思わなかった。それによる憎悪がきっかけで自らが持つ〈呪い〉という制御できないスキルが発動してしまい呆然としてて頭が追い付かない。
正義感あふれる彼は、正規に則った方法でシルヴィアをきちんと裁くつもりだった。だが、これでは私刑そのものである。
自ら犯してしまった過ちに魂までも凍り付いたように感じるが、愛するゾフィアを守らねばならないと自身を奮い立たせて彼女に声をかける。
「いいえ、いいえ。シモン様のせいではありませんの……。わたくしが、ちょっとお姉様を困らせたくて、シモン様をどうしても諦められなくて、だからといって、意地悪をしようとした醜い心を持ったわたくしが悪いんです……!」
「ゾフィアは悪くない……! それを言うなら私が……。ゾフィアに恋をする事を止めることもできず、こうしてスキルを彼女にかけてしまった私が、全て悪いんだ……」
完全に二人の能力ではどうする事もできない事態に対して何ら解決策が見いだせない。そもそも、シモンすら〈呪い〉という家に伝わる忌まわしいスキルの事をそれほど知らないのだ。
「シモン様ぁ……うう、お姉様は一体どこにいったのです? シモン様の家に代々伝わるスキルは〈呪い〉でございますよね? それはどういったものなのですか……? うう、ひっく、ひっく」
「すまない、ゾフィア、わからない、わからないんだ……。歴代当主も最後に発動したのが数百年も前だとされていて……。だが、発動条件は恐らく憎しみだと思う。あの時、私はシルヴィアに対してとても怒っていたから……。だけど、消滅させたいなど、そんな風に思ってはいなかったんだ」
「シモン様のお怒りはごもっともなんです……。だって、お姉様がシモン様を騙していたのは事実なのですもの……。ああ、でも、こんな……どうして……。お姉様はどこに行ってしまったの? ま、まさか、このまま天に?」
「ゾフィア、こうなった以上、この事を公表して然るべき機関に協力を求めてシルヴィアを探そう。きっと彼女は生きている。彼女を危めてしまったこの事を私は隠すつもりはないし罰はきちんと享受する。だが、原因なども全て聴取されるだろうから、シルヴィアの名誉は失墜するかもしれないが……」
「お姉様なら、名誉などお気になさらないと思います……。わたくし、お姉様に謝りたい……。きっと、きちんと筋道を立てて相談すれば、お優しいお姉様はきっとわたくしとシモン様を祝福してくださいましたもの。そう、平民のお母さまをお持ちになっていたからといって、お姉様はずっとわたくしや弟に優しかった……。なんでも自分は二の次で……。きっとこんな、カミンスキ侯爵家を騙す大それたことをするなんて、何か事情があったに違いないわ! なのに、わたくしは自分の恋に心を醜くして、このような愚かなマネを……。お姉様が生きていらしてくれれば……、わたくしはそれで……」
「ああ、シルヴィアはきっと生きている。なんとなくだが、そう感じるんだ。私が発動したスキルなんだ。もしも彼女を死に至らしめていたのであればわかるはず……! ゾフィア、まずは私の父に報告をしよう……。現場はそのままのほうがいいだろうから、辛いだろうが立てるかい……?」
「はい……、シモン様……、うう…………お姉様、どうぞご無事で……」
二人は頷き合い、シルヴィアを探すためにカミンスキ侯爵の元に歩いて行った。
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