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痴漢加害者と痴漢被害者※単語だけR15~R18 胸糞注意
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──それにしても誰も止めないのか……。くそっ! 任務がなければ俺が動くのだが……
黒髪の男もまた、視界の角にその痴態をとらえつつ、なんとか平静を装うとするが鬼気迫る恐ろしい表情に拍車がかかっていた。すでに車両内の視線は彼女たちに集中している。
「あ、やっ! んんっ……」
小さく女性の赤い唇から声があがり痴漢がほくそ笑む。嫌がりながらも明らかに快楽を堪えられないその音色とともに、片足が痴漢によって持ち上げられ、痴漢が腰を前に少し突き出した。
いよいよか────?
痴漢と女性を固唾を飲んで見守る乗客たちの気持ちが一致した瞬間かもしれない。
黒髪の男はそれでも重要な任務があるため動こうとしなかったが、二人の足下にある物を視界にとらえるとさっと立ち上がった。
即時に二人の足下に強固な防御結界を張る。
「そこまでだ。婦女子に対する痴漢行為の現行犯にて逮捕する!」
びりびりと体の奥底に響くような低い声が黒髪の男から発せられた。
声に驚いた女性は仰向けに転ぶ。上半身のボタンがすでに半分以上外されており、右の乳房がまろび出ていた。ブラジャーはしていなかったのか、いじられ赤くなった尖りが天を向いているのが車両内にいる全員の目に留まる。まくり上げられたスカートは皺をよせており、黒のほとんど布地のないレースの下着はサイドの紐が片方はずされており、彼女の頭髪と同じブラウンの硬い下毛が見えていた。
足は大きく開き、ぬらぬらとてかる股間は影になっており、彼女の下の口から垂らされた涎が車内のライトに照らされてキラキラ輝くのが辛うじて見えるだけであった。
騒ぎに乗じて、遠くにいる特に男性たちがこちらに足早に近づき始めた。目的は野次馬というだけではないだろう。
痴漢はびくりと体をゆすり即座に逃げようとしていたが、ズボンの前のチャックが開けられていて、そこを仕舞う事に気取られた。すでに高く天を向きそそり立っている股間はなかなかズボンの中に入って行かない。
慌ててチャックを上げたため、皮を挟んでしまったようだ。声にならない悲鳴をあげてその場にしゃがみこみ震え出す。
黒髪の男は、大きな体に見合った長い足を動かし、あっという間に二人の側に行くと、床に倒れた被害者にも加害者にも手を伸ばさず、先ほど結界を張った場所にそっと片膝をつく。そして、大きな両手を広げて、まるで壊れやすい国宝を扱うかのようにそっと持ち上げたのであった。
※※※※
黒髪の男の名は、ザムエル・ヴァインベルク。ヴァインベルク侯爵家の次男で27歳独身。彼女もいない。鬼気迫るほどだった彼の表情は、今はあれは夢だったのかと訝しむほど優しい空気に変化している。
「ああ、危うく踏まれてしまうところだったね……」
ほっと溜息を吐くと、手の平に乗せた物に対して微笑む。赤い瞳には優しさが灯っているとはいえ、盛り上がる筋肉と先ほどまでの恐ろしい雰囲気のために周囲は戸惑うばかり。ザムエルの突然の行動に、周囲の全員が首を傾げた。特に、被害者の女性は、痴漢にあって心ならずも快楽を拾い始めて羞恥に悶えているところに転倒しパニックになっている。なおかつ、救出に来たのかと思ったザムエルは自分をほったらかしているではないか。
「な、な……! なんのよ、一体! ちょっとあんたっ! 助けに来るならもっと早く来なさいよっ!」
訳の分からない混乱状態で、胸と股間を隠す事も忘れてザムエルに苦情を言おうと口を開く。
「うるさい! 金切声を出すな。いい加減、服を整えたらどうだ。見苦しい」
「な、な……!」
普通痴漢被害者である自分は大切に扱われるべき存在なのに怒鳴られるなんてと思い、言葉がでないほど怒りで心が染まる。
「……っ!」
チャックに自慢の息子が挟まってしまい息がつまり口から泡を出していた痴漢加害者の男は、四つん這いになったまままだ動けない。
どう見ても、ザムエルには敵いそうにない。大きな体に太い四肢。引き締まった体つきにただ者ではない雰囲気だ。闇の組織の一員かもしれないと被害女性は怯んで慌てて服を整え始めた。
女性は、彼の隣にいる、情けない姿の自分をこんな目に合わせた張本人をぎっと睨みつける。
スカートを片手で降ろしながら、はだけられたシャツを合わせて、おっぴろげられた足を閉じ立ち上がった。
「ぎ、ぎゃぁああっ!」
痴漢の男が女性ににらまれた瞬間悲鳴を上げた。
「あんたのせいで……! とんだ赤っ恥よ!!」
女性が、左手でシャツの前を合わせながら立ち上がると、悲鳴をあげたあと白目を向き倒れた男の腹を思い切り蹴り上げた。
何度も蹴ったあと、女性ははぁはぁと息を肩でし続け、やがて心が鎮まっていくと、周囲に円が出来るように囲まれじっと見られている事に気付く。
「……!」
「まさか、痴漢男はともかく、わざと痴漢させその人物の股間を使いものにならなくするという連続暴行犯までいるとはとんだ偶然に鉢合わせたものだ……」
ザムエルは、痴漢被害者、もとい、連続暴行犯の女性を睨みつけて大きくため息を吐いたのであった。
黒髪の男もまた、視界の角にその痴態をとらえつつ、なんとか平静を装うとするが鬼気迫る恐ろしい表情に拍車がかかっていた。すでに車両内の視線は彼女たちに集中している。
「あ、やっ! んんっ……」
小さく女性の赤い唇から声があがり痴漢がほくそ笑む。嫌がりながらも明らかに快楽を堪えられないその音色とともに、片足が痴漢によって持ち上げられ、痴漢が腰を前に少し突き出した。
いよいよか────?
痴漢と女性を固唾を飲んで見守る乗客たちの気持ちが一致した瞬間かもしれない。
黒髪の男はそれでも重要な任務があるため動こうとしなかったが、二人の足下にある物を視界にとらえるとさっと立ち上がった。
即時に二人の足下に強固な防御結界を張る。
「そこまでだ。婦女子に対する痴漢行為の現行犯にて逮捕する!」
びりびりと体の奥底に響くような低い声が黒髪の男から発せられた。
声に驚いた女性は仰向けに転ぶ。上半身のボタンがすでに半分以上外されており、右の乳房がまろび出ていた。ブラジャーはしていなかったのか、いじられ赤くなった尖りが天を向いているのが車両内にいる全員の目に留まる。まくり上げられたスカートは皺をよせており、黒のほとんど布地のないレースの下着はサイドの紐が片方はずされており、彼女の頭髪と同じブラウンの硬い下毛が見えていた。
足は大きく開き、ぬらぬらとてかる股間は影になっており、彼女の下の口から垂らされた涎が車内のライトに照らされてキラキラ輝くのが辛うじて見えるだけであった。
騒ぎに乗じて、遠くにいる特に男性たちがこちらに足早に近づき始めた。目的は野次馬というだけではないだろう。
痴漢はびくりと体をゆすり即座に逃げようとしていたが、ズボンの前のチャックが開けられていて、そこを仕舞う事に気取られた。すでに高く天を向きそそり立っている股間はなかなかズボンの中に入って行かない。
慌ててチャックを上げたため、皮を挟んでしまったようだ。声にならない悲鳴をあげてその場にしゃがみこみ震え出す。
黒髪の男は、大きな体に見合った長い足を動かし、あっという間に二人の側に行くと、床に倒れた被害者にも加害者にも手を伸ばさず、先ほど結界を張った場所にそっと片膝をつく。そして、大きな両手を広げて、まるで壊れやすい国宝を扱うかのようにそっと持ち上げたのであった。
※※※※
黒髪の男の名は、ザムエル・ヴァインベルク。ヴァインベルク侯爵家の次男で27歳独身。彼女もいない。鬼気迫るほどだった彼の表情は、今はあれは夢だったのかと訝しむほど優しい空気に変化している。
「ああ、危うく踏まれてしまうところだったね……」
ほっと溜息を吐くと、手の平に乗せた物に対して微笑む。赤い瞳には優しさが灯っているとはいえ、盛り上がる筋肉と先ほどまでの恐ろしい雰囲気のために周囲は戸惑うばかり。ザムエルの突然の行動に、周囲の全員が首を傾げた。特に、被害者の女性は、痴漢にあって心ならずも快楽を拾い始めて羞恥に悶えているところに転倒しパニックになっている。なおかつ、救出に来たのかと思ったザムエルは自分をほったらかしているではないか。
「な、な……! なんのよ、一体! ちょっとあんたっ! 助けに来るならもっと早く来なさいよっ!」
訳の分からない混乱状態で、胸と股間を隠す事も忘れてザムエルに苦情を言おうと口を開く。
「うるさい! 金切声を出すな。いい加減、服を整えたらどうだ。見苦しい」
「な、な……!」
普通痴漢被害者である自分は大切に扱われるべき存在なのに怒鳴られるなんてと思い、言葉がでないほど怒りで心が染まる。
「……っ!」
チャックに自慢の息子が挟まってしまい息がつまり口から泡を出していた痴漢加害者の男は、四つん這いになったまままだ動けない。
どう見ても、ザムエルには敵いそうにない。大きな体に太い四肢。引き締まった体つきにただ者ではない雰囲気だ。闇の組織の一員かもしれないと被害女性は怯んで慌てて服を整え始めた。
女性は、彼の隣にいる、情けない姿の自分をこんな目に合わせた張本人をぎっと睨みつける。
スカートを片手で降ろしながら、はだけられたシャツを合わせて、おっぴろげられた足を閉じ立ち上がった。
「ぎ、ぎゃぁああっ!」
痴漢の男が女性ににらまれた瞬間悲鳴を上げた。
「あんたのせいで……! とんだ赤っ恥よ!!」
女性が、左手でシャツの前を合わせながら立ち上がると、悲鳴をあげたあと白目を向き倒れた男の腹を思い切り蹴り上げた。
何度も蹴ったあと、女性ははぁはぁと息を肩でし続け、やがて心が鎮まっていくと、周囲に円が出来るように囲まれじっと見られている事に気付く。
「……!」
「まさか、痴漢男はともかく、わざと痴漢させその人物の股間を使いものにならなくするという連続暴行犯までいるとはとんだ偶然に鉢合わせたものだ……」
ザムエルは、痴漢被害者、もとい、連続暴行犯の女性を睨みつけて大きくため息を吐いたのであった。
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