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昼の匂いは愛しく
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006 隆が帰ってきてる間は、絵美は隆のものだ。
「それは、わかってるんだけどなぁ」
ふと銀二が呟き、絵美が声を掛けた。
「どうかしたんですか? お義父さん」
絵美は絵美で、夫に知られないようにしてはいるが、それでも普段と変わらぬ態度で接しようと決めていた。
(大丈夫。隆さんは、当分出張にはいかないと本人から聞いたから。大丈夫。もう···)
「あ、あれだよ。あれ」
銀二は、思っていた事を言える訳もなく、ただただ聞き流していたテレビ番組の事を言った。
「ほら! 描けたよぉ! みんなの顔ーっ」
雅弘は、幼稚園の宿題で家族の絵を隆と一緒に描いていたのを、見せにきた。
「これがパパで、こっちがママ! で、後ろにいるのが、じーじ」
「あら、可愛い。ね、隆さん!」
(わざとだろうか? 普段から隆のことを隆さんとはあまり呼んでいなかったと思うが···)
「これ、親父?」
「うん。じーじ!」
雅弘が描いた俺の絵は、前に描いてくれた絵とは違って、笑っていた。
「親父、太ったな」
「そうねー。雅弘の目にはそう見えるのかもね。お義父さん」
「······。」
社長業を引退し、家に引きこもる事はないが、3食おやつ付の生活葉、やがおうでも太るのかも知れない。
絵美のイタズラそうな目···
隆は知っているのだろうか?
いま、お前と喋ってる絵美の口は、俺のを何度も飲み込んでいることを···。
「そりゃないか! にしても、この絵の才能は、絵美さんかな」
たまの休日。外の陽射しが、リビングに入ってくる。エアコンついてるが···。
「でも、パパまたお仕事なんだよぉ! 去年の花火の時もお仕事だったよね?」
「去年? そうだっけ? ごめん、ごめん。その変わり、今夜の花火大会にはみんなで行くから···」
そう今夜は、住んでいる室田市きっての花火大会が開催され、鴨居には大人3人、子供1人分の浴衣がかけられている。
「そうよ。ママ頑張って、おばーちゃんに教わったんだからね」
絵美の母親由加さんは、市外で着付け教室を営み、雅弘が産まれてから毎年着付けを教わりに行っていたのを知っている。
「さーて、私は美容院に行って来なきゃ。隆さん、雅弘を床屋にお願いね!」
「はいはい。ほんと、人使い荒いんだから」
「······。」
(笑ってるくせに。俺は今夜お前らのを聞くんだぞ)
「父さんは···必要ないな。昨日行ってきたんだろ? 林さんとこ」
「まーな。あいつんとこ、二人目生まれたからお祝いがてら···」
「じゃ、お義父さん。お留守番お願いしますね。あとで、酒屋さんくるので」
「はいはい」
笑顔で3人を見送ったあと、数分で酒屋が日本酒やビールを届けてくれた。
「今夜、凄いみたいだよ。芸能人のなんとかってのがくるらしい」
銀二は、室田市で産まれ育ったから、ここは地元。小中高の友人やら知人が多く、街で誰にも会わない事はなかった。
「そうなんだってな···」
だから、誰かしらと会うと世間話をしたり、家族の話をしたりすることが多い。
「じゃ、またな!」
「おうっ!」
酒の入ったケースを冷蔵庫近くまで運び、中に入れつつ、土産の菓子を1つつまんだ。
「冷やすと甘さがすごいな、これ」
隆には、悪いとは思っているが、自分の中で蠢く欲望を抑える事が出来ず、隆の芽を盗んでは絵美の胸を触ったり、鱚をしたりしていた。
「ママ可愛い! ね、パパ!」
「惚れ直す、絵美」
「······。」
「じーじ? じーじは、ママ可愛くないの?」
雅弘は、銀二が何も言わないのを不満に思ったのかそう聞いてきた。
「いや。可愛いよ···」
何も言わなかったのではなく、隆がいる手前何も言えなくなっていたのだ。
「あ、ありがとう···ございます」
「浴衣姿、楽しみにしてるよ。雅弘、お前最後まで待ってろよ」
「起きるよ! だって、もぉ、4歳だもん!」
大人3人の前で、ふんぞり返る姿もまた愛おしく、銀二は目を細めた。
「あ、もう3時か。ごめん、ちょっと出てくる。4時には戻るから」
スマホをいじっていた隆がそう言うと、絵美は笑顔で見送った。
「友達からかしら? しきりに、ラインしてたみたいだし」
「まぁ、いろいろ忙しいんだろ?」
と銀二が一歩近付くと絵美は一歩遠ざかる。
「ママ、まーくんお腹すいた。おやつなーに?」
テレビボードから、これから観るのでも決めていたのだろう。よく見ているアニメのDVDが何故か1枚ずつきれいに並べられていた。
「はいはい。おやつね。お義父さんも、なんか食べられます?」
絵美は、冷蔵庫の中を覗き、雅弘の飲むいちご牛乳を取り出していた。
「絵美···」
銀二は、雅弘の様子を伺いながら、絵美の背後に回るとゆっくりと臀部を触る。
「少しだけ···だから」
おやつの用意をしてる絵美に腰を押し付けるように、銀二は絵美のスカートを捲り上げ、ショーツの中に手を伸ばす。
「駄目···雅弘に見られたら···お願い」
絵美は、ショーツの中に入った銀二の手を抜くと、雅弘のもとにおやつを持っていった。
「絵美の匂い···はぁっ」
「それは、わかってるんだけどなぁ」
ふと銀二が呟き、絵美が声を掛けた。
「どうかしたんですか? お義父さん」
絵美は絵美で、夫に知られないようにしてはいるが、それでも普段と変わらぬ態度で接しようと決めていた。
(大丈夫。隆さんは、当分出張にはいかないと本人から聞いたから。大丈夫。もう···)
「あ、あれだよ。あれ」
銀二は、思っていた事を言える訳もなく、ただただ聞き流していたテレビ番組の事を言った。
「ほら! 描けたよぉ! みんなの顔ーっ」
雅弘は、幼稚園の宿題で家族の絵を隆と一緒に描いていたのを、見せにきた。
「これがパパで、こっちがママ! で、後ろにいるのが、じーじ」
「あら、可愛い。ね、隆さん!」
(わざとだろうか? 普段から隆のことを隆さんとはあまり呼んでいなかったと思うが···)
「これ、親父?」
「うん。じーじ!」
雅弘が描いた俺の絵は、前に描いてくれた絵とは違って、笑っていた。
「親父、太ったな」
「そうねー。雅弘の目にはそう見えるのかもね。お義父さん」
「······。」
社長業を引退し、家に引きこもる事はないが、3食おやつ付の生活葉、やがおうでも太るのかも知れない。
絵美のイタズラそうな目···
隆は知っているのだろうか?
いま、お前と喋ってる絵美の口は、俺のを何度も飲み込んでいることを···。
「そりゃないか! にしても、この絵の才能は、絵美さんかな」
たまの休日。外の陽射しが、リビングに入ってくる。エアコンついてるが···。
「でも、パパまたお仕事なんだよぉ! 去年の花火の時もお仕事だったよね?」
「去年? そうだっけ? ごめん、ごめん。その変わり、今夜の花火大会にはみんなで行くから···」
そう今夜は、住んでいる室田市きっての花火大会が開催され、鴨居には大人3人、子供1人分の浴衣がかけられている。
「そうよ。ママ頑張って、おばーちゃんに教わったんだからね」
絵美の母親由加さんは、市外で着付け教室を営み、雅弘が産まれてから毎年着付けを教わりに行っていたのを知っている。
「さーて、私は美容院に行って来なきゃ。隆さん、雅弘を床屋にお願いね!」
「はいはい。ほんと、人使い荒いんだから」
「······。」
(笑ってるくせに。俺は今夜お前らのを聞くんだぞ)
「父さんは···必要ないな。昨日行ってきたんだろ? 林さんとこ」
「まーな。あいつんとこ、二人目生まれたからお祝いがてら···」
「じゃ、お義父さん。お留守番お願いしますね。あとで、酒屋さんくるので」
「はいはい」
笑顔で3人を見送ったあと、数分で酒屋が日本酒やビールを届けてくれた。
「今夜、凄いみたいだよ。芸能人のなんとかってのがくるらしい」
銀二は、室田市で産まれ育ったから、ここは地元。小中高の友人やら知人が多く、街で誰にも会わない事はなかった。
「そうなんだってな···」
だから、誰かしらと会うと世間話をしたり、家族の話をしたりすることが多い。
「じゃ、またな!」
「おうっ!」
酒の入ったケースを冷蔵庫近くまで運び、中に入れつつ、土産の菓子を1つつまんだ。
「冷やすと甘さがすごいな、これ」
隆には、悪いとは思っているが、自分の中で蠢く欲望を抑える事が出来ず、隆の芽を盗んでは絵美の胸を触ったり、鱚をしたりしていた。
「ママ可愛い! ね、パパ!」
「惚れ直す、絵美」
「······。」
「じーじ? じーじは、ママ可愛くないの?」
雅弘は、銀二が何も言わないのを不満に思ったのかそう聞いてきた。
「いや。可愛いよ···」
何も言わなかったのではなく、隆がいる手前何も言えなくなっていたのだ。
「あ、ありがとう···ございます」
「浴衣姿、楽しみにしてるよ。雅弘、お前最後まで待ってろよ」
「起きるよ! だって、もぉ、4歳だもん!」
大人3人の前で、ふんぞり返る姿もまた愛おしく、銀二は目を細めた。
「あ、もう3時か。ごめん、ちょっと出てくる。4時には戻るから」
スマホをいじっていた隆がそう言うと、絵美は笑顔で見送った。
「友達からかしら? しきりに、ラインしてたみたいだし」
「まぁ、いろいろ忙しいんだろ?」
と銀二が一歩近付くと絵美は一歩遠ざかる。
「ママ、まーくんお腹すいた。おやつなーに?」
テレビボードから、これから観るのでも決めていたのだろう。よく見ているアニメのDVDが何故か1枚ずつきれいに並べられていた。
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「駄目···雅弘に見られたら···お願い」
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「絵美の匂い···はぁっ」
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