1 / 50
始まり
しおりを挟む
けたたましく吠える魔物の声。叫び声を上げる護衛兵の声。馬車の中で震えながら、パメラ・ジェローム・ライネック伯爵令嬢はその声を聞いていた。
恐怖で足が震えうまく立てない。それでも外の様子が気になって、そっとカーテンの隙間から外をのぞく。
夕暮れに染まる大地に、人と魔物が絡み合っている。大型の人間のような風貌をした魔物はヴォッヴォッと威嚇する声を上げ続け、森からは次々と同族の魔物があふれ出てきていた。その様子はまるで仲間を呼んでいるかのようだった。
護衛兵たちが徐々に馬車の方へと追い詰められてゆく。
「何としてでもお嬢様を守り抜くんだ!」
おう! とその声に応える。まだ諦めてはいないが、それほど長くは持ちそうにない。徐々に絶望感がその一帯に漂い始めていた。
そのとき、一筋の光が走った。一呼吸遅れて、魔物たちがまるで糸が切れた操り人形のようにバタバタと倒れていく。
「助太刀するぞ。シルバー級冒険者のエルネストだ。こいつらの相手は俺がする。馬車の守りを固めろ」
光り輝く剣を持つ黒髪の男は、そう叫ぶと魔物の間を駆けて行った。
日が落ちて闇に染まりつつある戦場を、光の剣が煌々と照らした。その太陽のような光に励まされ、護衛兵たちは奮起した。
パメラはカーテンの隙間からその光景を見ていた。光り輝く剣に次々と倒されていく魔物たち。その様子はまるで、物語に登場する勇者のようであった。
呆気にとられる護衛兵たちの目の前で、魔物の中でも特別大きな一体がドザリと倒れた。それを皮切りにして残りの魔物が森の中へと逃げてゆく。
辺りを静寂が包み込んだ。
遠くから馬がいななくような声がかすかに聞こえてきたが、すぐにそれも闇の中に消えていった。
エルネストは何もなかったかのように馬車に目を向けた。
パメラの潤んだ瞳と、エルネストの輝く瞳が交錯する。
その瞬間、パメラは恋に落ちた。
パメラが十三歳のときの出来事であった。
それから二年後、成人の儀を終えたパメラはとんでもない計画を両親に突きつけた。そして、それを実行に移したのであった。
両親が天を見上げ、頭を抱えたのは言うまでもなかった。
恐怖で足が震えうまく立てない。それでも外の様子が気になって、そっとカーテンの隙間から外をのぞく。
夕暮れに染まる大地に、人と魔物が絡み合っている。大型の人間のような風貌をした魔物はヴォッヴォッと威嚇する声を上げ続け、森からは次々と同族の魔物があふれ出てきていた。その様子はまるで仲間を呼んでいるかのようだった。
護衛兵たちが徐々に馬車の方へと追い詰められてゆく。
「何としてでもお嬢様を守り抜くんだ!」
おう! とその声に応える。まだ諦めてはいないが、それほど長くは持ちそうにない。徐々に絶望感がその一帯に漂い始めていた。
そのとき、一筋の光が走った。一呼吸遅れて、魔物たちがまるで糸が切れた操り人形のようにバタバタと倒れていく。
「助太刀するぞ。シルバー級冒険者のエルネストだ。こいつらの相手は俺がする。馬車の守りを固めろ」
光り輝く剣を持つ黒髪の男は、そう叫ぶと魔物の間を駆けて行った。
日が落ちて闇に染まりつつある戦場を、光の剣が煌々と照らした。その太陽のような光に励まされ、護衛兵たちは奮起した。
パメラはカーテンの隙間からその光景を見ていた。光り輝く剣に次々と倒されていく魔物たち。その様子はまるで、物語に登場する勇者のようであった。
呆気にとられる護衛兵たちの目の前で、魔物の中でも特別大きな一体がドザリと倒れた。それを皮切りにして残りの魔物が森の中へと逃げてゆく。
辺りを静寂が包み込んだ。
遠くから馬がいななくような声がかすかに聞こえてきたが、すぐにそれも闇の中に消えていった。
エルネストは何もなかったかのように馬車に目を向けた。
パメラの潤んだ瞳と、エルネストの輝く瞳が交錯する。
その瞬間、パメラは恋に落ちた。
パメラが十三歳のときの出来事であった。
それから二年後、成人の儀を終えたパメラはとんでもない計画を両親に突きつけた。そして、それを実行に移したのであった。
両親が天を見上げ、頭を抱えたのは言うまでもなかった。
0
お気に入りに追加
105
あなたにおすすめの小説
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
伝説の鍛冶屋ダナイ~聖剣を作るように頼まれて転生したらガチムチドワーフでした~
えながゆうき
ファンタジー
「来るべき戦いに備えて聖剣を作って欲しい」
女神様からのお願いを引き受けて異世界転生してみると、何とガチムチドワーフだった!?
妖怪ゴブリンを何とか倒したダナイは、聖剣作成の依頼を果たすため、まずは鍛冶屋に弟子入りすることにした。
しかし、お金が心許ないことに気づき、まずは冒険者としてお金を稼ぐことに。
だがそこに待ち受けていたのは、ちょっとしたハプニングとエルフの美女!?
職人としての誇りを胸に、今日もダナイの鎚がうなりを上げる!
例え魔道具作りや錬金術に手を出そうが、心は一つ聖剣作り!
※小説家になろう、カクヨム、ノベリズムでも同じものを公開してます。
王家から追放された貴族の次男、レアスキルを授かったので成り上がることにした【クラス“陰キャ”】
時沢秋水
ファンタジー
「恥さらしめ、王家の血筋でありながら、クラスを授からないとは」
俺は断崖絶壁の崖っぷちで国王である祖父から暴言を吐かれていた。
「爺様、たとえ後継者になれずとも私には生きる権利がございます」
「黙れ!お前のような無能が我が血筋から出たと世間に知られれば、儂の名誉に傷がつくのだ」
俺は爺さんにより谷底へと突き落とされてしまうが、奇跡の生還を遂げた。すると、谷底で幸運にも討伐できた魔獣からレアクラスである“陰キャ”を受け継いだ。
俺は【クラス“陰キャ”】の力で冒険者として成り上がることを決意した。
主人公:レオ・グリフォン 14歳 金髪イケメン
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
お嬢様は、今日も戦ってます~武闘派ですから狙った獲物は逃がしません~
高瀬 八鳳
恋愛
強い女性が書いてみたくて、初めて連載?的なものに挑戦しています。
お読み頂けると大変嬉しく存じます。宜しくお願いいたします。
他サイトにも重複投稿しております。
この作品にはもしかしたら一部、15歳未満の方に不適切な描写が含まれる、かもしれません。ご注意下さいませ。表紙画のみAIで生成したものを使っています。
【あらすじ】
武闘系アラフォーが、気づくと中世ヨーロッパのような時代の公爵令嬢になっていた。
どうやら、異世界転生というやつらしい。
わがままな悪役令嬢予備軍といわれていても、10歳ならまだまだ未来はこれからだ!!と勉強と武道修行に励んだ令嬢は、過去に例をみない心身共に逞しい頼れる女性へと成長する。
王国、公国内の様々な事件・トラブル解決に尽力していくうちに、いつも傍で助けてくれる従者へ恋心が芽生え……。「憧れのラブラブ生活を体験したい! 絶対ハッピーエンドに持ちこんでみせますわ!」
すいません、恋愛事は後半になりそうです。ビジネスウンチクをちょいちょいはさんでます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる