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あれはヤバい

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「うっわ、凄い解放感! 素敵だわ!」
 一番に服を脱ぎ終えたフェオが湯船に浸かりながらそう言った。まだ体を洗う施設が整っていなかったので、かけ湯だけで済ませたが、源泉かけ流しなので許して欲しい。
「おお、本当だ。温度もいい感じの熱さになってるね。空を見上げながらの風呂もやっぱりいいもんだね~」
「うん。気持ちいい」
 無表情に見えるエクスの顔が僅かにゆるんでいるのが分かる。本当に気持ちがいいのだろう。
「クリスティアナ様? まだで・・・」
「ちょっと!? まだこちらを見ないで下さいませ!」
 なかなか湯船に入ってこないクリスティアナ様が心配になり、振り返ろうとしたのを慌てて止めた。だが、一瞬視界に入った。
 ヤバい、あれはヤバい。フェオやエクスのように堂々と入ってもらえればそんなに意識することもないのだが、クリスティアナ様のように恥ずかしがられると、どうしても意識してしまう。そうなると、クリスティアナ様の裸が途端に魅力的なものになるのだ。
 シリウス君の豆柴でなくなりつつある豆柴が牙を剥くのも仕方がないことだろう。これでしばらくは湯船から立つことはできない。
「も~、クリピーってばいつになったら普通にお風呂に入れるのよ」
「な、何を言っているのですか。普通にお風呂に入っているではないですか」
 ようやく湯船に浸かったクリスティアナ様が俺の隣でフェオと言い合っている。
「だって、いっつもお風呂に入るのが遅いじゃない。あたしはみんなで一緒にお風呂に入りたいのに」
 フェオはこうやって、みんなで一緒にいることが大好きだ。イタズラも好きだが、それは本能である。仕方がない。
 一緒にお風呂に入るのも、一緒に寝るのも、一緒に出かけるのも、一緒に仕事をするのも大好きだ。きっと寂しがりやなのだと思う。長い間、一人だったしね。
 ブーブー言うフェオを、クリスティアナ様には準備が必要なんだよ、となだめ話題を変えた。
「ところで、クロはお風呂に入らないの? 気持ちいいよ?」
【ワシは猫なので、入らなくても結構】
「そういうわけにはいきませんわ。汚い人は嫌われますわよ」
「そうそう。なんならあたしが洗ってあげようか? 試したい魔法があるんだけど?」
【大人しく入ります】
 クロに湯をかけて清めてあげると、すぐに湯船に浸かった。フェオは残念そうにしていたが、魔法の実験台にされては敵わないとクロは思ったのだろう。分かるよ、その気持ち。
 ピーちゃんは不審者が露天風呂に入ってこないように見張り番をしてくれている。必要ないとは思うのだが、本人たっての希望である。決していじめではない。生真面目なピーちゃんの角が取れる日は来るのだろうか? 神のみぞ知る、たな。
「おお、さすがの美肌効果だな。肌がスベスベになってきた。ほら、見て下さいよ」
「本当ですわ。お風呂ではこのようなことは起こりませんでしたわ。これが温泉の効用なのですわね」
「本当だ! スベスベ~。ほら、シリウス、触ってみてよ!」
「え? あ、ああ、うん。・・・ほんとだ。スベスベしてる」
 自分の肌よりもフェオの肌の方がスベスベになっている気がする。だが、冷静に今の状況を見てみると、何やらフェオにいやらしいことをしている構図になっているような・・・。フェオはラグビーボールくらいの大きさなので、それを触るとなると、どうしても胸やお尻を触ってしまうのだ。
 フェオが俺のことを好きなのは知っているし、俺もフェオのことが好きだ。普段はギクシャクしないように、お互いなるべく意識しないようにしているが、このスキンシップはそういうわけにはいかなかった。
 フェオもそのことに気がついたのか、何だかもじもじし始めた。うっ、静まりかけていたシリウス君のシリウス君が・・・。
「シリウス様、私の肌も触ってみて下さい。こんなにスベスベになっていますよ」
 おっと、それに気がついたクリスティアナ様が参戦してきた! どうする、俺! 大丈夫かシリウス君!
「マスター、私も触ってほし・・・何これ? 硬い?」
 自分も、と寄ってきたエクスの手がシリウス君に当たった。だが、人間社会に入って日が浅いエクスはそれがナニか分からない様子。それを握ろうとしたので慌てて止めた。
 それが何なのかを知っているクリスティアナ様とフェオは、顔どころか全身が真っ赤になってうつむいた。
 こんなとき、どんな顔をすればいいんだろう。
 ちなみにクリスティアナ様の肌は触り損ねた。
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