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ビッグファイアータートル討伐①

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 翌日、エルフの国を出発した俺たちは予定通りの場所に到着すると、明日の決戦に備えて野営の準備に取りかかった。この位置からなら、多少相手が移動していても確実に遭遇することができるはずだ。

「ジル、そっちの準備は万端か?」
「ああ、もちろん。フェルがすごい魔法を使えるんだ。これがあれば、火の中でも余裕だな」
「一体どんな魔法なの?」

 ジルのその発言にエリーザが身を乗り出して聞き返した。今回のビッグファイアータートル討伐での役割は、俺がジルを、リリアが全員を魔法で補助することになっている。そして、俺とリリアでは、それぞれ違う魔法を使うことになっていた。

「フッフッフ、聴いて驚け! フリーズ・アーマーって魔法さ!」
「フリーズ・アーマー? 聞いたことがない魔法ね」

 エリーザが首をかしげている。アーダンも興味があるのか、夕食の下ごしらえをする手を止めた。特に秘密にする理由もないので、どんな魔法なのかを教えた。

「氷でできた鎧をジルにまとわせる魔法だよ。魔力だけで作り出した氷の鎧だから重さはないし、火耐性がかなり高いんだ」
「なるほど、そんな魔法があるのか。それならその魔法を全員に使えば良いんじゃないのか?」

 アーダンが下ごしらえを再開しながら聞いてきた。

「それが、複雑な形をしている体全体に氷を覆わせる都合上、その魔法を使うのにかなり集中しないといけないんだよ。だからみんなの防御はリリアがすることになる」
「基本的に魔法は大雑把なことが得意だからね。細かい部分に気を遣うとなると、途端に難易度が跳ね上がるのよ。フェルだからできるけど、普通はできないわ」

 何だか勝ち誇ったような表情で、リリアが解説を入れてくれた。エリーザにも身に覚えがあったのか、納得したかのように両手を組んでうなずいていた。治癒魔法も神経を使うからね。特に体の欠損を治すときとかはかなりの集中力が必要だ。

「明日はリリアちゃんがフリーズ・バリアでみんなを守りつつ、フェルがジルにフリーズ・アーマーを使う。それでも防げなかったときのケガを私が治す。アーダンはいつも通り、敵を引きつける役ね」
「そうなるな。うまく相手の敵視をこちらに向けて、ジルの存在を忘れてもらわないといけないな」

 ジルに対する警戒が薄まれば薄まるほど、首を刎ねるチャンスが高くなる。そしてジルの安全性も高くなる。
 火の塊に長時間接近するのは危険だ。アーダンもなるべく離れたところから相手を挑発することになっている。そのため、今回の作戦では鎖の先端にトゲトゲの鉄球がついた武器を使うことになっている。

「あとは口から吐く火がどのくらいの強さなのかだね」
「そうね。遠くからならフリーズ・バリアでも十分に防ぐことができると思うけど、近くになるほど危険ね」
「うまく距離を取って戦わないといけないな」

 そんな話をしている間に夕食が完成した。それをみんなに配ると、さっそく舌鼓を打った。そこにこれから大物と戦うことになることに対する緊張感はなかった。
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