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仲間②

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「魔法って便利だな」
「違うわよ。この二人が異常なだけよ」
「そうか? エリーザも異常だって聞いたけどな。おおっと、エリーザはこの魔法は使えないのか?」

 エリーザの拳を避けながらジルが疑問を口にした。

「石の家を作る魔法なんて、聞いたことも、さっきまで見たこともなかったわよ」

 ここで一晩過ごすことになったので、それなら、と石の家を作ったのだ。アーダンが使っているかまどが土間になるように家を作った。もちろん、奥には板張りの部屋がある。
 土間には他に、石造りのイスとテーブルが設置されていた。

「確かにこれなら安全に夜を過ごすことができるな。しかも交代で夜の晩をする必要もなさそうだ」
「それでもオーガキングみたいな魔物にたたかれたら、ひとたまりもないけどね」
「そんな機会はめったにないわよ。まあ、その前にアナライズで気がつくけどね」

 リリアが得意げにそう言った。ジルが先ほど言っていたように、エリーザもただ者ではないらしく、夕食ができるまでの間にアナライズの魔法を習得していた。今はスモール・ライトの魔法を教えているところだ。

「世の中にはまだまだ知らない魔法がたくさんあるのね。ジルと一緒に旅に出て良かったわ」
「そうだろ?」
「巻き込まれた俺はそうでもないけどな」

 そう言うアーダンの顔は笑っていた。どうやら満更でもないようだ。そしてどうやら、この三人は幼なじみのようである。そんな三人がちょっと羨ましかった。

「さあ、夕食ができたぞ。みんな、運んでくれ」
「了解」

 今日の料理はシチューだった。まだ口に入れていないのに、良い香りに誘われてよだれが出そうだ。アーダンが深めのお皿につぎ分けたものをテーブルに運ぶ。一緒にスプーンとフォークも用意した。

「お、フェルは中々手際が良いな。あいつら二人は何度言っても手伝ってくれなくてな」
「フェルは料理を作るのに興味があるからね。いつかあたしにおいしい料理を食べさせてくれるんだって。楽しみだわ」
「そりゃあいい。俺も料理仲間ができてうれしいぞ」

 そんなに楽しみにしてくれていたのか。これは何としてでも特別なスープを作らなくてはいけないな。

「手伝わないだなんて失礼ね。前に手伝ったときに『やめてくれ』って言ったのはどこのだれよ?」
「それは料理を作る手伝いをするのをやめてくれって意味だよ。出来上がった料理を運ぶのは別だ」

 何だろう、今、アーダンから不吉な発言を聞いたような気がする。もしかして、エリーザはメシマズなのか? 要注意だな。

「お、ちびっ子は専用の食器を持っているのか。良くこんなもの見つけてきたな」
「ちびっ子じゃないわよ、この野蛮人! これはね、フェルがヒゲもじゃにお願いして、特別に、あたしのために作ってもらったものなのよ」
「愛されてるわね~、リリアちゃん」

 エリーザの顔がニヤニヤしている。いやらしい。

「ほらお前ら、冷める前に食べるぞ」
「いただきまーす! おお、こりゃうまい。さすがだな、アーダン」
「今日はいつもより気合いが入ってるじゃない」
「そりゃ、助太刀してくれたお礼もかねているからな」

 相変わらず騒がしい三人につられて、俺たちもシチューを口に運ぶ。もちろん、リリア用に取り分けている。

「うん、これは絶品だね」
「おいしいわ。お店で出せるんじゃないの?」
「そうだろう、そうだろう。冒険者をやめたら料理屋を開こうかと思ってるからな」

 ウソかホントか。アーダンが笑った。
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