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仲間①
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オーガの団体を討伐してから一息つくと、魔石集めの時間になった。もうどっちのパーティーがどれだけ倒したのか分からなかったので、集めた魔石をあとで半分にすることにした。
「便利な魔法を持ってるわよね、二人とも」
「魔石を見つける魔法か。うちにも欲しいな。エリーザは使えないのか?」
「そんな魔法、聞いたこともないわよ」
俺たちが使っているアナライズの魔法はその昔に使われていた初級魔法である。そのため、使い方さえ教えてもらえれば、魔法使いならだれでも使えるはずだ。
「教えてあげようか? エリーザも少し練習すればすぐに使えるようになるわよ」
「ほんと!? 教えてよ、リリアちゃん!」
「あたしを師匠と崇めるなら教えてあげるわよ?」
「師匠~お願いします!」
エリーザさんにはプライドも何もないようである。魔法に対して貪欲とも言う。だが別にリリアを師匠呼ばわりする必要はないと思う。たぶんリリアは冗談のつもりで言ったんだと思うよ。ほら、リリアの顔が引きつってる。
「わ、分かったわ。教えてあげるわ。別に減るものでもないしね。それじゃ、フェル、教えてあげてよ」
「なんで俺!? 師匠が教えてあげればいいじゃないですか~」
うわ、リリアがめっちゃ嫌そうな顔をしてる! だったら言わなきゃ良いのに。どうして面白くなりそうだと思ったら、後先を考えずに言うのか。それが妖精の性質なのか?
「冗談だよ、リリア。エリーザさんもさっきまでのようにリリアって呼んであげてよ。今のは軽い妖精ジョークだよ」
「妖精ジョーク……」
「奥が深そうだな。と言うか、そのジョークを理解できるのはフェルしかいないんじゃないのか?」
アーダンさんの言う通りかも知れない。十年にも及ぶリリアとの付き合いが、俺とリリアの間に妙な信頼関係を作りあげているようだ。
「魔法を覚えるのはあとにしてさっさと魔石を集めようぜ。このままじゃ日が暮れるぞ。さすがに暗くなってから魔石を探すのは骨が折れるからな」
「ジルの言う通りだな。早いところ終わらせよう」
それから俺たちはせっせと魔石を集めた。
集め終わる頃には、もう夕暮れ間際だった。アーダンさんたちはこのままゲーペルの村の跡地で野営するようである。
「え? 空を飛んで帰る!?」
「それってずるくない!? まだ魔法を教えてもらってないですよ、師匠~」
ジルさんとエリーザさんがブーブー言いだした。アーダンさんはそれも仕方がないかという顔をしている。どうやらこの中で常識人代表はアーダンさんのようである。
「そう言うなよ。二人にも事情があるんだよ」
「事情ってなんだよ。ハッ!? さては宿に帰って、二人で乳繰り合うつもりだな!」
「キャー! 不潔!」
「……」
「……」
「オイ、なんか言えよ」
「……なんか」
「ちょっと!? もしかして、そんな使い古されたやり方でごまかすつもりなの!?」
二人がギャーギャー言っている。ずいぶんと愉快な仲間たちのようである。そんな二人を見てアーダンさんが苦笑いしていた。
「アーダンさん、いつもこんな感じなんですか?」
「ん? ああ、そうだよ。退屈しないだろ?」
「……ええ、そうですね」
ちょっと羨ましく感じてしまったのは、これまで本当に理解し合える相手が、リリアしかいなかったからだろうか。リリアも同じことを考えていたのか、俺の肩に座ると、そのまま体を預けてきた。
「何ちょっと良い感じになってるんだよ」
「いやらしい」
本当にいつもこんな感じなようである。アーダンさんの苦労が忍ばれる。アーダンさんは黙々と、昨日使ったと思われるかまどを整備していた。
「なあ、良かったら二人とも、今日はここで飯を食っていかないか? 一応、助けてもらった礼があるしな」
「そうしなさいよ。アーダンはこう見えて、手料理が上手なのよ」
「こう見えては余計だ」
確かに熊のような巨体のアーダンさんが、料理が上手だとはちょっと思えないな。アーダンさんの作る料理を見せてもらえば、今後の野営の料理でも役に立つかも知れない。
「フェル、二人もああ言っていることだし、そうしましょうよ」
迷っている俺にリリアが道を指し示してくれた。そう言えば、俺が道に迷ったときにはいつもそうだったな。もっとしっかりしないと。リリアに頼られるくらいにね。
「そうだね。おいしい料理が食べられるみたいだし、お世話になるとしよう」
「そう来なくっちゃ!」
リリアが弾むような声をあげた。
「それじゃ、二人のテントはどうする?」
「大丈夫ですよ、エリーザさん。これでも魔法袋を持っていますから」
「あら、そうなのね。私のことはエリーザで良いわよ。他の二人にもさん付けなんていらないわ。そうでしょ、二人とも?」
「ああ、そうだな」
「違いない」
みんなでそろって笑い声をあげた。
「便利な魔法を持ってるわよね、二人とも」
「魔石を見つける魔法か。うちにも欲しいな。エリーザは使えないのか?」
「そんな魔法、聞いたこともないわよ」
俺たちが使っているアナライズの魔法はその昔に使われていた初級魔法である。そのため、使い方さえ教えてもらえれば、魔法使いならだれでも使えるはずだ。
「教えてあげようか? エリーザも少し練習すればすぐに使えるようになるわよ」
「ほんと!? 教えてよ、リリアちゃん!」
「あたしを師匠と崇めるなら教えてあげるわよ?」
「師匠~お願いします!」
エリーザさんにはプライドも何もないようである。魔法に対して貪欲とも言う。だが別にリリアを師匠呼ばわりする必要はないと思う。たぶんリリアは冗談のつもりで言ったんだと思うよ。ほら、リリアの顔が引きつってる。
「わ、分かったわ。教えてあげるわ。別に減るものでもないしね。それじゃ、フェル、教えてあげてよ」
「なんで俺!? 師匠が教えてあげればいいじゃないですか~」
うわ、リリアがめっちゃ嫌そうな顔をしてる! だったら言わなきゃ良いのに。どうして面白くなりそうだと思ったら、後先を考えずに言うのか。それが妖精の性質なのか?
「冗談だよ、リリア。エリーザさんもさっきまでのようにリリアって呼んであげてよ。今のは軽い妖精ジョークだよ」
「妖精ジョーク……」
「奥が深そうだな。と言うか、そのジョークを理解できるのはフェルしかいないんじゃないのか?」
アーダンさんの言う通りかも知れない。十年にも及ぶリリアとの付き合いが、俺とリリアの間に妙な信頼関係を作りあげているようだ。
「魔法を覚えるのはあとにしてさっさと魔石を集めようぜ。このままじゃ日が暮れるぞ。さすがに暗くなってから魔石を探すのは骨が折れるからな」
「ジルの言う通りだな。早いところ終わらせよう」
それから俺たちはせっせと魔石を集めた。
集め終わる頃には、もう夕暮れ間際だった。アーダンさんたちはこのままゲーペルの村の跡地で野営するようである。
「え? 空を飛んで帰る!?」
「それってずるくない!? まだ魔法を教えてもらってないですよ、師匠~」
ジルさんとエリーザさんがブーブー言いだした。アーダンさんはそれも仕方がないかという顔をしている。どうやらこの中で常識人代表はアーダンさんのようである。
「そう言うなよ。二人にも事情があるんだよ」
「事情ってなんだよ。ハッ!? さては宿に帰って、二人で乳繰り合うつもりだな!」
「キャー! 不潔!」
「……」
「……」
「オイ、なんか言えよ」
「……なんか」
「ちょっと!? もしかして、そんな使い古されたやり方でごまかすつもりなの!?」
二人がギャーギャー言っている。ずいぶんと愉快な仲間たちのようである。そんな二人を見てアーダンさんが苦笑いしていた。
「アーダンさん、いつもこんな感じなんですか?」
「ん? ああ、そうだよ。退屈しないだろ?」
「……ええ、そうですね」
ちょっと羨ましく感じてしまったのは、これまで本当に理解し合える相手が、リリアしかいなかったからだろうか。リリアも同じことを考えていたのか、俺の肩に座ると、そのまま体を預けてきた。
「何ちょっと良い感じになってるんだよ」
「いやらしい」
本当にいつもこんな感じなようである。アーダンさんの苦労が忍ばれる。アーダンさんは黙々と、昨日使ったと思われるかまどを整備していた。
「なあ、良かったら二人とも、今日はここで飯を食っていかないか? 一応、助けてもらった礼があるしな」
「そうしなさいよ。アーダンはこう見えて、手料理が上手なのよ」
「こう見えては余計だ」
確かに熊のような巨体のアーダンさんが、料理が上手だとはちょっと思えないな。アーダンさんの作る料理を見せてもらえば、今後の野営の料理でも役に立つかも知れない。
「フェル、二人もああ言っていることだし、そうしましょうよ」
迷っている俺にリリアが道を指し示してくれた。そう言えば、俺が道に迷ったときにはいつもそうだったな。もっとしっかりしないと。リリアに頼られるくらいにね。
「そうだね。おいしい料理が食べられるみたいだし、お世話になるとしよう」
「そう来なくっちゃ!」
リリアが弾むような声をあげた。
「それじゃ、二人のテントはどうする?」
「大丈夫ですよ、エリーザさん。これでも魔法袋を持っていますから」
「あら、そうなのね。私のことはエリーザで良いわよ。他の二人にもさん付けなんていらないわ。そうでしょ、二人とも?」
「ああ、そうだな」
「違いない」
みんなでそろって笑い声をあげた。
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