88 / 214
ゲーペルの村①
しおりを挟む
翌日、朝食のパンとスープを食べると、俺たちはゲーペルの村へと向かった。昨日の村長さんの話だと、村の家々は焼かれてしまっているだろうとのことだった。
襲ってきたのは頭に角の生えた大柄の魔物だったそうである。その魔物は火を恐れることなく、向かって来たそうである。
魔物に限らず、生き物たちは火を嫌う傾向がある。そのため、村人たちは火で魔物を追い払おうとした。だが逆にそれが魔物たちの怒りに火をつけたらしく、建物を燃やされたらしい。村の周囲にある農場も、どうなっているか分からないそうである。
「これは危機的な状態ね。卵が採れなくなったら、プリンもお預けよ」
「プリンどころか、新鮮な肉が王都に入ってこなくなるかも知れない。そうなると、肉の値段が高くなるよ。角の生えた魔物か。オーガかな?」
「その可能性が高いわね」
オーガはゴブリンなんかよりもずっと強い魔物である。普通のオーガでもゴブリンジェネラルよりも強いという話だ。それだけでも脅威なのに、その上位種でもいたら大変なことになるだろう。
空を飛ぶのは目立ち過ぎる。なるべく魔物から目をつけられないようにするために、地上を進んでいた。道に魔物の気配はなかった。
先へと進んで行くと、村の柵らしきものが見えてきた。それは無残にも破壊されており、ところどころがすすけていた。
「思ったよりもひどい有様だね」
「もう一度同じ場所に村を作るのは無理かも知れないわね」
いつもは元気で明るいリリアも、この光景の前では沈んでいた。見渡す限りの家はどれも燃えたような跡が残っている。建物は破壊され、辺りには壊れた家具や、日用品が散乱していた。
「近くに魔物はいないみたいだね。一体どこに行ったのかな?」
「うーん、山に帰ったのかな? それよりも、まずは村を良く調べないと」
「そうだね」
村の中にはいくつかの争った跡が残っていたが、死体はどこにもなかった。恐らく、先にこの場所に来ていると思われるプラチナランク冒険者たちが片付けてくれたのだろう。
できれば彼らの存在も確認しておきたいのだが、どうやらこの村にはいないみたいだった。
「生存者はなし。片付ける必要もなし」
リリアはそう結論付けた。リリアのアナライズにも何の反応もないのだろう。もちろん俺のアナライズにも反応はない。
「今度は農場と牧場があった方に行ってみよう。もしかすると、魔物の狙いは家畜だったのかも知れないからね」
「そっちの可能性の方が高そうだわ。人間たちはそれの巻き添えに合ったって感じかしら?」
「それにしては甚大な被害だね」
巻き添えで村一つが無くなる。魔物の脅威を改めて感じた。何の対策も採らなければこのようになってしまうのか。
村長さんに教えてもらった農場と牧場がある場所へと進んだ。見えて来た景色では、どうやら農場は無事なようである。
「農場は無事みたいだね。でも牧場の方は……」
「生き物の気配がないわね」
全部逃げ出したのか、それとも魔物に食べられてしまったのか。それでも何か手がかりがあるかも知れないと思って、その中の一つの牛舎へと向かった。
牛舎の中には残骸しか残っていなかった。牛舎の大きさからして、三十頭くらいは飼われていたのではなかろうか。
「見てよ、足跡が残っているわ。この大きさだと、オーガで間違いなさそうね。こっちにはもっと大きな足跡もあるわ。きっと上位種もいるんだわ」
「オーガの上位種か。オーガジェネラルとか、オーガキングとかもいるのかな?」
「そうかも知れないわね。オーガは群れで行動するから特に危険よ」
さすがはリリア。だてに長く生きてはいない。年齢を聞いたことはないが、悠久の時を生きているはずである。
「人間の足跡もあるね。新しいものみたいだよ。きっと彼らもここに来たんだね」
「それじゃ、ここのオーガの足跡をたどって行ったのかしら?」
俺たちは足跡の行く末を見た。どうやら近くの森の中へと続いているようである。
オーガが下りてきたと思われる山の方向ではなく、別の方向に向かったということは、あの山で何かがあったのは間違いなさそうだ。
「よし、俺たちもこの足跡をたどってみよう。もう片付いているかも知れないけど、このまま山に向かって、オーガに挟み撃ちにされたら、ちょっと大変かも知れないからね」
「そうね。後ろから襲われる危険性はない方が良いわね。行きましょう」
襲ってきたのは頭に角の生えた大柄の魔物だったそうである。その魔物は火を恐れることなく、向かって来たそうである。
魔物に限らず、生き物たちは火を嫌う傾向がある。そのため、村人たちは火で魔物を追い払おうとした。だが逆にそれが魔物たちの怒りに火をつけたらしく、建物を燃やされたらしい。村の周囲にある農場も、どうなっているか分からないそうである。
「これは危機的な状態ね。卵が採れなくなったら、プリンもお預けよ」
「プリンどころか、新鮮な肉が王都に入ってこなくなるかも知れない。そうなると、肉の値段が高くなるよ。角の生えた魔物か。オーガかな?」
「その可能性が高いわね」
オーガはゴブリンなんかよりもずっと強い魔物である。普通のオーガでもゴブリンジェネラルよりも強いという話だ。それだけでも脅威なのに、その上位種でもいたら大変なことになるだろう。
空を飛ぶのは目立ち過ぎる。なるべく魔物から目をつけられないようにするために、地上を進んでいた。道に魔物の気配はなかった。
先へと進んで行くと、村の柵らしきものが見えてきた。それは無残にも破壊されており、ところどころがすすけていた。
「思ったよりもひどい有様だね」
「もう一度同じ場所に村を作るのは無理かも知れないわね」
いつもは元気で明るいリリアも、この光景の前では沈んでいた。見渡す限りの家はどれも燃えたような跡が残っている。建物は破壊され、辺りには壊れた家具や、日用品が散乱していた。
「近くに魔物はいないみたいだね。一体どこに行ったのかな?」
「うーん、山に帰ったのかな? それよりも、まずは村を良く調べないと」
「そうだね」
村の中にはいくつかの争った跡が残っていたが、死体はどこにもなかった。恐らく、先にこの場所に来ていると思われるプラチナランク冒険者たちが片付けてくれたのだろう。
できれば彼らの存在も確認しておきたいのだが、どうやらこの村にはいないみたいだった。
「生存者はなし。片付ける必要もなし」
リリアはそう結論付けた。リリアのアナライズにも何の反応もないのだろう。もちろん俺のアナライズにも反応はない。
「今度は農場と牧場があった方に行ってみよう。もしかすると、魔物の狙いは家畜だったのかも知れないからね」
「そっちの可能性の方が高そうだわ。人間たちはそれの巻き添えに合ったって感じかしら?」
「それにしては甚大な被害だね」
巻き添えで村一つが無くなる。魔物の脅威を改めて感じた。何の対策も採らなければこのようになってしまうのか。
村長さんに教えてもらった農場と牧場がある場所へと進んだ。見えて来た景色では、どうやら農場は無事なようである。
「農場は無事みたいだね。でも牧場の方は……」
「生き物の気配がないわね」
全部逃げ出したのか、それとも魔物に食べられてしまったのか。それでも何か手がかりがあるかも知れないと思って、その中の一つの牛舎へと向かった。
牛舎の中には残骸しか残っていなかった。牛舎の大きさからして、三十頭くらいは飼われていたのではなかろうか。
「見てよ、足跡が残っているわ。この大きさだと、オーガで間違いなさそうね。こっちにはもっと大きな足跡もあるわ。きっと上位種もいるんだわ」
「オーガの上位種か。オーガジェネラルとか、オーガキングとかもいるのかな?」
「そうかも知れないわね。オーガは群れで行動するから特に危険よ」
さすがはリリア。だてに長く生きてはいない。年齢を聞いたことはないが、悠久の時を生きているはずである。
「人間の足跡もあるね。新しいものみたいだよ。きっと彼らもここに来たんだね」
「それじゃ、ここのオーガの足跡をたどって行ったのかしら?」
俺たちは足跡の行く末を見た。どうやら近くの森の中へと続いているようである。
オーガが下りてきたと思われる山の方向ではなく、別の方向に向かったということは、あの山で何かがあったのは間違いなさそうだ。
「よし、俺たちもこの足跡をたどってみよう。もう片付いているかも知れないけど、このまま山に向かって、オーガに挟み撃ちにされたら、ちょっと大変かも知れないからね」
「そうね。後ろから襲われる危険性はない方が良いわね。行きましょう」
0
お気に入りに追加
3,293
あなたにおすすめの小説
ニコイチート~チート持ちとニコイチで異世界転生させられたので、手探りで冒険します~
桐山じゃろ
ファンタジー
魂二つに身体は一つ。変則バディのチート無双!
日本の男子大学生・日暮川有葉は、ある日目が覚めると元々異世界の住人であるヴェイグと名乗る男が身体の中にいた。一つの体に二人の魂。それぞれステータスには「スキル:全」と「魔法:全」。能力値はチート状態。転生の理由や目的は不明。だけど向かうところ敵なし!※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!
小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。
しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。
チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。
研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。
ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。
新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。
しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。
もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。
実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。
結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。
すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。
主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる