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ドラゴンスレイヤー①

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 馬車に乗った俺たちは、それほど時間をかけずに王城の大きな門の前にたどり着いた。何と言うか、冒険者ギルドに行くよりも早かった。それだけ貴族街と王城が近い位置にあると言うことだろう。
 門の前にはサンチョさんの姿があった。どうやら個別ではなく、まとめて謁見することになるようだ。

 それもそうか。国王陛下も忙しいだろうからね。それにもかかわらず、俺たちが王都に着いた次の日に謁見をするとは。何かあったのかな? ずいぶんと急いでいるような気がするけど。

「サンチョさん、こんにちは。さすがに魔石は持って来てないみたいですね」
「フェルさんこんにちは。魔石はすでに城の中に持ち運ばれて行きましたよ。買い手が見つかって一安心ですよ」

 サンチョさんが笑った。本当かなぁ?

「ハッハッハ! サンチョ、良く言う。知っていたのだろう? 国が巨大な魔石を欲しがっていたことに?」

 ハハハと笑いながらサンチョさんが額に手を当てた。どうやらその通りらしい。

「サンチョさん、国は巨大な魔石を一体何に使うつもり何ですか?」
「うーん、話して良いものか……」
「別に隠すほどのものでもないさ。どうせそのうち民衆にも広がるのだ。大海原を行く巨大な船を造っているらしい。その動力源として魔石を必要としているみたいだな」
「海を渡る巨大な魔導船ですか! それはすごいですね」

 そんなものを造って、隣の大陸と交易するつもりなのかな? まさか戦争を仕掛けたりしないよね? それはちょっと嫌だぞ。
 話している間に手続きが終わったみたいである。俺たちは兵士たちに連れられて城壁をくぐった。

 そこには魔導船から遠目に見た、美しい白いお城があった。見上げるほど高い尖塔がいくつも天に突き出ている。青色の屋根が、青い空と一体化しているように見えた。

「なかなかキレイね。まぁ、あたしたちのお城ほどじゃないけどね」
「妖精の国にも城があるのか。そんなにキレイなら一度見に行ってみたいものだね」
「そうね。そのうち機会があれば案内してあげるわ」

 おっと、予想外の答えだ。どうやら人間でも妖精の国に行くことができるみたいである。それなら行ってみたいところだな。リリアの両親もそこにいるのだろうか? と言うか、妖精ってどうやって増えるんだ? 人間と同じなのかな?

 疑問に思っているうちに来賓室に着いたようである。ものすごく高そうな調度品に囲まれてくつろげない。そしてリリアがイタズラをしないように見張っていなければならないので落ち着かない。

「わ~、あの花瓶、高そうね~」
「触ったらダメだからね。やめてよね」
「じゃ、あっちの壁に並んでいるお皿は?」
「そっちもダメ」
「え~、ケチ~」

 分かっててやっているな、リリア。俺をおちょくっているな、リリア。さすがは妖精。もうすぐ国王陛下と会うことになるのに、全く動じていない。
 サンチョさんだって緊張しているんだぞ。少しは落ち着いた方がいい。部屋にはカチャカチャカチャと食器が当たる音がしていた。

 サンチョさんと同じように手を震わせながらお茶を飲んでいると、ついにお呼びがかかった。ハウジンハ伯爵、サンチョさん、俺の順番で重苦しい空気に包まれた長い廊下を進んで行く。ハウジンハ伯爵は慣れているのか、普段と特に変わらない。

 サンチョさんは王城には来たことがあるみたいだが、国王陛下との謁見は初体験のようである。俺にいたっては、王城に入ることすら初めてである。
 俺たちは見事な装飾が施された、大きな扉の前に並んだ。

 兵士が扉を押すと、大きな扉が音もなく開いた。中には赤いカーペットが玉座の前まで続いている。玉座にはまだ人影がなかったが、すぐ近くに巨大な魔石が置いてあった。
 そしてカーペットの両サイドには高官と思われる人たちが何人か立っている。

 一歩一歩踏みしめるように中へと進んで行く。足下のカーペットのふかふか具合がすごかった。雲を踏んだらこんな感じがするのかな?
 玉座の前にひざまずくと、間もなく国王陛下が来ると告げられた。ハウジンハ伯爵によると、国王陛下の声がかかるまで顔を上げてはいけないらしい。
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