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王都の決まり事②

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 どうやらリリアに姿を消してもらう必要はないみたいだ。安心した。それにしても法律で妖精に手を出してはいけない決まりになっているとは驚きだ。その昔、妖精に手を出してひどいイタズラでも受けたのかな? 本気になれば、天変地異くらい起こしかねないからね。

 窓から見える景色に映るのは、ほとんどが人族だった。わずかにエルフ族や獣人族の姿が見えるくらいである。
 やっぱり商業都市エベランで感じたように、多種族国家と言ってもその中心に立っているのは人族のようだ。貴族も人族が中心なんだろうな。予想はしていたけど、ちょっと残念だ。

 そう言えば、魔導船に乗っていたのもほとんどが人族だった。船員には獣人族の人が何人かいたけどね。その辺りも格差があるのかも知れない。多種族国家を掲げていても、やはり種族による格差は避けられないみたいだね。他の国よりはずっとマシみたいだけど。

 話しているうちに、どうやらハウジンハ伯爵のタウンハウスに到着したようである。目の前に大きな屋敷が見えてきた。屋敷と同じくらいの広さの庭も広がっており、資金力の多さがうかがえる。王都の貴族街にこれだけの広さのを確保しようと思ったら、一体いくらかかるのだろうか。

 鉄格子が開き、馬車が進んで行く。てっきり、俺たちの護衛が完了するのは門の外だと思っていたのだが、違ったようである。というか、完全に降りるタイミングを失っているように思える。
 ハウジンハ伯爵の屋敷は明るい茶色のレンガを積み立てた、柔らかな空気を感じさせる建物だった。

 正面玄関の前で馬車から降りた。いつの間にか、使用人たちがズラリと並んでいる。久しぶりに見たその光景に、嫌な思い出がよみがえった。

「ほら、フェル、しっかりしなさい」

 ぺちんとリリアが俺のほほをたたいた。前を向いてハウジンハ伯爵の後に続く。

「旦那様、お帰りなさいませ」
「ウム、留守の間ご苦労」

 家令と思われる人物が代表で挨拶をした。少し白髪が交じっているが、ハキハキとした受け答えに活力を感じる。優秀な人物であるような気がする。

「こちらは私の命の恩人であるフェル殿とリリア様だ。みな、粗相のないように」

 はい、とそろった声が聞こえて来る。
 何だか雲行きが怪しくなって来たぞ。ここで任務完了のサインをもらって王都の冒険者ギルドに向かい、そのあと王都のおすすめ宿に泊まるつもりだったのに。

「あの、ハウジンハ伯爵、私たちはこの辺で……」
「フェル殿、そういうわけにはいかないのだよ。しばらくは我が家に泊まっていきなさい。フェル殿はウォータードラゴンを倒した英雄。間違いなく国王陛下からの声がかかる」
「やっぱりですか」
「ウム。恐らくはドラゴンスレイヤーの称号がもらえるだろう」
「ドラゴンスレイヤー……」

 ドラゴンスレイヤーなんて称号、物語の中の主人公くらいしかもらえないだろうと思っていた。まさか自分がもらえる日が来るだなんて。

「やったじゃない。もしかしたら、プラチナランクになれるかもよ?」
「ほぼ間違いなく、プラチナランクに昇格するだろうな。ドラゴンを倒せる者がゴールドランクにとどまることなどありえないだろう」

 ハウジンハ伯爵が昇格のお墨付きをくれた。思ったよりも早く昇格できたような気がする。運が良かったのか、悪かったのか。
 ドラゴンに襲われて運が良かったと思う人はいないだろう。たまたま結果が良かっただけだ。自分が不幸体質でなければ良いのだが。
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