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商業都市エベラン②
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ケガ人もおらず、荷馬車も大きく壊れているところはなかった。助けた隊商のオーナーからはお礼を言われ、エベランの冒険者ギルドを通して報酬を受け取って欲しいとのことだった。そのついでに今回の件についても報告を入れておいてくれるそうである。
冒険者ギルドでの面倒な報告を省くことができたので運が良かった。
この先にもまだ盗賊がいるかも知れない。そのため、助けた隊商は俺たちの後ろからついて来ることになった。
この隊商には冒険者の護衛はいなかった。それが今回の危機につながったようだ。これからは冒険者に護衛依頼を出すと言っていた。
お金で命は買えない。しかし、お金で命を救うことはできるかも知れない。
「いやー、ラッキーだったな」
「レイザーさん、盗賊団に襲われてラッキーはないと思いますよ」
「ライナーの言う通りだね。厄介事に巻き込まれて喜ぶのはレイザーさんぐらいですよ」
「あら、私も思ったよりも大金が入りそうなので、ラッキーって思ってるわよ」
「マルチダさんまで。二人は似たもの同士ですね」
商業都市エベランまではあと少し。余裕が出てきた俺たちは歩きながら話した。もちろん、アナライズは使っている。
「気になったんですけど、レイザーさんとマルチダさんってどんな関係なんですか?」
初めての盗賊討伐で気持ちが高揚しているのか、ルシアナがストレートに聞いた。これまでの旅で、だれも尋ねなかったことである。その場がシンと静まり、二人に注目が集まった。
「どんなって、見ての通り夫婦だよ」
「夫婦!?」
「年の差、どうなってるの!?」
思わず叫ぶライナーと俺。予想外の答えである。てっきり娘か何かだと思っていたのに。それを聞いたリリアは特に驚いた様子はない。
「マルチダはハーフエルフだもんね。さすがに年齢までは分からないけど、見た目よりも年上のはずよ」
「さすがはリリアちゃん。気がついていたのね」
「もちろん。最初から気がついていたわよ」
ウフフと笑い合う二人。きっと人族では分からない何かが二人の間にはあるのだろう。マルチダさんの耳がとがっていないのは、どうやらハーフエルフだったからのようである。
その後、ルシアナとベールスはどうやって若さを保っているのかを、熱心にマルチダさんに尋ねていた。
それから半日くらいが過ぎた。ついに目的地である商業都市エベランが見えてきた。
急に視界が開けたかと思うと大きな石造りの壁が見えて来た。大人三人分くらいの高さがありそうだ。
「さあ、もう少しでエベランに到着するぞ。みんな頑張れ!」
レイザーさんが発破をかけた。たぶん、一番エベランに着きたいと思っているのはレイザーさんなのだろう。マルチダさんが「そろそろ禁断症状かしら?」と嘆いていた。
禁断症状? と思ったが、どうやらお酒のことのようだ。護衛依頼中は禁酒しているそうである。
商業都市エベランに到着したことで俺たちの依頼は完了した。
サンチョさんからの完了のサインをレイザーさんが受け取ると、報酬をもらうために冒険者ギルドへ向かうことになる。
だがその前に、サンチョさんが俺のところへとやって来た。
「フェルさん、必ず私の商会に来て下さいよ。本当はこのままお連れしたかったのですが、冒険者ギルドへの報告は、全員がそろっていなければならないという決まりがありますからね」
すがるような目でこちらにお願いをしてきた。そんなサンチョさんの様子を不審に思ったのか、レイザーさんたちやライナーたちがこちらの様子をうかがっていた。
「安心して下さい。必ず行きますよ」
それでも心配だったのか、サンチョさんがエベランの地図をくれた。その地図にはサンチョ商会の場所に印が付けてあった。別れを惜しむようにサンチョさんたちの隊商が街の中へと消えて行く。
「ずいぶんと仲良くなったみたいだな」
「ええ、まあ……色々とありましてね」
レイザーさんの言葉に思わず苦笑いで返す。確かにあのサンチョさんの様子を見れば何かあったと思うよね。
不審に思われながらも冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドでの面倒な報告を省くことができたので運が良かった。
この先にもまだ盗賊がいるかも知れない。そのため、助けた隊商は俺たちの後ろからついて来ることになった。
この隊商には冒険者の護衛はいなかった。それが今回の危機につながったようだ。これからは冒険者に護衛依頼を出すと言っていた。
お金で命は買えない。しかし、お金で命を救うことはできるかも知れない。
「いやー、ラッキーだったな」
「レイザーさん、盗賊団に襲われてラッキーはないと思いますよ」
「ライナーの言う通りだね。厄介事に巻き込まれて喜ぶのはレイザーさんぐらいですよ」
「あら、私も思ったよりも大金が入りそうなので、ラッキーって思ってるわよ」
「マルチダさんまで。二人は似たもの同士ですね」
商業都市エベランまではあと少し。余裕が出てきた俺たちは歩きながら話した。もちろん、アナライズは使っている。
「気になったんですけど、レイザーさんとマルチダさんってどんな関係なんですか?」
初めての盗賊討伐で気持ちが高揚しているのか、ルシアナがストレートに聞いた。これまでの旅で、だれも尋ねなかったことである。その場がシンと静まり、二人に注目が集まった。
「どんなって、見ての通り夫婦だよ」
「夫婦!?」
「年の差、どうなってるの!?」
思わず叫ぶライナーと俺。予想外の答えである。てっきり娘か何かだと思っていたのに。それを聞いたリリアは特に驚いた様子はない。
「マルチダはハーフエルフだもんね。さすがに年齢までは分からないけど、見た目よりも年上のはずよ」
「さすがはリリアちゃん。気がついていたのね」
「もちろん。最初から気がついていたわよ」
ウフフと笑い合う二人。きっと人族では分からない何かが二人の間にはあるのだろう。マルチダさんの耳がとがっていないのは、どうやらハーフエルフだったからのようである。
その後、ルシアナとベールスはどうやって若さを保っているのかを、熱心にマルチダさんに尋ねていた。
それから半日くらいが過ぎた。ついに目的地である商業都市エベランが見えてきた。
急に視界が開けたかと思うと大きな石造りの壁が見えて来た。大人三人分くらいの高さがありそうだ。
「さあ、もう少しでエベランに到着するぞ。みんな頑張れ!」
レイザーさんが発破をかけた。たぶん、一番エベランに着きたいと思っているのはレイザーさんなのだろう。マルチダさんが「そろそろ禁断症状かしら?」と嘆いていた。
禁断症状? と思ったが、どうやらお酒のことのようだ。護衛依頼中は禁酒しているそうである。
商業都市エベランに到着したことで俺たちの依頼は完了した。
サンチョさんからの完了のサインをレイザーさんが受け取ると、報酬をもらうために冒険者ギルドへ向かうことになる。
だがその前に、サンチョさんが俺のところへとやって来た。
「フェルさん、必ず私の商会に来て下さいよ。本当はこのままお連れしたかったのですが、冒険者ギルドへの報告は、全員がそろっていなければならないという決まりがありますからね」
すがるような目でこちらにお願いをしてきた。そんなサンチョさんの様子を不審に思ったのか、レイザーさんたちやライナーたちがこちらの様子をうかがっていた。
「安心して下さい。必ず行きますよ」
それでも心配だったのか、サンチョさんがエベランの地図をくれた。その地図にはサンチョ商会の場所に印が付けてあった。別れを惜しむようにサンチョさんたちの隊商が街の中へと消えて行く。
「ずいぶんと仲良くなったみたいだな」
「ええ、まあ……色々とありましてね」
レイザーさんの言葉に思わず苦笑いで返す。確かにあのサンチョさんの様子を見れば何かあったと思うよね。
不審に思われながらも冒険者ギルドへと向かった。
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