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剣術大会
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剣術大会の予選では、かなりの人数の負傷者が出てしまっていた。さいわいなことに、国の衛生兵を雇っていたから事なきを得たが、もっとケガ人を出さないようにする工夫が必要だろう。
いっそのこと、木剣ではなくて、スポンジで作った剣にしたらどうだろうか? それとも竹刀でも作るかな。この大会が終わったらジョナサンに相談してみよう。
本選となる試合会場の準備も整った。警備体制も万全である。あとは本番当日を迎えるだけだ。生徒会室の空気は緊張感がありながらも、活気にあふれていた。
そんな中、俺は胃が痛かった。
「フェルナンド、ずいぶんとつらそうだな」
「殿下、あの二人は予想通り予選を勝ち抜きました。トーナメント表を見る限りでは決勝戦で戦うことになるでしょう」
「そうだな」
決勝トーナメント表を作成したのは生徒会である。予選の試合内容を見てバランスの調整を行っている。すなわち、序盤で強いもの同士が戦わないようにしてあるのだ。
一番盛り上がる決勝戦がどのような血なまぐさい戦いになるのか。とても不安だ。
「どちらが勝っても、ただではすまないでしょうね」
「予選を見たが、フェルナンドの言う通りだろうな。お互い手加減などしないだろう」
俺たちのつぶやきに、その場がシンと静まり返った。みんなその光景を想像したのだろう。手遅れになる前に勝負がつくことを願うだけだ。
ついに剣術大会の本番を迎えた。王立学園全体としてはとても盛り上がっているが、生徒会としては、一抹の不安が募っていた。無事に剣術大会が終わって欲しい。それはおそらく、生徒会役員全員の思いだろう。
会場には多くの生徒と、一般客が詰めかけていた。事前に予行練習をしておいたこともあり、警備はスムーズに行われた。多少のいざこざはあったものの、酒類の持ち込みを禁止していたために大きな騒ぎになることはなかった。
先輩が言うには「昨年よりもずっと治安がいい」だそうである。どうやら酒類の持ち込みは今後も禁止されることになりそうだ。
トーナメント戦は大盛り上がりだ。そして何やら賭け事をしているようなウワサを聞いた。だがしかし、俺たちにはどうすることもできなかった。なにせそれを取りまとめているのが外部の者だからである。
王立学園の生徒であれば厳しく取り締まることができたのだが、そう言うわけにもいかなかった。これは今後の課題だな。来年からはルールを変更して、賭け事全面禁止にしたいものだ。
俺たちの予想通り、例の騎士団長の息子、アレクと魔法ギルド長の息子、ギルバートは順当に勝ち上がっていた。何ならどちらとも余裕すら見受けられる。お互いに手の内をさらさないようにしているみたいだ。
もちろんこれらの情報は、周囲が話している内容から推測したものである。生徒会役員は警備に注力してるため、試合を見ることはできない。
「フェル様も試合を見たいのではないですか? 私がフェル様の分まで監視しておきますので、ゆっくり見ても構いませんわよ」
「そういうわけにはいきません。生徒会副会長として最後までやり遂げますよ」
俺はリアの誘いをキッパリと断った。何だかんだ言っても、俺の一挙手一投足は生徒会役員のみんなに見られているのだ。ここで俺がそのようなことをすると、あとに続くものが続出することだろう。それに、正直言って、興味がない。
どちらが勝っても俺には関係ないのだ。ヒロインが俺に絡まなくなってくれさえいれば。
ワアア、と歓声が上がった。どうやら準決勝の勝者が決まったようである。これで残すは決勝戦のみ。休憩を挟んだあとに行われる。
選手のコンディションチェックのために控え室に行くと、ただならぬ殺気が漂っていた。まるでこれから殺し合いをするかのようである。
「負けた方がステラ嬢から身を引く。いいな?」
「望むところだ。あとで文句を言うなよ」
「その言葉、そのままお前に返すぞ」
アレクとギルバートがにらみ合っている。
ヒロインであるステラ・ビラリーニョ嬢はこのことを知っているのだろうか? この雰囲気だと、勝手に決めているみたいなんだよね。なぜなら当の本人がこの場にいないから。そこまでして相手にお断りされたらどうするんだろう。
うん、コンディションチェック終わり。どちらも元気。あとは死なないことを願うばかりだ。俺たちは巻き込まれる前に早々に退散した。
「フェルナンド、どうだった?」
「あれはダメかも分からないですね。どちらが勝っても禍根を残すことになると思います」
「どちらも同じくらい優秀であるのが仇となったな。それなら公衆の前で決着をつけるしか、お互いに納得しないか」
殿下が渋い顔をしている。将来はお互いに協力して国を支えて欲しいと思っていたのだろう。それがビラリーニョ嬢の登場によって、もろくも崩れ去ってしまった。殿下がガッカリするのもうなずける話だ。
「フェルナンドだけが頼りだな」
「ハハハ、何を言われるのですか。私だけでなく、マリーナ様も、生徒会役員のメンバーもついておりますよ」
俺だけ貧乏くじを引いてたまるか。こうなったらとことん他の人たちも巻き込んでやるぞ。ただし、リアだけはのぞく。彼女に余計な負担をかけるつもりは全くない。
決勝戦が始まった。鳴り響く剣戟に呼応するかのように歓声が沸き起こる。チラチラと横目で確認した感じでは、やはりアレクが優勢のようである。
それはそうか。元々の剣術の技量が違う。いくら魔法で防御できても、攻撃が当たらなければどうすることもできない。
このままではいずれ魔力が切れて、倒されることだろう。それとも何か奥の手でもあるのかな? そこだけはちょっと気になる。
もどかしい気持ちで警備を続けていると、一際大きな歓声が上がった。決着がついたのかな? いや、まだだ。どうやらギルバートが奥の手を使ったようである。
しかし、どうやらその奥の手は通用しなかった模様。対峙しているアレクはいまだに健在であり、ギルバートが押され始めたのが見えた。
これは決着がついたな。まあアレクは騎士団長の息子という意地があるか。負けられんよな。
そうこうしているうちに決着がついたらしい。大きな歓声が上がり、観客が席を立って拍手をしていた。勝ったのはやはり騎士団長の息子、アレクであった。
剣術大会の運営は満点と言っても良いだろう。先生方からも褒められた。これで残すイベントの運営にも弾みがついた。みんなも自信がついたことだろう。
こうして剣術大会は成功のうちに幕を閉じた。しかし、王立学園内では問題を残していた。
「行方不明だと?」
「はい。決勝戦が終わった直後から姿が見えなくなったとか。学園内を探していますが、見つかっていません」
「家には戻っていないのか?」
「はい。どうやらそのようです。王立学園に問い合わせがきているそうです」
生徒会役員から報告を受けた殿下が腕を組んで考え込んでいる。ただでは終わらないと思っていたが、まさか負けて失踪するとは思わなかったな。まあ、王立学園内で刃傷沙汰にならなかっただけよしとするか。
優勝したのは騎士団長の息子のアレクであったが、彼がヒロインのビラリーニョ嬢が仲良く歩いている姿を見かけることはなかった。ビラリーニョ嬢に黙って公衆の前で決闘のようなことをしたことに怒ったのかも知れない。もしくは、勝手に運命を決められて愛想を尽かされたとかだろうか。
どちらにしろ、思惑が外れてしまったな。これはますます俺、もしくは殿下とのフラグが強まりつつあるのかも知れない。とちらのフラグも国を滅ぼすことになりかねない。どうしてこんなにうまくいかないのだろうか。
いっそのこと、木剣ではなくて、スポンジで作った剣にしたらどうだろうか? それとも竹刀でも作るかな。この大会が終わったらジョナサンに相談してみよう。
本選となる試合会場の準備も整った。警備体制も万全である。あとは本番当日を迎えるだけだ。生徒会室の空気は緊張感がありながらも、活気にあふれていた。
そんな中、俺は胃が痛かった。
「フェルナンド、ずいぶんとつらそうだな」
「殿下、あの二人は予想通り予選を勝ち抜きました。トーナメント表を見る限りでは決勝戦で戦うことになるでしょう」
「そうだな」
決勝トーナメント表を作成したのは生徒会である。予選の試合内容を見てバランスの調整を行っている。すなわち、序盤で強いもの同士が戦わないようにしてあるのだ。
一番盛り上がる決勝戦がどのような血なまぐさい戦いになるのか。とても不安だ。
「どちらが勝っても、ただではすまないでしょうね」
「予選を見たが、フェルナンドの言う通りだろうな。お互い手加減などしないだろう」
俺たちのつぶやきに、その場がシンと静まり返った。みんなその光景を想像したのだろう。手遅れになる前に勝負がつくことを願うだけだ。
ついに剣術大会の本番を迎えた。王立学園全体としてはとても盛り上がっているが、生徒会としては、一抹の不安が募っていた。無事に剣術大会が終わって欲しい。それはおそらく、生徒会役員全員の思いだろう。
会場には多くの生徒と、一般客が詰めかけていた。事前に予行練習をしておいたこともあり、警備はスムーズに行われた。多少のいざこざはあったものの、酒類の持ち込みを禁止していたために大きな騒ぎになることはなかった。
先輩が言うには「昨年よりもずっと治安がいい」だそうである。どうやら酒類の持ち込みは今後も禁止されることになりそうだ。
トーナメント戦は大盛り上がりだ。そして何やら賭け事をしているようなウワサを聞いた。だがしかし、俺たちにはどうすることもできなかった。なにせそれを取りまとめているのが外部の者だからである。
王立学園の生徒であれば厳しく取り締まることができたのだが、そう言うわけにもいかなかった。これは今後の課題だな。来年からはルールを変更して、賭け事全面禁止にしたいものだ。
俺たちの予想通り、例の騎士団長の息子、アレクと魔法ギルド長の息子、ギルバートは順当に勝ち上がっていた。何ならどちらとも余裕すら見受けられる。お互いに手の内をさらさないようにしているみたいだ。
もちろんこれらの情報は、周囲が話している内容から推測したものである。生徒会役員は警備に注力してるため、試合を見ることはできない。
「フェル様も試合を見たいのではないですか? 私がフェル様の分まで監視しておきますので、ゆっくり見ても構いませんわよ」
「そういうわけにはいきません。生徒会副会長として最後までやり遂げますよ」
俺はリアの誘いをキッパリと断った。何だかんだ言っても、俺の一挙手一投足は生徒会役員のみんなに見られているのだ。ここで俺がそのようなことをすると、あとに続くものが続出することだろう。それに、正直言って、興味がない。
どちらが勝っても俺には関係ないのだ。ヒロインが俺に絡まなくなってくれさえいれば。
ワアア、と歓声が上がった。どうやら準決勝の勝者が決まったようである。これで残すは決勝戦のみ。休憩を挟んだあとに行われる。
選手のコンディションチェックのために控え室に行くと、ただならぬ殺気が漂っていた。まるでこれから殺し合いをするかのようである。
「負けた方がステラ嬢から身を引く。いいな?」
「望むところだ。あとで文句を言うなよ」
「その言葉、そのままお前に返すぞ」
アレクとギルバートがにらみ合っている。
ヒロインであるステラ・ビラリーニョ嬢はこのことを知っているのだろうか? この雰囲気だと、勝手に決めているみたいなんだよね。なぜなら当の本人がこの場にいないから。そこまでして相手にお断りされたらどうするんだろう。
うん、コンディションチェック終わり。どちらも元気。あとは死なないことを願うばかりだ。俺たちは巻き込まれる前に早々に退散した。
「フェルナンド、どうだった?」
「あれはダメかも分からないですね。どちらが勝っても禍根を残すことになると思います」
「どちらも同じくらい優秀であるのが仇となったな。それなら公衆の前で決着をつけるしか、お互いに納得しないか」
殿下が渋い顔をしている。将来はお互いに協力して国を支えて欲しいと思っていたのだろう。それがビラリーニョ嬢の登場によって、もろくも崩れ去ってしまった。殿下がガッカリするのもうなずける話だ。
「フェルナンドだけが頼りだな」
「ハハハ、何を言われるのですか。私だけでなく、マリーナ様も、生徒会役員のメンバーもついておりますよ」
俺だけ貧乏くじを引いてたまるか。こうなったらとことん他の人たちも巻き込んでやるぞ。ただし、リアだけはのぞく。彼女に余計な負担をかけるつもりは全くない。
決勝戦が始まった。鳴り響く剣戟に呼応するかのように歓声が沸き起こる。チラチラと横目で確認した感じでは、やはりアレクが優勢のようである。
それはそうか。元々の剣術の技量が違う。いくら魔法で防御できても、攻撃が当たらなければどうすることもできない。
このままではいずれ魔力が切れて、倒されることだろう。それとも何か奥の手でもあるのかな? そこだけはちょっと気になる。
もどかしい気持ちで警備を続けていると、一際大きな歓声が上がった。決着がついたのかな? いや、まだだ。どうやらギルバートが奥の手を使ったようである。
しかし、どうやらその奥の手は通用しなかった模様。対峙しているアレクはいまだに健在であり、ギルバートが押され始めたのが見えた。
これは決着がついたな。まあアレクは騎士団長の息子という意地があるか。負けられんよな。
そうこうしているうちに決着がついたらしい。大きな歓声が上がり、観客が席を立って拍手をしていた。勝ったのはやはり騎士団長の息子、アレクであった。
剣術大会の運営は満点と言っても良いだろう。先生方からも褒められた。これで残すイベントの運営にも弾みがついた。みんなも自信がついたことだろう。
こうして剣術大会は成功のうちに幕を閉じた。しかし、王立学園内では問題を残していた。
「行方不明だと?」
「はい。決勝戦が終わった直後から姿が見えなくなったとか。学園内を探していますが、見つかっていません」
「家には戻っていないのか?」
「はい。どうやらそのようです。王立学園に問い合わせがきているそうです」
生徒会役員から報告を受けた殿下が腕を組んで考え込んでいる。ただでは終わらないと思っていたが、まさか負けて失踪するとは思わなかったな。まあ、王立学園内で刃傷沙汰にならなかっただけよしとするか。
優勝したのは騎士団長の息子のアレクであったが、彼がヒロインのビラリーニョ嬢が仲良く歩いている姿を見かけることはなかった。ビラリーニョ嬢に黙って公衆の前で決闘のようなことをしたことに怒ったのかも知れない。もしくは、勝手に運命を決められて愛想を尽かされたとかだろうか。
どちらにしろ、思惑が外れてしまったな。これはますます俺、もしくは殿下とのフラグが強まりつつあるのかも知れない。とちらのフラグも国を滅ぼすことになりかねない。どうしてこんなにうまくいかないのだろうか。
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