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第一章
運命の出会い①
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風呂から上がり部屋に戻るとようやくリラックスすることができた。気がつかないうちに力が入っていたのだろう。肩の力が抜けて緊張感がほぐれたのを感じていた。ダナイは布団に仰向けになって寝るとこれからの方針を改めて考えた。
聖剣を作るために、まずはイーゴリの街で一番の鍛冶屋に弟子入りしようと考えた。それじゃあ明日からは街一番の鍛冶屋を探すところから始めようかな、と思ったところで気がついた。
「そう言えばお金があと四百Gぐらいしかねぇな。弟子入りの前にある程度のお金を稼いでおくか。頼み込んで弟子入りする以上、金をもらうわけにはいかねぇ。明日からしばらくの間は冒険者ギルドに行って仕事を受けるとしようかな」
明日の方針が決まり満足していると、急な眠気がダナイに襲いかかった。ダナイはそれに抗うことができずに、スヤスヤと眠りについた。
「旦那、ダナイの旦那! そろそろ起きてくれませんかね?」
部屋のドアを叩く音で目を覚ました。これはいかんとすぐにダナイは扉を開けた。そこには女将が心配そうな顔で立っていた。
「良かった、生きていたかい。反応がなかったので何かあったんじゃないかとヤキモキしていたところだよ。部屋の掃除をしたいから、一度部屋を出てもらえないかい?」
「ああ、それは済まない。そう言えば朝食がまだ何だが、まだ残っているかい?」
「大丈夫だよ。多分クリスが食べている時間だろうから、クリスに朝食を頼んでおくれ」
「分かったよ。ありがとう」
女将の返事を聞くと、すぐに食堂へと向かった。あの従業員の名前はクリスと言う名前なのか、と考えているうちに食堂についた。そこではクリスが一人で食事を食べている。すでに朝食の時間からは大分遅い時間になっており窓の外は随分と明るくなっていた。
「済まないが、俺にも朝食をもらえるかね? 俺の名前はダナイだ。お前さんはクリスという名前らしいな? さっき女将に聞いたよ」
「すぐに用意するわ」
そう言うとすぐに朝食を用意してくれた。パンにサラダ、太いベーコンがついていた。お腹が空いていたダナイはそれをペロリと平らげた。まるで手品の様に無くなった朝食を見てクリスは目を白黒とさせていた。
ダナイはクリスにお礼を言うとさっそくイーゴリの街へと繰り出して行った。
街はそれなりに活気に満ちあふれているようだった。ダナイは昨日じっくりと見ることができなかった異世界の街並みを物珍しそうに見ながら大通りを歩いた。
家の造りは石造りの土台の上に西洋風の木の家が建っている。大通り沿いの家では一階が商店になっているようであり、大きく突き出たひさしの下では様々な商品が並んでいる。ちょっと見ただけでも全く知らない物が多数並んでいるのが分かった。
街はダナイが思った以上に大きかった。街並みを堪能しながら歩いていると冒険者ギルドの看板が見えて来た。
冒険者ギルドにはそれほど多くの人はいなかった。はて、と思ったが、現在の時刻がお昼頃であったため、きっと冒険者諸君はすでに仕事をこなしているのだな、と納得した。そして自分がすでに出遅れていることを知った。
ダナイは最初に昨日説明された依頼が張ってあるという掲示板の方へと向かった。
「おお、結構依頼が残っているじゃねえか。これはそんなに急ぐ必要はなさそうだな。えっと、魔石と薬草と魔法草の取り引きは常時行っている、か。昨日の感じだと、石ころを投げつけるだけで良いし、魔石を集めるのが楽かも知れないな」
掲示板で目にしたFランク冒険者の仕事は、荷物持ち、農作業の手伝い、畑の害獣駆除などがほとんどを占めていた。この時間帯になっても残っていると言うことは、人気がない依頼なのだろう。結局、人気のある依頼が何なのかは分からないままだった。
ダナイも残った依頼の中に気になった依頼はなかったので、取りあえず街の外に出て薬草と魔法草を探し、ついでに魔石も手に入れるというシンプルな戦法をとることにした。
手始めに『ワールドマニュアル(門外不出)』で薬草と魔法草についての情報を集めると、さっそく本日の仕事を開始した。まずは足下に転がっている石ころを拾い集めることからだ。
適当な数をポケットに詰め込むと、一路森の中へと向かった。薬草も魔法草も主に生息しているのは森の中であり、草原ではほとんど見つからないと言うことだった。
この世界のことを良く知らないダナイは、今のところはそれを信じるしかなかった。薬草は日の当たる場所、魔法草は魔物が死んだところ。
薬草は見つけやすそうだが魔法草は運任せだな、と解釈し森の中を進んだ。途中で何度かゴブリンに遭遇したが、投石によって危なげなく倒すことができた。そして、倒した場所の木々に鉈で印をつけておいた。
「よしよし、これで今度来たときは魔法草が生えているかも知れないぞ」
ダナイは取らぬ狸の皮算用をすると、意気揚々と森の中を進んだ。マニュアル通り、薬草は日の当たる場所で見つけることができ、良く日の当たる場所ほど多く見つけることができた。根っこの方が効果が高いと書いてあったので、丁寧に根っこの部分から採取した。
聖剣を作るために、まずはイーゴリの街で一番の鍛冶屋に弟子入りしようと考えた。それじゃあ明日からは街一番の鍛冶屋を探すところから始めようかな、と思ったところで気がついた。
「そう言えばお金があと四百Gぐらいしかねぇな。弟子入りの前にある程度のお金を稼いでおくか。頼み込んで弟子入りする以上、金をもらうわけにはいかねぇ。明日からしばらくの間は冒険者ギルドに行って仕事を受けるとしようかな」
明日の方針が決まり満足していると、急な眠気がダナイに襲いかかった。ダナイはそれに抗うことができずに、スヤスヤと眠りについた。
「旦那、ダナイの旦那! そろそろ起きてくれませんかね?」
部屋のドアを叩く音で目を覚ました。これはいかんとすぐにダナイは扉を開けた。そこには女将が心配そうな顔で立っていた。
「良かった、生きていたかい。反応がなかったので何かあったんじゃないかとヤキモキしていたところだよ。部屋の掃除をしたいから、一度部屋を出てもらえないかい?」
「ああ、それは済まない。そう言えば朝食がまだ何だが、まだ残っているかい?」
「大丈夫だよ。多分クリスが食べている時間だろうから、クリスに朝食を頼んでおくれ」
「分かったよ。ありがとう」
女将の返事を聞くと、すぐに食堂へと向かった。あの従業員の名前はクリスと言う名前なのか、と考えているうちに食堂についた。そこではクリスが一人で食事を食べている。すでに朝食の時間からは大分遅い時間になっており窓の外は随分と明るくなっていた。
「済まないが、俺にも朝食をもらえるかね? 俺の名前はダナイだ。お前さんはクリスという名前らしいな? さっき女将に聞いたよ」
「すぐに用意するわ」
そう言うとすぐに朝食を用意してくれた。パンにサラダ、太いベーコンがついていた。お腹が空いていたダナイはそれをペロリと平らげた。まるで手品の様に無くなった朝食を見てクリスは目を白黒とさせていた。
ダナイはクリスにお礼を言うとさっそくイーゴリの街へと繰り出して行った。
街はそれなりに活気に満ちあふれているようだった。ダナイは昨日じっくりと見ることができなかった異世界の街並みを物珍しそうに見ながら大通りを歩いた。
家の造りは石造りの土台の上に西洋風の木の家が建っている。大通り沿いの家では一階が商店になっているようであり、大きく突き出たひさしの下では様々な商品が並んでいる。ちょっと見ただけでも全く知らない物が多数並んでいるのが分かった。
街はダナイが思った以上に大きかった。街並みを堪能しながら歩いていると冒険者ギルドの看板が見えて来た。
冒険者ギルドにはそれほど多くの人はいなかった。はて、と思ったが、現在の時刻がお昼頃であったため、きっと冒険者諸君はすでに仕事をこなしているのだな、と納得した。そして自分がすでに出遅れていることを知った。
ダナイは最初に昨日説明された依頼が張ってあるという掲示板の方へと向かった。
「おお、結構依頼が残っているじゃねえか。これはそんなに急ぐ必要はなさそうだな。えっと、魔石と薬草と魔法草の取り引きは常時行っている、か。昨日の感じだと、石ころを投げつけるだけで良いし、魔石を集めるのが楽かも知れないな」
掲示板で目にしたFランク冒険者の仕事は、荷物持ち、農作業の手伝い、畑の害獣駆除などがほとんどを占めていた。この時間帯になっても残っていると言うことは、人気がない依頼なのだろう。結局、人気のある依頼が何なのかは分からないままだった。
ダナイも残った依頼の中に気になった依頼はなかったので、取りあえず街の外に出て薬草と魔法草を探し、ついでに魔石も手に入れるというシンプルな戦法をとることにした。
手始めに『ワールドマニュアル(門外不出)』で薬草と魔法草についての情報を集めると、さっそく本日の仕事を開始した。まずは足下に転がっている石ころを拾い集めることからだ。
適当な数をポケットに詰め込むと、一路森の中へと向かった。薬草も魔法草も主に生息しているのは森の中であり、草原ではほとんど見つからないと言うことだった。
この世界のことを良く知らないダナイは、今のところはそれを信じるしかなかった。薬草は日の当たる場所、魔法草は魔物が死んだところ。
薬草は見つけやすそうだが魔法草は運任せだな、と解釈し森の中を進んだ。途中で何度かゴブリンに遭遇したが、投石によって危なげなく倒すことができた。そして、倒した場所の木々に鉈で印をつけておいた。
「よしよし、これで今度来たときは魔法草が生えているかも知れないぞ」
ダナイは取らぬ狸の皮算用をすると、意気揚々と森の中を進んだ。マニュアル通り、薬草は日の当たる場所で見つけることができ、良く日の当たる場所ほど多く見つけることができた。根っこの方が効果が高いと書いてあったので、丁寧に根っこの部分から採取した。
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