44 / 44
俺たちの戦いはこれからだ!
しおりを挟む
「モンドリアーン子爵、テオドール殿、お出ましの準備をお願いします」
式典の準備が整ったようである。父上と目を合わせると、お互いに軽くうなずき合い、部屋をあとにした。
扉の向こうから名前が呼ばれ、俺たちは謁見の間へと入って行った。そこにはすでに多くの貴族たちが並んでおり、俺たちの登場を待っていた。だれも騒ぐことなく、式典は粛々と行われていく。
「モンドリアーン子爵、テオドール殿、前へ」
「ハッ」
俺たちは国王陛下の前にひざまずいた。陛下から顔をあげるように声がかかる。
「モンドリアーン卿、今回の働き、大義であった。おかげで最小限の被害で国を守ることができた。その大義に、私は応えよう。モンドリアーン卿を伯爵位に任命する」
おおお! と言うざわめきと共に拍手が鳴り響いた。子爵から伯爵に爵位をあげるのには大きな壁があり、よほどの功績をあげなければならない。長きに渡って魔法にたけた一族として国中から認められていても、これまでずっと子爵だったのがその証拠である。
それがついに伯爵になったのだ。父上も感慨深いものがあるのだろう。一族の悲願であったことは間違いない。静かに頭を下げていた。
「テオドールよ、魔族討伐では本当に素晴らしい働きをしてくれた。今、こうして皆が無事でいられるのも、そなたのおかげと言っても過言ではないだろう」
ザワザワと周囲が騒がしくなる。ある程度の事情はウワサ程度には聞いていたことだろう。しかし、国王陛下の口から直接告げられれば、それが事実であることは明白だ。
「そこで、その功績を称えたいのだが……残念ながら、魔族討伐に対しての前例がなくてな、褒賞がないのだよ」
あらら。まあ、褒賞は父上がいただいているから、別に要らないんですけどね。将来は俺が伯爵になるわけだし、まったくをもって問題ない。
「ところで、テオドール。アウデン卿から聞いたのだが、アウデン子爵領に現れたブラックドラゴンを討伐したことがあるそうだな?」
「え? ええ、ありますけど……」
ウムウム、と国王陛下がうなずいた。
「それではテオドールにはブラックドラゴンを討伐した功績により「ドラゴンスレイヤー」の称号と、それに準ずる勲章を授ける」
おおお! と再び謁見の間が湧いた。そして大きな拍手が鳴り響いたのであった。
式典も無事に終わり、俺たちはモンドリアーン伯爵家へと帰って来た。伯爵になったことと、俺がドラゴンスレイヤーになったことを家人に伝えると、大騒ぎになった。そしてすぐに宴の準備が整えられたのであった。
うちの家人は古株の人も多いからな。父上が子供のころから働いている者もいる。その分、うれしさもひとしおなのだろう。アウデン子爵たちも、周辺に領地を持つ貴族たちも集まってきた。この辺りで伯爵位を持っているのは、モンドリアーン伯爵家か元婚約者の実家であるフェルベーク伯爵家だけである。
そのフェルベーク伯爵家だが、娘が親が決めた婚約を破棄して別の男のところに行った挙げ句の果てに、その男が魔族だったことで大騒ぎになっていた。
もちろん、魔族とのつながりを疑われており、現在も国からの調査中である。さらにはその魔族によって傷物になった娘は、おそらく嫁のもらい手はいないだろう。
何とかよりを取り戻そうと、フェルベーク伯爵が「婚約を考え直してくれ」と言ってきたが、鬼のような形相になった両親とミケとイグミたちが断った。イグミの子供たちに囲まれたフェルベーク伯爵はさぞ恐怖したことだろう。俺もまさか再び地面から根っこを引き抜いて歩きだすとは思わなかった。よっぽど腹に据えかねるものがあったのだろう。
カロリーナ伯爵令嬢からは何度もしつこく手紙が来ていたが、中身を開けることもなく、イーリスの目の前で焼いた。だがそれでもイーリスは不安を隠せない様子だった。
「イーリス、俺は絶対にキミと添い遂げるからな」
「テオ様……」
どうしてそんな顔をするのかな~。俺ってそんなに薄情に見えるのかな? イーリスの肩を抱き寄せながらも、どうすれば信頼してもらえるだろうかと困ってミケを見た。
ミケはニンマリと口角をあげ、目を三日月型に細めると、自信ありげに言った。
「大丈夫だよ、イーリス。この間も言ったように、テオはイーリスのおっぱいに夢中だからさ。イーリスにバレないようにいつもおっぱいを盗み見てるくらいだからね~」
キッと俺を見るイーリスの目に力がこもった。ミケ、お前、何ということを言うんだ。台無しだよ!
「イーリス、ミケの話は冗談半分に聞いて……」
「テオ様……」
そうつぶやくと、イーリスは突然服を脱ぎだした。
「ちょっと待った、イーリス! 早まるんじゃない!」
「ワオ! イーリスってば、大胆ー!」
「ミケ、煽るな! 煽ってないで止めてくれ。イーリス、正気に戻るんだ!」
「テオ様……」
まずい、これは非常にまずい。イーリスの中の何かがプッツリと切れてしまったらしい。まさか「だったら、既成事実を作ればいいじゃない」と言う思考にたどり着くとは思わなかった。逆だろ、普通!?
これはもう、ダメかも分からんね……。
Fin
式典の準備が整ったようである。父上と目を合わせると、お互いに軽くうなずき合い、部屋をあとにした。
扉の向こうから名前が呼ばれ、俺たちは謁見の間へと入って行った。そこにはすでに多くの貴族たちが並んでおり、俺たちの登場を待っていた。だれも騒ぐことなく、式典は粛々と行われていく。
「モンドリアーン子爵、テオドール殿、前へ」
「ハッ」
俺たちは国王陛下の前にひざまずいた。陛下から顔をあげるように声がかかる。
「モンドリアーン卿、今回の働き、大義であった。おかげで最小限の被害で国を守ることができた。その大義に、私は応えよう。モンドリアーン卿を伯爵位に任命する」
おおお! と言うざわめきと共に拍手が鳴り響いた。子爵から伯爵に爵位をあげるのには大きな壁があり、よほどの功績をあげなければならない。長きに渡って魔法にたけた一族として国中から認められていても、これまでずっと子爵だったのがその証拠である。
それがついに伯爵になったのだ。父上も感慨深いものがあるのだろう。一族の悲願であったことは間違いない。静かに頭を下げていた。
「テオドールよ、魔族討伐では本当に素晴らしい働きをしてくれた。今、こうして皆が無事でいられるのも、そなたのおかげと言っても過言ではないだろう」
ザワザワと周囲が騒がしくなる。ある程度の事情はウワサ程度には聞いていたことだろう。しかし、国王陛下の口から直接告げられれば、それが事実であることは明白だ。
「そこで、その功績を称えたいのだが……残念ながら、魔族討伐に対しての前例がなくてな、褒賞がないのだよ」
あらら。まあ、褒賞は父上がいただいているから、別に要らないんですけどね。将来は俺が伯爵になるわけだし、まったくをもって問題ない。
「ところで、テオドール。アウデン卿から聞いたのだが、アウデン子爵領に現れたブラックドラゴンを討伐したことがあるそうだな?」
「え? ええ、ありますけど……」
ウムウム、と国王陛下がうなずいた。
「それではテオドールにはブラックドラゴンを討伐した功績により「ドラゴンスレイヤー」の称号と、それに準ずる勲章を授ける」
おおお! と再び謁見の間が湧いた。そして大きな拍手が鳴り響いたのであった。
式典も無事に終わり、俺たちはモンドリアーン伯爵家へと帰って来た。伯爵になったことと、俺がドラゴンスレイヤーになったことを家人に伝えると、大騒ぎになった。そしてすぐに宴の準備が整えられたのであった。
うちの家人は古株の人も多いからな。父上が子供のころから働いている者もいる。その分、うれしさもひとしおなのだろう。アウデン子爵たちも、周辺に領地を持つ貴族たちも集まってきた。この辺りで伯爵位を持っているのは、モンドリアーン伯爵家か元婚約者の実家であるフェルベーク伯爵家だけである。
そのフェルベーク伯爵家だが、娘が親が決めた婚約を破棄して別の男のところに行った挙げ句の果てに、その男が魔族だったことで大騒ぎになっていた。
もちろん、魔族とのつながりを疑われており、現在も国からの調査中である。さらにはその魔族によって傷物になった娘は、おそらく嫁のもらい手はいないだろう。
何とかよりを取り戻そうと、フェルベーク伯爵が「婚約を考え直してくれ」と言ってきたが、鬼のような形相になった両親とミケとイグミたちが断った。イグミの子供たちに囲まれたフェルベーク伯爵はさぞ恐怖したことだろう。俺もまさか再び地面から根っこを引き抜いて歩きだすとは思わなかった。よっぽど腹に据えかねるものがあったのだろう。
カロリーナ伯爵令嬢からは何度もしつこく手紙が来ていたが、中身を開けることもなく、イーリスの目の前で焼いた。だがそれでもイーリスは不安を隠せない様子だった。
「イーリス、俺は絶対にキミと添い遂げるからな」
「テオ様……」
どうしてそんな顔をするのかな~。俺ってそんなに薄情に見えるのかな? イーリスの肩を抱き寄せながらも、どうすれば信頼してもらえるだろうかと困ってミケを見た。
ミケはニンマリと口角をあげ、目を三日月型に細めると、自信ありげに言った。
「大丈夫だよ、イーリス。この間も言ったように、テオはイーリスのおっぱいに夢中だからさ。イーリスにバレないようにいつもおっぱいを盗み見てるくらいだからね~」
キッと俺を見るイーリスの目に力がこもった。ミケ、お前、何ということを言うんだ。台無しだよ!
「イーリス、ミケの話は冗談半分に聞いて……」
「テオ様……」
そうつぶやくと、イーリスは突然服を脱ぎだした。
「ちょっと待った、イーリス! 早まるんじゃない!」
「ワオ! イーリスってば、大胆ー!」
「ミケ、煽るな! 煽ってないで止めてくれ。イーリス、正気に戻るんだ!」
「テオ様……」
まずい、これは非常にまずい。イーリスの中の何かがプッツリと切れてしまったらしい。まさか「だったら、既成事実を作ればいいじゃない」と言う思考にたどり着くとは思わなかった。逆だろ、普通!?
これはもう、ダメかも分からんね……。
Fin
0
お気に入りに追加
85
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
パーティーから追放され婚約者を寝取られ家から勘当、の三拍子揃った元貴族は、いずれ竜をも倒す大英雄へ ~もはやマイナスからの成り上がり英雄譚~
一条おかゆ
ファンタジー
貴族の青年、イオは冒険者パーティーの中衛。
彼はレベルの低さゆえにパーティーを追放され、さらに婚約者を寝取られ、家からも追放されてしまう。
全てを失って悲しみに打ちひしがれるイオだったが、騎士学校時代の同級生、ベガに拾われる。
「──イオを勧誘しにきたんだ」
ベガと二人で新たなパーティーを組んだイオ。
ダンジョンへと向かい、そこで自身の本当の才能──『対人能力』に気が付いた。
そして心機一転。
「前よりも強いパーティーを作って、前よりも良い婚約者を貰って、前よりも格の高い家の者となる」
今までの全てを見返すことを目標に、彼は成り上がることを決意する。
これは、そんな英雄譚。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える
ジャック
ファンタジー
私立三界高校2年3組において司馬は孤立する。このクラスにおいて王角龍騎というリーダーシップのあるイケメンと学園2大美女と呼ばれる住野桜と清水桃花が居るクラスであった。司馬に唯一話しかけるのが桜であり、クラスはそれを疎ましく思っていた。そんなある日クラスが異世界のラクル帝国へ転生してしまう。勇者、賢者、聖女、剣聖、など強い職業がクラスで選ばれる中司馬は無であり、属性も無であった。1人弱い中帝国で過ごす。そんなある日、八大ダンジョンと呼ばれるラギルダンジョンに挑む。そこで、帝国となかまに裏切りを受け─
これは、全てに絶望したこの世界で唯一の「無」職の少年がどん底からはい上がり、世界を変えるまでの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
カクヨム様、小説家になろう様にも連載させてもらっています。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
無能を装って廃嫡された最強賢者は新生活を満喫したい!
えながゆうき
ファンタジー
五歳のときに妖精と出会った少年は、彼女から自分の置かれている立場が危ういことを告げられた。
このままではお母様と同じように殺されてしまう。
自分の行く末に絶望した少年に、妖精は一つの策を授けた。それは少年が持っている「子爵家の嫡男」という立場を捨てること。
その日から、少年はひそかに妖精から魔法を教えてもらいながら無能者を演じ続けた。
それから十年後、予定通りに廃嫡された少年は自分の夢に向かって歩き出す。
膨大な魔力を内包する少年は、妖精に教えてもらった、古い時代の魔法を武器に冒険者として生計を立てることにした。
だがしかし、魔法の知識はあっても、一般常識については乏しい二人。やや常識外れな魔法を使いながらも、周囲の人たちの支えによって名を上げていく。
そして彼らは「かつてこの世界で起こった危機」について知ることになる。それが少年の夢につながっているとは知らずに……。
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった
ぐうのすけ
ファンタジー
日本の社会人として暮らす|大倉潤《おおくらじゅん》は女神に英雄【ジュン】として18才に若返り異世界に召喚される。
ジュンがチートスキルを持たず、他の転移者はチートスキルを保持している為、転移してすぐにジュンはパーティーを追放された。
ジュンは最弱ジョブの投資家でロクなスキルが無いと絶望するが【経験値投資】スキルは規格外の力を持っていた。
この力でレベルを上げつつ助けたみんなに感謝され、更に超絶美少女が俺の眷属になっていく。
一方俺を追放した勇者パーティーは横暴な態度で味方に嫌われ、素行の悪さから幸運値が下がり、敵にマークされる事で衰退していく。
女神から英雄の役目は世界を救う事で、どんな手を使っても構わないし人格は問わないと聞くが、ジュンは気づく。
あのゆるふわ女神の世界管理に問題があるんじゃね?
あの女神の完璧な美貌と笑顔に騙されていたが、あいつの性格はゆるふわJKだ!
あいつの管理を変えないと世界が滅びる!
ゲームのように普通の動きをしたら駄目だ!
ジュンは世界を救う為【深刻な女神力不足】の改善を進める。
念のためR15にしてます。
カクヨムにも先行投稿中
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる