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俺たちの戦いはこれからだ!

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「モンドリアーン子爵、テオドール殿、お出ましの準備をお願いします」

 式典の準備が整ったようである。父上と目を合わせると、お互いに軽くうなずき合い、部屋をあとにした。
 扉の向こうから名前が呼ばれ、俺たちは謁見の間へと入って行った。そこにはすでに多くの貴族たちが並んでおり、俺たちの登場を待っていた。だれも騒ぐことなく、式典は粛々と行われていく。

「モンドリアーン子爵、テオドール殿、前へ」
「ハッ」

 俺たちは国王陛下の前にひざまずいた。陛下から顔をあげるように声がかかる。

「モンドリアーン卿、今回の働き、大義であった。おかげで最小限の被害で国を守ることができた。その大義に、私は応えよう。モンドリアーン卿を伯爵位に任命する」

 おおお! と言うざわめきと共に拍手が鳴り響いた。子爵から伯爵に爵位をあげるのには大きな壁があり、よほどの功績をあげなければならない。長きに渡って魔法にたけた一族として国中から認められていても、これまでずっと子爵だったのがその証拠である。

 それがついに伯爵になったのだ。父上も感慨深いものがあるのだろう。一族の悲願であったことは間違いない。静かに頭を下げていた。

「テオドールよ、魔族討伐では本当に素晴らしい働きをしてくれた。今、こうして皆が無事でいられるのも、そなたのおかげと言っても過言ではないだろう」

 ザワザワと周囲が騒がしくなる。ある程度の事情はウワサ程度には聞いていたことだろう。しかし、国王陛下の口から直接告げられれば、それが事実であることは明白だ。

「そこで、その功績を称えたいのだが……残念ながら、魔族討伐に対しての前例がなくてな、褒賞がないのだよ」

 あらら。まあ、褒賞は父上がいただいているから、別に要らないんですけどね。将来は俺が伯爵になるわけだし、まったくをもって問題ない。

「ところで、テオドール。アウデン卿から聞いたのだが、アウデン子爵領に現れたブラックドラゴンを討伐したことがあるそうだな?」
「え? ええ、ありますけど……」

 ウムウム、と国王陛下がうなずいた。

「それではテオドールにはブラックドラゴンを討伐した功績により「ドラゴンスレイヤー」の称号と、それに準ずる勲章を授ける」

 おおお! と再び謁見の間が湧いた。そして大きな拍手が鳴り響いたのであった。


 式典も無事に終わり、俺たちはモンドリアーン伯爵家へと帰って来た。伯爵になったことと、俺がドラゴンスレイヤーになったことを家人に伝えると、大騒ぎになった。そしてすぐに宴の準備が整えられたのであった。

 うちの家人は古株の人も多いからな。父上が子供のころから働いている者もいる。その分、うれしさもひとしおなのだろう。アウデン子爵たちも、周辺に領地を持つ貴族たちも集まってきた。この辺りで伯爵位を持っているのは、モンドリアーン伯爵家か元婚約者の実家であるフェルベーク伯爵家だけである。

 そのフェルベーク伯爵家だが、娘が親が決めた婚約を破棄して別の男のところに行った挙げ句の果てに、その男が魔族だったことで大騒ぎになっていた。
 もちろん、魔族とのつながりを疑われており、現在も国からの調査中である。さらにはその魔族によって傷物になった娘は、おそらく嫁のもらい手はいないだろう。

 何とかよりを取り戻そうと、フェルベーク伯爵が「婚約を考え直してくれ」と言ってきたが、鬼のような形相になった両親とミケとイグミたちが断った。イグミの子供たちに囲まれたフェルベーク伯爵はさぞ恐怖したことだろう。俺もまさか再び地面から根っこを引き抜いて歩きだすとは思わなかった。よっぽど腹に据えかねるものがあったのだろう。

 カロリーナ伯爵令嬢からは何度もしつこく手紙が来ていたが、中身を開けることもなく、イーリスの目の前で焼いた。だがそれでもイーリスは不安を隠せない様子だった。

「イーリス、俺は絶対にキミと添い遂げるからな」
「テオ様……」

 どうしてそんな顔をするのかな~。俺ってそんなに薄情に見えるのかな? イーリスの肩を抱き寄せながらも、どうすれば信頼してもらえるだろうかと困ってミケを見た。
 ミケはニンマリと口角をあげ、目を三日月型に細めると、自信ありげに言った。

「大丈夫だよ、イーリス。この間も言ったように、テオはイーリスのおっぱいに夢中だからさ。イーリスにバレないようにいつもおっぱいを盗み見てるくらいだからね~」

 キッと俺を見るイーリスの目に力がこもった。ミケ、お前、何ということを言うんだ。台無しだよ!

「イーリス、ミケの話は冗談半分に聞いて……」
「テオ様……」

 そうつぶやくと、イーリスは突然服を脱ぎだした。

「ちょっと待った、イーリス! 早まるんじゃない!」
「ワオ! イーリスってば、大胆ー!」
「ミケ、煽るな! 煽ってないで止めてくれ。イーリス、正気に戻るんだ!」
「テオ様……」

 まずい、これは非常にまずい。イーリスの中の何かがプッツリと切れてしまったらしい。まさか「だったら、既成事実を作ればいいじゃない」と言う思考にたどり着くとは思わなかった。逆だろ、普通!?
 これはもう、ダメかも分からんね……。

 Fin
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