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あとは若い二人で①

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「お待たせしてしまってすみません」

 俺が挨拶をすると、アウデン男爵は目を見開いた。そしてイーリス男爵令嬢はほほを赤く染め上げた。メガネが邪魔でどんな目をしているのかは分からないが、どうやら第一印象は悪くないようである。安心した。

「イーリス男爵令嬢、こちらが私の息子のテオドールだ」
「テオドール・エフモント・モンドリアーンです。こっちは私の守護精霊のミケです。私共々、よろしくお願いします。ほらミケ、挨拶」
「ミケだよ。よろしくね~」

 ミケの口調が軽い。だが余計なことは言わなかった。ならばよし。このまま良い子にしておくんだぞミケ。くれぐれもおっぱいの話はするなよ。

「お、お初にお目にかかりましゅ。イーリス・デン・アウデンでしゅ!」

 噛んだー! 噛み噛みでイーリス男爵令嬢が答えた。どうやら緊張しすぎて、しゃべる猫のことは気がついていない様子だ。あとで気がついたときに悲鳴をあげるんだろうなぁきっと。何だか今から気が重い。

 それにしても、この子はミケと同じ癖を持っているのだろうか? 緊張すると、噛み噛みになる癖を。
 チラリとミケと目を合わせると、ミケはあきれたように首を左右に振った。まるで「あれだけ噛むなんて、どうかしてる」と言いたげである。
 どうやら自分のことは棚にあげたようである。ミケはいい性格をしてると思う。ほんと。


 アウデン男爵たちをサロンに案内すると、もう一度改めてお互いに挨拶を交わした。その後も色々とこれからのことを話し合ったあとに「あとは若い二人で」と言われ、俺たち二人だけがサロンに残った。

 もちろん二人だけではない。ミケもいる。
 最初こそ守護精霊のミケはとても驚かれたが、見た目が普通の猫なだけにすぐに騒ぎは収まった。我が家の使用人たちの反応も似たようなものだったので、猫の姿は偉大だと思う。
 これがドラゴンとかだったら、長いこと畏怖の象徴として見られていたことだろう。

 二人っきりになったものの、一体何を話せば良いのだろうか。今思い出したが、俺は女性と気の利いた会話ができるような器用な男じゃないぞ。

 こんなときはミケだ。ミケならきっと何とかしてくれるはず。俺はイーリス男爵令嬢の膝の上で丸まっているミケをチラリと見た。
 そんな主の様子に、ミケは気がついたようである。一つうなずくと、おもむろに頭をあげた。やだ、ミケちゃん、イケメン過ぎる。
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