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モンドリアーン子爵家の準神①

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「あの、一体俺は何になったんですかね?」

 恐る恐る尋ねた。黒い猫は三日月型に目を細めると、ニッコリと笑った、ように見えた。

「テオドールが何になったか、知りたい?」

 どうやらこの猫は俺の名前を知っているらしい。一体なぜ? だがそれよりも、俺が何になったのか知りたい。俺はうなずきを返した。

「それじゃ、ボクに名前を付けてよ。ボクは女の子だから、可愛い名前を付けてよね」

 やっぱりメスだったか。この声でオスだったらオネエ系を想像しなければならないところだった。名前ねぇ……そんなこと急に言われてもちょっと困るな。でも何で俺に名前を付けて欲しいのだろうか。まあいいや。

「それじゃ、「ミケ」とかはどうですかね?」

 別に三毛猫ではないが、ここで「クロ」などの安直な名前を付けたら引っかかれそうなのでやめておいた。

「ミケねえ……うん、いいよ、それで」

 どうやら及第点をもらえたようである。俺はホッとため息をついた。

「それで……俺は一体どうなったのですか?」

 再びミケの目が三日月のように細くなった。どうやら笑っているらしい。口角も上へとあがっている。何だろう。何だか嫌な予感がするのだが。

「そんなにかしこまらなくて良いからさ、普段通り話してよ。ボクは堅苦しいのが嫌いなんだ」

 ミケはそう言うと、俺の足下へと近づいてきた。どこからどう見てもただの黒い猫だ。ただし、会話ができるという点を除けば……であるが。
 そして俺の足に手を置くと、緑色に怪しく光る二つのキャッツアイがこちらを見つめた。

「ふむふむ、なるほどね」
「ミケ?」
「大丈夫、大丈夫。テオドールのステータスを読み取っただけだから。ねえ、テオドールって呼ぶのが大変だからさ、テオって呼んでも良いかな?」
「い、いいとも!」

 俺は二つ返事で答えた。まだミケが何者なのか分からない。機嫌を損ねない方がいいだろう。それにしてもステータスを読み取るって、一体どう言うことだろうか。もしかして個人の能力を読み取れることができるのか? スリーサイズとかも読み取れちゃう!?

「テオ、キミは……」
「キミは?」

 どうしたミケ。やけにもったいぶるな。こんなことはサラッと言ってもらった方が良いぞ。俺の胃腸のためにも。

「キミは準神になってるね」
「……はい?」

 思わず声が裏返った。何、準神って。言葉通りにとると、神様の一歩手前ってことになるんだけど……。

「テオは神様の一歩手前の種族になったってことだね」

 何ということでしょう。先ほどまでデブと豚を足し合わせたような人間だったものが、デブと豚を足し合わせたような準神に早変わり。何と言うか、そんなのありなの?

「ミケ、それって大丈夫なの?」

 そう言うとミケは、チッチッチッチ、と言いながら腕を振った。多分指を振ったつもりなのだろうが、どう見ても腕だった。突っ込まなかったけど。
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