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四天王に会いに行く
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これはあれだな。ソフィアが古代竜であることは、私が元魔王であるのと同じように隠しておいた方が良さそうだな。さいわいなことに、バディア辺境伯家の人たちは信用できる。
「ソフィアが古代竜であることはここだけの秘密にしておいて下さい」
「もちろんだとも。だれにも言うつもりはないよ」
バディア辺境伯が夫人とエレナ嬢の方を見ると、二人も無言でうなずいている。エレナ嬢もまさかソフィアが古代竜だとは思ってもみなかったようである。若干、顔色が悪くなっている。
「大丈夫ですよ、エレナ嬢。ソフィアはかみついたりしませんから」
「せぬわ。そんなこと!」
エレナ嬢の顔が引きつっている。どうやら逆効果だったみたいである。これはソフィアとエレナ嬢が仲良くなるまでは時間がかかるかも知れない。
「レオニートは自分のことを棚に上げて、良く人のことが言えるのう?」
「ちょ、余計なことを言うなよ」
「もがっ」
隣に座っていたソフィアの口を慌てて塞いだ。これまでそのことを一度も口にしていないので、私が元魔王であることを秘密にしていることは分かっているはずだ。もちろん、そのことが世間に知られると、とんでもない騒ぎになることも知っているだろう。
慌てる私を見て、優越感を抱いているのだろう。ソフィアの目元が笑っていた。これは今後はソフィアのご機嫌を取る必要があるのかも知れない。
「古代竜とお知り合いだとは、さすがはレオ様ですわね」
「ハハハ……」
こちらもなんとかしないといけないな。女性は怖い。女性と関わると、こうなることは分かっていた。そのため、これまではなるべく避けてきた。
だがしかし、魔王としての地位がなくなってしまった今となっては、そう簡単に避けることができなくなってしまったようである。昔は心理的な壁が一枚あったのに。
「レオニート殿はこれからどうするおつもりなのですか?」
「残りの四天王を探すつもりです。そのことについては書かれていませんでしたか」
「ええ、アレリード伯爵からの手紙には書かれていませんでしたね」
どこまで話したら良いのか分からなかったので、ひとまず自分の口からこれまでの経緯を話した。ある程度は手紙に書いてあったみたいだが、細かい部分と最新の情報は抜けていたようで、ほうほうと相づちを打ちながら聞いていた。
「なるほど、これは思った以上に深刻な事態になっているようですね。もしかして、この辺りの魔力が減少しているのも、四天王の仕業なのでしょうか?」
「うーん、可能性はあるかも知れませんが、そこまでできるのかは疑問ですね」
百年の間に、四天王がそれほどの力と技術を身につけていることがあるだろうか。ガロリアンのやっていたことは呪いの応用にすぎないからね。それにあの黒いクリスタルもここ数年の間に完成したものだろう。使われているクリスタルが真新しかった。
「もしそうだとして、魔力をなくしてどうするつもりなのでしょうか? もし、魔力をどこかに集めているのなら、レオ様なら探知できますよね?」
「まあ、そうだな。だが、そんな反応は今のところないぞ」
「ならば、別の何かが起こっていると見た方が良いでしょう」
シンとサロンの中が静まり返った。別の何か。四天王を探すよりも厄介そうな案件である。だが、今のところの手がかりは何もない。やはりまずは四天王に会って、何を考えているのかを確認しておいた方が良いだろう。
ガロリアンは四天王の中でも最弱、我ら四天王の面汚しよ、とか思って、別の悪事を働いている可能性があるからな。ガロリアンが新たな魔王になることを目指していたんだ。他の四天王が同じようなことを考えていたとしても、おかしなことではない。
「やはり四天王に会いに行くしかないな」
「あの、大丈夫なのですか?」
「大丈夫ですよ、エレナ嬢。商業都市ラザーニャで出会った四天王よりも私は強いのです。他の四天王も負けませんよ」
元魔王な上に、今は古代竜のソフィアもいる。私たちの姿を四天王が見れば、戦意を喪失するか、尻尾を巻いて逃げ出すだろう。まあ、逃がさないけどね。
信じられないのか、エレナ嬢が眉を寄せて考え込んでいる。
「あの、それでしたら、私がついて行っても構いませんよね?」
「え? いや、それは……」
「エレナよ、おぬしは旅を甘く見ておるぞ。どこにいるかも分からぬ四天王を探すのだ。過酷な旅になろう。恐らく耐えられぬぞ」
「が、頑張ります!」
体の前で両手で握りこぶしを作るエレナ嬢。その目は本気のようである。病み上がりのお嬢様が私たちの旅について行けるとは思えないのだが。私たちだけならば空を飛んで探すことができるので、負担は少なくてすむけどね。
取りあえずエレナ嬢の申し出は保留にさせてもらった。簡単に連れて行くとは言えない。バディア辺境伯の考えもある。一人娘なのだ。たぶんきっと間違いなく無理だと思う。なんとか思いとどまらせないといけないな。
その日は予定通り、バディア辺境伯邸に泊まらせてもらうことになった。それぞれ個室が与えられたことには不満そうな顔をしていたソフィアであったが、内装の豪華さを見てご機嫌になっていた。フカフカのベッドがとても気に入ったらしい。笑顔でゴロゴロと転がっていたとの報告がカビルンバから上がっている。
「どうするんですか? さすがにエレナ嬢を旅に連れて行くわけにはいきませんよ。今回みたいに、うまい具合に四天王の口を封じることができるとは限りませんからね」
「私もそう思う。なんとかしてあきらめさせないといけないな。ここはやはりバディア辺境伯に相談するべきだろう。あちらも同じ考えのはずだ」
「そうですね。もしかすると、何か良い案があるかも知れませんからね」
「ソフィアが古代竜であることはここだけの秘密にしておいて下さい」
「もちろんだとも。だれにも言うつもりはないよ」
バディア辺境伯が夫人とエレナ嬢の方を見ると、二人も無言でうなずいている。エレナ嬢もまさかソフィアが古代竜だとは思ってもみなかったようである。若干、顔色が悪くなっている。
「大丈夫ですよ、エレナ嬢。ソフィアはかみついたりしませんから」
「せぬわ。そんなこと!」
エレナ嬢の顔が引きつっている。どうやら逆効果だったみたいである。これはソフィアとエレナ嬢が仲良くなるまでは時間がかかるかも知れない。
「レオニートは自分のことを棚に上げて、良く人のことが言えるのう?」
「ちょ、余計なことを言うなよ」
「もがっ」
隣に座っていたソフィアの口を慌てて塞いだ。これまでそのことを一度も口にしていないので、私が元魔王であることを秘密にしていることは分かっているはずだ。もちろん、そのことが世間に知られると、とんでもない騒ぎになることも知っているだろう。
慌てる私を見て、優越感を抱いているのだろう。ソフィアの目元が笑っていた。これは今後はソフィアのご機嫌を取る必要があるのかも知れない。
「古代竜とお知り合いだとは、さすがはレオ様ですわね」
「ハハハ……」
こちらもなんとかしないといけないな。女性は怖い。女性と関わると、こうなることは分かっていた。そのため、これまではなるべく避けてきた。
だがしかし、魔王としての地位がなくなってしまった今となっては、そう簡単に避けることができなくなってしまったようである。昔は心理的な壁が一枚あったのに。
「レオニート殿はこれからどうするおつもりなのですか?」
「残りの四天王を探すつもりです。そのことについては書かれていませんでしたか」
「ええ、アレリード伯爵からの手紙には書かれていませんでしたね」
どこまで話したら良いのか分からなかったので、ひとまず自分の口からこれまでの経緯を話した。ある程度は手紙に書いてあったみたいだが、細かい部分と最新の情報は抜けていたようで、ほうほうと相づちを打ちながら聞いていた。
「なるほど、これは思った以上に深刻な事態になっているようですね。もしかして、この辺りの魔力が減少しているのも、四天王の仕業なのでしょうか?」
「うーん、可能性はあるかも知れませんが、そこまでできるのかは疑問ですね」
百年の間に、四天王がそれほどの力と技術を身につけていることがあるだろうか。ガロリアンのやっていたことは呪いの応用にすぎないからね。それにあの黒いクリスタルもここ数年の間に完成したものだろう。使われているクリスタルが真新しかった。
「もしそうだとして、魔力をなくしてどうするつもりなのでしょうか? もし、魔力をどこかに集めているのなら、レオ様なら探知できますよね?」
「まあ、そうだな。だが、そんな反応は今のところないぞ」
「ならば、別の何かが起こっていると見た方が良いでしょう」
シンとサロンの中が静まり返った。別の何か。四天王を探すよりも厄介そうな案件である。だが、今のところの手がかりは何もない。やはりまずは四天王に会って、何を考えているのかを確認しておいた方が良いだろう。
ガロリアンは四天王の中でも最弱、我ら四天王の面汚しよ、とか思って、別の悪事を働いている可能性があるからな。ガロリアンが新たな魔王になることを目指していたんだ。他の四天王が同じようなことを考えていたとしても、おかしなことではない。
「やはり四天王に会いに行くしかないな」
「あの、大丈夫なのですか?」
「大丈夫ですよ、エレナ嬢。商業都市ラザーニャで出会った四天王よりも私は強いのです。他の四天王も負けませんよ」
元魔王な上に、今は古代竜のソフィアもいる。私たちの姿を四天王が見れば、戦意を喪失するか、尻尾を巻いて逃げ出すだろう。まあ、逃がさないけどね。
信じられないのか、エレナ嬢が眉を寄せて考え込んでいる。
「あの、それでしたら、私がついて行っても構いませんよね?」
「え? いや、それは……」
「エレナよ、おぬしは旅を甘く見ておるぞ。どこにいるかも分からぬ四天王を探すのだ。過酷な旅になろう。恐らく耐えられぬぞ」
「が、頑張ります!」
体の前で両手で握りこぶしを作るエレナ嬢。その目は本気のようである。病み上がりのお嬢様が私たちの旅について行けるとは思えないのだが。私たちだけならば空を飛んで探すことができるので、負担は少なくてすむけどね。
取りあえずエレナ嬢の申し出は保留にさせてもらった。簡単に連れて行くとは言えない。バディア辺境伯の考えもある。一人娘なのだ。たぶんきっと間違いなく無理だと思う。なんとか思いとどまらせないといけないな。
その日は予定通り、バディア辺境伯邸に泊まらせてもらうことになった。それぞれ個室が与えられたことには不満そうな顔をしていたソフィアであったが、内装の豪華さを見てご機嫌になっていた。フカフカのベッドがとても気に入ったらしい。笑顔でゴロゴロと転がっていたとの報告がカビルンバから上がっている。
「どうするんですか? さすがにエレナ嬢を旅に連れて行くわけにはいきませんよ。今回みたいに、うまい具合に四天王の口を封じることができるとは限りませんからね」
「私もそう思う。なんとかしてあきらめさせないといけないな。ここはやはりバディア辺境伯に相談するべきだろう。あちらも同じ考えのはずだ」
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