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◇ 分岐点 ◇
⑪
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俺は優しくない。
優しかったら、フラれた翌々日には何事も無かったかのように立ち直って、仕事に打ち込んだりしない。
涙のひと粒も流さず、今回ばかりはあっさりと彼女の連絡先を削除し、俺の番号も何日と経たずに変えて完全に縁を絶ったりもしない。
俺は、後ろを振り返ってる場合じゃなかった。
目の前のことに集中できなくなるようじゃ、それは足枷と同じだ。
そもそも寂しい思いをさせて浮気に走られるくらいだったんだから、もっと早くに俺が決断してやるべきだったんだ。
彼女が突きつけてきた選択は、何も間違ってなかった。
その質問自体に嫌気が差し、「またそれか」とため息を吐いてどっちも選ばなかった俺は、答えを出すことから逃げていただけに過ぎない。
マジで死ぬほど情けなかった。
未練があると言えば、聖南が羨んだ〝恋〟を実感しないまま終わったこと。
それだけは若干解せない。
俺は彼女のどこが好きだったのか。
問われても答えられない薄情者だと、その時初めて自身の熱量がそれに見合うものでなかったことに気が付いた。
多分俺は……恋愛に向いてない。
ひとりっ子だし。
自由にやりたい。縛られたくない。
自分が信じたもの、自分が好きだと思うもの、自分が熱中出来るものに全力を注ぎたい。
彼女との付き合い自体、CROWNとしての活動を始めてからは〝頑張って〟続けていた。俺はそれを、何かの意地のように認めたくなかっただけだった。
総合すると、やっぱり俺は優しくないし、めちゃめちゃ自分勝手な野郎だ。
そりゃあ……彼女も愛想つかすわ。
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