世界は残り、三秒半

須藤慎弥

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世界は残り、三秒半

第十二話

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 球体の中から脱出する事は不可能だった。
 取手も無ければ、開閉していたはずの扉の繋ぎ目さえ見当たらない。

「リアム! 出してよ、リアム!」

 俺を見詰めながら小窓に右手をかざしたリアムの真似をして、重なるように左手を添える。






「──世界は残り、三秒半となった。……愛してるよ、ユーリ」
「────ッッ!」





 立ち上がったリアムは、少しの狼狽も躊躇も見せずに俺の視界から居なくなった。

 強風に煽られた球体がゴロゴロっと動く。
 その後すぐさまグレッグは操縦席に戻り、手動操縦で進行方向を変えた。

 え、……待ってよ。あそこにリアムを置いていくのかよ。
 無重力だって言ってたのに何の装備もして行かなかったよ。
 命綱も装着してなかった。

 俺、まだ何にも伝えてないのに……。


 エメラルドグリーンの瞳の面影と、『愛してる』の言葉を残し、リアムは恭しい正装のまま神の創造物と対峙しに行った。






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