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はじめましておにいさん2
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そうだよね
大体10も歳が離れた私の事なんて恋愛対象になんかなるわけないもんね、おねえさんと結婚したばかりだし
私なんかをからかっておにいさんは楽しいのかな?
きっと楽しいんだろうなー
年上の余裕、大人の遊びなのかな……
深く考えるのをやめて、私は晩御飯を食べる事に集中する事にする
うん、やっぱりカレーは甘口が1番美味しいな辛いのは苦手だから……
パクパク食べていると義母が話し掛けてきた
「ねえ?今日ね、おにいさんが地元のお酒を持って来てくれたんだけど体調大丈夫ならみんなで一緒に呑もうよ?」
「はい、よかったら私もみんなと呑みたいです」
ちょうどいい
お酒を呑んでさっきの事は忘れよう
おにいさんがキッチンの方から一升瓶を持って来た
どこに置いてあったんだろう?全然気が付かなかったなあ……
私は慌てて席から立つとキッチンへと向かい、食器棚の上奥から普段は使わないおちょこを四つ取り出して軽くて洗って布巾で拭いてみんなが座っているテーブルへと持っていき、一人一人に手渡す
ここは年齢的も立場的にも私がみんなにお酒を注ぐのがいいのだろうか?
おにいさんは私が席に座るのを待っていてくれたようで、私の方を見てから一升瓶を開けた
日本酒はあまり呑んだ事はないけど、みんなと一緒に呑めるならきっとおいしく呑めると思う、おにいさんは自ら進んでみんなにお酒を注いでくれた
本当なら私がやらなきゃいけない事なのにおにいさんは大人で優しい、さっきの事は忘れよう、きっとおにいさんも疲れてるんだもんね
みんなで声を合わせて
「いただきまーす」
匂いを確かめて、お酒を口の中に入れる
日本酒はアルコールが強くて呑みにくいと聞いていたけど、このお酒はとてもまろやかで呑みやすい気がする
私はかなりのハイペースでお酒を呑んでいく
どれだけ呑んだのだろう
どれだけの時間が過ぎたのだろう
ハッと気が付いた時には、テーブルに突っ伏して眠ってしまっていた
義母たちはまだまだお酒を楽しそうに呑んでいた、この人たちはどれだけお酒に強いんだろうか……
とりあえずトイレに行こうと立ち上がると、思ったよりも酔いが回っているようで立ち上がれずフラフラと床に座り込んでしまった
みんな心配そうな顔でこちらを見ている
頭はクラクラするし、日本酒ってこんなにもすごいんだ……
なんとか絞り出した声で
「だっ……だいじょうぶです……」
と言ってはみたけどどう見ても大丈夫そうには見えない
おにいさんが立ち上がって私の手を引いて立ち上がらせてくれた
私は立ち上がれたけど、またフラッとして手を引いてくれたおにいさんの方へ倒れてしまい、おにいさんの胸にかおをうずめてしまった
うーん、なんだかあったかくて柔らかいなあ……
このまま眠っちゃおうかな……
ハッとして目を開けると、さっきおにいさんの着ていたTシャツの柄がかなり近くに見えた
あれっ?私何して……
何してたんだっけ?
私、今……
あれ?また抱き締められてる?!
おにいさんの声が聞こえる
「大丈夫?自分で立てる?」
あぁ、私お酒の呑み過ぎでヘロヘロになってるんだ……
「はっ……はい、大丈夫です、とりあえずそこのソファに座りますね」
私はおにいさんの体からゆっくり離れるとおにいさんの手を借りながらテーブルのそばにあるソファに倒れるように座った
「大丈夫ー?呑み過ぎたんじゃない?」
義母がまだまだお酒を呑みながら心配してくれる
あーっ!!
突然おねえさんが大きな声を出した
「忘れてた!私今日夜から友達と約束してたんだ!今から行ってくる!」
おねえさんは慌てて鞄を持って出掛けて行った、あれだけ日本酒を呑んでおねえさんは平気なんだろうか?
「あー行っちゃったね、まったくあの子はザルだから酔わないとはいえ、おにいさんもいるのに置いて出掛けるなんてねー」義母は頭を抱えている
「いいんですよ、たまに地元に帰った時ぐらい好きにさせてあげてくださいよ」
おにいさんは笑顔で義母に言った
義母は、ありがとうと言うとテーブルの上を片付け始めた
私も手伝わないとと立ち上がろうとするも、やはりフラフラして立てない
義母は笑いながら、今日ぐらいゆっくりしてなよ?後はやっておくからと言ってくれたので少し酔いがさめるまでソファで眠る事にしようと目を閉じかけた時
目の前におにいさんが来た
「どっ、どうしたんですか……おにいさん……?」
おにいさんは頭をポリポリかきながら
「いやっ……その……もし、酔い過ぎて動けないなら部屋まで一緒に行ってあげようかなって思って……」
照れてるの?
それともまた、からかおうとしてる?
今はどっちでもいいや
介抱してくれるなら助かる、お願いしますとおにいさんに頭を下げた
さっきのように手を引いてくれるんだと思って待っていると……
おにいさんはおもむろに私に近づいて来て、私を抱きあげて、お姫様抱っこのような形になった
「ちょっ……ちょっと!おにいさん!これは恥ずかしいです……」
「あっ、ごめん嫌だったかな?歩くの辛そうだったからこの方が楽かなって思ったんだけど……おろそうか?」
私はアルコールのせいもあって、ドキドキが止まらなくなってしまう
おにいさんに返事ができないままでいると、おにいさんは微笑みながら行こうかとつぶやいて私の部屋へと歩き出した
こんな姿、絶対に義母に見られたくなかった、幸運な事に義母はトイレにでも行っていたのだろうがお姫様抱っこの状態を見られる事なく部屋まで辿り着いた
部屋のドアを開けて、ベッドの上に優しく寝かせてくれた
そのまま何も言わないでおにいさんは私から離れていった、ガチャッとドアの鍵が閉まる音が聞こえた
あれ……?ドアの鍵って……
確か中からしか開け閉め出来ないようになってるはずだよね……?
じゃぁ、今の鍵の音はなに……?
鍵の音が気になるけど
かなり酔いが回っているのと眠気でどうなっているのか確認しないまま私の意識は夢の中へ引きずり込まれた
「ね……ぇ……?」
なんだろう……?
誰か私の耳元で何か言ってる?
まぶたが重い、目を開けられない、何を言ってるのかも聞き取りにくい
ほっぺの辺りがなんだかむず痒い
なにか、なにか変だ……
私は重いまぶたをあけて、自分に何が起こっているのか確認する
仰向けにベッドに横になってる私の頭の上に誰かの頭が見える、部屋が暗くて誰なのかよく見えない
「だれ……?」
顔の見えない誰かは、私から顔を離すと頭を手で優しく撫でた
「おれだよ……ごめん……」
あれ……?この声って……
おにいさん?!
そういえば部屋までおにいさんにお姫様抱っこで運んでもらったんだっけ……
って……でも、この状況は違うよね?!
えっ?私どれぐらい眠っちゃってたの?
「へっ、部屋から出て行ってください!」
私はおにいさんを突き飛ばした、おにいさんはバランスを崩してベッドの上から床に落ちてしまった
「痛っ……そ、そうだよね、こんな事許してもらえる訳なんかないよな……」
おにいさんは腰の辺りをさすっていた、私はカッとなってやってしまった事を後悔した
「あっ、ごめんなさい……怪我しませんでしたか?」
私はおにいさんに手を差し出して、おにいさんをベッドの上に引っ張り上げた
おにいさんと私、ベッドの上に少し離れて座った
しばらく沈黙が続いた
その沈黙を破ったのはおにいさんだった
「ねえ……?下の名前聞いてもいいかな?」
そうか、おにいさんは私の下の名前知らなかったんだ、そうだよね呼ぶ必要もなかったもんね
「みずき、みずきっていいます」
「おれの名前も覚えてくれると嬉しい、ゆきひろっていうんだ」
おにいさんの下の名前はゆきひろなんだ、どんな漢字なんだろう?
気にはなるけど今説明されても頭がクラクラして理解できないだろうと聞くのをやめた
「ねえ?みずきちゃん……ううん、みずき」
「はっ……はい?」
だいぶ部屋の暗さにも慣れてきて、おにいさんが真剣な顔をしているのがわかる
「今日はいろいろと本当にごめん!自分の気持ちちゃんと伝える前にひどい事してしまって……おれ、ちゃんと気持ち伝えるよ!」
ちゃんと気持ちを伝える?
なんの事なんだろう?
不思議に思っているとおにいさんが続けて話し始めた
「みずき、おれ、みずきの事が好きなんだ!初めて見た時から可愛いなって、会う度にどんどん好きになっていったんだ、好きだ!みずき!」
えっ……?
からかってたんじゃないの……?
好き?私の事が?
ダメだ、アルコールが入りすぎて考えれば考えるだけ頭がクラクラする
なにも言えずにいるとおにいさんがゆっくりと近付いてくる
えっ……?近付いてっ……
と思っていたら
おにいさんは私の事を抱き締めた
「えっ……ええっ……」
背中に腕を回したおにいさんは、私を胸の中に包み込んでわたしの頭にキスをした
おにいさんはなにも言わない
ドキドキしてなにも言えない
もう、このままおにいさんにされるがままになってもいい
そう思った
そう思った時
聞き慣れない着信音が聞こえてきた
おにいさんは私から離れて、ポケットのズボンに手を入れて何かを探しているようだ、スマートフォンかな?
表情が曇る……
「どうしたんですか……?」
「奥さんから電話だ、出るよ?少し静かにしててね?」
私は頷いておにいさんの方を見ないように後ろを向いた
「もしもし……どうした?」
…………
「わかった、ほどほどに気を付けてな?」
…………
「はーい、じゃぁおやすみなさい」
「ごめん、もう終わったよ、こっち向いてくれるかな?」
おにいさんは私の背中を指でツンツンしてきた
「はっ、はい、電話大丈夫でしたか?おねえさんからだったんですよね?」
振り返りながら聞いた
「あぁ、大した事じゃなかったよ、今日は泊まってくるって友達のとこに」
「えっ?いいんですか?お泊り」
おにいさんは笑っている
「大丈夫だよ、今までは許可した事ないけど、今日は特別みずきとまだ一緒にいたいからね」
私はドキッとしてしまう、いけない事なのに、嬉しいと感じてしまう……
「ねえ?みずき?さっきみたいにしてもいいかな……?」
私は小さくうなずく
おにいさんの腕がのびてきて
私の体を優しく包み込む
なんだか安心する
あったかくて、きもちいい
この感覚、この気持ちはなんだろう……?
あぁ、でもダメなんだ
おにいさんとこんな事しちゃダメなんだ
でも……嫌じゃない
拒否出来ないよ……
「おにいさん……その、気持ちはすごく嬉しいです、でも、その……やっぱり気持ちを受け入れる事は出来ません……」
さっきよりも強い力で抱きしめられる
「そうだよな、わかってたんだ受け入れてくれる訳ないって……でも気持ちを伝えられてよかった、こうやってみずきを近くで肌で感じられてよかった……」
耳元で甘く囁かれて
体が嫌でもあつくなる……
「おにいさん……ズルい……」
言葉と一緒に甘い吐息を漏らしてしまう
「みずき……そんな色っぽい声出さないでくれ、我慢できなくなる……」
苦しいほどに力を込めて抱きしめられる
「んっ……く、苦しいよ……」
耳にふぅ……っとおにいさんのあつい息がかかる
体があつくなる、体がうずいてしまう
ほしい……おにいさんがほしい……
抱き締められただけなのに
なんで、こんなことになっちゃうんだろう……
本当は、私もおにいさんの事が好きだったの?
仲良くなりたいって思ってたのは、恋愛感情もあったから?
そんな……そんなはず……
「あっ……」
おにいさんが私の耳を甘噛みして、思わず声が漏れてしまった
「かわいい声……とめられないよ……もう……」
「おにいさん……」
いけない
この一線は越えてはいけない
わかってる
おにいさんもわかってるんだ
だから、余計に辛いんだ
おにいさんも何も言わない、言えない
何もできない
こうして抱き合っている事が、1番お互いに傷付かないで済むんだ
ここで、何か言えば
だれかを裏切ることになる、だれかを傷付けることになる
それが2人ともわかっている
身も心もおにいさんがほしい
でも、それは許されない
おにいさんが我慢してるのが伝わってくる、息がすごく荒くなってるのがわかる
仕方ない、ずっと抱き合ってるんだから
おにいさんはどれだけの理性が残っているんだろう?
私はもうほとんどなくなってしまっている、お酒のせいで
いや、酔ってても酔ってなくても
おにいさんを求めていたと思う
おにいさんの理性がなくなってしまえば、私たちは結ばれる
私は、今ではそれを望んでいる
きっと、おにいさんも……
それでも口に出せない、出してはいけない……
突然
部屋のドアをノックする音が聞こえた
私は慌てておにいさんから手を離す
「はっ、はい」
ドア越しに返事をする
「大丈夫?携帯ずっと鳴ってるから持ってきたよ?」
義母だ、ホッとした
「あっ、ありがとうございます、大丈夫です、今開けますね」
私は声を出さずにおにいさんにベッドの陰に隠れるように伝える、おにいさんは頷きドアから見えない位置へと移動した
ドアの鍵を開けて、ドアを開ける
そこには眠そうな顔をした義母が立っていた
「はい、これ、ずっと鳴っててうるさかったから持ってきた」
あくびをしながら義母は言う
「ご、ごめんなさい、すっかり携帯の事忘れてて……」
「いいんだよ、しっかり休みなよ?じゃぁおやすみ」
義母はそう言うと自分の部屋の方へと歩いて行った
そんなに鳴ってたのか……
とりあえず見てみよう
スマートフォンを開く
電話が6件 旦那から
メール11件 これも旦那から
なんでだ?
今日は遅くなるって言ってたのに……
まさか……?
いや、そんなわけない
おにいさんとの事がこんなにすぐバレるわけない……
ならなんで……
メールを上から順番に開く
[まだあ?ずっと待ってるのに連絡くれないとかあり得ないんだけど?]
その前は……
[もう着いてるよ?早くこいよ?]
あれ?変だな……
さっきちゃんと返事送ったのに……
最後の1通までは大体待ってるよの言葉が書いてあった
これで最後かあ
[ねえ?おねえちゃん、まだ?久しぶりにこっちに帰って来たんだから早く愛し合いたい]
私はハッとした
おねえちゃん?って誰の事?
「うそ……?浮気してるって事?」
私は理解できずに胸が締め付けられる
「ねえ……?みずき……?どうしたの?」
おにいさんが私の隣に来て問いかける
「旦那が……よくわからないメール送ってきて、もしかして浮気してるんじゃって……」
「えっ?まさか?浮気なんてする人じゃ……」
おにいさんは私の持っているスマートフォンを取り上げるとメールを読み始めた
「ねえ、このおねえちゃんって、もしかして……久しぶりにこっちに帰って来たってところを考えるとうちの奥さんなんじゃ……?」
えっ……?
おねえさんと?
頭がクラクラする……
大体10も歳が離れた私の事なんて恋愛対象になんかなるわけないもんね、おねえさんと結婚したばかりだし
私なんかをからかっておにいさんは楽しいのかな?
きっと楽しいんだろうなー
年上の余裕、大人の遊びなのかな……
深く考えるのをやめて、私は晩御飯を食べる事に集中する事にする
うん、やっぱりカレーは甘口が1番美味しいな辛いのは苦手だから……
パクパク食べていると義母が話し掛けてきた
「ねえ?今日ね、おにいさんが地元のお酒を持って来てくれたんだけど体調大丈夫ならみんなで一緒に呑もうよ?」
「はい、よかったら私もみんなと呑みたいです」
ちょうどいい
お酒を呑んでさっきの事は忘れよう
おにいさんがキッチンの方から一升瓶を持って来た
どこに置いてあったんだろう?全然気が付かなかったなあ……
私は慌てて席から立つとキッチンへと向かい、食器棚の上奥から普段は使わないおちょこを四つ取り出して軽くて洗って布巾で拭いてみんなが座っているテーブルへと持っていき、一人一人に手渡す
ここは年齢的も立場的にも私がみんなにお酒を注ぐのがいいのだろうか?
おにいさんは私が席に座るのを待っていてくれたようで、私の方を見てから一升瓶を開けた
日本酒はあまり呑んだ事はないけど、みんなと一緒に呑めるならきっとおいしく呑めると思う、おにいさんは自ら進んでみんなにお酒を注いでくれた
本当なら私がやらなきゃいけない事なのにおにいさんは大人で優しい、さっきの事は忘れよう、きっとおにいさんも疲れてるんだもんね
みんなで声を合わせて
「いただきまーす」
匂いを確かめて、お酒を口の中に入れる
日本酒はアルコールが強くて呑みにくいと聞いていたけど、このお酒はとてもまろやかで呑みやすい気がする
私はかなりのハイペースでお酒を呑んでいく
どれだけ呑んだのだろう
どれだけの時間が過ぎたのだろう
ハッと気が付いた時には、テーブルに突っ伏して眠ってしまっていた
義母たちはまだまだお酒を楽しそうに呑んでいた、この人たちはどれだけお酒に強いんだろうか……
とりあえずトイレに行こうと立ち上がると、思ったよりも酔いが回っているようで立ち上がれずフラフラと床に座り込んでしまった
みんな心配そうな顔でこちらを見ている
頭はクラクラするし、日本酒ってこんなにもすごいんだ……
なんとか絞り出した声で
「だっ……だいじょうぶです……」
と言ってはみたけどどう見ても大丈夫そうには見えない
おにいさんが立ち上がって私の手を引いて立ち上がらせてくれた
私は立ち上がれたけど、またフラッとして手を引いてくれたおにいさんの方へ倒れてしまい、おにいさんの胸にかおをうずめてしまった
うーん、なんだかあったかくて柔らかいなあ……
このまま眠っちゃおうかな……
ハッとして目を開けると、さっきおにいさんの着ていたTシャツの柄がかなり近くに見えた
あれっ?私何して……
何してたんだっけ?
私、今……
あれ?また抱き締められてる?!
おにいさんの声が聞こえる
「大丈夫?自分で立てる?」
あぁ、私お酒の呑み過ぎでヘロヘロになってるんだ……
「はっ……はい、大丈夫です、とりあえずそこのソファに座りますね」
私はおにいさんの体からゆっくり離れるとおにいさんの手を借りながらテーブルのそばにあるソファに倒れるように座った
「大丈夫ー?呑み過ぎたんじゃない?」
義母がまだまだお酒を呑みながら心配してくれる
あーっ!!
突然おねえさんが大きな声を出した
「忘れてた!私今日夜から友達と約束してたんだ!今から行ってくる!」
おねえさんは慌てて鞄を持って出掛けて行った、あれだけ日本酒を呑んでおねえさんは平気なんだろうか?
「あー行っちゃったね、まったくあの子はザルだから酔わないとはいえ、おにいさんもいるのに置いて出掛けるなんてねー」義母は頭を抱えている
「いいんですよ、たまに地元に帰った時ぐらい好きにさせてあげてくださいよ」
おにいさんは笑顔で義母に言った
義母は、ありがとうと言うとテーブルの上を片付け始めた
私も手伝わないとと立ち上がろうとするも、やはりフラフラして立てない
義母は笑いながら、今日ぐらいゆっくりしてなよ?後はやっておくからと言ってくれたので少し酔いがさめるまでソファで眠る事にしようと目を閉じかけた時
目の前におにいさんが来た
「どっ、どうしたんですか……おにいさん……?」
おにいさんは頭をポリポリかきながら
「いやっ……その……もし、酔い過ぎて動けないなら部屋まで一緒に行ってあげようかなって思って……」
照れてるの?
それともまた、からかおうとしてる?
今はどっちでもいいや
介抱してくれるなら助かる、お願いしますとおにいさんに頭を下げた
さっきのように手を引いてくれるんだと思って待っていると……
おにいさんはおもむろに私に近づいて来て、私を抱きあげて、お姫様抱っこのような形になった
「ちょっ……ちょっと!おにいさん!これは恥ずかしいです……」
「あっ、ごめん嫌だったかな?歩くの辛そうだったからこの方が楽かなって思ったんだけど……おろそうか?」
私はアルコールのせいもあって、ドキドキが止まらなくなってしまう
おにいさんに返事ができないままでいると、おにいさんは微笑みながら行こうかとつぶやいて私の部屋へと歩き出した
こんな姿、絶対に義母に見られたくなかった、幸運な事に義母はトイレにでも行っていたのだろうがお姫様抱っこの状態を見られる事なく部屋まで辿り着いた
部屋のドアを開けて、ベッドの上に優しく寝かせてくれた
そのまま何も言わないでおにいさんは私から離れていった、ガチャッとドアの鍵が閉まる音が聞こえた
あれ……?ドアの鍵って……
確か中からしか開け閉め出来ないようになってるはずだよね……?
じゃぁ、今の鍵の音はなに……?
鍵の音が気になるけど
かなり酔いが回っているのと眠気でどうなっているのか確認しないまま私の意識は夢の中へ引きずり込まれた
「ね……ぇ……?」
なんだろう……?
誰か私の耳元で何か言ってる?
まぶたが重い、目を開けられない、何を言ってるのかも聞き取りにくい
ほっぺの辺りがなんだかむず痒い
なにか、なにか変だ……
私は重いまぶたをあけて、自分に何が起こっているのか確認する
仰向けにベッドに横になってる私の頭の上に誰かの頭が見える、部屋が暗くて誰なのかよく見えない
「だれ……?」
顔の見えない誰かは、私から顔を離すと頭を手で優しく撫でた
「おれだよ……ごめん……」
あれ……?この声って……
おにいさん?!
そういえば部屋までおにいさんにお姫様抱っこで運んでもらったんだっけ……
って……でも、この状況は違うよね?!
えっ?私どれぐらい眠っちゃってたの?
「へっ、部屋から出て行ってください!」
私はおにいさんを突き飛ばした、おにいさんはバランスを崩してベッドの上から床に落ちてしまった
「痛っ……そ、そうだよね、こんな事許してもらえる訳なんかないよな……」
おにいさんは腰の辺りをさすっていた、私はカッとなってやってしまった事を後悔した
「あっ、ごめんなさい……怪我しませんでしたか?」
私はおにいさんに手を差し出して、おにいさんをベッドの上に引っ張り上げた
おにいさんと私、ベッドの上に少し離れて座った
しばらく沈黙が続いた
その沈黙を破ったのはおにいさんだった
「ねえ……?下の名前聞いてもいいかな?」
そうか、おにいさんは私の下の名前知らなかったんだ、そうだよね呼ぶ必要もなかったもんね
「みずき、みずきっていいます」
「おれの名前も覚えてくれると嬉しい、ゆきひろっていうんだ」
おにいさんの下の名前はゆきひろなんだ、どんな漢字なんだろう?
気にはなるけど今説明されても頭がクラクラして理解できないだろうと聞くのをやめた
「ねえ?みずきちゃん……ううん、みずき」
「はっ……はい?」
だいぶ部屋の暗さにも慣れてきて、おにいさんが真剣な顔をしているのがわかる
「今日はいろいろと本当にごめん!自分の気持ちちゃんと伝える前にひどい事してしまって……おれ、ちゃんと気持ち伝えるよ!」
ちゃんと気持ちを伝える?
なんの事なんだろう?
不思議に思っているとおにいさんが続けて話し始めた
「みずき、おれ、みずきの事が好きなんだ!初めて見た時から可愛いなって、会う度にどんどん好きになっていったんだ、好きだ!みずき!」
えっ……?
からかってたんじゃないの……?
好き?私の事が?
ダメだ、アルコールが入りすぎて考えれば考えるだけ頭がクラクラする
なにも言えずにいるとおにいさんがゆっくりと近付いてくる
えっ……?近付いてっ……
と思っていたら
おにいさんは私の事を抱き締めた
「えっ……ええっ……」
背中に腕を回したおにいさんは、私を胸の中に包み込んでわたしの頭にキスをした
おにいさんはなにも言わない
ドキドキしてなにも言えない
もう、このままおにいさんにされるがままになってもいい
そう思った
そう思った時
聞き慣れない着信音が聞こえてきた
おにいさんは私から離れて、ポケットのズボンに手を入れて何かを探しているようだ、スマートフォンかな?
表情が曇る……
「どうしたんですか……?」
「奥さんから電話だ、出るよ?少し静かにしててね?」
私は頷いておにいさんの方を見ないように後ろを向いた
「もしもし……どうした?」
…………
「わかった、ほどほどに気を付けてな?」
…………
「はーい、じゃぁおやすみなさい」
「ごめん、もう終わったよ、こっち向いてくれるかな?」
おにいさんは私の背中を指でツンツンしてきた
「はっ、はい、電話大丈夫でしたか?おねえさんからだったんですよね?」
振り返りながら聞いた
「あぁ、大した事じゃなかったよ、今日は泊まってくるって友達のとこに」
「えっ?いいんですか?お泊り」
おにいさんは笑っている
「大丈夫だよ、今までは許可した事ないけど、今日は特別みずきとまだ一緒にいたいからね」
私はドキッとしてしまう、いけない事なのに、嬉しいと感じてしまう……
「ねえ?みずき?さっきみたいにしてもいいかな……?」
私は小さくうなずく
おにいさんの腕がのびてきて
私の体を優しく包み込む
なんだか安心する
あったかくて、きもちいい
この感覚、この気持ちはなんだろう……?
あぁ、でもダメなんだ
おにいさんとこんな事しちゃダメなんだ
でも……嫌じゃない
拒否出来ないよ……
「おにいさん……その、気持ちはすごく嬉しいです、でも、その……やっぱり気持ちを受け入れる事は出来ません……」
さっきよりも強い力で抱きしめられる
「そうだよな、わかってたんだ受け入れてくれる訳ないって……でも気持ちを伝えられてよかった、こうやってみずきを近くで肌で感じられてよかった……」
耳元で甘く囁かれて
体が嫌でもあつくなる……
「おにいさん……ズルい……」
言葉と一緒に甘い吐息を漏らしてしまう
「みずき……そんな色っぽい声出さないでくれ、我慢できなくなる……」
苦しいほどに力を込めて抱きしめられる
「んっ……く、苦しいよ……」
耳にふぅ……っとおにいさんのあつい息がかかる
体があつくなる、体がうずいてしまう
ほしい……おにいさんがほしい……
抱き締められただけなのに
なんで、こんなことになっちゃうんだろう……
本当は、私もおにいさんの事が好きだったの?
仲良くなりたいって思ってたのは、恋愛感情もあったから?
そんな……そんなはず……
「あっ……」
おにいさんが私の耳を甘噛みして、思わず声が漏れてしまった
「かわいい声……とめられないよ……もう……」
「おにいさん……」
いけない
この一線は越えてはいけない
わかってる
おにいさんもわかってるんだ
だから、余計に辛いんだ
おにいさんも何も言わない、言えない
何もできない
こうして抱き合っている事が、1番お互いに傷付かないで済むんだ
ここで、何か言えば
だれかを裏切ることになる、だれかを傷付けることになる
それが2人ともわかっている
身も心もおにいさんがほしい
でも、それは許されない
おにいさんが我慢してるのが伝わってくる、息がすごく荒くなってるのがわかる
仕方ない、ずっと抱き合ってるんだから
おにいさんはどれだけの理性が残っているんだろう?
私はもうほとんどなくなってしまっている、お酒のせいで
いや、酔ってても酔ってなくても
おにいさんを求めていたと思う
おにいさんの理性がなくなってしまえば、私たちは結ばれる
私は、今ではそれを望んでいる
きっと、おにいさんも……
それでも口に出せない、出してはいけない……
突然
部屋のドアをノックする音が聞こえた
私は慌てておにいさんから手を離す
「はっ、はい」
ドア越しに返事をする
「大丈夫?携帯ずっと鳴ってるから持ってきたよ?」
義母だ、ホッとした
「あっ、ありがとうございます、大丈夫です、今開けますね」
私は声を出さずにおにいさんにベッドの陰に隠れるように伝える、おにいさんは頷きドアから見えない位置へと移動した
ドアの鍵を開けて、ドアを開ける
そこには眠そうな顔をした義母が立っていた
「はい、これ、ずっと鳴っててうるさかったから持ってきた」
あくびをしながら義母は言う
「ご、ごめんなさい、すっかり携帯の事忘れてて……」
「いいんだよ、しっかり休みなよ?じゃぁおやすみ」
義母はそう言うと自分の部屋の方へと歩いて行った
そんなに鳴ってたのか……
とりあえず見てみよう
スマートフォンを開く
電話が6件 旦那から
メール11件 これも旦那から
なんでだ?
今日は遅くなるって言ってたのに……
まさか……?
いや、そんなわけない
おにいさんとの事がこんなにすぐバレるわけない……
ならなんで……
メールを上から順番に開く
[まだあ?ずっと待ってるのに連絡くれないとかあり得ないんだけど?]
その前は……
[もう着いてるよ?早くこいよ?]
あれ?変だな……
さっきちゃんと返事送ったのに……
最後の1通までは大体待ってるよの言葉が書いてあった
これで最後かあ
[ねえ?おねえちゃん、まだ?久しぶりにこっちに帰って来たんだから早く愛し合いたい]
私はハッとした
おねえちゃん?って誰の事?
「うそ……?浮気してるって事?」
私は理解できずに胸が締め付けられる
「ねえ……?みずき……?どうしたの?」
おにいさんが私の隣に来て問いかける
「旦那が……よくわからないメール送ってきて、もしかして浮気してるんじゃって……」
「えっ?まさか?浮気なんてする人じゃ……」
おにいさんは私の持っているスマートフォンを取り上げるとメールを読み始めた
「ねえ、このおねえちゃんって、もしかして……久しぶりにこっちに帰って来たってところを考えるとうちの奥さんなんじゃ……?」
えっ……?
おねえさんと?
頭がクラクラする……
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