上 下
32 / 57

第32話 調査開始 (生後51日目)

しおりを挟む
前回のあらすじ
  有希ちゃんと初めての旅行です。目的は両親の遺体を探し出すこと!悪霊化を防ぐためにも、何としても遺体を見つけたいと思います。

☆☆☆

  目的地である土砂崩れ現場に到着した。一言で言うなら、物凄い惨状だ。航空写真で土砂崩れ前の画像を見てはいたけど、実際現地で見ると、迫力がまるで違う。山の中腹から始まり、この県道を約50m程が巻き込まれ、下の川に流れ込んだてところか。現在、川の土砂は除去され、正常な流れに戻っている。県道は、道路を作製するため整地を進めており、山側にはフェンスを設置しているところでもある。警察や工事関係者は、この広い現場から捜索してくれていたのか。そして今、この場には、県警の警部さんと工事関係者の方々がいる。

「皆さん、南条明希と申します。この度は、私の息子夫婦の捜索に協力して頂き、誠にありがとうございます。」

「南条有希と言います。父や母の捜索に協力して頂き、ありがとうございます。」

「工事責任者の橋谷と言います。この1ヶ月と少し、出来る限りのことはしたんですが、発見には至りませんでした。申し訳ありません。」

「警察や工事関係者の方々が、日夜を惜しんで捜索してくれたことは重々承知しております。発見出来なかったことは残念ですが、皆さんがここまで協力してくれたのは確かなのです。本当にありがとうございます。」

------さて、俺は俺で動物達から情報収集するか。さすがに山の中だけあって、色々な反応がある。やはり、聞くとするなら鳥だな。早速、やってみよう。

(有希ちゃん、俺はこの辺りを縄張りとしている鳥達に遠方憑依して、情報収集してみるよ。)

(わかったわ。無理しないでね、ラッキー。)

☆☆☆

カワセミ、ウソ、カシラダカ、イワヒバリ、イヌワシなど色々な鳥達に聞いてみたけど、手掛かりが一切なかった。その内容は似たようなもので、こんな感じだ。

カワセミ 
(僕を庇って、恋人が死んだんだ。ちくしょー、この気持ち、お前にわかるかー!車、そんなの知らねえよ。あの状況で、見る間なんかあるわけないだろ。)

ウソ (私は近くにいなかったからわからないわね。ごめんなさい。)

カシラダカ
(車ねー、この辺りは見かけなかったな。当時、現場近くにいたけど、土砂の量が尋常じゃないくらい多かったからわからないよ。)

イワヒバリ
(車か人間!土砂の量が多すぎて、全くわからないよ。)


-------まさか、何一つ収穫なしとは思わなかった。正直、辛い。有希ちゃんになんて言えばいいんだ。もう、時間が遅くなる。次で最後だ。あの木に止まっているハヤブサさんかな。遠方念話で話し掛け、こちらの状況を説明した上で、遠方憑依の許可をもらった。

(ほう、これが遠方憑依か、妙な感覚だ。あと、ラッキー、私は正確に言うと、チゴハヤブサだ。)

(え、すいません、チゴハヤブサさん。早速なんですが、1ヶ月くらい前にこの辺りで土砂崩れが発生しましたよね。)

(あれか、酷かったな。この辺りの動物達もやられたからな。)

(その時、車1台巻き込まれたはずなんですが、そのことについて知っている者はいますか?)

(車か。少なくとも、俺は知らないな。土砂崩れ自体が一瞬だったからな。車を見た者はまずいないだろう。)

(そうですか、残念です。俺は、なんとしても、その巻き込まれた車を見つけたいんですが。)

(すまんな、役に立たなくて。そうだ、ここまで来てくれたんだから、現場周辺を上空から見てみようじゃないか。)

(ありがとうございます、助かります。)

そう言えば、さっきまで聞くだけ聞いて現場まで行ってなかった。そうだ、事件は現場で起こっているんだ。まず、現場を見に行こう。

  上空から見ると、被害の大きさがわかるな。でも、土砂も除去されており、かなり復旧作業が進んでいる。車らしきものも全く見当たらない。本当に、この範囲にいるのか怪しくなる。索敵も反応しないし、打つ手がないぞ、どうする?推理小説だと、こういう場合、初心に帰って一から情報を見直すんだよな。よし、せっかくだし、この辺りのことを聞いてみるか。

(チゴハヤブサさん、この辺りは、まだ人間多いですよね。近くに川があるし、夏になったら、川遊びの人達で賑やかになるんじゃないですか?)

(いや、車はそこそこ通るが、川遊びに来る人間はいないな。たまに来るやつもいるが、そういう奴らは大抵事故を起こしている。)

(え、どういうことですか?)

(この周辺の川は、所々に深い所があるんだよ。地元の人間はそれを知っているから、まず遊びには来ない。)

なるほど、観光客は知らずに遊んで、深みに入ってしまい事故を起こしているということか。

(川を見ていいですか。どのぐらい深いのか調べたいんですが。)
(ああ、いいよ。)

おー、川の上を低空飛行して貰ってるけど、全くわからん。あ、枝に止まってくれた。

(ラッキー、この位置からだと、分かりやすいはずだ。浅い部分は、底が見えるだろ。)

(はい、見えますね。あの暗い部分が、深いということですか?)

(ああ、そうだ。大抵、ここに来る人間は、そこに嵌まり、そのまま死ぬ場合もある。)

川、怖えー!前世の子供の頃は、普通にみんなと川遊びしてたぞ。大人に言われたこともあったが、気にも止めなかった。

(土砂崩れ現場の川周辺に移動してみよう。)

ここが現場か。山の方を見ると、有希ちゃんが見えた。まだ、話し込んでいるみたいだ。

(ここも、深い所があるんですよね?)

(ああ、そのはずなんだが、土砂崩れがあったせいだろう。この周辺の深い所が、軒並み消えているな。おそらく、土砂で埋まったんだろう。)

そうか、あれだけの土砂が流れ込んだら、深い場所も無くなるか。

(なんか、どの場所も同じくらい浅いですね。チゴハヤブサさん、この現場周辺を見て、何か違和感はなかったですか?)

(いや、特にないな。強いて言えば、ここの深みがなくなったくらいか。)

深みか-----!
いや、まさか、そんなことは、でも可能性はゼロではないか。

(この周辺の深みの中で、一番幅の大きいものはどのぐらいなんですか?)

(私が知っている限りでは、幅4mくらいか。深さはわからん。それがどうかしたのか、ラッキー。)

(チゴハヤブサさん、ありがとうございます。まだ、確固としたものはないですが、解決の糸口が見えてきました。時間も遅くなったので、遠方憑依を切りますね。)

(役に立ったのなら、嬉しいぜ。じゃあな、ラッキー。)

有希ちゃんに遠方念話で遅くなったことを誤って、ひとまず意識を自分の身体に戻した。時間は17時か、4時間遠方憑依してたのか。危ねー、これ以上やってたら心配されてたぞ。さて、俺の考えた仮説が正しいかどうかを確認するためには、どうしたらいいのか考えないとな。俺1人の力では絶対に無理だ。だが、この仮説を人間に話したとしても、笑われるだけかもしれない。まず、可能性として非常に起こりにくいからだ。

だが、可能性はゼロではない。有希ちゃんと明希さんに話すしかない。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

アレキサンドライトの憂鬱。

雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。 アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。 どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい! 更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!? これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。 ★表紙イラスト……rin.rin様より。

俺とシロ

マネキネコ
ファンタジー
【完結済】(全面改稿いたしました) 俺とシロの異世界物語 『大好きなご主人様、最後まで守ってあげたかった』 ゲンが飼っていた犬のシロ。生涯を終えてからはゲンの守護霊の一位(いちい)として彼をずっと傍で見守っていた。そんなある日、ゲンは交通事故に遭い亡くなってしまう。そうして、悔いを残したまま役目を終えてしまったシロ。その無垢(むく)で穢(けが)れのない魂を異世界の女神はそっと見つめていた。『聖獣フェンリル』として申し分のない魂。ぜひ、スカウトしようとシロの魂を自分の世界へ呼び寄せた。そして、女神からフェンリルへと転生するようにお願いされたシロであったが。それならば、転生に応じる条件として元の飼い主であったゲンも一緒に転生させて欲しいと女神に願い出たのだった。この世界でなら、また会える、また共に生きていける。そして、『今度こそは、ぜったい最後まで守り抜くんだ!』 シロは決意を固めるのであった。  シロは大好きなご主人様と一緒に、異世界でどんな活躍をしていくのか?

ブロック作成スキルで、もふもふスローライフを目指すことにした

うみ
ファンタジー
 もふもふ犬と悪魔少女と共に異世界ジャングルでオートキャンプする!  俺こと日野良介は、異世界のジャングルに転移してしまった。道具も何も持たずに放り出された俺だったが、特殊能力ブロック作成でジャングルの中に安心して住める家を作る。  うっかり拾ってしまった現地人の悪魔っ娘、俺と同時に転移してきたと思われるポチ、喋るの大好き食いしん坊カラスと一緒に、少しずつ手探りで、異世界での生活を充実させていく。  サバイバル生活から楽々スローライフを目指す!   衣食住を充実させるのだ。

エルティモエルフォ ―最後のエルフ―

ポリ 外丸
ファンタジー
 普通の高校生、松田啓18歳が、夏休みに海で溺れていた少年を救って命を落としてしまう。  海の底に沈んで死んだはずの啓が、次に意識を取り戻した時には小さな少年に転生していた。  その少年の記憶を呼び起こすと、どうやらここは異世界のようだ。  もう一度もらった命。  啓は生き抜くことを第一に考え、今いる地で1人生活を始めた。  前世の知識を持った生き残りエルフの気まぐれ人生物語り。 ※カクヨム、小説家になろう、ノベルバ、ツギクルにも載せています

転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします! 

実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。 冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、 なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。 「なーんーでーっ!」 落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。 ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。 ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。 ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。 セルフレイティングは念のため。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

処理中です...